転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
文字数堂々の1万字オーバーです。
いつもの2倍だ!
マリアさんが攫われた。
ラーヴァナによって。
ラーヴァナは言った、マリアさんを助けたかったら一人で追ってこい、と。
俺をラーマだと思いこんでいるラーヴァナが俺を確実に殺すために誘っているのだろうか。
とにかく。
俺に、助けに行かないという選択肢は無かった。
愛する人を、マリアさんを必ず救い出す為に。
「一鳴さん……」
背後から声をかけられる。
セレナちゃんだった。
後ろには皆もいた。
「マリア姉さんを、助けてください!」
「もちろん」
俺はセレナちゃんの目を見て、そう言った。
「絶対、絶対助けるから」
「約束ですよ!」
「マリアの事、助けてね」
「絶対の絶対デスよ!」
セレナちゃんだけじゃなく、調ちゃんと切歌ちゃんも声を掛ける。
三人はF.I.S.にいた頃からマリアさんと一緒だったから、余計に心配なのだろう……。
『すこーし待ちなさい!』
と、2課から通信が入る。
了子さんだ。
『一鳴くん、あなた本当に一人で行く気!?』
「はい」
『ラーヴァナに防戦一方だったのに!?』
「勝てるかも、って戦法は考えていますよ」
『……罠かもしれないわよ』
「それでも、行きます」
俺の意思は硬かった。
「了子さん。俺はねブチ切れてるんですよ。マリアさんを攫ったラーヴァナにも。そのマリアさんを助けられなかった俺自身にも」
『…………。止まる気はない、という訳ね』
了子さんは深い溜め息を一つ。
『勝てるかもって戦法、詳しく教えなさい』
「了子さん……」
『あなたの考えた戦法、こっちで修整してあげる。ラーヴァナは今回、ステルス機能は使わずに飛行中よ。だから、見失う心配はないわ』
「誘っていますね」
『だからこそよ。貴方が来るのを待っているからこそ、時間に多少の猶予はあるわ』
「……わかりました」
俺は考えた戦法を伝えた。
「ラーヴァナのチャンドラハースを隙見て奪ってエネルギーの奔流でヤります」
『クッソ雑ね……』
了子さんに呆れられてしまった。
でも俺が考えている戦法って、原作響ちゃんがデュランダルからビーム出してフィーネ倒したアレを元にしているのである。
つまり原作リスペクトな。
『正直言って、成功率は低いわね。ラーヴァナからチャンドラハースを奪うのも厳しいし、完全聖遺物であるチャンドラハースをあなたが扱うのも厳しいわ』
「ですかね?」
『必ず、チャンドラハース側からの抵抗があるわ』
それはつまり、原作響ちゃんが黒くなったアレであろうか。
うーん、俺の属性が怒属性になってしまう(XDU感)
「愛と勇気と気合でどうにか抑えますね……」
『あなたなら本当にどうにか出来そうね……』
了子さんは呆れ声だ。
まあ、確かに行き当たりばったりではあるけれども。
でもなんとかする自信はあるのだ。
こういう時、得てして自身の悪い面、弱い面と精神世界で対峙するのだ。
ようはそのもう一人の自分を受け入れるか打ち勝つかすれば良い訳で。
そんなの、
『……、もう一つ。抑える為に必要なものがあるわ』
「はい……?」
『胸の歌を、信じなさい』
その声は優しげであった。
胸の歌。
シンフォギアのテーマの一つだ。
それは心臓が刻む命の鼓動であり。
心に秘めた想いでもあり。
つまり、心身共に、己を信じろ的な(あやふや感)?
