転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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ゴールデンウィークなので初投稿です(ざっくり)


第十八話 地獄の天使④

神霊ツァバト、そう名乗った白い何か。

俺たちルル・アメルの造物主、確かにそう言った。

このシンフォギア世界において、人を、生物を創ったのはカストディアン・アヌンナキであり、改造執刀医シェム・ハである。……筈だ。

 

ならばあのツァバトはカストディアン・アヌンナキの一人なのだろうか。

いや、ツァバト。その名は聞いた事がある。確か前世のゲームに出てきた覚えがある。

天使と悪魔の出てくるゲームで、ツァバトはラスボスの───

 

「ドウシタ、イキナリ黙ッテ」

 

と、ツァバトが聞く。

小首なぞ傾げている。

 

「いや、ルル・アメルとか造物主とか出てきたからな。ちょっと理解が及ばなかった」

「ダロウナ。矮小ナ人ノ子ヨ」

「矮小とは言ってくれる」

「事実ダロウ?」

 

クックッ、と嘲笑うツァバト。

その様は傲慢で、酷薄で、美しかった。

 

「ならば偉大なるツァバト様は矮小な人間の為に言葉の意味を教えて下さるのでしょうか?」

 

うやうやしく俺は聞いた。

目の前のツァバトが本当に造物主なのか、それとも嘘をついているのか。本当のところがわからない以上、こうやって情報を引きずり出すのが最善であろう、と考えたのだ。

 

「教エテモ無駄ナノダ。我ラト貴様ラ、忌々シキ月ノ光デ真ナル意思ノ疎通ハ不可能。我ガ言葉ニ雑音ガ混ジルヨウニ」

「月の光……?」

 

とりあえず目の前のツァバトは【バラルの呪詛】について知っているようだ。

バラルの呪詛。前世のうろ覚えの記憶では月の遺跡から発せられるネットワークジャマーで、これのせいで人々は統一言語を失い、人と神は相互理解出来なくなった。

起動させたのはエンキ、というカストディアン。フィーネの恋人でもあった人物。

 

うろ覚えだが、シェム・ハが統一言語を使って人の身体を乗っ取って復活するから、彼は人々を守る為にバラルの呪詛を起動させた。

そして統一言語の中に潜むシェム・ハは封印されて甦れなくなった。

確か、それで合っている筈だ。もう十年以上も昔の話だし、間違ってるかもだけど。

 

『ねぇ一鳴くん、聞こえるかしら?』

「了子さん……?」

 

了子さんからの通信。

 

『ツァバトにね、【バラルの呪詛】について聞いてみてくれないかしら?』

「わかりました」

 

恐らくは、フィーネとしての意識が出てきているのだろう。

俺にバラルの呪詛について聞くよう指示してきた。

そうだ、フィーネはエンキが人々を守る為にバラルの呪詛を起動させた事を知らないのだ。

 

「偉大なるツァバト様は【バラルの呪詛】、という言葉をご存知でしょうか?」

「……フィーネノ入レ知恵カ?」

 

速攻で見抜かれた。

でも俺は了子さんがフィーネという事を知らない筈な訳で。

 

「フィーネ?」

 

と聞くしかなかった。

 

「コレ以上ノ問答ハ無意味ダ」

「フィーネが怖いのか?」

 

俺はあえて挑発する。

挑発して怒らせるのもこういう時のテクニックだって、昔に読んだ小説に書いてあったからね。

 

「クク、アカラサマナ挑発ダ。怖クハナイガ、面倒ナノデナ」

 

そう言って右手の手のひらをこちらに向けるツァバト。

人と同じように指が五本。

その手のひらが光る。

嫌な予感がした俺は地面を蹴って後退。

その一瞬後。

俺が立っていた場所の地面が抉れていた。

 

「レーザーか……?」

「神ノ威光ダ、シンフォギア。甘ンジテ受ケヨ!」

 

そんな訳で戦闘開始である。

……俺、満身創痍なんだけどネ!

