カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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30話 冬風紗奈は好かれたい5

紗奈は授業中考えていた

夜斗を異性として落とす方法と、唯利のことだ

唯利をうまく言いくるめて図書館の幹部にしてしまえば、防衛は楽になる

あと三日ほどでアメリカに行った四人組が帰ってくるとはいえ、戦力は多いに越したことはない

(そもそも唯利さんを引き込んだとして、パートナーがいませんね。あれだけの力があってパートナーが要るかわかりませんけど)

唯利の能力は紗奈の能力に次いで凶悪なものだろう

あれは拷問を強制的に実行する能力だが、それを使えば殺しも生かしも容易にできる

ただ一つ紗奈は、本人に言いたいことがあった

(灰色の猫耳パーカーってどこに売ってるんですか…。黒とかならわかりますけど…)

少し欲しくなってる紗奈であった

 

 

一方その頃夜斗は校門にて

「《管理者》起動。セキュリティを超えろ」

夜斗は恩恵を使い、校門に生徒であると言うデータを認識させた

どこの学校にも不登校生はいる。その不登校生のデータを使い、開けたのだ

「自分で作った学校ながらどこがどこだかわからないな」

夜斗はそう言いながら生徒玄関に向かった

この校舎は高等部用で、道路を挟んで向かい側に小中等部の校舎がある

使ったのは中等部生徒の情報だが、難なく入ることができた

「こんなセキュリティで大丈夫か…?」

どこからか大丈夫だと聞こえた気がしつつ、夜斗は歩を進めた

職員室を通り過ぎ、一階の教室の手前にある階段で二年生の階に移動する

そして後ろのドアにある窓から中を覗いた

(やってるな。紗奈も真面目に受けてるようだ)

尚夜斗がここにいた時はほぼ全ての授業で寝ていた

佐久間は真面目に受けていたが、アイリスはほとんど屋上でサボっていたし奏音は遠隔で授業に参加していた

まともに学校生活をしたことがない夜斗は、この光景が新鮮に見えた

「先生、誰かが覗いています」

「あっばれた」

紗奈の隣の女生徒が教師に伝えたことにより、夜斗は教師に捕まった

「名前を名乗りなさい。警察呼ぶから」

「警察権が俺に通じるのかは甚だ疑問だがな…。なるほど、ここがAクラスか…」

夜斗はそう言って教室内に入った

教師の静止の声を無視したが、かけらほどの罪悪感も感じている様子はない

クラスを見れば女子しかいない。AからCは女子用クラス、DからFが男子用クラスとなっているのだ

「紗奈、元気にやってるか?」

「お兄様…。怪しい覗き方をしないでくださいよ」

「…お兄様?夜斗様!?」

クラスメイトがざわめき出し、教師もようやく夜斗に気づいたらしく顔を真っ青にしている

「そんなにかしこまらなくていいんだけどな…。先生もお気になさらず」

「そ、そんな…。本日はどう言ったご用件で…?学園長室は5階ですが…」

「ん?妹の授業参観を兼ねて学校の様子見をな。ここのクラスに留学生入れる予定だし」

「留学生!?」

生徒が声を上げる

ざわめきが大きくなり、気になった隣のクラスの生徒が覗いて夜斗に気づき、黄色い歓声を上げる

「…こうなるからお忍びできたのに…」

「お兄様がお兄様である以上、こうなるのは致し方ありませんよ。なんいったって、恩恵保持者の運命を変えた唯一の存在ですから」

紗奈は心なしか喜んでいるような声であった


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