「わかりました」
『よろしい!……丁度、ラーヴァナの反応が静止したわ。座標は、太平洋に浮かぶ無人島。地図に載らない、個人所有の島ね』
「データ、受信しました。シンフォギアで跳んでいける距離ですね」
ラーヴァナが待つのはここから百数キロ先の孤島。
シンフォギアの力で跳んでいけば一時間強といったところ。
「待て、一鳴……」
と、跳び立とうとした俺を呼び止める声。
キャロルちゃんだ。
そういやラーヴァナに投げ飛ばされたきり、忘れていたね……。
「キャロルちゃん、無事やったのね」
「さっきまで、気絶していたがな。だが、事情は聞いている」
「そっか」
「一人で行くんだな」
「行かなきゃマリアさんが殺されるもの」
「なら、お前に一つ教えなければならない事がある」
と、キャロルちゃん。
「ラーヴァナの最期だ」
「ラーヴァナの?」
「……ラーマーヤナにおいて、ラーマ王子との一騎打ちの末、ラーマ王子のブラフマーストラを受けてラーヴァナは死ぬ」
ブラフマーストラ。
アグネヤストラとも。
インド神話において、ブラフマンというなんか漠然としたスゴイ力があり、それを利用した必殺技である。ブラフマン+アストラ(矢の意味)の合成語だ。
インドの神々は全てがブラフマンから生まれたとされ、故にインドの創造神はブラフマンと同一視されるブラフマーと呼ばれる。
つまりブラフマンとは神の力であり、もともとはヴェーダ聖典の言葉の持つ聖なる力の事だとか。
神の力……、言葉の力……。シンフォギアの原点がここにありそうな気がする……。
閑話休題。
そんなスゴイパワーなブラフマンを撃ち出すのがブラフマーストラ。インドの英雄は皆使える。
「つまり俺もブラフマーストラを使えば……!」
「修行が足りないから無理だ」
「バッサリと……!」
「だが、ここにラーヴァナを倒すヒントがある」
言葉を引き継いだのは了子さんだ。
『ラーヴァナのあの再生力の秘密であるアムリタを、ラーヴァナの体内から蒸発させて殺したのがラーマ王子のブラフマーストラなのよ』
「…………そういう事だ」
説明を取られたキャロルちゃんは不服そうだ。
「アムリタ。甘露とも呼ばれる不死の妙薬の事だ。ラーヴァナもこの妙薬を飲み不死の肉体となっていたが、ラーマ王子が蒸発させた事でアムリタの効能が切れて死んだ……と、伝えられたのがラーマーヤナだ」
『本当はアムリタが少しだけ残っていて遺跡に封印されていた。なるほど。インド政府は、ラーヴァナの体内に僅かに残ったこのアムリタを研究してたみたいね!』
「それで復活されて、こっちが尻拭いする事になるとはな」
『そこら辺は、弦十郎くんと訃堂司令が落とし前つけてくれるわよ』
なんか話がズレていってるわね?
「つまり、ラーヴァナの体内のアムリタ蒸発させて殺せって事です?」
「そういう事だ」
『なるほどね。チャンドラハースだけじゃ足りないと踏んだわね』
確かにラーヴァナの体躯は頑丈だ。
チャンドラハースのエネルギーの奔流では倒し切れないかも。
「チャンドラハースでダメージ与えて、トドメでスダルシャンの炎で体内を焼けと」
「ああ。お前が勝つにはそれしかないだろうな」
「……発想こわ〜」
「うるさい!!」
キャロルちゃんが怒ってしまった。
「ごめんなさい。冗談ですから」
「ふんだっ!」
「見た目相応な対応しないで……」
「良いからさっさと行け!……恋人を助けるんだろう」
「……ええ。わかりました。んじゃ、行ってきます」
俺は脚部装甲のスラスターから炎を噴き上げながら跳躍。
「セレナちゃん、みんな!マリアさん、助けてくるから!」
「お願いします!」
皆が手を振る。
応援しているのだ。
期待しているのだ。
祈っているのだ。
ならばそれに応えないとネ。
俺はアームドギアの上に乗る。
サーフボードめいたスタイルで乗ったアームドギアは、円周部分を高速回転させながら、炎を発生させる。
火炎は推進力を産み、高速で前進する。
脚の炎だけじゃ、速度が足りないと思ったのでサーフボードスタイルを構築したけれど、うまくいって良かった。
このままラーヴァナが待ち受ける島まで一直線だ。
◆
ラーヴァナは瞑想していた。
偶然見かけた孤島に降り立ち。
