転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
明けましておめでとうございます。
今年も作者と、拙作をよろしくお願いします。
今回の話は、ちょっと懐かしい人が出てきますよ。
2040年1月2日。
深夜2時。
人々から寝静まり、初夢を見ている頃。
横浜の街を東京湾を横目に走る10トントラックが一台。
その前後を挟むように黒いトヨタのセンチュリー。
彼らは2課のエージェントである。
トラックの荷台に載せたモノを深淵の竜宮に納める為に、正月の深夜に車を走らせているのだ。
深淵の竜宮。
日本領海内の海底に建てられた、聖遺物の保管庫である。
内部に納められるのは得てして、役に立つというよりも厄介極まりないモノばかりである。
彼らが運んでいるのも、そういったものである。
10トントラックの中。
強化ガラスで出来たシリンダーが一つ。
透き通る緑色の溶液の中に居るのは、人でありながら完全なる機械となった女性。
冬木の街にて聖杯戦争を執り行い、神霊エイワズを蘇らせた魔術師。
手足を切り落とされた頭と胴体だけの人型兵器。
その名を、阿礼星乃と言った。
その星乃はシリンダーの傍らに侍る女性に声を掛ける。
「貴女まで一緒に来なくていいのよ、菊江」
菊江、そう呼ばれた女性はゆるゆると横に首を振る。
「私は星乃様の侍女でございますから。地獄の底までお供致します」
「そう」
二人は幼少の頃から主従の間柄にあった。
だからこそ。
二人は親友としての関係も育んできたのだ。
たとえ、主が人を捨てても。
たとえ、主がモノとして海底に封印される事になっても。
菊江は星乃の側を離れるつもりは無かった。
「……」
そもそも。
星乃を深淵の竜宮に納めようと言い出したのは2課ではない。
冬木に政治基盤を置く官僚や政治家である。
星乃は聖杯戦争を円滑に運営する為に、そう言った官僚や政治家たちに裏金を渡して協力させていたのだ。
だからこそ、星乃は知っている。彼ら政治屋たちの裏の顔、影での行いを。
だからこそ、彼らは恐れたのだ。
星乃が彼らの悪行を2課に言う事を。
もっとも、その程度の悪行など2課はとっくの昔に知っているのだが。
とにもかくにも。
だからこそ、彼らは星乃を深淵の竜宮に押し込める事にした。
人から変異した人外、聖遺物として。
2課は抵抗したのだが、星乃がそれを了承したのだ。
(私はもう……)
星乃は疲れていた。
人を捨たのは、エイワズを蘇らせたのは、聖杯戦争を開催したのは、アレイスター・クロウリーを召喚したのは、全て死んだ娘を蘇らせるために。
娘の真緒を再びこの腕に抱くために。
しかし、その願いは果たされなかった。
残ったのは、硬く冷たい機械の身体。
星乃には生きる気力というものが無くなっていた。
だからこそ、そんな自分に菊江を付き合わせるのは嫌だったのだが……。
(無理矢理着いてくるんだものね……)
2課も、菊江を深淵の竜宮に向かわせるつもりは無かったのだが、本人が強く希望したのだ。
あまりに根強く希望したので、最終的に訃堂が折れたのであった。
「菊江」
ありがとう、そう言おうとして。
トラックが大きく揺れた。
「きゃあ!!」
「菊江!」
揺れに耐えきれず、床に倒れ込む。
「大丈夫です。ですが、一体なにが……」
「空に、何かいるわね」
星乃の頭部センサーは、トラックの上空に居る何かを察知していた。
「大きいわね……、このトラックよりも大きい。……それにホバリング音が聞こえる。しかも二重に。……サイドバイサイド方式のツインローターか」
更に重低音。
そして浮遊感。
「星乃様!?」
「トラックを持ち上げたのね。……なら、上に居るのは輸送ヘリ【STORK】ね」
星乃はセンサー類から得た情報と、重工業系企業の株主だった知識からトラックを持ち上げた物の正体を看破した。
輸送ヘリ【STORK】、コウノトリの名を持つヘリだ。
機体の左右両端に大きなメインローターを備え付けた大型輸送ヘリだ。
装甲も分厚く拡張性も高いので、戦地でも運用される名機である。
そして、輸送用のアームはトラック一台運べる程のパワーを持っている。
「どんどん持ち上げられていくわね……。現在上空50メートル。……運転手は、飛び降りて逃げたのね」
