転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
「こちらキャロル。浅賀研究所上空に到着した」
『了解!敵は見えるかい?』
「いや……全員研究所の中か、伏兵がいるかだろうな」
藤尭とそんなやり取りをするキャロル。
彼女は現在ヘリコプターに乗りこんでいた。
襲撃者が現れたという、浅賀研究所救援のためだった。
(イヤな予感がするな……)
キャロルは■■市で研究所襲撃の報告を聞いてからそう思っていた。
■■市での大規模ノイズ発生、それと重なるように研究所が襲撃された。
まず間違いなく、何らかの組織が動いている。
それが、国家によるものか、秘密結社によるものか。それはわからないが、ろくでもない事になるだろう、というはわかる。
故にキャロルは浅賀研究所の救援に立候補したのだ。
敵の本命はまず間違いなく浅賀研究所であり、その為に敵は全力を尽くすだろうと考えての事だった。
あとは、弟子である一鳴が人の邪悪と相対するのはまだ早いと考えて、である。
「我ながら過保護だな……」
『え、何か言ったキャロルちゃん?』
「何でもない、突入するッ!」
『了解!ナビゲートは任せてよ!』
キャロルはヘリから飛び降りた。
無論、ダウルダヴラのファウストローブは装着したままである。
(空中に身を晒しても、攻撃はなし。……外に伏兵も置いていないのか?)
いぶかしんだまま、研究所前に着地。
攻撃は一切なかった。
「こちらキャロル。無事研究所の入り口前に着地した。敵影はなし」
『了解。なにかあるかい?』
「なにか?……血の跡と……銃だな。銃が落ちてる」
入り口前にはバケツをぶちまけたかのように血の跡が壁と地面にベッタリと付いており、その近くに銃が落ちていた。
ライフル、という奴だろうが、キャロルは銃の種類には疎かった。
『うん、此方でも確認した。それはこの研究所の警備員が使っていた物と同種だね』
「銃と、血だけが残されている。……妙だな」
『うん、ノイズの仕業だとしたら灰がないね』
「ああ。そしてノイズでないなら何故身体がない?」
アルカ・ノイズの仕業か、とも考える。
だが、万物を分解可能なアルカ・ノイズでも分解したあとは赤い塵が残る。
それも、見当たらない。
「考えても仕方ない。突入するぞ!」
『うん。気を付けて!』
「無論だッ!」
そう言って研究所に入るキャロル。
一歩踏み入れた、その途端。
上から攻撃を受けた。
アンブッシュ対処出来た?【1D6】
1 出来なかった……
2 出来た
3 出来た
4 出来なかった……
5 出来た
6 出来た
結果、【5】
「ふん!」
敵のアンブッシュをダウルダヴラの弦で弾くキャロル。
「気配が丸わかりだッ!」
そのまま敵を叩き落とす。
キャロルもまた風鳴訃堂、弦十郎に鍛えられていたので、アンブッシュしてきた敵の気配がわかったのであった。
そうして、捕らえた敵の姿を見るキャロル。
「これは……ノイズ、か?」
捕らえたのはノイズであった。
だが、通常のノイズとは違うノイズであった。
極彩色の体は純白で、背中から白鳥のような翼が生えていた。
「藤尭、このノイズは二課のデータベースに存在するか?」
『……いや。そんなノイズ、データベースに載ってないよ』
「……そうか。どうする?生け捕りにするか?」
キャロルの疑問に答えたのは訃堂である。
『否、今やるべきは研究員の救出。刻んだ後の欠片を持ち帰ってくれればいい』
「わかった」
言うが早いか純白のノイズは輪切りになり、体組織分散!
