転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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◆こんかいの投稿が遅れた理由◆
対馬で蒙古相手にチャンバラしていた為。
あと仕事。



第二十八話 ジル・ド・レの魔の手

 

「おおおお……ッ!」

 

聖堂病院の屋上で、一人の男が泣いていた。

目から大粒の涙を流し、そして。

歓喜していた。

 

「ジャンヌッッ!貴女も召喚されていたとはッ!!これは僥倖!」

 

男……ジル・ド・レは叫ぶ。

己の幸運を宣言するかのように。

ジル・ド・レは呼び出した海魔の視界を共有する事でセイバー、ジャンヌ・ダルクが召喚されていることを知った。

己と同じように。

サーヴァントとして。

 

「だが、呼び出したのがよりにもよってサンジェルマンとは……!」

 

一転、ジル・ド・レは怒る。

サンジェルマン。

かつて自身が所属していたパヴァリア光明結社の大幹部。

そして、自身より先にジャンヌ・ダルクに出会った女。

嫉妬の念がジル・ド・レの心中に渦巻く。

 

何度。

何度、自分からジャンヌ・ダルクを奪うのか……!

 

「いや、落ち着け。まだ、ジャンヌをお迎えに上がるのは早い」

 

そもそも。

今回の病院襲撃は昨夜見逃した少年、藤丸立香を仕留める為のもの。

ジャンヌ・ダルクとサンジェルマン、そして風鳴弦十郎が来たのはまったくの偶然なのだ。

 

「ジャンヌの()()()()()もまだ出来ていない」

 

ちらり、と隣を見る。

そこには、ジル・ド・レが肉体改造を施している自らのマスター。

ジャンヌ・ダルクと同じ顔の男。

その目は虚ろで、空を(ぼう)と眺めている。

 

「今は、再開の喜びを抑え、情報を集めるとしよう」

 

ジル・ド・レの持つ本が光る。

螺湮城教本。

遥か遠き世界の【ジル・ド・レェ】が持つ本と同じもの。

その魔本の力でヒトデめいた怪物、海魔が呼び出されて階下へ向かう。

 

「そして、時が来たら我がシャトーへとお招きしなければ……。

ふふ、フハハハ……」

 

 

 

 

呼び出された海魔【1D10】×10

(最低保障5)

 

結果【5】 × 10 = 50体

 

 

 

「恐らく、呼び出された海魔は50体ほどね」

 

サンジェルマンが冷静に観察する。

その背に声をかけるジャンヌ。

 

天使様(マスター)、今言ったことは本当なのですか?ジルがサーヴァントとして呼び出されて敵に回ったと。いえ、そもそも、今回の殺人事件の犯人だと言うことも!」

 

声を荒げるジャンヌ。

 

「ええ、そうよジャネット。この海魔は私も何度か見たことあるわ。プレラーティが麻薬で正気を失った時に書き上げた魔道書。非ユークリッド幾何学模様の螺湮城を幻視して、そこに住む者たちを呼び出す螺湮城教本。ジル・ド・レの手に渡り、そしてジル・ド・レと共に燃え尽きたはずの……」

 

サンジェルマンの声は続かなかった。

海魔が病室になだれ込んだのだ。

 

(フン)ッ!」

 

弦十郎の八極拳。

海魔は爆発四散。

 

「話は後だ二人ともッ!」

「っ!すまない」

「すみません……」

 

謝りながら戦闘態勢に入る二人。

 

「まずは海魔の数を減らそう。その後、この病室を脱出する」

「わかったわ」

「立香くんはそこから動かないでくれ」

「わかりました」

「マスター、ご安心を。へっぽこサーヴァントではありますが、それでもマスターの事は私がお守りしますので」

 

コルデーが立香にそう声をかける。

 

「よし、行くぞッ!」

 

 

 

海魔の数を減らそう(1/3)【1D6】

(残り50体。3回以内に殲滅でジル・ド・レと対決)

 

サンジェルマン【1】体撃破

ジャンヌ・ダルク【5】体撃破

風鳴弦十郎【3】体撃破

シャルロット・コルデー【3】体撃破

 

 

 

「セイッ!」

 

ジャンヌの剣が閃き、海魔を断つ。

その後ろから別の海魔が飛びかかるものの……。

 

「燃えろッ!」

 

サンジェルマンの錬金術により燃やされてしまう。

 

「ありがとうございます、天使様(マスター)!」

「礼には及ばないわ」

 