運転席の方をセンサーで察知して、そう星乃は言った。
「星乃様、私たちはどこに……!」
「さぁ?少なくとも、深淵の竜宮では無いでしょうね」
ヘリはどんどん上昇していく。
方向転換、速度を上げて飛んでいく。
「星乃様……」
「安心なさい。少なくとも、すぐに命を取るつもりは無いでしょうから」
「それは、わかりますが……」
もし星乃の命が目的なら、トラックをロケット砲なりなんなりで破壊しただろう。
だが、犯人はヘリでトラックごと連れ去る事を選んだ。
なら、目的は星乃か菊江の身柄である。
「……交渉出来る相手なら良いのだけれど」
せめて、こんな自分に着いて来てくれた菊江だけは守りたい。
そう思う、星乃であった。
◆
2040年1月2日。
7時。
2課の発令室にて。
俺は急に2課に呼び出されていた。
「おい、今はオレも一鳴も正月休みだぞ。それを呼び出すなら余程の事態なんだろうな?」
キャロルちゃんが目元をヒクヒクさせながら弦十郎さんに言う。
休み中に呼び出されたからね、半ギレなのね。
「二人とも済まない。しかし緊急の事態が発生してな」
「なんです?」
「5時間程前、深淵の竜宮へ護送中の阿礼星乃が連れ去られた」
「は?」
弦十郎さんが言うには。
深淵の竜宮に星乃を収蔵する為に、横須賀基地に向けて走っていたトラックを、トラックごとヘリが連れ去ったのだという。
阿礼星乃。
聖杯戦争を開いた魔術師にして、聖杯を作る技術を持った魔女。
そして、機械の身体を得た女性。
「護衛連中は何をしていた?」
と、キャロルちゃん。
「護衛は最低限でな、コレには勝てなかった」
そう言うと、弦十郎さんがモニターに映像を出す。
護衛の車に備え付けられたカメラだろうか。
トラックに覆い被さる大きな機械が映る。
ローターが2つ付いた、大きなヘリコプター。
「これは……」
「STORK、という輸送ヘリコプターでな。装甲が分厚く、護衛の持つ武装では装甲を抜く事すら出来なかったんだ」
「まあ、硬そうですからね……」
STORK、5メートルほどの人型兵器を運んでそうだし、タフだよなぁ。
でも、これ結構目立つよね。
「犯人はこのヘリ持ってる奴ですよね。目立つから、すぐ見つかりませんか?」
俺の疑問に弦十郎さんは苦々しい顔で答えた。
「それなんだがな……」
「何か?」
「38、だ」
「……なにが、です?」
「日本でこのヘリコプターを所有している組織、企業、個人だ」
つまり、38の容疑者が居ると言う事か……。
「絞り込めないのか?」
キャロルちゃんが聞くが……。
「ある程度は現在絞り込んでいる所だが、それでも20はあるという話だ」
「話にならんな……」
嘆息するキャロルちゃん。
「それで弦十郎さん、俺達はどうすれば?」
そう、星乃を探すのに俺もキャロルちゃんもあまり役には立たない。
いや、キャロルちゃんは錬金術師だから、物探しの術式とかあるかも知れんが。
「この映像を見る限り、相手は武装集団である可能性がある。そして、更なる攻撃を仕掛けてくる可能性も」
「つまりもしもの時の為の備えとしてオレたちに待機させるという事か」
「そうだ」
キャロルちゃんは憮然としている。
「正月から迷惑な奴らだ」
「本当にね……」
「まったくだ……」
俺たち3人はため息をついた。
「そう言えばキャロルちゃん、ミカちゃんは?」
「アイツは家だ。エルフナインの護衛でな」
「なるほど」
「エルフナインには破壊されたオートスコアラーの作成を頼んでいる。……もう少ししたら人不足も解消されるかもしれんぞ?」
「それは嬉しいね」
前線で戦えるの、俺とキャロルちゃんとミカちゃんだけだものね。
しかもミカちゃんは基本的にエルフナインちゃんの護衛で離れられんし。
ガリィちゃんたちが復活したら大分楽になるぞぉ!
そんな事を話していると……。
アラームが鳴り響く。
「なんだ!?」
「市街地にて、何者かによる襲撃です!」
「現在、……広範囲に被害が!」
オペレーター陣による報告。
敵さんが早速行動に移したかしら。
「早速出番だな」
「昨日お餅いっぱい食べたから、運動には丁度いいね」
食べ盛り、という事で食べ過ぎてしまった。
お腹がぷにる前に運動しましょ。
「出撃するぞ!」
「頼む!」
弦十郎さんの言葉を背に受けて、発令室を去る。
さぁ、正月を騒がせる悪い奴を懲らしめましょ!
