転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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2021年最後の初投稿です。
この回からシリアスに向かっていきます。
いい加減時計の針を進めて本編の時間軸まで行かないとね。
そんな訳でサンジェルマン回です。




第九十九話 2040年12月31日

 

 

 

その日、サンジェルマンたちは日本を離れて、欧州に潜伏していた。

パヴァリア光明結社の本部、統括局を目指していたのだ。

統括局長アダム・ヴァイスハウプトに年末に一度帰還するようにと言われていた為である。

一年以上日本に滞在していたので、その命令も妥当である。

様々な仕事が溜まってるだろうし、連絡事項もあるだろう。

 

そんな訳で欧州である。

欧州は現在、ギリシャのオリュンポス十二神に実効支配されている。

イギリス以外の欧州全土が鎖国状態にある。

なのでサンジェルマンたちは日本からアメリカに行き、そこから英国に向かい、さらに海を渡りフランスに密航。

そこから陸路で統括局のあるチェコに向かった。

 

パヴァリア光明結社統括局は巧妙に隠されている。

それは、迫害されてきた錬金術師や魔女を守るための措置であり、現代ではオリュンポス十二神から身を隠すためのものである。

錬金術による結界で隠された古い館。

それが、パヴァリア光明結社統括局だ。

 

その統括局に6人がたどり着いたのは、日本を出て一週間が経ってからである。

夜のことであった。

戦争の傷跡がいまだ生生しく残る欧州を徒歩で移動していたので、時間が掛かったのだ。

 

「やっ…………と! 着いたワケダ」

 

ミラアルクに背負われたプレラーティがげっそりして言った。

 

「プレラーティはずっと背負われてただけじゃないの」

 

カリオストロがそう言う。

 

「背負われるのも大変なワケダ!」

 

と、ミラアルクから降りながらプレラーティが言う。

 

「長い旅路だったのは否定しないわ」

 

サンジェルマンがそう言う。

そして、館の中に入る。

残りの5人もそれに続いた。

 

「懐かしの統括局ね」

「なワケダ」

 

カリオストロとプレラーティはキョロキョロと当たりを見渡す。

 

「……?」

「人の気配が、ないワケダ」

 

統括局は外見も大きいが、中はそれよりもさらに広くなっている。

結界の力で大きくしているのだ。

だが、それにつけても人の気配が全くしないのはおかしい。

 

「…………」

 

サンジェルマンも辺りを見渡す。

床には赤いカーペットが敷かれ、白い壁には花の模様。

サンジェルマンの記憶にある統括局だ。

だが、人の気配がない。

廃墟のようになっている訳ではないが、人が居ない。

 

「みんな、警戒して。なにかが異常よ」

 

と、サンジェルマン。

 

「どうするワケダ?」

「いっそ帰っちゃう?」

 

プレラーティとカリオストロはそう言う。

サンジェルマンは首を振った。

 

「いえ、一応統括局長の部屋に向かいましょう」

 

そんな訳で全員でアダムの部屋に向かうことになった。

廊下を進み、階段を登り館の最上階。

アダムの執務室。

その、執務室の前で、赤いスーツを着て赤いシルクハットを被る男装の麗人が立っていた。

彼女の名前はアグリッパ。

パヴァリア光明結社の幹部の一人である、優秀な錬金術師であり、サンジェルマンが居ない間アダムの書類仕事をこなしていた人物である。

 

「アグリッパ」

「久しいじゃないかサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ。一年ぶりかな」

 

アグリッパが3人に笑いかける。

 

「久しぶりね。仕事はどう?」

「なんとかこなしていたさ。統括局長はアレだし、こっちが頑張らないとね」

 

アダムは無能である。

規格外の魔力をぶん回して錬金術を無理やり行使しているぐらいである。

細かい仕事が出来ない男であった。

ゆえに、サンジェルマンがサポートに入っていたのであったが、そのサンジェルマンが日本に出張中にアダムのサポートをしていたのがアグリッパであった。

 

「それでアグリッパ、統括局に人の気配がしないのだけれど」

「ああ、それについては統括局長から説明があるよ」

 

アグリッパがそう言うと、扉の前から離れる。

サンジェルマンたちはアダムの執務室に入ろうとするが。

 

「あ、そこの3人には入らないでおくれよ」

 

アグリッパはヴァネッサたちノーブルレッドに向かってそう言ったのだった。

 

「この部屋に入れるのは幹部だけだから」

「ああ、そうだったわね」

 