優しく微笑むサンジェルマン。

しかしすぐに凛とした表情になる。

 

「風鳴弦十郎。今私達は結界の中にいる」

「結界?」

「だから他に人が居ないのか……」

 

立香の言葉に頷くサンジェルマン。

 

「ええ。恐らくは誰にも気取られず私達を殺すために」

「それを、ジルが……」

「でも、このタイプの結界は術者が結界内に居ないといけないわ。

……問いただしに行きましょう、ジル・ド・レに。彼の目的は何なのかを」

「……っ、はい!」

 

頷くジャンヌ。

 

「だけど、そのジル・ド・レはどこに居るんです?」

 

コルデーの疑問。

答えたのは弦十郎だ。

 

「恐らくは上階だろう。海魔の群れが階段の上にまで続いている」

 

外を覗き込んだ弦十郎がそう言った。

 

「なら、上に参りましょう!」

「そうね」

「立香くんは俺が背負って行こう」

「お世話になります」

「マスターを落とさないでくださいね!」

 

コルデーが注意する。

 

「無論だ。だが、戦闘には参加できん」

「問題ありません!私が二人分、頑張ります!」

 

ジャンヌはやる気だ。

 

「よし、では上階へ走るぞ!」

 

 

 

海魔の数を減らそう(2/3)【1D6】(ジャンヌのみ【1D10】)

(残り38体。2回以内に殲滅でジル・ド・レと対決)

 

サンジェルマン【5】体撃破

ジャンヌ・ダルク【2】体撃破

風鳴弦十郎 戦闘不参加

シャルロット・コルデー【4】体撃破

 

 

 

「遅いッ!」

 

サンジェルマンの錬金術が海魔を次々に撃破していく。

 

「やぁっ!」

 

コルデーもナイフで海魔を屠っていく。

 

「……」

「立香くん、大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」

 

弦十郎の言葉にそう返す立香。

更に言葉を続けた。

 

「海魔って、タコっぽくもありますよね」

「……まぁ、そうだな」

「……美味しいんですかね?」

 

戦場でとんでもないことを聞く立香であった。

 

「……食べるのは、止めておいた方が良いだろうな」

「ですよねぇ……」

 

阿呆な事を言い合う男二人。

 

「海魔の群れはまだまだ上まで続いているわね」

 

と、サンジェルマン。

 

「恐らくは屋上……」

「一気に、行きましょう!」

 

ジャンヌが気合を入れ直す。

 

「……弦十郎さん」

「今度はなんだ?」

「もう、降ろしても大丈夫です」

「立香くん?」

「まだ痛いところもありますけれど、走れます!」

 

立香はそう言った。

 

「わかった、無理はするんじゃないぞ」

「はいっ!」

「マスター……」

「コルデー、オレは大丈夫だから」

「わかりました、マスターがそうおっしゃるなら」

 

 

 

海魔の数を減らそう(3/3)【1D6】(ジャンヌのみ【1D10】)

(残り27体。今回殲滅でジル・ド・レと対決)

 

サンジェルマン【4】体撃破

ジャンヌ・ダルク【7】体撃破

風鳴弦十郎【1】体撃破

シャルロット・コルデー【3】体撃破

 

結果【15】体撃破

殲滅、ならず……。

 

 

 

ジャンヌによる八面六臂の大活躍。

残った海魔は12体となった。

 

「屋上まで、あと少し!」

「海魔が一気に来るぞッ!」

「マスター!下がってください!」

 

残り少なくなった海魔が一斉に飛びかかる。

弦十郎たちは迎撃に専念。

一時、釘付けにされてしまう。

 

「そこ!」

「セイッ!」

「破ッ!」

「えーいっ!」

 

サンジェルマン、ジャンヌ、弦十郎、そしてコルデーにより海魔は殲滅された。

 

「よし、屋上へ急ぎましょ……」

 

サンジェルマンの言葉が途中で遮られる。

病院内に、人の気配が戻ったのだ。

廊下を歩く看護師、患者。

医師を呼び出すアナウンス。

人の話し声。

 

「これは……ッ!」

「逃げられた、わね」

 

結界は解かれた。

それは、術者が解いたということ。

その術者はすでに、ここには居ないということを示していた。

 

「……ジル」

 

ジャンヌの呟きが、小さく消えた。

 

 

 

 

13時頃。

 

弦十郎たちは冬木ハイアットホテルに帰還していた。

立香とコルデーを連れて。

 