広い草原に一本だけ生えた樹の下で。
座禅を組み、目を瞑り。
チャンドラハースは地面に刺していた。
攫ってきたピンク髪のシータは近くに着陸させたプシュパカ・ヴィマナの上でへたり込んでいる。
しかし、その目には諦めの色はない。
ラーマが、一鳴と呼ばれたラーマが必ず助けに来てくれると信じているのだ。
ラーヴァナは記憶を探る。
かるか昔、最初のシータを攫ってきた時も、同じ目をしていた。
ラーマが助けに来ると信じているのだ。
確かな愛。
確かな信頼。
ラーヴァナがついぞ得られなかった物。
ラーマ。
ラーヴァナを殺す為にカストディアン・ヴィシュヌがその魂と記憶をホムンクルスに移した者。
アヌンナキ殺しの力を■■■・■より得たラーヴァナを殺す為に造られた存在。
ラーヴァナは思い返す。
自身が再起動した理由を。
この国の、冬木と呼ばれる土地から発された神の力を察知した為だ。
■■■・■に仇するアヌンナキを殺す為に。
あるいは■■■・■に与するアヌンナキを助ける為に。
だが。
自体は既に終息していた。
聖杯戦争と呼ばれる儀式の果て、召喚されたエイワズは■■■・■の眷属であり、そして裏切り者でもあった。
そのエイワズが発した神の力を察知して、ここまで来たのだった。
察知したのは神の力だけではなかった。
微弱ながら、ヴィシュヌの武器の反応も捉えていた。
神の力と同じ場所で。
そして、神の力を持つエイワズを殺した者の一人がヴィシュヌの武器の力を扱う一鳴だった。
ヴィシュヌは■■■・■の敵対者であった。
シヴァは傍観していたものの、ヴィシュヌと■■■・■は相争う関係であり、故にこそ■■■・■の眷属を一鳴が殺したのだろう。
ならば。
ラーヴァナは一鳴なるラーマを殺さなければならない。
ラーヴァナに油断は無かった。
座禅を組み、瞑想し、体内に僅かに残ったアムリタを活性化させる。
傷が癒やされるのが感じられる。
■■■・■によって与えられた肉体が全盛の姿を取り戻すのを感じる。
思考が、鮮明になっていくのを感じる。
突如、ラーヴァナは気配を感じた。
ここから数キロ先。
高度2000メートル。
速度、時速百数キロ。
到達予想時刻、あと十秒。
ラーヴァナは立ち上がる。
チャンドラハースを握り、大地から引き抜く。
全身に力を入れる。
体躯は一回り大きくなり、故障個所は全て修復されていた。
左腕は、完全に機能を取り戻しており、背中の副腕群はチャンドラハースから取り出したエネルギー刃を握っている。
頭からは角が生え、その角は天高く伸びる。
前方を睨む。
上空から炎が落ちてくる。
着弾。
土煙があがる。
炎が漏れる。
ラーヴァナは目を離さない。
土煙が晴れる。
そこには───
「一鳴ッ!」
マリアなるシータがヤツの名前を呼ぶ。
一鳴。
ラーマ。
ソレが目の前十メートル先に居た。
「驚いた。空を飛んできたのか、ラーマよ」
ラーヴァナが問い掛けた。
「俺も驚いた」
「お前、まともに喋れたんだな」
◆
太陽が沈み、月が空に輝く逢魔が時。
俺はラーヴァナと相対していた。
身長を越える戦輪であるアームドギアを持ちながら。
「お前が来るのを待つ間に、かつての機能の八割を取り戻す事が出来たのだ」
「確かに、威圧感が違うな」
ラーヴァナの全長はもはや8メートルに至ろうとしており、左腕は完全に修復されている。
背中にある20本の副腕は、それぞれが自律稼働しており、翠色の光剣を持っている。
チャンドラハースの権能だろう。
これこそが、全盛期に近いラーヴァナか。
「ラーマよ、降伏しろ。力の差は歴然だ」
「降伏したら、どうする?」
「楽に殺してやる」
なんでもなさそうに、そう言うラーヴァナ。
「……マリアさんは、どうする?」
「案ずるな、我が妻として迎えよう」
「……ッ!?」
ラーヴァナの言葉に、怯えの色を目に浮かべるマリアさん。
俺は、プシュパカ・ヴィマナの上からこっちを覗き込むマリアさんに向かって一瞬、微笑む。
これで、安心してくれたら良いけれど。
「じゃあ降伏はナシだな」
「ほぅ?」
「マリアさんは俺の女だ。お前じゃ荷が重いよ、過去の遺物」
「抜かす」
クツクツと笑うラーヴァナ。
俺も、笑う。
ああ。本当に。
コイツは気に入らない!
