カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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39話 冬風夜斗暗殺計画

「夜斗!」

「静かに。今寝たばかりだ」

霊斗と桃香が、夜斗が寝るベッドの横に置かれた椅子に座っているのが目に入る

と同時に、奏音は霊斗に詰め寄った

「どういうことなのか説明してもらえるかしら?」

「俺はついさっき来たばかりだからよく知らないんだが、聞いたところによれば毒を打ち込まれたらしい」

「毒…?夜斗には効かないはずよ」

「簡単に言えば精神干渉魔術かな。毒というより、その人のトラウマを暴走させる働きがあるの」

桃香が夜斗の顔にかざした手を避けて、奏音を呼ぶ

奏音が夜斗の顔を覗き込んで、悲鳴に似た声を短く上げた

「これって…」

「これが恩恵保持者の闇、なんじゃないかな…。って考えると、恩恵はトラウマが変異したものだと思う。そこまで大きな突然変異って生物学的にも稀だし、多分恩恵保持者は多く生まれない」

不思議と納得した奏音

夜斗の顔は、驚くほど苦悶に満ちていた

それだけだ。それだけでも、奏音は恐怖を感じた

「…けど、よく夜斗に魔術を撃ち込めたわね。術者は?」

「捕らえて拘束してある。魔力無効化の結界もあることだし、そう簡単に破られはしない」

霊斗がそういって立ち上がり、奏音に視線を向けた

ついてこいということだろう

奏音はいつでも神機を召喚できるよう待機させつつ、霊斗と桃香に続いた

「弾頭刻印型魔術、って言ってな。銃弾自体に刻印魔術を付与したもののことなんだ」

「そんなの使われたら、ナパームもダムダムもつくれるわよね?」

「ダムダムは無理だな。炸裂術式を組み込むと、どうしてかわからないけど発射から着弾の間に爆発する。ナパームはできるが、それも難しい」

「なら何を刻印するのよ」

奏音は手の中で手のひらサイズのスマートフォンを操作し、グレイプニルを攻撃体制に変更した

これが功をなすなど、奏音自身も霊斗たちも知る由もない話だった

「さっきいっただろ。毒だよ」

「毒…。戦闘不能にする魔術、ってこと?」

「うん。麻痺とか煙幕とかもあるし、刻印術者によっては火炎や氷結もつけられるの。今回撃ち込まれたのは、尋問用自白魔法が組まれたものだよ」

奏音の右目がチリチリと傷んだ

夜斗を守れなかった奏音に対し、彼女らは何をされたかさえ理解している。対処法を知っていてもおかしくはない

「最近上がってた暗殺計画は…」

「おそらくこれだな。《管理者》を戦闘不能にすることで、本部に攻め込みやすくするのが狙いだろう」

「けど今は久遠がいるわ。そう簡単に落とせるとも思えない」

久遠は夜斗・奏音に次いで戦闘能力が高い

以前夜斗が使った「紫電の黒槍」の原型となったのは久遠の紫電だ

それほどに夜斗は久遠のチカラを認めている

「それがおかしいんだよ。だから私たちは考えたの」

「ああ。そして導き出されたのが、桜坂久遠の籠絡。つまり反乱を起こさせることだ」

奏音はふーん、と言って夜斗の頬を撫でた

「…行かなくていいのか?」

「えぇ、必要ないわ」

「図書館陥落の危機だぞ!?」

霊斗が声を荒げても、奏音は夜斗を撫でる手を止めるだけだった

「問題ないわ。仮に久遠を籠絡しようとしても、無駄よ」

奏音はゆっくりと笑ってみせた

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