 

 

 

対ツァバト戦【1D10】

 

1 万軍の主の本領発揮

2 ツァバト優勢

3 ツァバト優勢

4 ツァバト優勢

5 ツァバト優勢

6 互角

7 互角

8 互角

9 互角

10 一鳴優勢

 

結果、【4】

 

 

 

ツァバトの閃光が幾条も走る。

俺も当たるまいと、走り、跳び、アームドギアで防ぐ。

だが、それでも。

左肩に閃光を受けてしまう。

 

「うわぁだっ!!」

『一鳴くんっ!?』

 

友里さんが呼び掛ける。

左肩の攻撃、貫通はしていないがダメージは甚大らしく、左腕に力が入らない。動きはするものの、物を持つことは出来ないだろう。

 

「大シタコトハナイナ、シンフォギア」

 

と、ツァバト。

 

「こちとら連戦の上に満身創痍なんでね。手加減してくれると嬉しいんだけど?」

「口ノ減ラナイ奴ダ」

 

閃光発射!

アームドギアで防ぐ。

右腕しか支えられないから、衝撃が重い。

 

「我ガ契約者ガ貴様ラノ強サヲ懸念シテイタガ、所詮ハ【ルル・アメル】!我ニ勝テル道理無シッ!」

 

攻撃を受けながら俺は考える。

今、こいつは【契約者】と言った。

この神霊には契約者……つまり協力者がいるということか……?

そしてその契約者は此方を知っている……。

更なる情報を引き出そうと思うも、攻撃が激しく、口を開くことも出来ない……!

 

 

 

対ツァバト戦その2【1D10】

 

1 万軍の主の本領発揮

2 ツァバト優勢

3 ツァバト優勢

4 ツァバト優勢

5 ツァバト優勢

6 ツァバト優勢

7 互角

8 互角

9 互角

10 一鳴優勢

 

結果、【7】

 

 

 

「ドウシタドウシタ、シンフォギア!」

 

そう言いながら閃光を連射するツァバト。

閃光は俺やアームドギアだけでなく周りの地面にも当たり、土煙を起こす。

……チャンスか?

 

俺は密かにスカートアーマーを開閉させ、中の小型アームドギアを射出。

直ぐにはツァバトへ向かわせず、炎を溜めさせる。

その瞬間は直ぐに来た。ツァバトの攻撃が一瞬途切れたのだ。

 

「行けッ!」

 

小型アームドギア、高速で直進!

溜めた炎が推進力を爆発させて速度倍化!

小型アームドギアはツァバトの右手を切り落とす。

 

「ナッ!?」

「もう一発だッ!!」

 

俺は右腕だけでアームドギア投擲!

アームドギアはツァバト目掛けて飛んでいく。

しかしツァバトは左手でアームドギアを弾く。

 

「マダソンナ(ちから)ガアッタトハナ、シンフォギア!」

「お褒めに預り光栄だよ!」

 

さて。

必死こいてツァバトの右手を切り落としたものの、相手はまるで気にしていない。

……痛覚とかないのかしら?

 

 

 

対ツァバト戦その3【1D10】

 

1 万軍の主の本領発揮

2 ツァバト優勢

3 ツァバト優勢

4 ツァバト優勢

5 ツァバト優勢

6 互角

7 互角

8 互角

9 互角

10 一鳴優勢

 

結果、【5】

 

 

 

ツァバトは左手を向ける。

左手が光り、閃光発射!

転がって避ける。

 

そりゃそうだよなぁ。

右手で出来ることは左手でも出来るよなぁ!

 

「無様ダナ、シンフォギア」

 

転がって避ける俺を見て言うツァバト。

 

「見テイテ哀レダ。一撃デ終ワラセテヤル!」

 

ツァバトの左手に集まる光が大きくなる。

そして、光は伸びて剣めいた形状に変化!

その場で左手を振るうツァバト。

 

「コンナモノカ」

 

遠目でもわかる。

アレは確実に此方を殺せる剣だ……!

 

「サラバダ」

 

ツァバトが背中の翼を羽ばたかせる。

大きく、大きく羽ばたかせ、そして。

此方に直進!直接切り殺すつもりだ!

小型アームドギアで迎撃?間に合わない!

アームドギアを生成し防御?間に合わない!

動かない左腕を囮に逃げる?…………これしかない。

 

俺は覚悟を決めた。

ツァバトの方へ一歩踏み込む。

ツァバトが俺を斬る瞬間に、右前方に向かって回避。左腕を囮に逃げる。

左腕は斬り落とされるだろうが、命は助かる。

幸運なら、切り口が綺麗で後からくっ付けられるかもしれない。

 

こんな時に前世の記憶を思い出した。

シンフォギアXVでのエンキとシェム・ハの戦闘。

腕を白銀に変えられたエンキは全身が白銀となる前に自らの腕を斬り落としてシェム・ハを殺すのだ。

今と同じ状況じゃないか。

そして。

ツァバトもシェム・ハ、シェム・ハ・メフォラシュも。

ヘブライの神の別名を表す……!

