転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
遅れて申し訳ありません。
なかなか話の切れ目が書けず、気が付けば普段の倍近くのボリュームになってました。
あと仕事がね、残業 + 日曜出勤のデスコンボ食らいましてね。そしてそれが9月まで続きそうなのね……。
そんな訳でこれからもしばらくは、不定期更新になりそうです。
エタりはしないから、安心してね!
二課の発令所は火の付いたような騒ぎであった。
本日、地元で過ごしていた筈の一鳴のフォニックゲインを確認したからである。
「間違いありません、スダルシャンのアウフヴァッヘン波形です!」
藤尭が叫ぶ。
それを受けて唸る弦十郎。
「一鳴くんとは連絡は取れないのか?」
「……通信、繋がりました!」
友里の報告。
シンフォギアには二課との通信装置が内蔵されているのだ。
「一鳴くん、聞こえるか?一体何があったんだ?」
弦十郎の言葉に一鳴が答える。
「現在戦闘中なので手短に!喫茶店愛愛Aに民間人の被害を省みない陰陽師が2名現れ現在戦闘中です!民間人は逃がしました!敵の狙いはキャロルちゃんです!」
「なんだと!?陰陽師!?」
驚愕する弦十郎。
通信からは風を切る音、爆発音などが聞こえてくる。
「一鳴くん!今増援を送る!とにかくその陰陽師を逃がすな!」
「わかりました!」
通信の向こうでは、戦いが続いている。
弦十郎は増援を呼ぶために、二課の内線をある場所に繋いだ───。
◆
俺と陰陽師の戦いが始まって、五分。
弦十郎さんとの通信では増援を呼ぶということだが、陰陽師との戦いは───
VS陰陽師 【1D10】
1 ノブレ、頑張る
2 ノブレ、頑張る
3 シンフォギアに敵う訳ないだろ!
4 陰陽師優勢
5 シンフォギアに敵う訳ないだろ!
6 シンフォギアに敵う訳ないだろ!
7 三幹部の的確なサポート
8 三幹部の的確なサポート
9 陰陽師優勢
10 熱烈歓迎
結果、【5】
「イヤーッ!」
戦輪を振るう。
108のノコギリ刃と炎が、陰陽師たちの肌を斬り裂き、焼き付ける。
「ア"ァ"!糞がッ!」
「落ち着け!」
苛立つ髪を染めた陰陽師を、黒スーツの陰陽師が抑える。
陰陽師の攻撃は弱く、此方にダメージを与える事はなかった。
サンジェルマンやノーブルレッドの三人が設置した対陰陽術術式のお陰だろうか……?
「クソッ、クソッ!なんで効かねェんだよォ!」
髪を染めた陰陽師が光弾を射出。
俺はそれを左手で払いのけて、カウンターで殴り付ける。
髪を染めた陰陽師が吹き飛ぶ。
……おかしい。
先程の話じゃ、コイツらはパヴァリアの下部組織で、そしてパヴァリアからの脱却の為に反乱を起こしたようだった。
だが、パヴァリアの三幹部はタイマンならシンフォギア相手にも勝てる強者。
そんな彼女らと戦うなら、最低でも俺と良い勝負になるくらい強くなければならない。
なのに、この陰陽師たちは弱すぎる。
二人がかりなのに、俺に有効打を与えていない。
対陰陽術術式のお陰だろうか。
パヴァリア三幹部やノーブルレッドが対陰陽術術式を守ったり、外への経路を塞いでいるから逃げられない、戦場を変えられないというのもあるだろうが……。
なにか。なにかがおかしい。
「ガ、ァ……」
「ぐぅ……!」
とかなんとか、考えている間に陰陽師二人を倒した。
……やっぱり、弱い。
「流石シンフォギアね」
と、カリオストロ。
「ご存知でしたか」
「えぇ、ウチの業界じゃ有名よ」
「お前の師匠キャロルがそのシンフォギアと似たような研究をウチと共同で行っていたワケダ」
そういう繋がりかぁ!
