転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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この前見た夢の話。
仕事内容は不明だが、私は髭面で四角い顔のオッサンの部下。結月ゆかりが同期。
オッサンに恋愛相談して雪音クリスちゃんとデートして夜景のキレイなトコロでキスして、プロポーズ。そして結婚。
クリスちゃんの愛が重い、と周りは言うけど私は気にしてなかった。
そんな夢。
ちなみに結月ゆかりは髭面のオッサンとワンナイトラブしてたし、髭面のオッサンは既婚者。
そして結月ゆかりは私が結婚したと聞いて悔しがってた。
どんな夢だ。フロイト先生、診断オナシャス。
私がクリスちゃん大好きって事しかわかんないよ。

そんな訳でバレンタイン回です。
ちょっと早いけど、来月仕事でどうなるかわからないし、多少はね?



第五十三話 護りたいハッピーバレンタイン

2月14日。18時。

バレンタインデーである。

 

聖ヴァレンティヌスが結婚を禁じられた兵士の為にこっそり結婚式を行っていたエピソードから発展した、好きな人にチョコを贈る日である。

まあ、お義理で異性にチョコを贈り、ホワイトデーに3倍返しを巻き上げる半沢直樹もビックリの暴利を貪る女性もいるが。

 

それはさておいて。

今日は火曜日。平日である。

あるが。

俺は地元を離れて、2課のある街に出ている。

なぜか。

 

「一鳴さん、お待たせ」

「さぁ、行きましょう!」

「二人とも急いじゃだめよ」

 

調ちゃん、セレナちゃん、マリアさんとのデートの為である。

折角付き合いだして初めてのバレンタインだもの。

愛する人とデートしたいじゃない。

だから俺は事前にキャロルちゃんからテレポートジェムを貰って、放課後すぐにこっちに来れるようにしておいたのだ。

ちなみにその時、キャロルちゃんからもチョコを貰った。

シンプルなチョコレートケーキ、でも口当たりが滑らかで手間暇かかった一品。

エルフナインちゃんと一緒に作ったのだそうな。

こりゃホワイトデーの品も腕によりをかけて用意しないと……!

 

「えい」

 

と、調ちゃんが俺の右腕に腕を絡める。

 

「あ、調さんズルい!」

 

セレナちゃんがそう言い、俺の左腕に腕を絡める。

挟み撃ちの形になるな。

 

「もう、二人ともはしゃぎすぎよ」

 

マリアさんがそう言うが、その目は羨ましげである。

あとで、抱き締めてあげなきゃ(使命感)

 

「それで、今日はどこ行くの?」

 

今日のデートはマリアさんたちの発案である。

俺はどこに行くのか知らないのだ。

 

「今日は、小物を買いに行こうかと」

「セレナが孤児院を出てリディアンの寮で暮らすから」

「色々見に行くんだよね」

 

ああ、そうだった。

セレナちゃん今年から高校生なのだ。

リディアン音楽院に入学して、寮で暮らす事になる。

その小物を買うのである。

ちょうど、街でもバレンタインモールなる特別な品揃えの店が出ているらしいしね。

可愛らしい小物がいっぱいである。

 

「なるほどね。ふふん、俺がセンスいい小物を見繕ってみせませう」

「フフ、お願いしますね」

「私も頑張る」

「寮で暮らすなら、あった方がいい物もあるし、そういったものなら教えられるわ」

 

四人で街を歩く。

調ちゃんとセレナちゃんに挟まれて、その後ろからマリアさん。

店先にはバレンタインデーの飾り付けがされて、チョコの甘い匂いが洋菓子店から漂ってくる。

そして、街を歩くのは俺達と同じようにカップルが多い。

彼らもきっと、バレンタインモールに行くのね。

 

「流石バレンタイン。カップル多いね」

「バレンタインですからね!」

 

セレナちゃんがぎゅっ、と身体を押し付ける。

 

「私達みたいにカップルでデートしてるんですよ」

「そうだね」

 

調ちゃんもぎゅっ、と身体を押し付ける。

 

「恋人たちにとって、大切な日だから」

「そうよ」

 

マリアさんが、俺の服の裾を掴む。

 

「大切な日だから、一緒にいたくなるの」

「なるほどね」

 

うーん、愛されてる。

 

「そういえば、バレンタインといえばチョコですが」

「フフ、ちゃんと用意してるわよ」

 

マリアさんが微笑む。

 

「でも、まだです」

「エッ、ナンデ?」

 

セレナちゃんにそう言われた。

お預けナンデ?