あの後、立香は弦十郎の提案を受けて、一時保護して貰うことに決めたのだった。

今回の件で、またジル・ド・レが立香を狙うかもしれず、その時に弦十郎たちが近くにいるとは限らないからだ。

それに……。

 

「聖杯戦争の参加者が非道な事をするなら、止めたいんです。オレに何が出来るんだって思うんですけど、それでも。今にも死にそうな誰かを助けたいんです!」

 

と、立香が熱弁した為でもあった。

そんな訳で。

立香は保護される一般人でもあり、サンジェルマンと共に聖杯戦争を戦う同盟相手という事になった。

 

「今戻ったわ」

 

サンジェルマンがホテルの部屋の扉を開ける。

 

「おかえりなさい、サンジェルマン」

「ジル・ド・レが出てくるとは……。とにかく無事で良かったワケダ」

 

カリオストロとプレラーティが出迎える。

その後ろから、了子と一鳴が出てくる。

 

「で、その子たちが連絡のあった立香くんとそのサーヴァントね」

 

と、了子さん。

 

「ああ、そうだ」

 

弦十郎さんが答える。

 

「藤丸立香です」

「アサシンのサーヴァント、シャルロット・コルデーです」

 

二人が自己紹介する。

ホテルに残っていた面々も、自己紹介していく。

 

「……で、彼が特異災害対策機動部二課の……一鳴くん?」

「え、あっ、ハイ」

 

呆けていた一鳴。

 

「どうした?」

「あ、いえ。二人が知り合いに似ていたので」

(知り合いというか、前世で一方的に知っているんだけどね……) 

 

前世でプレイしていたゲームの主人公たちが目の前に現れた一鳴。

流石に理解に時間が掛かったようだった。

 

「ドーモ、はじめまして。渡 一鳴です。バリバリ戦う公務員系小学生です。よろしくお願いしますね藤丸さん、コルデーさん」

 

そんな訳で。

自己紹介を済ませた一同。

部屋の中で車座になり、互いに情報共有していく。

 

「阿礼 星乃が召喚したのはアレイスター・クロウリー……。半ば予想通りではあるけれど、ね」

「そして、そっちにはジル・ド・レ。……この聖杯戦争はパヴァリア光明結社の同窓会なの?」

 

カリオストロが愚痴る。

 

「パヴァリア?」

 

立香の疑問。

 

「簡単に言えば、錬金術師たちの秘密結社?」

「秘密結社……本当にあったんだ」

「他にも陰陽師の秘密結社とかもあります」

 

一鳴の情報リーク。

そこまでにしておけ、と弦十郎からストップがかかる。

 

「あの、プレラーティ様」

 

と、ジャンヌが声をかける。

 

「なんだ?」

「プレラーティ様がジルに魔道書を、螺湮城教本を渡したと言います」

「……そうだな。昔の話なワケダ」

「私の死後、ジルと一緒に居たと。教えていただけませんか?ジルがどんな様子だったかを」

 

プレラーティはしばし沈黙。

そして、語りはじめた。

 

「あの頃の私は、錬金術師を騙る詐欺師だったワケダ」

「詐欺師……」

「そして男だったワケダ」

「男ぉ!?」

「サンジェルマンに女にされたワケダ」

「いかがわしい言い方は止めなさい」

 

コホンと、咳払いするプレラーティ。

 

「詐欺師だった私はジル・ド・レに接触したワケダ。アイツは金持ちで、錬金術に傾倒していたから、金を騙し取ろうとしたワケダ」

「……」

「ある時。ジルから信頼を得た私は、錬金術に傾倒した理由を聞いたワケダ」

「そしたら、なんと?」

「『ジャンヌ・ダルクを蘇らせる』、アイツはそう言ったワケダ」

「私を……!?」

 

ジャンヌが驚く。

 

「アイツは、お前に執着していたワケダ。『我が聖女』『我が旗持ちの聖女よ』『必ず、貴女を蘇らせる』よくそう言っていたワケダ」

「なら、今回の一件も……!」

「なにがしか、やらかしているハズなワケダ。昨日の夜、藤丸を襲った時にジャンヌと同じ顔の怪物が居たなら……」

 

プレラーティは紅茶を一口飲み、続けた。

 

「私とジルは派手にやったワケダ。悪魔ベルゼブブを呼び出す儀式を大々的に行ったり。ジルは自分が治める領内から少年たちを拉致して虐待や陵辱していたワケダ」

「ちょっと、プレラーティ!」

「いえ、大丈夫です。大丈夫、ですから」

 

