転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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『聖女の為の螺湮城(チフォージュ・シャトー・ルルイエ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:100~10000 最大捕捉:10000人
【アカシックレコードをハックしてジャンヌ・ダルクのデータを抽出する】という目的で建造された複合型聖遺物神殿。……を、螺湮城教本で呼び出した海魔で模造したもの。
非ユークリッド幾何学的な外観の、SANチェック不可避の見た目。でも原材料は海魔。
空をラピュタめいて浮かんで移動し、海魔を砲弾めいて射出する防衛機構も搭載された浮遊要塞。
そして、この城を直視した者は精神力対抗ロールを行い、失敗した場合発狂する。



第三十七話 聖女の為の螺湮城

夜。

深夜が始まったばかりの、人々が起きている時間。

それは、海から浮かび上がって現れた。

 

非ユークリッド幾何学的な建造物が無秩序に乱立し、されど荘厳なパイプオルガンを思わせるシルエットの、浮遊城。

 

その名を【聖女の為の螺湮城(チフォージュ・シャトー・ルルイエ)】。

 

【キャスター】ジル・ド・レが呼び出した海魔が無数に固まり絡み合い、かつてのジル・ド・レの築き上げた聖遺物複合神殿、聖女を蘇らせる為にアカシックレコードへの接続能力を持ったチフォージュ・シャトーを模しているのだ。

海魔たちの故郷、螺湮城に半ば似せて……。

 

そして、螺湮城に似せているからこそ、その城を目視した者は己の正気を疑った。

空を浮く巨城。

冒涜的外観。

非常識的な、その光景。

 

冬木市の人々の正気は削れていく……。

 

 

 

冬木市民正気度ロール【1D10】

 

結果【9】× 10 - 1%の市民が発狂……。

 

 

 

「アイエエエエエエエエエ!!!?」

「あ……あ、ああああああ!!!!!????」

「ああ、空に!ソラに!!うわあああああ!!」

「ああ、やっとわかっタ。ウチゅウはソラにアる……」

 

冬木市民の、89%が発狂。

街はパニックに陥った。

発狂した運転手が乗る市民バスは横転炎上。

人の多く行き交う駅前パークは発狂者による殺人事件で親が子を踏み逃げ、子が親を置いて逃げる地獄絵図。

未遠川に架かる冬木大橋からは、飛び降り自殺するもののが続出。

螺湮城を直視した者の内、自我を守る為に気絶するか自らの目を潰した者もいた。

 

そして、アレイスターへ睨みを効かせる為の留守番組もまた……。

 

 

 

 

留守番組正気度ロール【1D10】

 

一鳴【8】(確定セーフ)

弦十郎【8】(9以上で発狂)

了子/フィーネ【6】(5以上でフィーネが出る)

立香【10】(5以上で発狂)

コルデー【5】(5 以上で発狂)

 

 

 

「うわぁ……」

 

ドーモ、一鳴です。

街が騒がしいんで部屋の窓から空を見たら、冒涜的外観のチフォージュ・シャトーが浮かんでました。

チフォージュ・シャトー、だよねシルエット的に?

なんか見てたら精神がゾワゾワしてくるんだけど……。

 

『貴公、あまりアレを見ぬ方がいい』

 

と、サイコロ神。

 

『アレは本来ならば人が見てはならぬモノ、この世の理から外れたモノ。輪廻転生を果たせし貴公で有るからこそ耐えきれるモノ』

 

見たらSAN値削れるのね。

というか、輪廻転生したらSANチェキに耐性出来るのかぁ。

 

とにもかくにも。

つまりアレはジル・ド・レの宝具ですね(白目)

 

『然り。アレはキャスター、ジル・ド・レの宝具なり。サンジェルマンたちは、あの中で未だ戦っている』

 

生きているのか、良かった。

さて、問題はこっちよね……。

 

「なんだ、アレは……ッ!」

「くっ……!!」

 

弦十郎さんと了子さんも空を、城を見る。

 