サンジェルマンは思い出した、そう言えばそういう規則があったな、と。

サンジェルマンは腰に佩いていた剣をヴァネッサに渡す。

その剣は【フィエルボワの剣】、サンジェルマンの友ジャンヌ・ダルクが用いた哲学兵装だ。

今年手に入れた、彼女の親友の剣である。

 

「ヴァネッサ、その剣を持って私の執務室で待ってて」

「わかりました」

 

ヴァネッサはそう言うと、剣を受け取る。

そして、ミラアルクとエルザを連れて一つ下の階にあるサンジェルマンの執務室に向かった。

その姿をアグリッパはジッと見つめている。

 

「アグリッパ?」

 

サンジェルマンはその様子に疑問を抱いて問いかける。

 

「ああ、いや。あの剣は完全聖遺物かい?」

「ええ。日本で手に入れた哲学兵装よ。その説明も統括局長にするわ」

「そうかい」

 

今度こそ。

サンジェルマンたちはアダムの執務室に入る。

 

「やあサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ。久しぶりだね、こうして会うのは」

「お久しぶりです、統括局長」

 

サンジェルマンたちを歓迎したのは、アダムである。

汚れ一つない白いスーツに白い帽子を着た伊達男。

アグリッパと対になるな、とサンジェルマンは密かに思った。

そのアグリッパは最後に部屋に入ると、扉を閉める。

そして、扉の前で腕を組んで待機する。

サンジェルマンたちを笑みを浮かべて見る。

 

「統括局長、一つお聞きしたいことが」

「なんだいサンジェルマン? 聞いておくれよ、なんでもね」

「なぜ、この統括局に人の気配がしないのでしょうか。私たち以外の人が居ないような気がするのですが」

「流石だよサンジェルマン。その通りだよ。居ないのさ、()()()()()()()()()

 

アダムはそう言い放った。

 

「私たち以外に……?」

 

アダムの言い方に違和感を覚えるサンジェルマン。

アダムの言い方だと、アダムとアグリッパも人間ではないと言っているようだ。

 

「少し話をしようか」

 

そう言うと、アダムは立ち上がり窓辺に向かう。

 

「おおよそ2年前だよ始まりは。あるいはもっと昔かな。受け入れた時だよ、ヴリル協会の面々を」

 

ヴリル協会。

バルベルデに潜伏していた旧ドイツの秘密組織。

アメリカの聖遺物使用推進過激派と合流した後、風鳴訃堂に追われてパヴァリアに逃げてきたのだ。

 

「保菌していたのさ、その中の一人が。かつての神の残滓、神霊を」

「……!!」

 

神霊、その言葉を聞いてサンジェルマンは驚いた。

それは、昨年の10月、冬木市で聞いた言葉。

統一言語に潜むかつての神、カストディアン・アヌンナキの一柱の魂の欠片。

そして、サンジェルマンが統括局長に不信感を覚えるようになったきっかけ。

 

「持っていたのさ厄介な特性を、その神霊はね。増えるのさ、彼女は。人々の精神に寄生して、己を増やす。同じだよ、()()()

「酷い言い草だな、アダム」

 

クスクスとアグリッパはそう笑う。

一幹部に過ぎないアグリッパが、アダムを呼び捨てにする。

サンジェルマンは罠に嵌められたと気付いた。

 

「アグリッパ、貴女……!」

「手遅れだったよ、気付いたときには。探った時には遅かったのさ。感染爆発だよ、パヴァリアは。居なかったからね、君たちが。止められないよ、誰にもね」

「そして、パヴァリア光明結社に所属する錬金術師や研究者を全員私の支配下において、私はアダムと取引をした」

 

アグリッパが、アダムの言葉を引き継いだ。

 

「パヴァリアの全勢力をもってギリシャの十二神を討つ。君たちに残された道は2つ。私の支配下に入るか、ここで死ぬかだ」

 

アダムが口を開いた。

 

「錬金術師たちは全員ゾンビのようになった。もう君たちだけだよ、マトモな人間は」

「あなたは、統括局長? あなたはその神霊に支配されていないのでは……?」

 

サンジェルマンの言葉にアダムはクツクツと笑う。

 

「人間ではないよ、僕は。『ひとでなし』なのさ。神に作られた最初のヒト、それが僕さ」

「局長……?」

「言いたくないかな、それ以上は」

 

それきりアダムは口を噤んでしまう。

 

