夜斗は隣で寝る紗奈に目を向けた
年齢差は二年。夜斗は19であるため、紗奈は17だ
(昔に比べたら成長したもんだな。いろんな意味で)
全くないわけでも大きすぎるでもない胸と、折れてしまいそうなほど細い腕
そして透き通るような白い肌
夜斗でさえ、紗奈を見続けることは難しい
妹であるという理性と、それ以上に魅力的であるという本能が戦うためだ
「いつまで寝てる気だ、紗奈」
「ん…ぁ、おはようございます…お兄様」
体を起こした紗奈が小さく欠伸をし、目をこすりながら夜斗を見た
「……誘惑してるのか?」
「間が長いですね、お兄様。そんなつもりはありませんよ?」
服装は裾の長い白のキャミソールに白のショーツ
誘惑してると言われたら否定できない服装であろう、と夜斗は声に出さずに呟いた
「誘惑したって応えてくださいませんしね、お兄様は」
紗奈はベッドに座り、すらりと長い足を伸ばし、両腕を頭より上へ伸ばして体を伸ばした
(…兄妹でなければ好きになっても問題なかったんだがな)
夜斗はそう思いつつ、部屋のドアを見た
この建物は夜斗と紗奈の自宅だ。恩恵保持者としてテロのようなことをする前に住んでいたもので、二人の実家でもある
両親は百年ほど前に寿命で亡くなっている。そのため、かなり長いこと二人は一緒にいるのだ
「紗奈は今日も学校か?」
「はい。交換留学の話もありますし、少々慌ただしいところではありますが」
紗奈はそういってベッドから立ち上がった
艶かしい体つきが太陽によって照らされ、意識しないようにしていた夜斗をイヤでも意識させる
「今日は学校の視察がある。いわば参観日だ」
誤魔化すように咳払いをした夜斗は、紗奈にとって衝撃的な事実を伝える
「…え?今日、ですか…?」
「ああ。兼ねてから行こうとは思ってたんだが、時間とやる気とモチベが足りなかった」
「やる気とモチベーションってほぼ同じ意味では…?わかりました、学友にも伝えておきます」
「いや、伝えるな。教員にすら伝えずに潜入するつもりだから」
「どうやって潜入するんですか?IDカードないと校門開きませんけど…」
紗奈の学校は全国から恩恵保持者予備軍や学生の恩恵保持者を集めて教育を行う場所だ
最近では分校を作る予定があるとかないとか噂がある
そんな紗奈の学校では、セキュリティ用IDカードがなければどの教室にさえも入らないのだ
「管理者権限で通れるだろ、多分。通れなかったら呼ぶ」
「ずいぶん無計画ですね…承知いたしました。お待ちしております、お兄様」
くすりとわらった紗奈を見て、改めて夜斗は思うのだった
(妹を可愛いと思うのは間違いですか?)と