「あれ、見ないほうが良いですよ」

 

俺はそう言うと、カーテンを締める。

 

「十中八九、ジル・ド・レの宝具ですね」

「ああ。心が抉れるような、なんという物を……。了子くんは平気……了子くん?」

「……ああ。私は、平気だ」

 

了子さんが金髪金眼になっていた。

 

「了子くん、フィーネが出てるぞ!(小声)」

「櫻井了子の精神では、アレは耐えきれなかったんだ!……あ」

 

了子さん、いやさフィーネがこっちを見る。

俺もフィーネを見ていた。

 

「了子さん」

「いや、違うぞ。じゃない。違うわ、一鳴くん。これは、そう、私実はスーパーサイヤ人になれるの」

「それは流石に厳しいぞ了子くん!」

「いやフィーネでしょ」

 

俺はもう知らないふりし通すのも面倒になった。

 

「ツァバトがフィーネ云々言ってたし。いまも弦十郎さんがフィーネ出てる、って言ってたし」

「ぐ……。そうだ、私はフィーネ」

「んでフィーネって何もの……」

 

言葉を繋げようとした、その時。

立香さんとコルデーさんの部屋から絶叫が響き渡る。

 

「うわああああ!!?」

「いやああああ!!!」

 

俺は即座に駆け出していた。

後ろに続くは弦十郎さん。

 

『───── Sudarshan tron』

 

俺は即座にシンフォギア装着。

二人の部屋の扉を無理矢理開けると、即侵入。

中では、立香さんとコルデーさんが空を浮く城を見て叫び続けていた。

 

「吩ッ!」

 

弦十郎さんが立香さんに当身を食らわせて気絶させる。

俺はコルデーさんの正面に回り込み、シンフォギアのパワーで裸締めを行使する。

当然抵抗されるが、俺は離れなかった。

完全にキマった裸締めからは、決して逃れられないのだぁ……!

コルデーさんは気絶。そして、そのまま霊体化。

 

「終わりましたぁ……」

「助かったぞ、一鳴くん」

 

弦十郎さんは携帯端末を仕舞いながら続けた。

 

「そして最悪の知らせだ。冬木市民の9割弱があの城を見て発狂。街はパニックだそうだ」

「鎮圧は難しいですか?」

「鎮圧する為の警察官や自衛官が発狂している。飛騨忍群や風鳴機関のエージェントでは手が足りない」

「うわぁ……」

 

冬木市はもう終わりかもしれんね(白目)

 

「なにか手はありませんかね?」

「とにかく、事態を鎮圧する為にも一鳴くんにはあの城に乗り込んで……」

 

と、そこで弦十郎さんの携帯端末に連絡が入る。

 

「俺だ。……ああ。……なにッ!……わかった!すぐ向かってもらう」

「どうしました?」

 

携帯端末を握る弦十郎さんの顔は厳しい。

 

「あの城から海魔が複数冬木市に向かって射出されているらしい。既にいくつかは冬木市に着弾、そのまま暴れているそうだ」

「はぁっ!?」

 

本当に非常事態であった。

ジル・ド・レは冬木を滅ぼすつもりか?

 

「街に着弾した海魔は俺や飛騨忍群で対処する!一鳴くんは射出された海魔を迎撃してくれ!!これは、空を跳べる一鳴くんにしか頼めない……ッ!」

「わかりました!そっちは任せます!」

 

そう言うと、俺は窓から飛び降り、そのままシンフォギアの脚部ブースターを吹かす。

推進力を得た俺はウィークリーマンションの壁を駆け上がり屋上に立つ。

そして、空を見る。

空に浮くチフォージュ・シャトー。

そこから撃ち出された海魔が、よく見えた。

 

俺は思いっきり力を込めて跳び上がる。

そして、ブースター点火。

一気に地上を離れて、天を跳ぶ。

アームドギア、生成。

戦輪を両手で持ち、浮遊城を睨む。

シャトーから射出された、海魔を。

 