プレラーティをたしなめるカリオストロを、ジャンヌが抑える。

 

「ある程度は、聖杯が教えてくれましたから……」

「私達は、責められて憎まれて当然の事をしたワケダ。だから、私達は捕縛されたワケダ。だが、もうすぐ処刑、という時にサンジェルマンに救われたワケダ」

天使様(マスター)が……?」

「ああ。その後の経緯は省くが、私とジル・ド・レはパヴァリアに入って、本物の錬金術を、世界の神秘を学んだワケダ」

「その経緯を知りたいんですけど……」

「話が長くなるからNGなワケダ」

 

一鳴の要求を棄却するプレラーティ。

 

「私はそのままサンジェルマンから錬金術を学んでいたが、ジル・ド・レは別の人間から学んだワケダ。……そして、やらかしたワケダ」

「やらかした……?」

「無許可でアカシックレコードに接続しようとしたワケダ」

「アカシックレコード、だとぉ!?」

 

弦十郎が驚くのも無理はない。

アカシックレコードの接続、それは【この世界の】聖杯戦争における英霊召喚の技法。

地球が記憶するあらゆる人物のデータ、それがアカシックレコードなのだ。

 

「当然、それは結社として許される事ではないワケダ。局長自ら出陣して黄金錬成で焼き払った、らしいワケダ」

「そして、今。英霊として呼び出された、と」

「ジル・ド・レの目的はまず間違いなくジャンヌちゃんの復活。アカシックレコードの接続は、ジャンヌちゃんのデータを手に入れようとしたからね」

 

了子が完結にまとめる。

 

「あの、なら、ジャンヌさんがここに居る今、ジル・ド・レはジャンヌさんを奪いに来ると思うんですけど……」

 

コルデーが小さく右手を挙げながら言う。

 

「可能性は極めて高いわ。だけど、今すぐには来ないでしょうね」

 

と、カリオストロ。

 

「えっと、何故ですか?」

「病院で、貴方たちに接触せずに逃げたでしょ。それって情報収集が目的で、その目的が達成された、あるいは達成出来なかったから逃げたって考えるべきね」

「つまりヤツは理性的に行動出来る、というワケダ」

 

カリオストロとプレラーティの解説。

 

「それって、準備が出来たら行動するって事ですよね」

 

一鳴が真剣な顔で言う。

 

「一刻も早く、ジル・ド・レを探し出して先手をうたなければならないな……」

「セーフハウスもいくつか用意しとかないといけないわね……」

 

弦十郎と了子が、これからやらなければならない事を挙げていく。

 

「すいません、私のせいで……」

「あなたは悪くないわ」

「そうよ、気にしちゃダメ」

 

落ち込むジャンヌをサンジェルマンとカリオストロが宥める。

 

「…………ジャンヌ・ダルク」

「プレラーティさん?」

「ジル・ド・レの件、元をただせば私が悪いワケダ。恨むなら、私を恨めば良いワケダ」

 

そう言うプレラーティ。

それは彼女なりの気遣いだろうか。

それとも……。

 

「恨みません」

「……は?」

「恨みませんよ、貴女を」

 

だが、それを聞いたジャンヌはそう返した。

 

「怒りはあります。悲しみもあります。それよりも、ジルにこれ以上酷い事をしてほしくないのです」

 

そう、言い切ったのだ。

 

「……そうか」

 

プレラーティはそう呟いて、更に続けた。

 

「なら、ジル・ド・レが出たときは私も戦うワケダ。アイツの癖や思考はすでに読み切ってるワケダ」

「プレラーティさま……、ありがとうございます!」

「礼など、いらんワケダ」

 

笑顔を向けるジャンヌから、顔をそらすプレラーティであった。

 

 

 

 

そして、夜が来る───。





『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:100人
ジル・ド・レの宝具。

錬金術師になる前のプレラーティが麻薬をキメて執筆した魔術書。
表紙は人間の皮膚で装丁されており、苦悶で歪んだ表情を浮かべたデスマスクがあしらわれている。
背表紙には美少年の裸像を模った銀細工が施されており、禍々しくもかなり悪趣味なデザイン。

非ユークリッド幾何学模様の建物が建ち並ぶ【世界から隔絶された異界】に繋がっている。
この魔術書は、そこに住む【海魔】を呼び出すのだ。
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