◆
俺とキャロルちゃんは、キャロルちゃんのテレポートジェムで攻撃を受けている街に転移した。
「これは……、酷いな」
被害を受けたのはビジネス街、正月で人通りは少なく人的被害は出ていないらしい。
しかし、道やビルはひび割れ壊れている。
そして、何より。
「凍ってる……」
道もビルも、そして街路樹も全てが凍っていた。
「錬金術師の仕業か?」
「にしても、街一つ凍らせられるもの?」
俺の疑問にキャロルちゃんが答えた。
「オレならともかく、普通の錬金術師には厳しいな」
「つまり敵は並々ならぬ錬金術師か」
「あるいは聖遺物を使ったか」
街の中に入る。
道もビルも凍っている。
そして白い冷気が街を包む。
寒いな……。
そして、物音一つしない。
「敵さん、どこいった?」
「さぁな。油断するなよ、一鳴」
「こんな視界不明瞭な所で油断なんてしませんよ」
10メートル先が霞む中、油断なんて出来るはずもなし。
そんな訳で上下左右警戒していたのだが。
「……ッ、一鳴!」
キャロルちゃんが叫ぶ。
辺りから何者かが疾走する足音。
それが四方から。
つまり。
「複数犯か!」
迎撃ダイス【1D10】
(数が多い人に有利)
一鳴【6】
キャロル【2】
襲撃者たち【3】
「イヤーッ!」
俺はアームドギアの大戦輪を振り回す。
こんな冷気の中、炎を出せば水蒸気で視界がとんでもない事になるので、炎は無しである。
そして、襲撃者たちはその戦輪の一撃だけで迎撃出来てしまった。
否、
「……は?」
「これは……自動人形か?」
キャロルちゃんが襲撃者の破片を見て呟く。
破片は手足のような物、球のような物、そして顔のような物。
そして、その顔は……。
「なんだと……ッ!?」
「これ……」
その顔は少女の顔であった。
虚空を見る濁った目。
鋭利な歯の生えた口。
黒いボブカットの髪。
その髪を纏める青いヘアバンド。
……これ、ガリィちゃんじゃない?
「ガリィ……何故だ?」
キャロルちゃんが呟く。
その呟きに答える声が聞こえる。
「あら、わたくしのオリジナルをご存知なのですね」
その声の主は道を歩いてくる。
カツン、カツン。カツン、カツン。
冷気の奥からその姿が見える。
黒い装甲。
細長い顔。
紅い瞳。
人よりも高い背丈。
それは黒い馬の自動人形だった。
「え、馬?」
「それはわたくしの愛馬です」
その黒馬の自動人形の背から、更に声。
冷気が突如として晴れる。
青い空が、白く凍った街が見える。
そして、声の主。
此方を見る濃い青の目。
鋭利な歯の生えた口。
黒いボブカットの髪。
その髪を纏める青いヘアバンド。
手には、黒い天秤。
「ガリィ!?」
キャロルちゃんが叫ぶ。
なら、やはりあの自動人形はガリィちゃんなのか?
「いいえ、いいえ!わたくしはガリィ・トゥマーンでは御座いません!そして、そこに転がる量産型も!」
彼女はガリィちゃんではないと言う。
そして、そこらに転がる襲撃者の成れの果てもガリィちゃんではないと。
なら、彼女らは一体……。
「わたくしは
新生の四騎士、メカニカルクォーターズ。
彼女は、ガリィちゃんに似た黒騎士はそう自称した。
「
「わたくしだけではありませんわ、レディ・キャロル」
そう黒騎士は言う。
その直後、更に3つの気配が黒騎士の背後から現れる。
「そうとも」
「わたしたちもまた、ここに」
「そうだゾ。我ら四騎士、ここに揃っているゾ」
コツコツと、凍った道を進む3騎の人形騎士たち。
一人は白い馬型自動人形に乗り。
金色の瞳。
癖っ毛の黒髪。
スレンダーな体躯。
その手には金色の弓と矢。
その顔はレイア・ダラーヒムと同じものか。
「
一人は赤い馬型自動人形に乗り。
緑の瞳。
栗色のロングヘア。
女性的な身体付き。
その手には、幅広のレーザーブレード。
その顔はファラ・スユーフと同じものか。
「
一人は青ざめた馬型自動人形に乗り。
紅い瞳。
紅く豊かなロール髪。
真っ黒な大型の掌の指には、爪の代わりに穴が空いている。
その顔はミカ・ジャウカーンと同じものか。
「
青騎士が気になる事を言う。
「顔合わせ?」
「そうだゾ」
青騎士が頷く。
白騎士が言葉を繋いだ。
