カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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37話 冬風夜斗暗殺計画

夜斗は街を歩いている際、違和感に気づいた

(これは、殺意か。それも一人や二人じゃなく、おおよそ200人)

周囲の人間が夜斗を見ている。その目には侮蔑の目がある

ビルに取り付けられたテレビがその謎を解き明かしてくれた

『次のニュースです。元政府から告げられた、冬風夜斗の裏側に迫ります』

「なるほど。その手段は考えてなかったな」

夜斗は掌をテレビに向けた

「試作型異能力、紫電の黒槍」

夜斗の掌から発されたのは、超々高圧の電撃だ。それは空気絶縁を意図も容易く破壊し、周囲の窓ガラスを揺さぶりながらテレビを破壊した

「思っていたより威力が低いな。電圧はこれ以上あげられないし、やっぱ擬似電線でも付与したほうがいいのかねぇ」

圧倒的な能力を見せた夜斗を咎める声は、あがらなかった

一人を除いて

『見ましたか!あれが冬風夜斗の本性です!』

「街頭演説…それもあれは、防衛大臣(元)か」

夜斗はまた試作型異能力を行使しようとして、やめた

面倒だからというのもあるが、続けられた言葉に憤りを感じたからだ

『あれは少女3人を洗脳し、能力を与えて世界を支配しようとしているのです!九条奏音、アイリス・アクシーナ、時津風佐久間がその少女たちであります!』

夜斗の中で回路が起動した

感情が一定レベルに達すると、夜斗は回路を切り替える。この回路は夜斗の意思ではどうにもならず、ただ口調や雰囲気が変わるだけに留まらない

能力さえ変わってしまう

「お前、どうしても死にたいようだな」

モード4・如月響

それが今の夜斗。怒りが高まることで起動する回路だ

特徴としては、能力が最も大きい。ありとあらゆるものをゼロにするという能力だ

名前はないが、図書館の者たちには《回帰能力》と呼ばれている

『出たな悪の根源め!図書館ではなくもはやアークだ!』

「ギャグセンス無すぎるだろう。悪だからアークか。インパクトにかける」

夜斗…というより響は、指を鳴らした

すると元防衛大臣がもつスピーカーが甲高い音を立てて爆ぜた

「なっ!」

「珍しいものでもなかろう?漏電や地絡というものだ。端子間の空気絶縁を破壊して導通させ、短絡したに過ぎぬ」

響は解説しながら元防衛大臣に近づいていく

響が一歩踏み込むと、元防衛大臣が2歩退く

「ふむ?あれだけ小馬鹿にしていたのだ、俺たちを殺す手段くらい用意があるのだろう?出してみよ、許可する」

響が高圧的に告げると同時、響の頭にライフル弾が飛来した

「ほう。これはナパーム弾か。着弾地点の周囲に火炎を発生させるが、残虐性から使用は国際法にて禁じられているはずだ」

響の発言に、周囲の人間は元防衛大臣に侮蔑の目を向けた

「どうやらここにいる人間にとって最大の敵はお前のようだ。俺はテロを防衛するために、お前を削除する」

響が夜斗に戻り、即座に能力が起動する

「《管理者》デリート」

夜斗がよく通る声で言うと同時に、元防衛大臣は微かに青白い炎を残して消え、その炎さえも風にかき消された


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