転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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(前回までのあらすじ)
F.I.S.の研究主任であるジュリアン・シーザーは、■■市を襲撃し浅賀研究所から神獣鏡を強奪したツァバトの契約者であった。
そのツァバトから茶会に誘われたシーザーは準備を整えてスマホで電話に出る。その瞬間、シーザーは白い部屋に連れ込まれたのであった。



第二十話 神霊たちの茶会

 

ここは人類の脳波を伝うネットワークに存在する隠し部屋だ。

 

壁も床も天井も白くて広い部屋。

壁に飾られた名画。

その中央には黒いソファとガラステーブル。

テーブルに乗ったケーキスタンドに用意されたケーキやサンドイッチ。

それら全てが脳の裡に在るイメージであり、ツァバトを始めとした神霊たちが構築したものであった。

バラルの呪詛から逃れ、自らの契約者たちと密会する為に。

 

そしてソファに座る二人の女性。

 

「あら、シーザー様。お先に頂いておりますわ」

 

黒絹のような長髪に修道女のような服装の女性がそう言って右手に持った紅茶のカップを軽く上げる。

そのバストは豊満であった。

 

彼女の名は【至天院 銘歌】。

日本にて【天神合一会】という宗教団体を運営する教祖であり、浅賀研究所にてキャロル・マールス・ディーンハイムを倒して神獣鏡を強奪した張本人である……!

 

「至天院、貴様!神獣鏡を郵便で送るなど何を考えている!日本政府にバレたらどう責任を取るつもりだったんだ!?」

「まぁ、そんなに怒らないでくださいましシーザー様。一刻も早く神獣鏡を届けようと思いまして、シャダイ様にお願いして貴方様以外の人間には開封出来ぬよう加護を掛けていただきましたから」

「そう言う問題ではなく、危機管理がないのが問題なのだ!住所からお前と僕の繋がりがバレたらどうする!?」

 

怒るシーザー。

銘歌は奥ゆかしく謝る。

その銘歌の後ろに人影が現れた。

銀色の髪に、ピンクとホワイトの肌。ツァバトと酷似した外観の女性。

だが、二つ在るはずの目は、 眉間に一つしかなかった。

彼女の名はシャダイ。ツァバトと同様に銘歌と契約している神霊であった。

その名は『山』『乳房』『野原』を意味する、生物強化に特化した神霊だ。

 

「銘歌を許してほしいシーザー。我らは山奥で暮らしているから、世間ずれしているのだ」

「シャダイ!お前は銘歌を甘やかしすぎだ!」

「仕方がないのだ。我にとってルル・アメルとは愛おしい存在故な」

 

そう言うシャダイ。

その様をクツクツと笑いながら見ていたもう一人の女性が宥めに入る。

 

「まぁまぁ。彼女たちも悪気があった訳じゃないんだから許してあげなよ。次から気を付ければ良いんだしね」

 

金糸のような髪の女が言う。

彼女は赤いスーツを着ていた。

赤いジャケット、パンツ。

内側には黒いシャツ。

そして赤いシルクハット。

そのバストは平坦であった。

 

「エロヒム、お前また身体を変えたのか?」

「ああ、この身体はなかなか便利でね。パヴァリア光明結社の幹部の……確かアグリッパ、だったかな」

 

そう言って紅茶を飲むエロヒム。

エロヒムもまたツァバトやシャダイといった神霊の内の一体である。

神を意味するヘブライ語『エロ』『エローアハ』の複数形。それがエロヒムの語源だ。

エロヒムはその権能故に契約者を持たない。

エロヒムは人の精神を侵し、蝕み、乗っ取るのだ。

無限に増え続ける精神寄生神霊、それがエロヒムであった。

 

「シーザー、君の協力で強硬派の一人を侵食してバルベルデのヴリル協会に亡命し、パヴァリアに潜り込んでここまできたんだ」

 

ギリシャとの戦争で聖遺物の扱いについて慎重に使うべきという慎重派ともっと聖遺物を研究するべきという強硬派で争いになった時、これ幸いと研究員の一人を侵食。そのままバルベルデに亡命したのだった。

全てはパヴァリア光明結社とオリュンポス十二神をぶつける為である。

 

ツァバトやシャダイ、エロヒムにとってオリュンポス十二神はおぞましく、また憎い存在であるようだった。

曰く、『この世でもっとも罪深き一族』。

 

三人とも多くは語ろうとしなかったが、ツァバトが絞り出すように言った言葉によれば、『真なる神の聖骸に許されぬ事をしたのだ、シーザー。我はあのような事を語りたくない。許してくれ……』とのこと。