「「死ね!」」
動いたのは同時だった。
一気に踏み込み武器を振るう。
スダルシャンとチャンドラハースがぶつかり合う。
一鳴VS真ラーヴァナ【1D10】
1 神代の羅刹王の独壇場
2 ラーヴァナ優勢
3 ラーヴァナ優勢
4 ラーヴァナ優勢
5 互角
6 互角
7 一鳴優勢
8 一鳴優勢
9 一鳴優勢
10 一鳴怒りのアラバマオトシ
結果【10】
「イヤーッ!」
「ぬぅぅうん!!」
スダルシャンとチャンドラハースがぶつかり合う。
火花が散り、不快な金属音が鳴り響く。
ラーヴァナの剛力が、俺をアームドギアごと押していく。
「ぐぅ……!」
「隙ありだ、ラーマぁ!」
ラーヴァナが嘲笑う。
チャンドラハースが光る。バラルの光、肉体の自由を奪う月の光だ。
「二度も同じ手段が通じるか!」
俺はラーヴァナの剛力を利用して、チャンドラハースを受け流す。
ラーヴァナがチャンドラハースに引きずられて前のめりになる。
俺はその脇を通り背後に回る。
バラルの光回避!
「ぬぅぅッ!?」
ラーヴァナが驚きの声を上げる。
俺はその隙を逃さなかった。
ラーヴァナの背後から腰をがっぷりと掴む。
そして、背部ブースター及び脚部ブースター点火!
一気に最大火力に達する。
「なんだ!?」
「空の旅にご招待だ!」
ラーヴァナが浮かぶ。
否、俺につられて空に射出。
地上から百メートル地点に到達。
俺は空を蹴って、方向転換。
前転めいて前倒しになり、頭を地上に、足を天に向ける。
もちろん、ラーヴァナも同様に。
「まさか!」
「そのまさかだラーヴァナァ!!!」
俺は怒っていた。
ラーヴァナに負けたことに。
マリアさんを攫われて、怖い目に合わせてしまった事に。
その怒りがシンフォギアを通じて、ブースターの火力を限界突破させる。
俺が外付けブースターとなって空へと飛び上がり、ラーヴァナを地上に向けてぶつける。
これぞ、訃堂司令直伝のイヅナ落としである!
「ぶっ飛べェェェ!!!」
「ぬぉおおおおおお!!」
時速100キロオーバー。
その速度で地上に向けて加速。
ラーヴァナが抵抗して、副腕による光剣攻撃をしてくる。
しかし、俺はそれを腰部アーマーから出した小型戦輪で迎撃!
ラーヴァナを逃さない……!
あっという間に地面が近付く。
もがくラーヴァナ。
俺は絶対に離さない。
ラーヴァナをぶつける、ギリギリのギリギリまで。
まだ……。
まだ…………。
…………………いまだ!
「イヤーッ!」
「グワァァァァァア!」
ラーヴァナの頭を地面に刺して離脱。
ラーヴァナは加速によって首が完全に埋まる。
衝突の衝撃でチャンドラハースが吹き飛ぶ。
俺はチャンドラハース近くに着地。ラーヴァナとプシュパカ・ヴィマナの中間地点だ。
「一鳴!」
俺の勝利を確信し、プシュパカ・ヴィマナを降りようとするマリアさん。
「まだだ!」
「えっ……?」
俺はマリアさんを制した。
「コイツはこの程度じゃ死なない。まだだ。まだだから、……もう少し、待ってて?」
「……わかったわ」
そう微笑みながら言って、マリアさんはプシュパカ・ヴィマナの上に戻る。
その微笑みは、俺の勝利を信じていた。
「……よし!」
俺の後ろにマリアさんが居る。
目の前には地面に刺さったチャンドラハース。
ここで負ける訳にはいかない。
覚悟を決めよう。
否。
覚悟は、この世界に生まれる前に決めたのだったな。
俺はチャンドラハースに手を伸ばす。
ラーヴァナの手を離れ、刃渡り1メートル程に縮んだチャンドラハースの、柄を握った。
「あ──────ァァアア■アアア■■■アア■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
◆
気が付けば、真っ白い空間にいた。
天も地も白い空間。
何もない領域。
否、目の前に暗い影がポツンと立っていた。
人のような影。
いや、少年の影か。
「なあ」
その少年の影が声を掛けてくる。
どこかで聞いたような声。
これは……、俺の声か……?
