カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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35話 冬風紗奈は好かれたい9

(全く…宿敵が来ましたか。恋愛的に)

紗奈は莉琉と舞莉をみながらため息をついた

莉琉は純日本人ではあるものの、神格の反動で髪が青みがかかっている

舞莉は黒髪ではあるが、紗奈より長く艶がある

紗奈は自身の恋敵になる、と思っているのだが実際にはそんなことはありうらない

何故なら、莉琉は久遠の、舞莉は翔の婚約者だからだ

親の代から決まっていることであり、また久遠の父は翔の母の兄であり、久遠の母は翔の父の妹だ

つまりは近親相姦が連鎖し続けている家系なのだ

寿命は代を追うごとに減っていたものの、久遠たち神格保持者は不老不死だ

つまり、ここで負の連鎖が止まる

だからいい、というわけではないのだが

「…紗奈?」

「…はい。どうかされましたか、お兄様」

「いや、なんか莉琉と舞莉を敵に向ける目線で見てた気がしたから」

(なぜこういったときだけ鋭いんですかお兄様は!?)

「まぁいい。桜坂四重奏に異動命令だ。それぞれ、東北・関東・関西・九州に分かれて国防を担ってもらう。その際のパートナーは、俺が関東・アイリスが関西・東北に奏音・九州に佐久間となる」

「その分け方に意味ってあるの?」

「ない。すごく適当にした」

「なら、支部を増やすのに四重奏とAdministrator Classを一人ずつにする意味はなんだ?」

「簡単にいうなら、相互伝達を容易にするためだ。Administrator Class間は常にオープンチャンネルがあるし、お前ら四重奏にもある。が、俺たちと四重奏を繋ぐ共有回線はないがためにこうした」

「支部同士の連絡の直結ね。理には適ってるわ。けど、それなら共有回線を作ればいいじゃないの」

「それができてりゃ苦労しねぇよ」

夜斗はそう言ってテーブルに手をかざした

そこに表示されたのは、久遠と夜斗の全身画像だ。服は着ている

「恩恵保持者…今は神機使いなんて呼ばれてるが、俺たちは空気中に漂う霊力を媒介に恩恵を起動する」

夜斗の全身画像の周囲から矢印が伸び、胸の中央あたりへと向けられた

「けどお前ら神格使いは、神力を神社から集めて神格を起動する」

今度は久遠の全身画像に、鳥居マークから伸びた矢印が向けられる

「つまり、俺たちはラジオのようにスクランブル放送すりゃ伝わるが、お前らは神社を中継するケーブルテレビみたいなもんだ。そうだな、久遠?」

「そうだね。私たち神格保持者は、人々の信仰を変換して神力にするから。もしくは人が私たちを知ってれば、それだけで神力を生成できる」

「その性質上、恩恵保持者が神格保持者と連絡するためには一度、中継基地を介す必要がある。これも、神力を使って作る祭壇みたいなもんだ」

テーブルの画像が夜斗の言葉に合わせて変化していく

夜斗から伸びた矢印が黒い鳥居マークに集まり、その黒い鳥居から久遠の近くにある鳥居までを直線で結ぶ

「これが難しいんだ。祭壇も適当に作りゃいいわけじゃなく、龍脈の影響を受けやすくて、かつ神社と接続しなきゃならん」

「要するに、有線接続しないといけないわけですね。それも、変換を重ねて初めて一つのラインができる」

舞莉がそう言いながらテーブルに手をかざし、映像を消した

話を終わらせろ、と言外に告げているのだ

「そうだ。つまり、共有回線に耐えられるほど強固な線をつなげることはできない上に、巫女を一人人柱にしないとならん。故の分散配置だ」

夜斗の話は大半伝わらず、ただ技術的に不可能であるという形で久遠には伝わった

「…りょーかい。明日までに人員配置を考えとくよ。それでいい?」

その場に集まっていた者たちが頷き、夜斗が手を打ち鳴らした

解散の合図だ。夜斗と紗奈を残し、全員が立ち去った

「紗奈は俺とここに残ることになる。それでもいいか?」

「はい。問題ありません」

紗奈は思う。この想いを伝えられたらどれほど楽か

そして受け入れてもらえればどんなに嬉しいか

しかし伝えられない。大きな壁があるために

(男性として愛しております、お兄様)

紗奈の想いは、夜斗には伝わらない

自室にて紗奈はベッドに座った

「また、切れませんか」

手首にカッターの刃を押し付けたが、切れない

紗奈の恩恵が無意識に妨害しているためだ

「…二ツ目の神機、斬鉄剣」

紗奈のポケットから飛び出した四角い箱が、包丁のような形状に変化する

これを手首に向けて思いっきり振り下ろしたところで、紗奈は気づいた

「おにい…さま…?」

そこに夜斗の手があり、その手を神機で切り落としたことに

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