 

閑話休題。

エロヒムはパヴァリア光明結社の構成員を侵食していき、最終的にオリュンポス十二神にぶつけるつもりなのだ。

そしてシーザーはその手助けをしている。

F.I.S.の研究主任という肩書きを利用して。

 

「苦節二年、君のお陰でここまで来たよ」

「礼はいい。僕は頼まれた事をしただけだ」

「謙虚だな。それを完璧にこなせたのだから、もっと偉ぶればいいのに」

 

シーザーはそれを無視してソファに座る。

そしてツァバトが淹れた紅茶を飲む。

とても美味しい紅茶であった。

 

「パヴァリアの人間はどれだけ侵食出来たんだ?」

 

 

 

エロヒムのパヴァリア侵食度【1D6】

 

2 +【3】割

合計、5割

 

 

 

「ああ、おおよそ半分ほどね」

 

答えるエロヒム。

あっさりと言って見せたが二年で世界中で暗躍する秘密結社の構成員の半分を侵食してみせたエロヒムの恐ろしさである。

 

「それはすごいですわ!」

 

銘歌の賛美。しかしエロヒムの表情は硬い。

 

「いいや。まだパヴァリアの下っぱや幹部の一部だけだからね。まだまださ」

「完全掌握にはあとどれくらいかかるんだ?」

 

シーザーの問いに対して顎に手を当て考えるエロヒム。

 

「うーん……。あと二年か三年は欲しいね。幹部たちを侵食するのは出来るけど、大幹部と呼ばれる三人や、首魁のアダムの乗っ取りにはまだ時間がかかるよ」

「大幹部……確かサンジェルマン、プレラーティ、カリオストロの三人でしたわね」

「ああ、彼らは別格さ。精神に防壁を常に張っているし、そもそもパヴァリアが侵食されている事に気付いている節がある」

「……大丈夫なのか?」

「無理矢理なら絶対に失敗するね。だからしばらくは大人しくする必要がある」

 

その為の二〜三年さ、と言葉を続けるエロヒム。

 

「手助けはいるか?」

「今はいいさ。シーザー、君は神獣鏡の研究を」

「ああ、わかった。此方の提示したメインプランとお前の提示したサブプラン、両方のプランで使えるようにしておく」

「頼むよ。神獣鏡は我らが真なる神、我らが根源たるシェム・ハの復活に必要不可欠なんだ。その浄罪の力を使えるようにしないといけない」

 

彼らの言う真なる神、シェム・ハ。

彼女は死に際に自らの魂を分割し、分霊を作った。

それがツァバト、シャダイ、エロヒム。

他にもいるようだが、シェム・ハの復活の為に動いているのは現状、その三人のみだ。

 

シェム・ハの大元の魂は統一言語、人類を繋ぐ脳波ネットワークに編み込まれている。

本来なら統一言語を通じて人類の身体を乗っ取って復活する筈であった。

だが、その統一言語は月から発せられるネットワークジャマーにより人々から分断されている為、シェム・ハは復活出来ないでいた。

 

そのネットワークジャマーをバラルの呪詛と言う。

人々の意思統一を阻む原罪は、人々を守る祈りなのだった。

 

故に神獣鏡。

罪を祓う力を持つ神獣鏡は、バラルの呪詛を祓う力を持つ。

その力でシェム・ハの依代に相応しき人間を浄罪し、シェム・ハを復活させる。

そして、月より発せられるバラルの呪詛を停止させ、もって世界をシェム・ハの供物に捧げる。

それが、ツァバトたちの計画であった。

 

 

ジャマーの存在を予測したシェム・ハは自らの魂を分割し、自らの死後、復活の為に活動させる事にした。

故に彼らは自らを『神霊』と呼称する。

神の霊、神の分霊であるが故に。

 

そして。

シーザーも、銘歌も。

シェム・ハの復活の為に神霊であるツァバトやシャダイの手足となって働く契約を結んだ。

シーザーは見返りにドクターウェルへの復讐を。

銘歌は信者たちだけが穏やかに過ごせる世界の為に。

 

紅茶を飲むシーザー。

静かに口を開いた。

 

「浄罪の力を引き出す……。此方も三年ほど欲しいな。一年で試作し、残りの二年で完成させる」

「頼もしいよ」

「ああ、そこは任せておけ。専門分野だからな」

 

そんな二人を見て、おずおずと手を上げる銘歌。

 

