カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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5話 拠点整備

拠点に戻った夜斗は、今後についてを検討することにした

現在日本本土には政治がない

日本政府が瓦解したからだ。その実行者は無論夜斗

つまりはこれから政治をするのは夜斗、ということになる

「ある種の独裁か。今なら外国が攻めてきてもおかしくはない」

「そうだね。まぁ、恩恵保持者は生きてられるし魔族もどうにかするだろうけど、人間はなぁ…」

アイリスが机に突っ伏し、顔だけを夜斗に向けている

その隣に座っているのは佐久間だ。二人とも街を歩いていれば目を引く美少女である

そして夜斗の隣にはパソコンが置いてある。そこから音声のみで奏音がこの会議に参加している

「俺がやるよりはアイリスがやる方がいいだろう。見た目が可愛ければ釣れる」

「男はそうだけど、女の子まで抑えられるかわかんないよ?私の恩恵はそういうの向かないし」

アイリスは椅子に座り直しながら言った

具現化系能力では、モノを作ることしかできない

そのため、暴動の鎮静どころか一般人にだって殺される可能性がある

四人の中では一番戦闘力はない

「ふむ…。なら佐久間は?」

「僕も無理だろうね。口調的にも、一部のマニアくらいしかつかないよ。そもそもそれで釣ったところでどうにかなるかわからないし」

佐久間は長い黒髪を弄りながら言った

ポニーテールに結んであるため、色っぽさから言ってもまず目を引くだろう

「なら奏音」

『嫌…と言いたいけど、一番向いてるかも。《執行者》は暴動の鎮静も楽だし、外交もある程度やりやすい。私やる』

「しかし…。いくらなんでも国のトップが顔を出さないのはどうなのかな?」

佐久間が意見を出す

奏音は今まで外に出たことがない引きこもりだ

飛行しているこの拠点にいるとはいえ、買い出しも全て夜斗が行っている

それは夜斗の甘さのせいもあるのだが…

『…なら、これならいいでしょ』

ドアがキィィという音を立てて開く

そこから入ってきたのは、雪のように白い髪をもつ少女だ

身長は高くなく、一見すれば中学生かそれ以下だ

「…誰?」

「奏音だ。出てきたんだな」

「さすがに隠すのは無理よ。まぁ隠してる気はないけど」

少女が奏音の声で話す

九条奏音はこの日初めて、同じAdministrator classの前に姿を現した

「…なるほど。本人が出てくるのであれば、多少は問題ないだろう。けど、見た目的にどうなんだい?」

「…ああ。奏音は見た目だけなら幼女だからな」

「見た目が若すぎるのね?ちょっと待って…《執行者》」

奏音が恩恵を起動する

奏音の頭上に魔法陣が現れ、それが奏音の体を通過する

すると奏音は、見た目が高校生ほどになった。大人っぽさもあり、まだ子供っぽさもある

「見た目を変えた!?」

「奏音は予め決められたプログラムを起動するのと似ている。今までにやったことは全部登録されてるから、過去の姿になることができるんだ」

夜斗はそう言って奏音を席に座らせた

普段から中学生の姿というわけではなく、夜斗が部屋にいる時だけあの姿なのだ

特に夜斗の趣味というわけではなく、奏音の偏った知識のせいなのだが…

「まぁいい、とりあえず奏音が表に立つんだね?」

「そうね。私が国を動かすわ。けど、今までとあまり変えないわよ?」

「それでいい。しばらくは混乱を招かんよう、少しずつ変えて行こう」

夜斗はそう言って立ち上がった

それを合図に全員が立ち上がり、会議の終わりを迎える

「追って通達するけど、緋月とは争わない方向で行く。話してきた感じだと、向こうは魔族の立場を人間と同等にすることを目指しているからな」

「了解。こちらも手配するよ。とはいえ、警察も一枚岩ではないから時間はかかるがね」

「頼んだぞ、佐久間」

「私の方で労基に掛け合ってみるよ。魔族雇用機会均等法でも作らせよっかな」

「ああ、労基署の者を呼び出すにはいつもの地上会議室で頼む」

「…私は何をしようかしら」

「奏音は政治を始める用意だな。暇があれば魔獣の殲滅」

「いきなり戦闘ね…。わかったわ」

「さて、始めるか。俺たちの戦争を」

夜斗はそう言って指を鳴らした


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