(思いの外、堅かったな)
通常のノイズに比べて身体が堅かった、そうキャロルは思った。まるでノイズを改良したかのような……。
キャロルは思考を切り替えて、灰のようなノイズの体組織を懐に入れる。
「藤尭、研究員の救出に向かうッ!」
『了解!研究所の内部構造は把握済み!研究員の緊急避難区画は三つだよ!まずはそのまま真っ直ぐ進んで!』
「了解だッ!」
◆
キャロルが辿り着いたのはメイン実験室であった。
道中、純白のノイズが数体襲ってきたものの、問題なく迎撃した。
「藤尭、入り口がロックされているぞ」
『ちょっと待って、ここから操作して…………開いた!』
藤尭の高速タイピングにより遠隔でメイン実験室の扉がロック解除される。
扉を開けるキャロル。
中には───
「遅かったかッ……!」
中には純白のノイズが一体だけ存在した。
「消えろッ!」
敵が行動に移す前に風の錬金術で切り刻む。
『生き残りは……』
「……居ないな」
メイン実験室の中を見渡すキャロル。
物の散乱した床。何か大きな物がぶつかったかのようにヒビの入り、へこんだ壁。ガラス管の中で静かに佇む聖遺物。
人の気配は何処にもなかった。
「藤尭。この部屋のロック履歴、辿れるか?」
『既に調べてるよ。襲撃を受けてから俺が開けるまで、この部屋のロックは開いていない』
「……そうか」
奇妙であった。
このメイン実験室、襲撃を受ける前までは確実に実験に使用していたように思われる。ガラス管の中にある聖遺物が証拠である。
ならば、実験していた者はどこに消えた?襲撃を受けてからキャロルが来るまでこのメイン実験室は密室だというのに。
純白のノイズが炭素変換した?否、この部屋にキャロルの倒したノイズ以外の灰はない。
「嫌な予感がするな……」
『……次の避難区画は二階、ナビゲートするね』
「わかった」
キャロルはメイン実験室を離れる。
振り向く事はなかった。
◆
二階の大会議室。
それが、藤尭の示した第二の緊急避難区画であった。
そしてこの大会議室も電子ロックが掛けられていた。
「藤尭」
『……、よし開いた』
「突入する」
キャロルは十分に警戒して大会議室に入る。
中には純白のノイズが四体。
「ここもかッ!」
言うが早いかキャロルによる風の錬金術。
カマイタチが純白のノイズを切り刻む。
純白ノイズ全滅、かに思われた。
「まさか仲間を盾にするとはな」
純白ノイズの内の一体が仲間の影に隠れて攻撃をやり過ごしたのだ。
そして、生き残ったノイズがキャロルに襲いかかる……!
VS 純白ノイズ【1D10】
1 キャロル大ピンチ
2 純白ノイズ優勢
3 純白ノイズ優勢
4 互角
5 互角
6 互角
7 キャロル勝利
8 キャロル勝利
9 キャロル勝利
10 キャロル「所詮はノイズッ!」
結果、【8】
(間違いないッ!このノイズ、強い!)
純白ノイズの攻撃をいなしながら、確信するキャロル。
この純白ノイズ、攻撃の力強さも速さも、通常のノイズとは格が違うのだ。
ノイズの上位互換、そう思わせる強さである。
(だが、あの黒いノイズ程ではないッ!)
そう、キャロルと一鳴は現時点でカルマノイズと遭遇、勝利していた。
その経験は、確かにキャロルの力となっていた。
ダウルダヴラの弦で右手による攻撃を弾く。即座に対応し、弾かれた勢いで身体を回転させて更なる攻撃に繋げようとする純白ノイズ。
だが。
「甘いッ!」
純白ノイズの身体が固定される。
三方向から弦が伸びていた。一つはキャロルの両手。
残る二つは、密かに配置されたダウルダヴラの弦の集まった糸玉!
「千切れろッ!」
そう言ってキャロルは手を引き、糸玉は弦を巻き上げる。
純白ノイズの身体が四散!