「迎撃開始だ!!」

 

 

 

 

「なァ、不景気な面の旦那」

 

フォーリナー葛飾北斎がそう声をかける。

 

「不景気とは失礼だが、聞いてやろう。なんだ?」

「あの城、放っといていいのかィ?」

 

葛飾北斎が空を顎で指す。

アレイスター・クロウリーはちら、と見るとまた北斎に視線を戻す。

娘応為の身体を借りて顕現した北斎を。

 

「あの城ァ、この世にあっちゃァいけねェシロモノよ」

「だろうな。街は阿鼻叫喚よ」

「俺なんか放って、さっさと壊しに行った方が良いんじゃないかィ?」

「その心配は無用だ。既に、人を向かわせてる」

「……そうかィ」

 

北斎はそれきり黙った。

 

「葛飾北斎、貴様はあの城を知っているのか?」

「……あの城に住む、大ダコ神さんをなァ」

「……そうか、だから貴様が呼ばれたのかもな」

 

納得がいった、そう言うとアレイスターは指先を北斎に向けた。

北斎は避けなかった。

否、避けられないのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なぁ、不景気面の旦那」

「なんだ?」

「俺のますたぁだけは助けちゃくれねェかい?ハゲでバカでヤクザ者のハゲだけど、世話にはなったのサ……」

「良いだろう。元よりターゲットは貴様のみだ」

「そうかィ、そりゃァ安心した」

 

北斎は目を閉じた。

アレイスターの指先にデビルスターの魔法陣が現れ、そこから光線射出。

北斎の頭に当たった光線は瞬く間に北斎を銀と変える。

全身を銀に変えられた北斎は、そのまま消滅した。

 

「さて……」

 

アレイスターの指先はそのまま、北斎の後方でへたりこんだ禿頭の男に向けられる。

男は郷田潔。

フォーリナー葛飾北斎のマスターである、聖杯戦争参加者である。

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!お前、俺を助けるってさっき!」

「黙れ。質問に答えろ郷田潔。さもなくば、お前もオブジェに変わることになる」

「わ、わかった!」

 

郷田は激しく頷いた。

 

「所属は?」

「■■組、若頭の護衛だ!」

 

郷田が答えたのは、阪神最大規模の暴力団組織だ。

 

「そっちじゃない。裏の方だ」

「うぅ、阪神陰陽師連盟」

 

郷田は陰陽師だ。

式神を使い、人の弱みを握り裏社会で登りつめた。

そんな郷田を他の陰陽師たちは馬鹿にしていた。

陰陽道、魔道では登りつめられなかった愚か者、と。

だから郷田は聖杯戦争の話を聞いた時に、即座に飛びついた。

異端技術者同士の殺し合い。

それに勝ち抜けば、陰陽師たちも自分を認めるだろうと。

 

「その聖杯戦争の事を誰から聞いた?」

「し、新興宗教で教祖やってる女だ!」

「名は?」

「【天神合一会】の、至て、てん?て、ててててててて」

 

郷田が突如白目を向く。

涎がダラダラと垂れる。

 

「かかかか。ががっ。がっ!!」

 

ぱぁん、と。

郷田の頭が破裂。

アレイスターは飛び散る肉片を冷静に銀に変えて対応。

 

「神霊どもめ、口封じのつもりか?……まぁいい。エイワズをシェム・ハに至らせるのは俺よ。お前たちは黙って見ているといい」

 

アレイスターはそう言うと、懐よりテレポートジェムを起動させ、阿礼邸に帰還した。

 

 

 

 

チフォージュ・シャトー・ルルイエは悠然と空を飛んでいる。

地上の喧騒など、関係ないとばかりに。

 

そのチフォージュ・シャトー内部。

引きずり込まれたサンジェルマンとジャンヌ。

二人の目の前には豪奢な扉があった。

先程までの人の臓腑を思わせる冬木海底トンネルとは正反対の内装。

その奥に、ジル・ド・レの気配を感じて……。

 