 

死を前にして時間がゆっくりと流れる。

ツァバトが目前まで迫る。

左手を振りかざす。

俺は一歩踏み込んで回避準備。

だが。

ツァバトは俺を見る。見続ける。

……あぁ、見抜かれた。

 

回避運動する俺に向けて光の剣が振り降ろされる。

俺は死ぬだろう。

だから、せめて。

目は瞑るまい。

そう思ってツァバトを見続ける。

そして気付いた。

 

ツァバトの全身にヒビが入っていることを。

ツァバトの翼が既に崩れていることを。

もしかしたら、そう思った。

右腕で思いっきりツァバトを押す。

ツァバトの身体はバランスを保てず体勢が崩れる。そして俺も押した反動で後退。

 

転げ回る俺。

そしてツァバトも地面に激突。

 

「ぐぅぅぅっ……!」

「ガァァァッ……!」

 

両者共に呻き声を上げる。

俺はもう全身が悲鳴をあげている。

だが、ツァバトのダメージはそれ以上だった。

手足は崩れて原型は無く、翼は折れてもがれていた。

 

「ヤ■リ……【主天使】■駆体デハ我■(ちから)■耐エ■■ヌ■……!最低■モ【座天使】デ■■レバ」

 

その言葉はもはや聞き取る事叶わず。

辛うじてわかる【主天使】の駆体、【座天使】という言葉からツァバトが本来の身体でない事がわかった。

 

「ぐぅ……お前、全力じゃなかったのか?」

全力(ぜんりょく)■■タ……!ダガ、■ノ駆体デハ我ガ■引キ出■ヌ!」

 

そう言う間にもボロボロと崩れていくツァバト。

 

「■■デ終ワリ■。……マタ会■■シン■■ギア……」

 

そう言い残して灰に変わるツァバト。

雑音混じりだったけど、「また会おうシンフォギア」って言ったよなぁアイツ。

会いたくねぇなぁ!

 

『一鳴くん!応答して一鳴くん!』

「あだだ……聞こえてますよ友里さん」

『直ぐに医療チームを派遣させるわ!』

「おねがい、します……」

 

意識がもうヤバい。

ヤバいけど。とにかく。

ツァバトを撃退出来たようだった。

 

 

 

 

同時刻。

浅賀研究所。

聖遺物保管庫前、地下通路。

 

キャロルはそこに居た。

聖遺物保管庫を、保管庫の中の神獣鏡を守る為に。

浅賀、新吉、哀原は今も三階の書斎に隠れている。どうやらエンジェノイズは三階までは上がってこないらしい。

人を殺すより、神獣鏡の方が優先らしかった。

 

地下通路にはエンジェノイズが陣取り、保管庫の扉を削り続ける。

その数おおよそ、10体。

 

「減っているな……」

『ああ……』

 

エンジェノイズの数が減っていた。

三階のパソコンで見たときにはもっと数が居たように思えたのだが……。

 

『キャロルさん、聞こえる!?』

 

と、哀原からの通信。

 

「どうした?」

『奴ら、貴女が出ていってしばらくしてから合体しだしたのよ!』

「は、合体?」

 

信じられぬ言葉に耳を疑うキャロル。

しかし、よくよくエンジェノイズを見てみればキャロルが見てきたエンジェノイズよりも大きく、そして逞しくなっている気がした。

 

「確かに姿が変わっているな……」

『気を付けて!奴ら、十体で一体になったのよ!』

「つまり、強さも十倍と言うことか……!」

 

その言葉に反応するかのように、エンジェノイズたちがキャロルたちの方へ振り向く。

そしてキャロルに飛びかかる……!

 

 

 

対エンジェノイズ(強)軍団!【1D10】

(残り10体)

 

1 キャロルにダメージ!

2 キャロルにダメージ!

3 拮抗

4 拮抗

5 エンジェノイズ1体撃破

6 エンジェノイズ1体撃破

7 エンジェノイズ2体撃破

8 エンジェノイズ3体撃破

9 エンジェノイズ4体撃破

10 エンジェノイズ半数撃破!

 

結果、【1】

 

 

 

キャロルは迎撃しようとした。

だが、遅かった。

 

「ぐぅっ!」

 

エンジェノイズに殴られたのだ!