シンフォギアとファウストローブ、ウタノチカラと錬金術というアプローチの違いはあるけれど、本質は同じだものねぇ。
「貴方は、キャロルの弟子なのよね?」
と、サンジェルマン。
「ええ。と、言っても錬金術じゃなくて戦い方の師匠なんですけれど」
「それなら……、ッ!?」
何かを語ろうとしたサンジェルマンが顔を強ばらせる。
視線の先には倒れた陰陽師たち。
だが、そこに陰陽師は居らず。
ただ、紙人形が二つ落ちているだけであった。
「式神ッ!?」
「偽物だったって事!?」
「どおりで……」
弱い訳である。
彼らは式神、偽物だったというのだから。
「動くなァ!!」
外から声が聞こえる。
先程の、髪を染めた陰陽師と同じ声。
声の先、喫茶店の外の駐車場に彼らは居た。
髪を染めた陰陽師と黒スーツの陰陽師。
そして───
「ナルくん……」
「助けて……」
大型紙人形に拘束された響ちゃんと未来ちゃんの姿。
陰陽師たちは光弾を放ち、対陰陽術術式の札を破壊。
店内に入ってくる。
「下手な真似するなよォ糞餓鬼ィ。オメーの可愛いオトモダチが、グチャッと潰れることになるぜェ?」
「……ッ」
やられた。
逃がした響ちゃんと未来ちゃんを、アイツら本体が確保して人質にするなんて……。
迂闊なことは出来ない。
「糞餓鬼、その鎧を寄越しなァ」
「シンフォギア、っていうのだろう。噂には聞いている」
「さっさとしろ!餓鬼ども潰すぞ」
そう言うが早いか、大型紙人形が腕を締め上げる。
響ちゃんと未来ちゃんが呻く。
「わかった!だから二人を離せ!」
「シンフォギアが先だ」
俺はシンフォギアを解除し、ギアペンダントを黒スーツの陰陽師に投げ渡した。
シンフォギアは機密と異端技術の塊だけど、二人の命の方が大事だからだ。
「ふむ……見た目からは何もわからねーな」
黒スーツの男がギアペンダントを見ながら言う。
髪を染めた陰陽師がそれを見ながら口を開く。
「帰って解析すりャいい。さて」
突如、髪を染めた陰陽師が光弾を放つ。
光弾は俺目掛けて飛んで行く。
「うぐッ……!」
「ナルくん!!」
光弾が腹に直撃する。
未来ちゃんが叫ぶ。
痛い。
そして、熱い。
あぁ、クソ。こいつ、いたぶるつもりだ……!
「やめなさい!貴方たちの目的はあーしたちでしょう!」
カリオストロが叫ぶ。
それをヘラヘラと受ける髪を染めた陰陽師。
「そうだ。俺らの目的はテメェらよ。だが、この餓鬼は俺らに舐めた真似してくれたからなァ……!」
更に光弾。
蹲る俺のすぐ前の地面を抉る。
喫茶店の床の欠片が散弾めいて俺の身体に当たる。
「ナルくん!」
「やめてぇ!」
痛みで意識がグラつく。
響ちゃんと未来ちゃんが泣いている声が聞こえる。
二人の声が、俺の意識を繋ぎ止めた。
「しぶとい餓鬼だなァ」
「おい、もういいだろ?」
「ビビんなよ兄弟。たかが餓鬼を一匹殺すだけだ」
「じゃあ早くしろ。増援が来ちまうよ」
そう言い合う陰陽師たち。
俺は逆転の手段を模索していた。
響ちゃんと未来ちゃんさえ開放させれば、あとはパヴァリア三幹部とノーブルレッドで解決出来るだろう。
なら、どうやって助けようか……。
ふと、外を見た。
あぁ、存外早かったなぁ。
「…………ふ」
「……ア?おい糞餓鬼、お前今笑ったか?この状況わかってるのか、アァ!?」
髪を染めた陰陽師が怒鳴り散らす。
だが、俺にはその姿がもう、滑稽にしか見えなかった。
「状況?わかっているとも」
「ならなに笑ってるんだァ、オラッ!?お前はもう死ぬんだよ!」
「いや、死なない」
「ア?」
「お前、頭悪いな」
激昂した髪を染めた陰陽師が光弾を発射しようとする。