「お前にとってこの世界は娯楽なのか?」
娯楽?
「この世界は、【戦姫絶唱シンフォギア】ってアニメの世界なんだろ?なら、お前はアニメの世界で楽しく生きてるって事だよな?それは娯楽って事だろ」
影はそう断定する。
「みんな真剣に生きてるのに、お前だけシンフォギア纏って楽しく無双して、彼女三人作って。なあ、この世界に生きてる他の奴に恥ずかしいと思わないのか?」
影はそう詰る。
俺は───
一鳴の返答【1D10】
1 うるせぇ!
2 うるせぇ!
3 うるせぇ!
4 うるせぇ!
5 うるせぇ!
6 うるせぇ!
7 うるせぇ!
8 うるせぇ!
9 うるせぇ!
10 うるせぇ死ね!!!!!!!!!!!!!
結果【5】
「うるせぇ!」
俺は影をぶん殴った。
「ぐえっ!?」
影は混乱している。
「オラッ、お前はチャンドラハースが見せる俺の弱い心だろオラッ!」
「ぎっ、ぐぎぃ!?」
馬乗りになり、影をボコボコにする。
「俺がこの世界を娯楽として捉えてる?そんな訳無いだろノイズとかいる危ない世界だぞ!娯楽狙いならガルパンの世界に行くわ!」
「グワーッ!」
右ストレートが影の頬を捉える。
「俺が無双?助けられなかった人も沢山いるし冬木で逆レされかけたわダボ!」
「グワーッ!」
左ストレートが影の頬を捉える。
「彼女三人作って?前世じゃもっと嫁さん居たわアホ!」
「グワーッ!」
右ストレートが影の頬を捉える。
「俺もこの世界で真剣に生きてるわ!真剣だからマジになってマリアさん助けに来たんだよ!」
「グワーッ!」
左ストレートが影の頬を捉える。
「お前が俺の弱い心なら、お前もマリアさん助けたいだろ!」
「グワーッ!」
右ストレートが影の頬を捉える。
「もし違うなら力だけ寄越して隅っこでジッとしてろ!」
「グワーッ!」
左ストレートが影の頬を捉える。
「さあ返答はどっちだ?返事はどちらでもいいから力を貸せ!もしくは寄越せ!さぁ、ハリーハリーハリー!!」
「グワーッ!」
右ストレートが影の頬を捉える。
「ま、待て!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!待ってくれ!タンマ!降参!」
影が抵抗を辞めて、両手を掲げて降参のポーズ。
「力を貸してくれるね?」
「はい……」
「君は俺の弱き心かな?」
「はい……」
「チャンドラハースが具現化させた?」
「はい……」
俺は最後の質問をした。
「マリアさん、助けたい?」
「……当たり前だろ!」
「よろしい」
俺は影から退いて、手を差し伸べた。
「さあマリアさんを助ける為に手を取り合おう!俺には君が必要なのだ!」
「ちくしょう俺の心が強すぎる!」
影は悪態をつきながら手を取った。
そんな俺の影に、一つ教えてやろう。
「知らんのか。ハーレム作るにはまず心が強くないといけないんだよ」
◆
「■■■■■■■アア■■ア■アアアアアああッおおおおらッしゃあああああ」
俺は雄叫びと共にチャンドラハースを引き抜いた。
翠緑の光を湛える神剣。
破壊神シヴァが、ラーヴァナの蛮勇を讃えて与えた月の微笑み。
その微笑みに光が増す。
ラーヴァナが頭を地面から引き抜く。
そして、此方を見る。
目を見開く。
「バカな、チャンドラハースを……ッ!?」
そう言う間にチャンドラハースのチャージが終わる。
「昨日のお返しだァッ!」
チャンドラハースを振るう。
翠玉の如き光の奔流が放たれる。
翠月残光波
「ぐおおおおおおおおお!!?」
ラーヴァナに奔流が命中。
胴体で受け止める。
「うおりゃああああああああ!!」