 

(速いッ!)

 

ゴロゴロと転がりながら体勢を整える。

そんなキャロルを狙い飛びかかるエンジェノイズたち。

キャロルはダウルダヴラの弦を巧みに操り攻撃を弾く。

 

(重いッ!)

 

だが、エンジェノイズの攻撃が重く弾ききれない!

 

『キャロルくんっ!』

「問題ないッ!」

 

弦十郎の言葉に荒く返すキャロル。

実際、返す余裕など無かった。

それを見たエンジェノイズたち、5体が保管庫の扉に戻る。

 

「舐めてくれるッ!」

 

エンジェノイズたちはキャロルの相手は5体で十分と判断したのだ。

 

 

 

対エンジェノイズ(強)軍団!【1D10】

(残り10体)

 

1 キャロルにダメージ!

2 キャロルにダメージ!

3 拮抗

4 拮抗

5 エンジェノイズ1体撃破

6 エンジェノイズ1体撃破

7 エンジェノイズ2体撃破

8 エンジェノイズ3体撃破

9 エンジェノイズ4体撃破

10 エンジェノイズ半数撃破!

 

結果、【9】

 

 

 

キャロルは本気を出すことにした。

背中のパーツ展開、中には弦!

弦が揺れる、響く!

弦はキャロルのフォニックゲインと魔力を増幅、そして水、火、風、土の属性による同時錬金術攻撃!

辺りの壁や床を抉りながらエンジェノイズ4体撃破!

 

「ハァハァ、どうだ!」

 

その言葉に答えるように保管庫の扉を壊していたエンジェノイズが戦闘に戻る。

 

 

 

対エンジェノイズ(強)軍団!【1D10】

(残り6体)

 

1 キャロルにダメージ!

2 キャロルにダメージ!

3 拮抗

4 拮抗

5 エンジェノイズ1体撃破

6 エンジェノイズ1体撃破

7 エンジェノイズ2体撃破

8 エンジェノイズ3体撃破

9 エンジェノイズ4体撃破

10 エンジェノイズ5体撃破

 

結果、【7】

 

 

 

「ふんッ!」

 

 

高重力エネルギー球を発射するキャロル。土属性の応用錬金術!

高重力エネルギー球はエンジェノイズ2体を飲み込み、潰す!

 

「残り4体!」

 

残ったエンジェノイズたちの攻撃を避けながら言い放つキャロル。

 

 

 

対エンジェノイズ(強)軍団!【1D10】

(残り4体)

 

1 キャロルにダメージ!

2 キャロルにダメージ!

3 拮抗

4 拮抗

5 エンジェノイズ1体撃破

6 エンジェノイズ1体撃破

7 エンジェノイズ2体撃破

8 エンジェノイズ3体撃破

9 エンジェノイズ4体撃破

10 エンジェノイズ4体撃破

 

結果、【8】

 

 

 

「お前たちは強い、だが近寄らなければ!」

 

合体したエンジェノイズたちはパワー、スピード共に強くなっている。

しかし、遠距離での攻撃が無く、故にこそキャロルは遠距離での攻撃を徹底した。

故にこその2度目の四属性同時攻撃!

3体のエンジェノイズが破壊された。

 

「残ったのは1体か」

 

その残った1体は静かに佇んでいた。

 

「なんだ……?」

 

突如動かなくなったエンジェノイズを警戒するキャロル。

しばらくすると、エンジェノイズの液晶部分が点滅し始める。

……なにかを受信しているようだった。

 

「何をする気だッ!」

 

そう言いながら錬金術の風属性真空刃で攻撃するキャロル。

真空刃がエンジェノイズに当たる……直前。

光の壁に真空刃が阻まれる。

 

「なんだ……?」

「■■■……」

 

エンジェノイズが突如発音!

しかし、雑音にまみれて意味がわからない。

そのエンジェノイズは突如として振り向くと、保管庫へ向けて走る。

 

「な……ッ!待て!」

『待つんだキャロルくん!』

■■コ■■■動(自爆コード起動)

 

エンジェノイズを止めようとするキャロルを制止させる弦十郎。

その判断は正しかった。

エンジェノイズは突如として爆発!

自爆したのだ!

キャロルは即座にダウルダヴラの弦で自身を囲い、繭めいてガード。

爆発の衝撃は繭を揺らし粉砕していく……。

 

「ぐぅぅぅっ……」

『キ■ロル■ん!』

 

二課との通信が不安定になる程の爆発!