だが───
「う、腕が……!」
「……拘束された!?」
外から伸びる糸が、陰陽師たちを縛り上げていた。
そして同時に、その糸は響ちゃんと未来ちゃんを抱える大型紙人形を切り裂いた。
「きゃあ!」
「大丈夫、お嬢ちゃんたち?」
二人を受け止めたのは、ヴァネッサである。
「しっかりするんだゼ!」
「傷は浅いであります!」
俺の元にはミラアルクとエルザが来てくれた。
「……早いね、キャロルちゃん」
「フン、テレポートジェムにこの辺りの座標を登録していたからな」
そう言ったのは、キャロルちゃんだ。
彼女が弦十郎さんの言っていた増援であるらしかった。
「オレだけじゃない。黒服たちも向かってる所だ」
「そっか」
「あと、これだ」
キャロルちゃんが何かを放り投げる。
それを受け止めた俺、手に持っていたのはギアペンダントだ!
「あの男が持っていたからな。弦で掴んでおいた」
「ありがとう、キャロルちゃん」
「ナルくん!」
「生きてる!?」
響ちゃんと未来ちゃんが駆け寄ってくる。
「なんとか、生きてるよ」
「ぐすっ、良かった……」
「ごめんね、捕まっちゃった」
涙を流す二人を、俺は優しく抱き締めた。
「うん、俺は大丈夫。大丈夫だから。だから泣かないで」
ぽんぽん、と背中を優しく叩いてやる。
俺は大丈夫だと、安心させる為に。
「ク、ソォ……」
「ぐ……」
遠目では、陰陽師たちが抵抗しようとしていたが……。
「そこまでよ」
「いい加減、諦めなさい」
「無駄な足掻きはしないでほしいワケダ」
パヴァリア三幹部が包囲していた。
「美味しいところは横取りか?」
「支援なワケダ」
キャロルちゃんの挑発に睨み返して答えるプレラーティ。
「久しいわねキャロル」
「お前もなサンジェルマン」
「元気してた?」
「まぁ、そこそこだな」
サンジェルマンとカリオストロとはそこそこ仲良く話せるのにねぇ……。
「それと、お前たち全員拘束させてもらうぞ」
「……もしかして」
「喜べ。風鳴訃堂に会わせてやる」
すっごいイヤそうな顔をするパヴァリアの面々。
「あと、一鳴。お前は医務室直行だ」
「アッハイ」
「……お前の友だちにも、此方から事情は説明する」
……仕方ないよね。
シンフォギアは国家機密ですもの。
事情説明の為に二課へ連れていくのは、決定事項か。
「ナルくん……」
「大丈夫よ、大丈夫。後で俺からも説明するからね」
そんな訳で。
後からやって来た黒服さんたちに、俺たちはドナドナされたのであった。
◆
ひびみくのお気持ち表明【1D10】
1 おこ
2 おこ
3 おこ
4 激おこ
5 許すよ……
6 私たちもシンフォギアやる!
7 私たちもシンフォギアやる!
8 私たちもシンフォギアやる!
9 激おこ
10 熱烈歓迎
結果、【9】
戦闘が終わり、二課の医務室に直行した俺はベッドに寝かされ、二課の名医である顔に縫い目のあるブラックジャック先生(偽)から治療を受けていた。
「全身に打撲、それと腹に軽い火傷。薬塗っておけば治る」
「ありがとうございますブラックジャック先生」
「私はブラックジャックではない。それと……」
ブラックジャック先生(偽)はちら、と横を見る。
そこには椅子に座り、俺をじっと見るひびみく。
涙目で睨んでいる。
うん、俺が治療を受けている間に了子さんからシンフォギアや二課の事を説明されたら、こんな感じになりました。
しょうがないよね、友だちがクッソ危ない仕事を隠れてしてたんだから。
その後了子さんは「頑張って説得しなさいね~」なんていってとっくの昔に出ていった。
おのれラスボス……!