「ギャアアアアアアアアアア!!」
チャンドラハースに力を籠める。
シンフォギアの力を奔流に込める。
ラーヴァナの右腕が吹き飛ぶ。
胴体にヒビが入る。
チャンドラハースがエネルギーを全て出し尽くし、奔流が消える。
チャンドラハースはくすんだ緑色となる。
ラーヴァナは胴体が凹み、右腕が千切れたものの、いまだ健在。
「……耐えきったぞ、ラーマァ!」
「まだだァ!」
俺はチャンドラハースを投げ捨て、地面を蹴った。
ラーヴァナに対して一気に詰め寄る。
「なっ!?」
ラーヴァナが防御しようとする。
しかし、遅い。
チャンドラハースのダメージと、イヅナ落としによる脳のダメージが、ラーヴァナの行動を遅らせたのか。
俺はラーヴァナの凹んだ胴体に右腕を突っ込む。
「ぐぅぅ……!貴様、何を……ッ!?」
「ラーマに代わって、お前に引導を渡してやるッ!」
さて。
俺のシンフォギアはスダルシャン。
維持神ヴィシュヌの持つ、太陽を象徴とする戦輪だ。
その戦輪のエネルギーを装甲としているからこそ、俺のシンフォギア装束は各所からプロミネンスめいた炎を吹き出せる。
装甲自体が、聖遺物の特性を持っているのだ。
そのシンフォギアを纏った右腕をラーヴァナの胴体に突っ込んでいる。
つまり何が言いたいか?
俺はシャイニングフィンガーが使えるという事だ。
「これが俺の
「ぎぃやあああああああ!!!」
ラーヴァナが断末魔の悲鳴を上げる。
胴体のヒビから炎が漏れる。
ラーヴァナの体内を、異常発熱したシンフォギアの右手で内側から燃やしているのだ。
紅蓮灼熱手
「バァニング、ラブッ!!」
「あああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
ヒビ割れた胴体から、千切れた右腕から、口と目から炎が吹き上がる。
「アアアアア■アア■ア■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■…………」
もはや声も出ないラーヴァナ。
全身が黒く焦げていく。
そして───
「ラ、……マ────」
ラーヴァナは。
灰となって散った。
最後に、怨敵の名を呼んで……。
「うっ……」
思わず呻く。
ここまで飛んで来て、ラーヴァナと戦って。
肉体にダメージが蓄積されていたようだった。
ダメージが蓄積されていたのは、俺だけでなく。
シンフォギアも解除されてしまった。
「一鳴ッ!」
ふらふらと倒れそうな俺を、駆け寄ってきたマリアさんが受け止めてくれた。
「あ……マリアさん」
「一鳴、無事なのッ!?」
「ええ……。えへへ、無事です。だいぶ無理はしましたけれど」
マリアさんの腕に力が入る。
「私が、攫われたから……ッ!」
「そうですね」
俺もまた、マリアさんを抱き締めた。
身長の関係上、顔が胸に埋もれる。
やわこい……。
「大好きなマリアさんが攫われたから、必死こいて助けに来ました」
「一鳴……」
「でも、自分のせいでなんて、思わないで下さい」
「……」
「むしろ俺が助けに来てくれた、って誇って下さい」
俺はマリアさんに笑いかける。
マリアさんの心に傷が残らないように。
「というか、謝るべきは
「一鳴……」
「ごめんなさい、マリアさん」
「ううん、いいのよ」
そう言うマリアさん。
「ただ……」
「はい」
「もう少し……。もう少しだけ、こうしてあなたを感じさせて……」
「ええ、もちろん!」
そうして。
俺とマリアさんは抱き締め合う。
お互いの体温を、お互いの命を感じ合うように。
◆
と言う訳で今回のオチ。
