カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

36 / 43
36話 冬風紗奈は好かれたい10

(お兄様…!私は……!いえ、今は止血が先決です。恩恵起動!)

拒絶者にて、出血を拒絶する。が、止まらない

「紗奈…何をしてるかと思えば…」

「お兄様…何故手を出したのですか!」

「知らん。体が反射で駆動したに過ぎない」

夜斗は常に、呪いに縛られている

このことは紗奈には伝えられておらず、佐久間やアイリスも知らない。唯一知っているのは、奏音だけ

それは、紗奈を守ろうとするという呪縛

紗奈が命の危機に瀕した時、自動で肉体が駆動する

恩恵で防げるのであれば恩恵が起動し、防げなければ自己を犠牲にする

「紗奈は無事だな…?」

「はい…」

「なら、いい」

夜斗は骨まで切れ、皮一枚で繋がる腕をみていった

紗奈の心理状態はそれどころではない。自身の手で愛するものを傷つけたのだから

(けどこれで、お兄様は私を見てくれる…?)

「…仕方がない。スキル解放」

夜斗は千切れかけた左腕を、右手で無理やり押し込む

それだけで腕は治り、何事もなかったかのように動き出す

「…それは…?」

「冬風の人間は、スキルツリーと呼ばれる異能力を生まれ持っている。見たもの、得た知識、受けた技。全てを学習し、スキルとして登録する。そして年に一度、スキル解放の機会が与えられる。これを行うことで、登録されたスキルを習得できる」

夜斗はそういって紗奈を抱きしめた

手が震えている。特段、千切れかけたことによる後遺障害というわけではない

「おにい…さま…?」

「お前が無事で、よかった」

夜斗はベッドに投げ出された二ツ目の神機を見て、声を上げかけた

二ツ目の神機は、不可能とされていた技術だ

一つ目は問題なく使える。しかし、二ツ目を使用しようとすると人類の悪意に呑まれる、と言われているのだ

それゆえに、二ツ目の神機を持つことさえ叶わないはずだが…

「…紗奈、この神機はどこで手に入れたんだ?」

「これは…神社に、刺さってたものです」

「どこの?」

「…静岡県最北部の、浅間神社です」

「…なるほど。製作者不明の神機、というわけか」

夜斗はベッドの上に横になった

「お兄様…?」

「安心しろ、風呂は入ったあとだ。たまには兄貴に甘えてもいいんだぞ、紗奈」

夜斗はそういって手招きした

腕を横に伸ばしていることから、そこに頭を乗せろということだろう

「…では、お言葉に甘えます」

「お前が起きて離れるまでここにいてやる。ゆっくり寝ろ」

「はい…。おやすみなさい、()()()()()

紗奈が寝息を立て始めるまでに、そう時間はかからなかった

夜斗は天井を見上げ、紗奈の二ツ目の神機を手に取る

「お前はなんで、作られたんだろうな。終焉氷月?」

包丁型のそれが小さく震えて、元の板型に戻った

『貴方には教えません。今は、まだ』

そんな声が、微睡の中の夜斗に聞こえた───気がした

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。