戦いはキャロルの勝利であった。
キャロルは息を整える。
「藤尭」
『ロック履歴はさっきと同じ。俺が開けるまでここは開いていない』
「そうか」
先程のメイン実験室と同じ状況であった。
争った跡はあったが、人も死体も残っていない。
「……次だ」
『最後は三階、浅賀所長の書斎だよ』
◆
浅賀所長の書斎への通路には純白ノイズが一体も居なかった。
スムーズに書斎へ辿り着いた。
「ロックは……されているだろうな」
『うん解除……え、そこはロックされていない!?』
「ええ、開いているわよ」
中から声が聞こえる。
「二課からの救助ね。私はアッシュ・哀原、ここの所長直属の研究員。話があるの。さぁ、中に入って」
『アッシュ・哀原……確かに研究員として登録されてる。罠ではなさそうだ』
「ならば話を聞かせてもらうか」
キャロルは書斎に入った。
中には太った丸メガネの壮年男性、所長である浅賀と子どもが二人。
「子ども、だと!?」
「あら、貴女も子どもでしょう?」
そう言うのはウェーブのかかった茶髪の少女。その声はアッシュ・哀原のものであった。
「俺は錬金術で年齢を止めてるだけだッ!」
「俺たちも聖遺物の出来損ないで若返っただけだよキャロル・マールス・ディーンハイムさん」
そう言ったのは大きなメガネをかけた男の子。
「貴様は?」
「五藤 新吉。哀原と同じ、博士の助手だよ」
「そしてワシが浅賀 博史じゃ。噂は聞いとるよキャロルくん」
自己紹介する浅賀。
「……キャロル・マールス・ディーンハイム。お前たちの救助に来た。色々聞きたいが、そちらの話が先だ」
「うむ、すまんの」
朗らかに言う浅賀。
だが、次の瞬間には真剣な顔つきになる。
「襲撃者の正体と目的がわかった」
「なんだと?」
浅賀は襲撃者、あの純白のノイズの正体と目的がわかったと言う。
「ここにはいざという時、研究所中の監視カメラの映像を閲覧、録画出来る設備があるのじゃ」
そう言って、パソコンを見せる浅賀。
哀原と五藤もパソコンを見せる。
そこには研究所中の研究室、会議室、警備員詰所等々の映像が映っていた。
「研究所が襲撃され、新吉とアッシュくんが避難してきてから研究所内の映像を見続けた。その結果、恐ろしい物を見たのじゃ」
ブルブルと震える浅賀。その背をさする哀原。
「恐ろしい、物……」
「こいつを見れば一発でわかるが。キャロルさん、これは本当に恐ろしい映像なんだ。見たくないなら……」
「いや、見る」
見たくないなら、と言う五藤。
キャロルは即答した。
かつては父の命題を解き明かす為、世界の分解という計画を立てて、数百年生きたキャロルである。
並大抵の物では怯まない覚悟があった。
「わかった。いくぜ……」
「藤尭、映像見えてるか?」
『うん、見えてる。訃堂司令と弦十郎さんも見てるよ』
「了解した」
キャロルのファウストローブや一鳴のシンフォギアには発令室に映像を送るための小型カメラが備え付けられている。
パソコンの動画が再生される。
現場は一階のメイン実験室のようだ。
一人の女性が奥の方で三角座りをしている。恐怖で震えているようだ。
だが、入り口からあの純白のノイズが現れる。
位相差障壁で壁を通り抜けたのだろう。
驚愕の顔を浮かべる女性。近くにある物を純白ノイズに投げ付ける。
物が純白ノイズに当たるが、純白ノイズは怯まず進む。位相差障壁ですり抜けていない。アルカ・ノイズのように位相差障壁が弱いのかもしれない。
女性に近付いた純白ノイズが女性を投げる。
壁に当たる女性。壁にはヒビ。女性はぐったりと倒れて動かない。
また女性に近付く純白ノイズ。
そして、恐ろしい事が起こった。
おもむろに自身の翼から羽を一つむしり取る純白ノイズ。
そのまま女性に手を伸ばし、その手が女性にめり込んだ。
暴れる女性。異常に気付いたようだ。
手を引き抜いた純白ノイズ。その手には羽はなかった。
