カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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7話 改善

ひとまず、図書館が国を運営し始めてから変わったことがある

一つは税金の使い道だ。アイリスがなんでも作れるために、金はあまり必要なくなった

図書館の給料を支払って余りは全て国のために使える

強いていうのであれば、新設した図書館の拠点「第零禁書庫」と、関西支部「第一禁書庫」に少し運営費がかかってしまうが、居住地は許せということらしい

そしてさらに、犯罪が減った

夜斗は今までの懲役刑・禁固刑を無くすよう指示した。代わりに導入されたのが拷問刑

アイリスが作った拷問器具を使用する刑だ

最初こそ非人道的だとマスコミが騒いだものの、それを無視して奏音が実行し、あらゆる罪に対しアイリスが気まぐれで拷問をするため、恐怖が勝ったのだ

「こんなところね。少しは治安が良くなったわ」

「ある意味恐怖政治だけどな。まぁ、非犯罪者には関係ない話だが」

「問題があるとすれば、アブノーマルな性癖をもつものが再犯を重ねるくらいだね」

「そんなこと言われても…。私の能力じゃ創るだけだからなぁ」

四人は日本政府瓦解から一ヶ月後の今日、会議をするため空中拠点に集まっていた

普段は夜斗と奏音は東京に。アイリスと佐久間は関西にいる

支部を増やすという案もあるのだが、それにはまだ恩恵保持者が足りなかった

「アイリスがいれば建物がすぐ建つのはいいな。霊力は結構使うみたいだが」

「まぁそれはしょーがないよ。一応創ったあとはすぐ寝てるし、まだいい方だよ?」

「そうだとしても、あまり多く創らない方がいいんじゃないか?軍備もお前が作ることになってるだろ」

「そーだね。まぁ、一個ずつしか作れないけどさ」

アイリスが創ったのは、光学迷彩を搭載した戦闘機だ

これが自衛隊に好評で、とてつもない勢いで搭乗希望者が増えた。そのためアイリスは、一日一台これを作ることにしている

「現行機と違って石油系燃料は使わないから地球温暖化的にもいいし」

「それはそうだが…無理はするなよ?」

「ほーい」

「あと問題があるとしたら何かしら?」

奏音が訊ねる

国民からくるのは賃金の話ばかり。そんなもの国に言われても困る、ということで企業に呼び掛けるに留まっているのが現状だ

「そうだね…。あと考えられるとすれば海外からの強襲をどう防ぐか、だね。いくらアイリスが創った空間転移装置があっても、霊力が結構使われるからさ」

アイリスの創ったテレポート装置は、転送される人の霊力を大きく消費する

といっても恩恵保持者にとっては大したことはないのだが、連続でやるとなれば話は変わってくる

その上、それぞれの神機の機能を使うことを考えると微妙なところではあるのだ

「…空間転移装置は何とかするしかないな。外部バッテリーで国中の国民から少しずつ集めるくらいしかない」

「まぁ特に普通の人間には影響がないからね。そういえば僕の《設定者》で少し龍脈の向きを変えたよ。一応禁書庫を通るようにして、空中拠点の駐留地に流れるようにしたから、少しは霊力補給に使う時間が減ると思う」

「それはいい。流石だな」

佐久間は地球そのものの機能設定を改変し、可能な限り搭乗員の負荷を減らした。それだけで恩恵保持者の負担は減る

「私の方だけど、《執行者》の内容を増やしたわ。といっても神機の機能を拡張するアドオンを作っただけだけど」

「どんなやつだ?」

「私の神機が大型ライフルなのは知ってるわよね?あれの機能って、弾丸を作るってやつなんだけど、それに非殺傷弾を追加したわ。暴徒鎮圧用ね」

「それはいいな。うまく使えば遠距離からでもやれる」

遠距離というのは数キロのこと…ではない

数百キロを誘導して当てるのが《執行者》こと奏音の得意技なのだ

今までは所属不明航空機を撃ち落とすことしかしなかったが、これからは暴徒鎮圧───つまり国内にも使える

「幅が広まったな。まず一歩、だ」


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