キャロルはなんとか繭を維持して身を守る。

そして……。

 

「まさか、これ程とはな……」

 

衝撃波が収まり繭を解除するキャロル。

地下通路はズタズタになり、保管庫の扉は破壊され、小さく隙間が空いている。

 

「最後の一撃、といったところか」

『だが神獣鏡は守り抜いた。よくやったキャロルくん』

 

そう弦十郎は労う。

たしかに神獣鏡は守り抜いた。

だが、エンジェノイズに変えられた人々は救えただろうか?そのエンジェノイズを倒した己は……。

 

『キャロルくん、今は三階の三人を連れて脱出を』

「わかった」

 

キャロルは思考を切り替える。

地上階へ向かって歩きだした。

その時。

 

「あらあら、タイミングが悪かったかしら」

 

女の声がした。

哀原の声ではない、聞いたことのない女の声。しかし姿が見えない。

キャロルは即座に戦闘体制を取る。

 

「何者だッ!」

「名乗る程の者ではございませんわ」

 

そして。

キャロルの腹に衝撃!

殴られたのだ。

キャロルは壁に叩きつけられる。

 

「少し、気絶していただきますね?」

「……ッ!」

『キャロルくん!しっかりしろキャロルくん!』

 

弦十郎の声が薄れゆく意識に響く。

そして。

 

「ごめんなさい」

 

という言葉を最後に意識を失った。

 

 

 

 

「しっかりして!キャロルさん!」

 

頬を叩かれる。

意識がゆっくりと覚醒する。

 

「……あ、哀原?」

「大丈夫!?指何本に見える!?」

「三本、だ。うぅ、一体なにが……」

 

頭を押さえるキャロル。

そして記憶を思い出していく。

自爆したエンジェノイズ。突如として現れた見えない女。神獣鏡。

 

「そうだ、神獣鏡!」

 

叫ぶキャロル。

だが、哀原の顔は暗い。

 

「キャロルさん、神獣鏡なんだけれど……」

「盗まれたよ」

 

保管庫から歩いてくる新吉。

 

「なん、だと……?」

「盗まれたんだ、キャロルさん」

「は?」

 

新吉の方を見るキャロル。

その後ろには保管庫の扉。

扉は今や大きな隙間が空いていた。

自爆で空いた隙間とは比べ物にならないくらいに。

 

「キャロルさん、一体なにがあったの?監視カメラで見ていたら、エンジェノイズが突然爆発してカメラが壊れるし」

「嫌な予感がしてみれば、キャロルさんは気絶してて神獣鏡は盗まれていた」

「女だ」

 

キャロルは一部始終を説明した。

エンジェノイズ自爆の後、目に見えない女に気絶させられた事を。恐らくはその女が神獣鏡を盗んだのだろうと。

 

「そうだったの……」

「その女がエンジェノイズを……!」

 

怒りに燃える新吉。

 

『キャロルくん!無事だったんだな……』

 

弦十郎からの通信!

 

「風鳴弦十郎、すまない。神獣鏡を盗まれた……」

『そうだったか……。キャロルくんは大事ないか?』

「ああ、なんとかな」

 

立ち上がるキャロル。

 

「おーい新吉!アッシュくん!あった!あったぞ!」

 

と、保管庫から浅賀が駆けてくる。

 

「キャロルくん!起きたんじゃな!」

「どうしたんだよ博士?」

「うむ、神獣鏡があった!」

「は?」

「盗まれたんじゃないのか?」

「盗まれたのは研究用にわかりやすい場所に置いておいた欠片!奥の方に保管していた予備には手を付けておらんかった!」

 

どうやら、女は神獣鏡を全て盗んだ訳ではないらしかった。

 

「じゃが、研究用の神獣鏡でも危険なものじゃ……。二課にも報告はあげておくがの……」

 

キャロルは奥歯を噛み締める。

神獣鏡を守れなかった。

悔しかった。

 

『キャロルくん、とにかく二課に帰還してくれ。■■市のノイズ召喚も収まったからな』

「……わかった。一鳴は?」

『満身創痍だが、命に別状はない。安心してくれ』

「そうか……」

 

一鳴が生きていた。

その言葉でほんの少し。

心が暖かくなった。

 

 




ツァバトくん、台詞をカタカナに変換するのが面倒なのでしばらくは出さねぇ(鋼鉄の意思)

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