サンジェルマンはジャンヌと頷き合うと、扉を開けた。

引きずるような音がして、扉が開く。

 

最初にジャンヌが剣を構えて中に入る。

その次に、サンジェルマン。

 

「……」

 

中は豪華な大部屋であった。

大理石の壁、床、天井。

天井からはシャンデリアが吊り下げられている。

シャンデリアは部屋を照らしている。

そして、部屋の奥。

大理石の階段を昇った先のエントランスに、ジル・ド・レは立っていた。

 

「お久しぶりでございますジャンヌ。貴女をずっと待っていましたよ」

「ジル……ええ、久しぶりね」

「そして、サンジェルマン。何年ぶりでしょうか?」

「さぁ。私は貴方と会いたくなかったけれど」

「私もですよ」

 

憎々しげにサンジェルマンを睨むジル・ド・レ。

 

「貴女は本当に憎たらしい!私より先にジャンヌに出会い、ジャンヌの心に入り込み、ジャンヌに信頼されている。……忌々しい!」

 

ジル・ド・レはサンジェルマンを睨んでいる……。

顔には青筋が浮いている。

 

「私が先に出会っていれば、ジャンヌは私のモノになっていたというのに……!!」

「……そうね、ジル。そうかも知れない。でもね───」

 

屹然と、ジャンヌは言い放った。

 

「あの日、ドンレミ村が戦火に焼けた日。死にそうな私を助けてくれたのはサンジェルマン様。そして、私と寄り添い語らい、私の歌を褒めてくださったのもサンジェルマン様」

 

ジャンヌは一瞬、サンジェルマンを見た。

だが、すぐに、ジル・ド・レに視線を戻した。

 

「そして、私に祖国を救う力が有ると教えてくれたのもサンジェルマン様で……。全てが終わった後、お仕えしたいと思った方もサンジェルマン様。だから、私は貴方とは共に歩めないわ。ジル、人をモノとしか見れなくなった貴方とは!」

 

ジャンヌは剣の切っ先をジル・ド・レに向ける。

ジル・ド・レはそれを見ると、嫌らしく笑った。

 

「ああ、ジャンヌ。貴女はやはり清らかで美しい。だからこそ、貴女は私を殺せない」

 

ジル・ド・レはそう言うと指を鳴らす。

瞬間、サンジェルマンとジャンヌの目の前の空間が歪む。

歪みは大きくなり、広がり、一つの光景を見せる。

それは、空から地上を見た俯瞰風景。

映るのは海。

海面に反射するのは螺湮城。

遠くに見えるのは、冬木市の地上だ。

発狂した人々が火の手の上がる街を練り歩く。

 

「なっ……!?」

「これこそ、私の居城。海魔たちの故郷!そして、貴女の暮らす住処となる【聖女の為の螺湮城(チフォージュ・シャトー・ルルイエ)】」

「……それが、貴方の宝具ね」

「そうとも!見たものを狂気の坩堝に叩き落とす螺湮城!そして、この城に入り込んだネズミはあと2匹……!」

 

空間の歪みはまた、別の景色を映し出す。

カリオストロとプレラーティだ。

二人は肉の回廊の中にいた。

床も壁も天井も悍しい肉の触手で固められた螺湮城の外壁内部。

そこに二人はいた。

大量の海魔と共に……。

 

「カリオストロ!プレラーティ!」

「二人は邪魔だったので、別の場所に送らせて貰いましたよ」

 

空間の歪みから、声が聞こえてくる……。

 

『クッソ、いったい何匹出てくるワケダ!?』

『わかんないわよぅ!!さっさとサンジェルマンたちと合流したいのにぃ!!』

 

カリオストロとプレラーティは海魔を撃破していきながら、前に進む。

だが、その顔からは冷や汗が流れている。

二人は消耗している……。

 