「あの、わたくしはどうすれば」

「ああ、銘歌はこのまま信者を増やしていってくれ。政財界、二課。そして風鳴機関。とにかく我々は情報が欲しいからね」

「わかりましたわ」

 

頷く銘歌。

そんな銘歌を見て、シーザーが口を開く。

 

「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだ至天院」

「あら、何でございましょうシーザー様?」

「なぜキャロル・マールス・ディーンハイムを殺さなかった」

 

浅賀研究所での事を聞くシーザー。

キャロルを一撃で気絶させ、そのまま神獣鏡を持ち去った件について聞いたのだ。

なぜ気絶したキャロルを殺さなかったのか、と。

 

「そうですわね……。あの時は神獣鏡の確保を最優先したからですわ。グズグスしていたら風鳴訃堂がやって来るかもしれませんもの」

「まぁ、確かにな」

「あとは……」

 

続けて語る銘歌。

先程までのどこかふわふわした雰囲気は消え、空気がひりつくような威厳を纏っていた。

 

「わたくし、子どもは殺さない主義ですの」

「……そうか」

 

銘歌の威圧感に当てられるシーザーはそう言うしかなかった。

 

「安心して下さいまし。大人と悪党外道は遠慮なく殺しますので」

 

ニッコリと微笑む銘歌。

威圧感は消え、先程のふわふわした雰囲気が戻ってくる。

 

その二人の様子をニヤついて見ていたエロヒム。

ふと、思い立って懐から懐中時計を取り出した。

 

「おや、もう一時間も経ってしまったようだ。楽しい時間はあっという間だね」

 

その言葉に返したのは銘歌だ。

 

「あらあら、もうそんなに?わたくし、この後信者たちへの指導がありますの」

「では、この辺でお開きにしようか。それじゃあ、またいずれ」

「ごきげんよう、エロヒム様」

「また会おうエロヒムよ」

 

銘歌はシャダイと共に消えた。

この白い部屋から、現実に戻ったのだ。

 

「君たちはどうする?」

「僕は明日も仕事だからな。僕も帰るよ」

「ならば我もそうしよう」

「わかった。それじゃあまたいずれ。神獣鏡、任せるよ」

「ああ」

 

そう答えた瞬間。

ソファに座るエロヒムが。

壁に飾られた名画が。

そして白い部屋が消えて。

見慣れた自室に切り替わる。

 

「帰ってきたか」

 

シーザーはベッドに腰掛けていた。

茶会に行った後、ツァバトが身体を動かして座らせたのだ。

シーザーはベッド脇の目覚まし時計を持ち上げる。

時刻は丁度、茶会のはじまりから一時間しか経っていなかった。

 

 

 

 

欧州某所。

パヴァリア光明結社総本山。

数々の異端技術や錬金術で秘匿された古城の一室。

統括局長アダム・ヴァイスハウプトの執務室にサンジェルマンは呼び出されていた。

 

「日本へ出張、ですか?」

「そうだよサンジェルマン。見つけたのさ遂に」

 

そう言って資料を手渡すアダム。

そこにはブレてはいるが、金髪の少女の写真。

戦闘中なのだろうか、紫色の装甲を纏っている。

 

「キャロル……!」

「そう、居たのさ日本に。戦っていたのさノイズと!」

「生きていたのか……」

 

キャロルはパヴァリア光明結社と技術提携を結んでいた。

チフォージュ・シャトーの組み立てを手伝う代わりに、ファウストローブの技術を教授してもらっていたのだ。

だが、三年前にゼウスの雷霆でチフォージュ・シャトーを破壊されてから行方がわからなくなっていた。

 

だが、先日の■■市の大規模ノイズ災害。

■■市で暮らす結社の錬金術師が偶然キャロルを見かけたのだ。

錬金術師は密かにスマホで撮影、アダムに報告した。

 

「では私たちはキャロルを連れ戻せばよろしいのですか?」

「事は簡単じゃない。行動しているのさ彼女は、風鳴訃堂と!二課の一員として!」

「訃堂!?」

 

驚愕するサンジェルマン。

その恐ろしさは身に染みて知っている。

戦時中、風鳴機関に聖遺物を盗みに来たサンジェルマンを迎撃したのは風鳴訃堂であり、サンジェルマンに苦い敗北の記憶を植え付けたのもまた訃堂である。

 

「脅されたのかほだされたのか。わからないけどね、どちらか」

「あの男は脅すような事はしないかと。恐らくキャロルは己の意思で二課に居るのだと思います」

「そうなのだろうね、他ならぬ君が言うなら」

 