「痴話喧嘩なら病室の外でしてほしいんだがな」
「そういうのじゃないんですが……」
「彼女三人いる男がそう言ってもな……」
とにかくキチンと話し合えよ、そう言ってブラックジャック先生(偽)は病室から出ていってしまった。
病室には俺と響ちゃんと未来ちゃんの三人。
「……」
しばらくは、沈黙が場を支配していた。
「……ねえ」
最初に口を開いたのは未来ちゃんだった。
「いつも、こんな危ないことしてるの?」
「……そうだね」
「怖くないの?」
「怖くないって、言ったら嘘になるかな」
「じゃあ、なんで続けてるの?」
「……一言じゃ、難しいかな。義務感とか、正義感とか。色々、ごちゃ混ぜ」
一瞬の、沈黙。
そして。
「じゃあ、これからも続けるの?」
「うん」
「痛い思いするのに?」
「うん」
「怖い思いもするのに?」
「そうだね」
「私たちに嘘ついて?」
「……ごめん」
「謝るんなら……もう辞めてよ、戦うの」
ポロポロと泣き出す未来ちゃん。
ずっと黙っていた響ちゃんが口を開く。
「ナルくん、私たち本当に怖かったんだよ。ナルくん、死んじゃうんじゃないかって」
「うん……」
「もう辞めようよ。私も未来も、ナルくん死んだらイヤだよ……」
そう言って響ちゃんも泣き出してしまった。
「ごめんね」
俺は、二人の手を握った。
「俺はシンフォギア辞めないよ」
「なんで?」
未来ちゃんが聞く。
響ちゃんも、きっと心の中では同じ事を思っているのだろう。
「シンフォギアは特別な力さね。才能ある人間にしか扱えない。扱いたくても、扱えない人がいる」
二人は黙って俺の話を聞いている。
「そんな中で俺はシンフォギアを扱える才能を持っている」
そうだ。
転生者。精霊さんに偶然選ばれ、シンフォギアの高い適合率とシンフォギア装者となる運命を与えられた。
ただ、それだけの人間。
それでも、シンフォギア装者だ。
「シンフォギアはすごいよ。ノイズだって倒せるし、どんな攻撃も耐えられる。その力で沢山の人を助けることが出来る」
「それでも、怖くて痛い思いをするんでしょ」
響ちゃんが聞く。
俺は静かに頷いた。
「うん、怖くて痛い思いもすることがある。それでも戦うための訓練は受けているし、諦めるつもりもないし。
俺はね、助けたいと思ったんだ。シンフォギアの力で助けることが出来る人を。俺の手で助けることが出来る人を」
ああ、そうだ。
俺は助けたかったんだ。
あの日、戦場に出た時に、ノイズと炎に追われる人々を。
死後、精霊さんと出会った時に思ったんだ。
この恐ろしい世界で、胸の歌を信じ続ける人たちを助けたい、と。
死ぬ筈だった人たちを助けたい、と。
「だからこれは、きっと俺の我が儘なんだろうね。
「ナルくん……」
その声はどちらのものだったのか。
あるいは両方か。
一瞬、沈黙が場を支配する。
そして。
「わかった」
口を開いたのは未来ちゃんだ。
「ナルくん、頑固だから。私たちがこれ以上言ってもシンフォギア辞めないよね」
「頑固じゃないし、柔軟かつ臨機応変に対応出来るし(震え声)」
「だから一つ約束して」
ぎゅ、と手を強く握る未来ちゃん。
「死なないって。絶対に生きて帰ってくるって」
「未来……」
「約束して」
じっ、と俺の目を見つめる未来ちゃん。
きっと、生半可な答えは許されないだろう。
「あぁ、わかったよ。約束する。俺は死なないし、死ぬつもりもない。なにがあっても、きっと無事に帰ってくるって」