「ジャンヌ、サンジェルマンと契約を切り私と共に参りましょう」

「断ったら、二人を殺すのですね?」

「私は殺しません。この城から無限に湧き続ける海魔が彼女らを殺すのです」

 

詭弁を弄するジル・ド・レ。

対するジャンヌは奥歯を噛み締めている。

そして、一瞬サンジェルマンを見ると口を開いた。

 

「───わかりま」

「断る」

 

ジャンヌの言葉を遮るサンジェルマン。

 

「サンジェルマン様?」

「このままなら二人は死ぬでしょうね。でも、その前に貴方を殺せば問題は無いでしょう?」

「サンジェルマン、仲間を見殺しにする事になるぞ」

 

ジル・ド・レがそう言うと、カリオストロとプレラーティの周り床、壁、天井から更に海魔が湧き出る。

 

『更に増えたワケダ!』

『勘弁しなさいよね!!』

「さあ、二人が死ぬぞサンジェルマン!今なら、土下座したら許してやる!」

 

ジル・ド・レが睥睨して、叫ぶ。

だが───

 

「私の仲間を舐めないで頂戴!」

 

サンジェルマンが叫ぶ。

錬金術による通信を試みたのだ!

 

「カリオストロ!プレラーティ!聞こえる!?」

『この声!サンジェルマン!』

『無事だったのね!』

 

空間の歪みに映る二人が反応する。

 

「単刀直入に言うわ!今から私とジャネットでジル・ド・レを殺す!それまで耐えなさい!」

 

更に続けた。

 

「プロトタイプ・ファウストローブの使用を許可するわ!!」

 

その言葉を聞いた途端、カリオストロとプレラーティに笑顔が浮かぶ。

 

『了解したワケダ!』

『わかったわ!こっちは気にしないで、チャッチャと決めちゃいなさい!』

 

二人はそう言うと懐からラピス・フィロソフィカス───賢者の石を取り出す。

そしてその賢者の石にはゴテゴテとしたコンバーターユニット、エネルギーをプロテクター状に変換する装置がついている。

二人がラピスを掲げる。

ラピスが赤く光り、二人の身体を包み、そして。

 

プロトタイプ・ファウストローブが装着されていた。

それは、AXZのファウストローブと違い、灰色一色ではあるものの、そのエネルギーは桁違いである。

 

『やってやるワケダ!』

『このままサンジェルマンのところにたどり着いてやるんだから!!』

 

ファウストローブを纏った二人は、先程とは異なり、余裕綽々に海魔を撃破していく。

 

「な、なんだそれは!!」

 

ジル・ド・レが困惑し叫ぶ。

 

「とある天才が持たせてくれた、秘密兵器よ」

 

聖杯戦争のために、冬木に向かう直前。

キャロルが手渡したものだ。

 

『急ごしらえで耐用性と持続性に不安はあるが、十分役に立つはずだ』

 

そう、言いながら。

 

サンジェルマンは苦笑いを浮かべる。

こちらを心配してくれる、心の奥底では優しい少女を思って。

 

一度使えば壊れかねない、脆さ故に今まで使用を許可しなかった秘密兵器。

サンジェルマンもそんなラピス・フィロソフィカスを掲げる。

赤い光があふれ、ファウストローブを纏うサンジェルマン。

 

「すごい力ね……。これでプロトタイプなんて……」

「ぐぅぅぅぅ!!認めない!認めないぞ、そんな事ぉぉぉおお!!!」

 

ジル・ド・レの身体、否、存在にヒビが入る。

ヒビは大きくなり、ジル・ド・レの身体が割れていく。

そして、中から醜い悪魔が現れる。

牡牛めいた頭。

赤く輝く目、捻じくれた角。

腕はコウモリのような翼に変異し、全身を異形の筋肉に包んだ怪物。

 

それが、ジル・ド・レの中から現れたのだ。

これこそが、ジル・ド・レの本性。

ジャンヌをサルベージせんとする、錬金術によるアカシックレコードへの接続行為により、その身体はアカシックレコードを巡る魂魄───超容量の情報に冒されていた。

結果、ジル・ド・レの肉体は醜く変質したのだった。

 