ボコボコと膨れ上がる女性。ジタバタと手足を動かす。だが、変化は止まらず。
『……なんだよ、これ』
藤尭が震えた声を上げる。
キャロルは声を上げなかった。
映像は続く。
女性の服は肉体に飲まれ、膨れ上がる肉体は白く変色していく。背中の肉は盛り上がり細かな部位が無数に生成されていく。それはまるで羽のようだ。
いつの間にか、女性は暴れていない。変化を静かに受け入れている。
───そして。
『こんなこと……あっちゃダメだ……!』
藤尭の歯が鳴る。
キャロルは静かに映像を見ていた。
映像には純白ノイズが二体。
一体はメイン実験室に侵入したもの。
もう一体は、女性だったものだ。
人が、ノイズになったのだ。
ノイズが一体、扉をすり抜けて出ていく。
もう一体は静かに佇んでいる。
そこで映像は終わった。
「あのノイズは、人だった、という事か……」
「ああ、そうだ。あのエンジェノイズ……俺たちがそう名付けたあの白いノイズはこうやって仲間を増やしたんだ」
衝撃的な映像であった。
人が、ノイズに変わる。
そして変化したノイズを殺したのは───
『キャロルくん、聞こえるか?』
聞こえてきたのは弦十郎の声。
「……ああ。藤尭は?」
『藤尭は眠らせた。精神の限界が来ていたからな。ここからは俺がオペレーターをやる』
「そうか」
『キャロルくんは大丈夫か?』
「ああ、問題ない」
キャロルは頬を叩く。
世界の分解という命題の下、オートスコアラーの動力たる思い出を集める為に、あるいは必要な聖遺物を持っているという理由でキャロルは既に人を殺している。
だから問題ない。キャロルはそう考える。
心のうずきを押し殺して。
「それで浅賀博士、奴らの目的は?仲間を増やしてまで、何を望む……!?」
「うむ……!奴ら、地下の聖遺物保管庫が目的じゃ!」
「聖遺物保管庫?」
「そうじゃ。厚さ二メートルの鋼鉄に阻まれた巨大な金庫。それが聖遺物保管庫。奴ら、そこに集まって保管庫の入り口を削っておる」
そう言って映像を見せる浅賀。
映像には純白の───エンジェノイズが蠢き保管庫入り口に取り付く光景が映っていた。
「エンジェノイズの位相差障壁は弱い!厚さ二メートルの壁は通り抜けられんようじゃ」
「保管庫には今何が入っている?」
「うむ、去年発掘された聖遺物、神獣鏡が入っておる!」
『神獣鏡、だとぉ!?』
弦十郎が叫ぶ。
『神獣鏡は二課、ひいては日本の最重要機密、それを知り得る者がいたということか……!』
訃堂が唸る。
「キャロルくん!地下の聖遺物保管庫へ行き神獣鏡を守ってくれ!あれは誰にも渡してはいけないんじゃ!」
◆
19時。
■■市、A地区。
平時ならば繁華街として、老若男女問わずに賑わう地区である。
だが、現在はビルは焦げて百貨店は崩れて、地面に灰が積もっている。
そんなかつての繁華街に炎の轍を引き連れて、
「友里さん、A地区に到着しました!ノイズはどこに!」
『ノイズ反応、そこから真っ直ぐ50メートル先よ!エネルギー反応更に増大!何か見える!?』
そう言われて辺りを見渡す。
空に、なにかが居た。
それは白かった。
それには翼が生えていた。
それは均整の取れた筋骨隆々の肉体であった。
顔にあるべき目、耳、鼻はなく、代わりにノイズのような液晶めいた結晶が付いていた。
「友里さん、あれ、なんでしょう?」
『……高エネルギー反応はアレからよ』
そう話す友里さんはどこか放心しているようだった。
俺も放心していた。
アレは美しかった。
一瞬、心を失うぐらいに美しかった。
純白の肉体も。
羽ばたく翼も。
伸びる手足も、全て。
美しかった。
「遅カッタナ、シンフォギア」
初めは気付かなかった。
その、雑音混じりの声が、誰から発されたものなのかが。
一瞬後、気付く。
あの白く、美しい何かが話したのだ。
「お前、何だ?」
出た言葉がそれであった。
その言葉に白い何かが答えた。
「我ハ神霊ツァバト、貴様ラ【ルル・アメル】ノ造物主」