「うん、約束。破ったら、許さないから」
「うん、了解」
「あと、もう嘘も吐かないでよね」
と、響ちゃん。
「うん。もう嘘吐かんよ」
「うん、約束だよ!」
と、小指を突き出す響ちゃん。
俺もまた、小指を突き出し、絡ませる。
「ゆーびきりげんまん。嘘吐いたらはりせんぼんのーます。指切った!」
「嘘吐いたら本当に針飲ませるからね」
「こわ~」
そんな訳で、響ちゃんと未来ちゃんになんとか許してもらえました。
友達止めなくてすんで、本当に良かった。
守秘義務とか、二人の身を守るためにシンフォギアのことは口外出来なかったけれども、もうそんな嘘も言わずにすむかもね。
……そういえば、響ちゃんも未来ちゃんも精霊さんの話じゃ装者になるのよね。
だけど、二人は現在装者適性が低い。
きっと何かが起こるだろう。
備えよう。
◆
訃堂のお気持ち表明【1D10】
1 パヴァリアは許したる
2 パヴァリアは許したる
3 パヴァリアは許したる
4 パヴァリア許さねぇ
5 パヴァリア事情があるんやろ?
6 陰陽師は根絶やしだ!
7 パヴァリア事情があるんやろ?
8 陰陽師は根絶やしだ!
9 パヴァリア許さねぇ
10 熱烈歓迎
結果、【5】
「久しいなサンジェルマン。九十年ぶりか?」
二課の発令所にて。
訃堂はそう言った。
「覚えていたのね……」
「儂はまだボケとらん」
「親父、知り合いだったのか……!」
「ああ。若い頃、コヤツがウチの蔵に盗みに入ってきた時に一戦交えてな」
あれから。
手錠を付け、拘束されて連れてこられたパヴァリア一同。
彼女たちは発令所に直接連れられたのだった。
場には訃堂、弦十郎、キャロル、ミカ、了子がいた。パヴァリア一同を抑えられる面々である。
「さて、サンジェルマンよ。事情は概ね把握している。陰陽師どもからキャロルちゃんを守ろうとしたのであろう。ついでにキャロルちゃんの力を借りたいと」
「なんであーしたちがキャロルの力を借りたい事を知っているのよ……」
「永いこと生きてきたのでな、勘が冴えるのよ」
カリオストロの突っ込みを笑顔で受ける訃堂。
「で、オレに一体なにをやらせたいんだ?」
キャロルが聞く。
サンジェルマンは全てを話した。
すなわち、ノーブルレッドの三名のホムンクルス体を作り、そこに意識を移すという考えを。
「サンジェルマンさん……」
「ウチらの為に……」
それを聞いたノーブルレッドの面々は涙が溢れた。
サンジェルマンが自分達の為にキャロルに会おうとしていた事を、はじめて知ったのであった。
「ふむ……」
キャロルは考え込む。
「どうかしら?」
「……オレの技術なら確かにこいつらのホムンクルス体を作る事は出来る」
「それ以外の問題が?」
「設備がない」
キャロルのホムンクルス体は元々チフォージュ・シャトーで作っていた。
だがチフォージュ・シャトーはゼウスにより破壊された。
そして二課にはホムンクルスを製造する為の設備が無いのであった。
「設備ならこちらで用意するわ。丁度自由に出来るお金は持っているし」
(局長の貯金なワケダ……)
セーマン桔梗組合との交渉用に用意した10億円の小切手の事であった。
「これだけあれば十二分だ」
小切手の額を見たキャロル。
「だが、年内は無理だぞ」
「勿論よ。すぐにやれ、なんて言わないわ」
サンジェルマンがそう答える。
ノーブルレッドの精密なホムンクルス体の製造、それなり以上の時間がかかる事は承知していた。