「そっちの格好の方がお似合いよ、ジル・ド・レ」

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」

 

ジル・ド・レが雄叫びを上げる。

すると、大理石で作られた部屋から肉の触手に変化していく。

 

「これはッ!?」

「幻、だったのね」

 

完全に肉の触手に切り替わった大部屋。

あちこちから海魔が滲み出てくる。

 

「サンジェルマン!貴様の手足を切り落として、ジャンヌのマスター権を奪ってやるぞ!その後は、海魔どもに辱められるがいい!!」

「そんな事は、させません!」

「ええ、そうね。行くわよ、ジャネット!!」

 

 

 

サンジェルマン&ジャンヌVSジル・ド・レ【1D10】

 

サンジェルマン【3】+5(P(プロトタイプ)・ファウストローブ補正)

ジャンヌ【4】+5(サーヴァント補正)

ジル・ド・レ【5】+5(サーヴァント補正)+3(海魔による補助)

 

[サンジェルマンとジャンヌの合計値が、ジル・ド・レより多ければ勝ち]

 

 

 

「はあッ!」

 

サンジェルマンの灰色銃から放たれた弾丸が、ジル・ド・レの身体を貫く。

 

「ぎゃぁあああ!!サンジェルマン!許さん!!」

 

天井を旋回するジル・ド・レが、サンジェルマンに突撃する。

 

「させないッ!」

 

ジャンヌが剣に光を纏わせて迎撃。

ジル・ド・レの翼膜を切り裂く。

 

「ぎゃあっ!」

 

地面に激突し、転がるジル・ド・レ。

止めを刺そうとするサンジェルマンとジャンヌを阻む海魔たち。

 

「邪魔よ!」

「どいて!」

 

だが、海魔たちでは太刀打ち出来ない!

しかし、ジル・ド・レが体勢を整える時間は稼げたようだ。

立ち上がったジル・ド・レが口を開き、赤黒い閃光を放つ。

それを受け止めたのは、サンジェルマンだ。

 

「ぐぅぅぅッ!」

 

腕を交差させて受け取るサンジェルマン。

だが、ジリジリと腕の装甲が焼けていく。

それでも、サンジェルマンは怯まず、叫ぶ。

 

「ジャネットぉ!」

「はいッ!!」

 

ジル・ド・レがサンジェルマンに向かい合っている間に側面に回り込んだジャンヌ。

ジル・ド・レは気付くものの、サンジェルマンに閃光を放っているので動けない。

ジャンヌはそのまま、ジル・ド・レの首に剣を振り下ろす。

 

「ぎゃあああああ!!痛い、痛いぃぃい!!ジャンヌ、おやめください!」

「止めないッ!」

 

そのまま、剣を光らせて最後まで振り下ろす。

 

「じゃ、ん、ぬ……」

「ごめんね、ジル……」

 

牡牛めいた頭がごとり、と落ちる。

その目から光が消えて。

魔力に還元されていく。

 

「ジル……」

「これで、終わったのね……」

 

そう、サンジェルマンが呟く。

その時、すぐ近くの壁が砕ける。

その奥から、カリオストロとプレラーティが駆け足で現れる。

 

「サンジェルマン!ジャネット!無事だったワケダ!」

「やっと会えたわぁ!!」

「カリオストロ!プレラーティ!」

「良かったぁ!無事だったんですね」

 

しばしの再開を祝う四人。

そして、気付く。

 

「……城が、消えていく」

「城?」

 

サンジェルマンは二人に説明した。

今いるのが、ジル・ド・レの起動させた宝具で、ジル・ド・レを倒したから消えていっている、ということ。

 

「そして、今ここは地上ウン百メートルの上空で……」

「下は海、というワケダ」

「そうなるわね……」

「さっさと脱出するワケダーッ!」

 

