奏音は電話をかけていた
相手は、霊斗の妹である桃香だ
「もしもし桃香?」
『奏音、おひさだね』
「久しぶりね。先日の訪問以来かしら」
『もうそんなに前なんだね。今日はどうしたの?』
「夜斗の暗殺計画の存在が判明したわ。計画してるのは元政府よ」
『あれだけおいつめられててよくやるね、あの人たち。どうするの?潰すわけにも行かないでしょ』
潰すのは簡単だが、それを理由にこちら側が追い詰められることになるかもしれない
そうなると図書館は困るのだ
「まぁそういうことよ。魔族に助けを求めてみようかと思ってね」
『そういうことはお兄ちゃんに直接言ったほうがいいんじゃない?』
「2回くらい神機を向けてる手前話しにくいのよ。だから桃香からお願い」
『りょーかい。こっちからも一つ連絡いい?』
「お願いするわ」
『今、隣に冬風夜斗がいるんだけど…昏睡してるの』
「すぐ向かうわ。5分はかかる」
『逆にそれだけしかかからないんだ…。わかった』
電話を切り、即座にグレイプニルに転移し艦内放送を使う
「緊急コード0、よく聞きなさい。現在より第二次戦闘配置に移行、グレイプニルは私が動かすわ。移動先は静岡県沼津市にある魔族総本部、冬風夜斗の昏睡を確認したと連絡があったわ。雪音は能力の使用を許可するから、周囲警戒しなさい。桜音はグレイプニルを全監視モードに切り替えつつ周囲を警戒。総員かかりなさい!」
奏音は操縦席に走りながら恩恵を起動、グレイプニルの隔壁を閉鎖していく
緊急運転モードに切り替えているのだ。これは剛性などをガン無視で飛ばすため、区画を制限して稼働させる
また乗組員を戦闘配置にすることで、奏音の指示が行き通りやすくなる
「グレイプニル、緊急発進!」
「「「はっ!!」」」
奏音はレバーを思いっきり引いて、反重力を発生させた
グレイプニルの原理は、相反する力を制御する恩恵をもとに開発された重力炉だ
原子力よりは安全であるものの、危険度がないわけではない
「ぐっ…!」
「奏音様!無理な運用はおやめください!」
「行かなきゃいけないのよ…!夜斗のところに。私の好きな人のところに!」
「ですから、無理な運用はおやめくださいといったのです。私たちの霊力、奏音様にお貸しします。利子はつけてくださいね」
乗組員から奏音の元に、膨大な霊力が集められる
それがレバーを通して重力炉に送り込まれ、グレイプニルが加速する
「…ちゃんとかえすわ。出世払いでね!」
グレイプニルは奏音…だけではなく、図書館メンバーの想いに応えるかのように唸り、急加速した