「……あとな、欲しいものがある」
キャロルは少し考えて、口を開いた。
「欲しいもの?」
「ああ、聖杯と剣、あと硬貨の聖遺物だ」
「マスター、それって……」
「ああ」
ミカの言葉に静かに頷くキャロル。
キャロルはシャトーと共に失われた自動人形たちを、再び作り上げようと考えたのだった。
キャロルの自動人形、
ガリィ・トゥマーンには聖杯。
ミカ・ジャウカーンには杖。
ファラ・スユーフには剣。
レイア・ダラーヒムには硬貨。
「それぐらいなら、結社で保管しているから……」
「いや、待つワケダ」
サンジェルマンの言葉を遮るプレラーティ。
怪訝な顔をするカリオストロ。
「どうしたのよプレラーティ?」
「聖杯は……確かもう無かったワケダ」
「そうなの?」
「ああ。間違いないワケダ。……そうだ、アグリッパが実験で使うと持っていったワケダ」
タイミングが悪いわね、とカリオストロが呟く。
「すまない、キャロル。聖杯はどうしようもないわ」
「いや、剣と硬貨だけでもありがたい」
そう言うキャロルだが、その顔は暗い。
と、今まで黙っていた訃堂が口を開く。
「聖杯……それが欲しいのだな」
「……ああ。前にも話しただろう。ミカと同じ自動人形、ガリィを作るのに必要なんだ」
「あるぞ、聖杯」
その場にいた全員が、口をポカンと開いた。
「あ、あるの!?」
「ある……が、ここには無い」
「ど、どういう事なワケダ?」
悪い顔をする訃堂。
「時に、パヴァリア光明結社はヴリル協会やアメリカの亡命科学者を抱え込んでおるな」
「う……その通りよ」
読者の皆さんは覚えておられるだろうか。
バルベルデ共和国で内乱を引き起こし、雪音クリスを用いて聖遺物の研究をしていたヴリル協会の事を。
ギリシャとの戦争を期に聖遺物の更なる研究を行おうとして、政争で負けてヴリル協会と合流したアメリカの科学者たちの事を。
訃堂はその事を言ったのだ。
「儂はかつて、奴らを殲滅しようとしていた事があってな」
「……引き渡せ、と」
「いや、それはもうよい」
「ならば……」
「だが、パヴァリア光明結社という組織は人体実験を是とする組織であろう」
「それ、は……」
サンジェルマンは言い返せなかった。
それはヴリル協会を受け入れたからであるし、ノーブルレッドの事があるからであった。
また、サンジェルマンもカリオストロもプレラーティも。死刑囚や社会のクズ相手ではあるものの人体実験を行っていたからでもあった。
「お主たちは信用出来る。組織の為とはいえキャロルちゃんを助けに来てくれた。一鳴くんやその友だち、一般人を助ける為に尽力してくれた」
「……」
「あと少し。もう少し信頼が欲しい」
「……具体的には?」
「とある地方都市に聖杯はある。だが、その聖杯を使って儀式を行っている者共がいてな」
「……まさか」
サンジェルマンには心当たりがあった。
カリオストロにもプレラーティにも。
曰く、極東にて行われる聖杯の内に溜まった膨大な魔力を賭けた戦争。
異端技術者たちが聖杯の権能により、アカシックレコードに刻まれた英雄の影法師を呼び出して戦わせる魔術儀式。
「お主ら、聖杯戦争に参加して奪ってこい」
ひびみくお気持ち表明のダイスで熱烈歓迎が出ていたら、二人の内のどちらか、あるいは両方がヒロインになってました。
危ない、危ない……。
そんな訳で次回から聖杯戦争編に突入します。
小説版のFate/zeroとFGOしか知らないニワカだけど、執筆ガンバルゾー!