四人は壁や床に出来た隙間をくぐり抜けて、なんとか外に脱出した。

サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティは空を浮いている。錬金術によるものだ。

唯一飛べないジャンヌはサンジェルマンがおぶっている。

 

四人は崩れていく【聖女の為の螺湮城(チフォージュ・シャトー・ルルイエ)】を見る。

どうやら部品として冬木海底トンネルの一部を使っていたみたいで、金属やコンクリートが海に落ちていく。

その中に、大きな肉塊があった。

大きさは5メートルほどか。

小さな触手をわたわたと動かし落ちていく肉塊。

触手の一つに、令呪が刻まれている肉塊。

ジル・ド・レがジャンヌの器として改造したマスターの成れの果て。

本物がいるからと、改造を途中で止めて螺湮城を呼び出し持続させる為の魔力タンクとして閉じ込められていたのだ。

 

その、かつてのマスターが海に落ちていく。

水しぶきがあがり、全てが底に沈む……。

 

「長かったわね……」

「残すはアレイスターだけなワケダ」

「ええ、そうね」

 

四人はしばし、崩れて消えていく螺湮城を眺める。

 

「取り敢えず、拠点に帰りましょっか!」

 

カリオストロがそう言い背後を、冬木市の方を向く。

 

「……なにあれ?」

 

思わず、カリオストロが呟く。

サンジェルマンとプレラーティ、そしてジャンヌもまた振り向いてカリオストロが見るものを見た。

 

火の手の上がる冬木市。

その郊外。阿礼邸のある深山町郊外。

そこから。

 

光の柱が天に昇っていた。

 

 

 

 

「ジル・ド・レが倒された」

 

アレイスターが満面の笑みで言う。

阿礼邸の地下。

復元された異端聖杯の前。

星乃の前で口を開く。

 

「エイワズの復活には、十分な魔力が溜まった」

 

球形の聖杯を優しく撫でるアレイスター。

 

「俺とお前の願いは、ようやく叶う」

「はい」

 

星乃の言葉に笑うアレイスター。

 

「さぁ、始めよう。聖杯戦争の総仕上げ」

 

アレイスターは聖杯を撫でていた手を、聖杯に突っ込む。

光が、魔力が溢れる。

 

「神霊の復活、そして」

 

アレイスターが聖杯に飲み込まれていく。

 

「統一言語に眠るシェム・ハを引き継ぐ、神の新生を!」

 

アレイスターが完全に聖杯に取り込まれる。

聖杯から光が溢れ、天を貫き伸びていく。

 

思わず手を掲げて視界を覆う星乃。

そんな星乃に聞こえてくる、魂を揺さぶる叫び。

 

「■■■■■■■■■■ーッ!」

 

目を細め、光の奥の、叫ぶ何かを見ようとする星乃。

そこには、ひび割れた聖杯から湧き出る、ナニカがいた。

 

それこそ、かつてアレイスター・クロウリーが見えた神秘。

先史文明期の神シェム・ハ。

アヌンナキと呼ばれた、外宇宙よりの使者の内の一人。

その、魂の一欠片。

 

神霊エイワズが、復活したのだ。

 




聖杯戦争編もやっと最終盤です。
長かった……。

そういえば、大人セレナの情報出ましたね。
「仕事終わりに飲むビール」が好きなようです。

……新歓でたらふくビール飲まされるセレナさん。
酔い潰れたセレナさんを持ち帰ろうとした野郎どもが、逆にセレナさんに酔い潰されていく……。
それを見て「私を酔い潰そうなんて百年早いんですよ」と冷たく言い放つセレナさん……。
でも彼氏の一鳴くんが迎えに来た瞬間酔ったフリしてしなだれかかって「どこかで休憩しませんか(超絶甘え声)」なんて言うセレナさん……。
彼氏と二人、夜の街に消えていくセレナさん。それを見送りながら「マジ半端ねぇっスセレナさん」と、思う女性社員たち……。

よきかな……(千と千尋の神隠しの河の神感)
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