サンジェルマンは一度戦ったからこそ理解していた。

風鳴訃堂は恐ろしい強さを誇るが、その強さで嵩にかかって外道な行いをする人間ではないと言うことを。

あれは正しく『防人』。人を守り国を守るラスト・サムライである。

 

「こっちが本命さ君に調査して欲しいのは、サンジェルマン」

 

そして、もう一つの資料を手渡すアダム。

そこには【セーマン桔梗組合】という組織について纏められていた。

 

「これは……日本の異端技術の……」

「下部組織だよ、僕たちパヴァリアのね。狙っているのさ、彼らは。キャロルの持つ知識を」

 

キャロルは、いや長く生きる錬金術師はその蓄えた知識故に、他の錬金術師から狙われやすい。

もっとも、そういった錬金術師にとって自分を狙う錬金術師など歯牙にもかけぬ存在なのだが。

 

「止めてほしいのさサンジェルマン。彼らの暴挙を。訃堂にバレる前に」

 

つまりは【セーマン桔梗組合】がキャロルを狙うために二課の、訃堂の縁故の者を害するのを防いでほしい、という事だった。

パヴァリア光明結社はギリシャの巻き起こした戦争の被害を建て直している最中である。

そんな中で訃堂と敵対するのは組織的に危ないのだ。

 

「わかりました」

「連れていくといいよ、プレラーティとカリオストロも。それと、君の配下の【ノーブルレッド】も」

 

サンジェルマンは怪訝な顔だ。

 

「ノーブルレッドも、ですか?」

「必要だろう、休暇は?行くといいよ観光地に」

 

アダムなりの気遣いであった。

だが……。

 

「その間の仕事はどうするおつもりですか?」

「僕がやるよ」

「出来もしない事を言わないで下さい!」

 

アダムは無能である。

アダムにまで回ってきた書類は概ねサンジェルマンが処理しているのだった。

そしてそれを手伝うのはノーブルレッド。

彼らが日本にまで出向けば組織は回らなくなるだろう……。

 

「いらないよ心配は。頼むからねアグリッパに」

「……アグリッパ、ですか?」

「あるのかい、なにか?」

 

サンジェルマンは答えた。

 

「アグリッパの事なのですが、最近様子がおかしい気がして」

「そうなのかい?いつも通りだと思うけどね」

「それはそうなのですが……」

 

サンジェルマンは気付いていた。

アグリッパの様子がおかしいのだ。

確かにアダムの言うとおり普段と変わらぬ様子なのだが、【何か】がおかしかった。

口では上手く伝えられない、頭では上手く纏められない何かが。

いや、おかしいのはアグリッパだけではない。

他の結社の構成員にも、ヴリル協会の人間にも何人か様子のおかしい者がいる───。

 

「疲れているのさ、きっとね。入るといいよ温泉にでも。取っておくさ長めに、出張期間は」

「……わかりました」

 

釈然としないまま、サンジェルマンは頭を下げ退出した。

扉が閉まるのを見たアダムは一人、呟く。

 

「……思うけどねまさかとは。確かめる必要があるね、アグリッパに。忌々しき神霊の気配がないかを」





今回オリキャラいっぱい出てきたし、キャラ紹介しとくね……。

○ジュリアン・シーザー
F.I.S.の研究主任。
ツァバトと契約している苦労人。
何故かドクターウェルに恨みを持つ。

○ツァバト
シェム・ハの魂から分けられた神霊。
物理的肉体を持たない為にシーザーと契約する事で世界に介入する。
エンジェノイズを生産する力を持つ。

○至天院 銘歌
天神合一会という宗教団体の教祖。
山奥で暮らしていたので、世間ずれしている。

○シャダイ
シェム・ハの魂から分けられた神霊。
銘歌を甘やかす単眼系女神。
どんな能力を持っているかは、まだヒミツ。

○エロヒム
シェム・ハの魂から分けられた神霊。
人間の精神を乗っ取り、無限に増殖する力を持つ。
パヴァリアをオリュンポス十二神とぶつける為にじわじわ侵食中。

○アグリッパ
パヴァリア光明結社の幹部の一人。
全身を赤でコーディネートした赤大好きな人。
同時期に結社に入ったサンジェルマンが大幹部にまで出世したので焦っていたが、仕事はそつなくこなすし錬金術も一流に扱える才人。
アダムもそろそろ出世させようと考えていたが、哀れエロヒムに乗っ取られる悲しい存在。
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