カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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38話 冬風夜斗暗殺計画

奏音は電話をかけていた

相手は、霊斗の妹である桃香だ

「もしもし桃香?」

『奏音、おひさだね』

「久しぶりね。先日の訪問以来かしら」

『もうそんなに前なんだね。今日はどうしたの?』

「夜斗の暗殺計画の存在が判明したわ。計画してるのは元政府よ」

『あれだけおいつめられててよくやるね、あの人たち。どうするの?潰すわけにも行かないでしょ』

潰すのは簡単だが、それを理由にこちら側が追い詰められることになるかもしれない

そうなると図書館は困るのだ

「まぁそういうことよ。魔族に助けを求めてみようかと思ってね」

『そういうことはお兄ちゃんに直接言ったほうがいいんじゃない?』

「2回くらい神機を向けてる手前話しにくいのよ。だから桃香からお願い」

『りょーかい。こっちからも一つ連絡いい?』

「お願いするわ」

『今、隣に冬風夜斗がいるんだけど…昏睡してるの』

「すぐ向かうわ。5分はかかる」

『逆にそれだけしかかからないんだ…。わかった』

電話を切り、即座にグレイプニルに転移し艦内放送を使う

「緊急コード0、よく聞きなさい。現在より第二次戦闘配置に移行、グレイプニルは私が動かすわ。移動先は静岡県沼津市にある魔族総本部、冬風夜斗の昏睡を確認したと連絡があったわ。雪音は能力の使用を許可するから、周囲警戒しなさい。桜音はグレイプニルを全監視モードに切り替えつつ周囲を警戒。総員かかりなさい!」

奏音は操縦席に走りながら恩恵を起動、グレイプニルの隔壁を閉鎖していく

緊急運転モードに切り替えているのだ。これは剛性などをガン無視で飛ばすため、区画を制限して稼働させる

また乗組員を戦闘配置にすることで、奏音の指示が行き通りやすくなる

「グレイプニル、緊急発進!」

「「「はっ!!」」」

奏音はレバーを思いっきり引いて、反重力を発生させた

グレイプニルの原理は、相反する力を制御する恩恵をもとに開発された重力炉だ

原子力よりは安全であるものの、危険度がないわけではない

「ぐっ…!」

「奏音様!無理な運用はおやめください!」

「行かなきゃいけないのよ…!夜斗のところに。私の好きな人のところに!」

「ですから、無理な運用はおやめくださいといったのです。私たちの霊力、奏音様にお貸しします。利子はつけてくださいね」

乗組員から奏音の元に、膨大な霊力が集められる

それがレバーを通して重力炉に送り込まれ、グレイプニルが加速する

「…ちゃんとかえすわ。出世払いでね!」

グレイプニルは奏音…だけではなく、図書館メンバーの想いに応えるかのように唸り、急加速した


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