カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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32話 冬風紗奈は好かれたい6

夜斗はA組の生徒たちを前に、留学について説明していた

「つーことで、魔族との交流として留学生…といっても国内だから留学かどうかは怪しいんだが、二人ほど受け入れることにした」

「はい夜斗様!」

「様をつけるななんだ」

女生徒の一人が起立して夜斗に質問を投げかける

「留学生の性別は女の子ですよね?」

「…あっ…」

「お兄様…まさか…?」

「そうじゃん男も来るじゃん。桃香はここでいいけど蒼牙どうしよう…」

夜斗は霊斗の弟が弟であることを忘れ、このクラスに二人入れるつもりでいたのだ

クラスが性別で分かれてる以上、分けるしかないのかと頭を悩ませていた時

「魔族とはいえ男だからなぁ。けど、最悪A組全員で抑えればよくない?」

窓際の席から声が響く

よく通る声で、夜斗自身見覚えがあった

「み、澪さん…!?ちゃんと敬語を使わないと…!」

「天血澪…。ここにいたのか」

「久しぶりだね、夜斗」

えぇ!?という声が教室中に轟くと同時に、澪は耳を塞いだ

「最後にあったのが弾圧の三日前か。今から五年くらい前になるな」

「そうだね。音沙汰ないから死んだかと思ってたよ」

澪は耳に当ててた手を外して立ち上がった

「俺たち恩恵保持者の神機は、基本的に使用者の血が織り込まれてるのは知っての通りだが」

「まだ教えてません」

「じゃあ今教えた。使用者と俺の血を織り込むと、そいつが俺の血の従者ってものになる。澪は最初の血の従者だ」

また悲鳴のような声が轟いた

「今のところお兄様には血の従者が二人しかいません。私と澪ですね」

紗奈は座りながら言った

「澪の意見を通すにしても多数決だな。このクラスに男子入れてもいいよーって人挙手」

夜斗の声に上がらない手はなかった

 

 

翌日・羽田空港

「んー…!疲れたねぇ」

「お前が急にババ抜きとか始めるから止まんなくなったんだろうに…」

「そうね。いつものことだわ」

「お兄様らしいですね」

男女四人組がキャリーケースを引っぱりながらエントランスを歩いていた

先頭を行っているのはぱっと見女子に見えないこともない男子、桜坂(さくらざか)久遠(くおん)

髪は長く金色で、目は仄かに赤い

着ているのはメンズのパーカーにジーンズのズボンだが、男装しようとしてる女子に見える

左後ろを歩いているのは彼の友人である神楽坂(かぐらざか)(しょう)。短く黒い髪を持ち、目は久遠と同じく仄かに赤い

そして二人の後ろに、それぞれの妹が歩いている

舞莉(まり)、迎えって何時だっけ?」

「あと数分で、エントランスの金時計の下にくるはずです」

莉琉(りる)、一人でどっか行くなよ?探すのめんどいから」

「わかってるわよ。そこまで子供じゃないわ」

そんな四人に近づいていく影があった


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