「我ら四騎士、今日は我らが主の言葉を伝えに来た」
「主?」
わざわざキャロルちゃんの自動人形と同じ顔の自動人形を用意した人間の言葉か。
「そうだ」
「我らが主は、昨夜、阿礼星乃を我らが館に招かせていただきましたわ」
と、赤騎士。
阿礼星乃を拐った犯人は、やはりコイツら一派か。
「で?」
「阿礼星乃の居る、我らが館。その場所を知りたくば」
「わたくしたちを倒して、頭の中のチップを集めて下さいな」
黒騎士が、自分の頭を指でコツコツ叩く。
「4つ集めたら、館の場所がわかる仕様です」
「ほう……。なら、今すぐにでも!」
キャロルちゃんが戦闘態勢に入るが……。
「止めたほうが宜しいですよ?」
黒騎士が止める。
「同胞たる青騎士は、人間相手なら有利に立ち回れますから」
「そうだゾ」
黒騎士が言う。
黒騎士は静かに手を上げて、指を街路樹に向ける。
そして。
黒騎士の指から黒い煙が射出される。
「な!?」
「黙って見てるゾ」
黒い煙は街路樹にまとわりつく。
煙の奥、街路樹は少しずつ削られ小さくなり。
そして、十秒もしない内に消え去った。
「にひひ。これがアタシのチカラだゾ」
「派手じゃないが、強力だろう?」
「有機物を分解するナノマシン、ですわ」
白騎士と赤騎士が言う。
有機物を分解するナノマシンとは。
∀ガンダムの月光蝶の有機物版か。
確かに人間特攻だな……。
「しかし、わざわざ俺達に手の内教えるとか、油断しすぎじゃない?」
「それでも勝てると判断したまで、です」
黒騎士がそう言う。
「わたくしたちはわたくしたちの有用性を我らが主に証明したいのです」
「そうだ。我らはただの人形にあらず」
「四騎士揃えば負けは無し」
「そして、一騎でも負けはしないと証明するんだゾ」
つまり、奴らは。
「我らは貴方たち2課に決闘を申し込みます」
「我らは一騎」
「貴方たちは何人でもどうぞ」
「だが、もしここで勝負すると言うのなら」
白騎士が指を鳴らす。
瞬間、ビルの影から。窓から。裏路地から。
ゾロゾロと自動人形たちが現れる。
レイアの、ファラの、ガリィの、ミカの。
それぞれの顔をした、無数の自動人形たち。
「我らをかたどった量産型自動人形1000機。いや、先程破壊された4機を引いて996機の量産型と共に挑み掛かろう」
「勝ち目は無いから止めておくべきかと」
「アタシとしては、ここでやるのも良いと思うゾ」
「青騎士、派手に抑えろ」
キャロルちゃんと背中合わせになる。
街中から視線。
本気で1000機近く街にいるみたいだな。
勝率は……低いな。
特に、青騎士のあのナノマシンはヤバい。
自動人形の中、使われたらマズイぞ……!
「聞こえるか、一鳴くん!キャロルくん!」
「弦十郎さん!」
本部の弦十郎さんから連絡。
「その決闘は、受けるべきだ。今の君たちに勝ち目は無いッ!」
「……確かに」
悔しいけれど、確かにそうなのよね。
俺はキャロルちゃんと目を合わせる。
キャロルちゃんは唇を噛み締めて小さく頷いた。
「オレたちは、その決闘を受けよう」
「わかりましたわ」
赤騎士がそう言う。
「では、日時はいずれ連絡致しますわ」
「もう帰るのか?」
「まだ壊し足りないけど、仕方ないゾ」
「そうですねぇ。決闘の時を楽しみにしておきましょう」
量産型の自動人形たちが何処かへ去っていく。
同時に四騎士たちが、馬を操りもと来た道を去っていく。
黒騎士が天秤を掲げる。すると、白い冷気が街を包む。
騎士たちが見えなくなる。
「おい!一つ教えろ!」
「なんでしょう?」
白い冷気の奥、黒騎士の声が響く。
「その顔はなんだッ!なぜその顔をしているんだッ!?」
「……その答えは我らが主に会った時にわかるでしょう」
クスクスと笑う黒騎士。
その笑い声も聞こえなくなって。
冷気が晴れていく。
残ったのは凍った街と自動人形の残骸4つと、俺たちだけだった。
「キャロルちゃん……」
「一鳴、わかっている」
キャロルちゃんの背中を撫でる。
キャロルちゃんは拳を握っていた。
「あれは、俺の
四騎士モチーフはいつか出したかった。
そしてオートスコアラーは終末の四騎士と呼ばれていた。
だから悪魔合体させてもらった。
この自由さが二次創作のウリよねぇ。