「さあどうする? 支配か死か。選びなよサンジェルマン」

 

アグリッパがそう言ってサンジェルマンたちに近付く。

 

「サンジェルマン」

「答えは、決まってるワケダ」

 

カリオストロとプレラーティがそう言うと、サンジェルマンは一つ頷いてアグリッパに向かってこう言った。

 

「アグリッパ、私の心は決まってるわ」

「ほう」

「私は支配に反逆する為にパヴァリアに入った。そして、まだ死ぬつもりはないわ」

 

そう、言った瞬間。

カリオストロとプレラーティが錬金術を使い、床を分子分解。

下の階に落ちる。

 

「ヴァネッサたちと合流して、脱出するわよ!!」

「はーい!」

「わかったワケダ!」

 

着地した後、扉に向かって走る3人。

そして、廊下に出た途端。

 

「ヴァアアア!!」

「アアアアア!!」

「キィエエエ!!」

 

奇声を上げて走る錬金術師たちが現れる。

彼らは全員両手を前に突き出して走る。

サンジェルマンたちに向かって。

 

「こいつらずっと隠れてたわね!!」

「蹴散らすワケダ!」

 

カリオストロとプレラーティが風の錬金術で錬金術師たちを吹き飛ばす。

しかし……。

 

「アッアッアッ……」

「キャハキャハ……」

「チュパチュパ……」

 

次から次へと錬金術師たちが現れる。

 

「キリがないわサンジェルマン!」

「早くヴァネッサたちと合流しましょう!」

「アイツらの手、なにか嫌な予感がするワケダ。触れられないように注意するワケダ」

 

三人はサンジェルマンの執務室に向かう。

 

そして、執務室にたどり着いたが。

 

「う、そ……」

 

中は錬金術師たちで犇めいていた。

ヴァネッサたちの姿は見えない。

 

「やられたわ……!」

「これじゃあ3人は……」

 

ノーブルレッドの3人は犠牲になった。

そうサンジェルマンたちは思った、のだが。

 

「まだ生きてるでアリマス!」

 

エルザの声だ!

執務室の奥から聞こえる。

 

「剣がバリアー張ってくれて無事なんだゼ!」

「でも動けないので、助けてくださーい!」 

 

ミラアルクとヴァネッサの声もする。

フィエルボワの剣がノーブルレッドの3人を守ったのであった。

 

「ジャネット、感謝するわ」

 

そう呟くサンジェルマン。

スキありと見たのか、錬金術師が手を伸ばし、サンジェルマンに触れようとする。

 

「甘いわ」

「ギャアアア!!」

 

サンジェルマンが錬金術で錬金術師を燃やす。暴れる錬金術師、他の錬金術師に炎が燃え広がる。

 

「こじ開けるワケダ!」

「こっちも!」

 

プレラーティとカリオストロが錬金術で人波を無理やり脇に寄せる。

押し潰される錬金術師たち!

 

「こっちよ!」

「助かりました!」

 

光の障壁の中に居たノーブルレッドたちが駆け寄る。

 

「この剣のおかげで助かりました」

 

ヴァネッサがサンジェルマンにフィエルボワの剣を返す。

 

「ありがとう、ジャネット」

 

サンジェルマンは剣にそう言うと、来たときと同じように腰に佩く。

 

「それで、状況はどうなってるんだゼ?」

「ゾンビパニックみたいになってるでアリマスが」

「似たような状況よ」

「パヴァリア光明結社は終わりなワケダ」

 

合流した6人はサンジェルマン先導のもと、統括局を走る。

並み居る錬金術師たちはサンジェルマンたちが錬金術で排除している。

 

「テレポートジェムはジャミングのせいで使用出来ない。正規の脱出ルートも統括局一帯も、いえ欧州全体も、おそらく多くの錬金術師で固めてるはず」

「なら、どうするワケダ」

 

走りながらそう話すサンジェルマンとプレラーティ。

サンジェルマンはこう答えた。

 

「正規じゃないルートを取るわ。つまり、このままギリシャに向かうわよ」

 

窓の外から月明かりが漏れる。

深夜を過ぎて、年が明けようとしていた……。

 

 

 





パヴァリアの本部を統括局と呼ぶとか、統括局がチェコにあるとかはオリジナル要素です。
そんな訳で次回はサンジェルマン大脱出回。

6人は無事にギリシャにたどり着けるでしょうか。

次回もお楽しみにね!
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