ラーヴァナは完全破壊され、残ったインド産聖遺物は月の刃チャンドラハースと空飛ぶハイスペ戦車プシュパカ・ヴィマナ。そして俺が切り落としたラーヴァナの副腕一本。
もちろんインド政府が引き取りに来たのだが、上層部でどういう話が成されたのか、チャンドラハースは日本で引き取る事になった。
『と、言う訳で貴公のデュオレリック用聖遺物はチャンドラハースだった訳だ』
サイコロ神はそう言った。
そのチャンドラハースは永田町最深部、特別電算室【記憶の遺跡】に運び込まれた。
チャンドラハースが日の目を見るのは、まだしばらく後であるようだった。
貴重な完全聖遺物である。仕方ないね。
そんな訳で。
ラーヴァナ、チャンドラハース、プシュパカ・ヴィマナというクソヤバ完全聖遺物を日本に流出させたインド政府への落とし前はつけたという訳であった。
しかしラーヴァナ事件の余波は大きく。
プシュパカ・ヴィマナによって2課のデータベースがハッキングされた一件を訃堂司令は重く見ており、防諜の強化を命じたのだ。
これによって2課の黒服及びオペレーター陣は年末年始の休暇を返上する事になった。
……今度差し入れ持ってこよう。
そして、ラーヴァナに壊された孤児院の壁はドクターウェルの発注した建設会社が半日で直した。
また、敷地内に緊急時用のシェルターも同時に建設された。
子どもたちは、これでクリスマスパーティーが出来ると喜んだそうな。
めでたしめでたし。
……では終わらなかった。
「ふぇぇ……反省文終わらないよぉ」
俺は反省文を書かされていた。
罪状は、シンフォギアの故意による破壊。
原因はラーヴァナを燃やしたシャイニングフィンガーもとい紅蓮灼熱手である。
シンフォギアの腕部を異常発熱させて相手を燃やし尽くすヒサツ・ワザであるが、それはシンフォギアのシステムに負荷を物凄く与える技であった。
そして、俺はそれをわかって使ったのよね。
シンフォギアをオーバーロードさせて限界を超えた熱を発生させる。
ラーヴァナを倒す為の必要な措置、だと思ったのだ。
それ以上にその場のノリで使った感は否めないのだが……。
まあとにかく。
シンフォギアを壊して了子さんの仕事を増やした俺は反省文を書かされていたのであった。
「ドクター助けてぇ……」
「いやぁ、それはダメですよ一鳴くん」
俺が反省文を書かされている隣でモンブランを食べるドクターウェルである。
俺が反省文を書き上げるまでの見張りであった。
「マリアやレセプターチルドレン……孤児院の子どもたちを助けてくれたのは感謝していますがね。櫻井研究主任に絶対に手伝うな、と言われていますので」
「ふぇぇ……」
反省文を原稿用紙10枚分書けとかキツい。
鬼!悪魔!フィーネ!
「ドクター!英雄目指してるなら、困ってる俺を助けてくれぇ」
「一鳴くん、日本ではこう言う言い回しがあります。『若い時の苦労はブックオフで買ってでもしろ』と」
「苦労ならもう十分してるよぉ!!」
結局。
反省文を書き上げるのに3時間かかり。
ドクターは4個のケーキを平らげたとさ。
ちゃんちゃん。
決めるべきところで決める。
一鳴くんは主人公の器です。
二次創作者兼なんちゃってあんこ作者としては絶頂モンですわぁ!(10の出目を見ながら)
あ、あと一鳴くんの精神世界でのダイス目は戦闘ダイスの結果がどうであれ、アレで据え置きです。
前世でハーレム作って結婚して精神が成熟してるので、心がすでに完成済みなんですよ一鳴くん。
例えるなら6部のスタープラチナなんです。成長済みなんですよね。
次回は孤児院でのクリスマスパーティー回かな?お楽しみに。
それじゃあまた!