 

「あのね、この街に【岩の戦士ハベル像】っていうオブジェがあるの」

 

と、調ちゃんが教えてくれる。

なんやその古竜の牙振り回してそうな高強靭マンの像は……。

 

「そのオブジェの下で愛を誓いあったカップルは、岩のように変わることなく永遠に愛し合えるって言われてるのよ」

 

マリアさんが言葉を繋げてくれる。

ハベルに愛にまつわる言い伝えなんてなかったやろ……。誰だよ捏造したの。

でも……。

 

「ロマンチックだね」

「うん」

 

キラキラした目の調ちゃん。

 

「だから、ハベル像の下で、私達のチョコをお渡ししますね」

「永遠の愛を込めて、ね」

 

セレナちゃんとマリアさんにそう言われた。

なるほど。

そういう訳ね。

 

「わかった。チョコはそれまで、楽しみにしてます」

「ええ、期待しててね」

 

みんなにそう言われると、余計に期待が膨らむというもの。

それにしても、永遠の愛か。

いいよね……。

万物流転、この世に変わることのないものは無い。

だとしても、この愛は永遠に続いていくと、変わらないと信じる。信じ続けて、行動する。

そんな人間の心は、美しいと思いました(作文感)

そんな事を考えていると。

悲鳴が聞こえた。

 

「え、なに?」

「近いよ?」

 

セレナちゃんと調ちゃんが当たりを見渡す。

更に何かの破壊音が聞こえた。

 

「キャッ!」

「調!」

 

怯える調ちゃんが俺にしがみつく。

その調ちゃんを庇うように、マリアさんが近づく。

 

「あ、あれ!」

 

セレナちゃんが指差す。

その方向には、バレンタインセール中のスーパー。

その店先に、ノイズが居た。

ノイズが暴れているのだ。

人々が逃げ惑う。

 

「皆!」

「はいっ!」

 

俺の声に答えるように、調ちゃんとセレナちゃんが腕を離す。

 

「───── Sudarshan tron」

 

聖詠を唄う。

瞬間、シンフォギアがプロテクターを形成。

黒い部分の多い赤銅色の装甲。

細身の機械鎧は全身を覆い、腰から伸びる大型スカートアーマーは下半身を隠す。

胸部装甲は上に伸びて喉を隠す。

そして最後に背中に光輪めいたアームドギア形成。

シンフォギア、装着完了である。

 

「3人とも、避難誘導をお願い!」

「わかったわ!」

「まかせて」

「一鳴さん、頑張って下さい!」

 

3人の声援を受けて、俺はノイズに突貫した。

 

「イヤーッ!」

 

アームドギアを振るう。

炎がノイズを覆い、ノイズを溶かす。

 

「え?」

 

ノイズを溶かす?

ノイズって、溶けるの?

そんな疑問をよそに、ノイズは溶けて崩れ落ちた。

 

「なに、これ?」

 

なにか、おかしい。

普通ノイズは溶けないし、その残骸はほとんど残らない。灰になって吹き飛ぶのみだ。

だが、このノイズは溶けて残骸が残っている。

いや、そもそも。

この甘い匂いはなんだ?

少し焦げ臭いし。

というか、このノイズ、茶色くない?

 

「いや、まさか……」

 

ノイズの残骸に指を突っ込む。

掬う。

指にノイズの残骸が着く。

茶色くて、甘い匂いで、すこしとろけてる。

ぺろり、と舐めてみる。

甘い。

甘くて、すこしビター。

 

「チョコだこれ!」

 

チョコで出来たノイズだ。

チョコノイズ?

胡乱なのが出てきた。

 

「一鳴くん、聞こえる?」

 

と、2課から通信が入る。

 

「藤尭さん?」

「一鳴くんが今いる所で高エネルギー反応を捉えたんだけど……」

「あー。なんというか。チョコで出来たノイズが居ました」

「え、チョコのノイズ?」

 

藤尭さんも混乱している。

 

「いや、バレンタインだからってそんな……、ッ! さらに高エネルギー反応多数! 一鳴くんッ!」

「もう視認してますよ」

 

そう。

目の前に無数のチョコノイズ。

つい先程、出現したのだ。

 

「一鳴くん、避難誘導の人員を派遣するからそれまで、民間人の保護をッ!」

「了解!」

 

そんな訳で。

チョコノイズたちを破壊していこう。

……と、思ったのだが。

 

「………………あの、藤尭さん。チョコノイズたち、人には目もくれず街だけ攻撃しているんですが」

「……うん、こっちも報告来てるよ。人的被害は、パニックになった人たちが避難する途中でコケて膝を擦りむいたとかだけだ」

 

うん。

チョコノイズたち、人間にはまったく興味を示さないのだ。

彼らが攻撃するのは街の施設だけ。

しかも、バレンタインの飾り付けとか、バレンタインセール中のチョコレートとかだけだ。

まあ、それでも迷惑極まりないので、チョコノイズを破壊して回ってるのだが。

 

「しかし一体、誰がなんの目的でこんな事を……」

 

思わずボヤいてしまう。

と、その時。

 

「フーッハッハッハ!!」

 

と、高笑い。

 

「誰だ!?」

「ここだッ!」

 

俺の声に答えるかのように、3人の影。

 

「さすが噂のシンフォギア装者、オレたちのアルカ・チョコノイズをこうもやすやすと倒すとは……」

「アルカ・チョコノイズ、だとぉ!?」

 

背の高い、いじわるそうな男。

無線から、弦十郎さんの驚く声!

というか、アレ、アルカ・ノイズの一種なのか。

 

「貴様の活躍で、吾輩たちの目的達成が遅れている。流石だな……!」

 

中肉中背の、強面の男。

 

「目的……。バレンタインっぽい物を壊してるのはやはり、貴様らか!」

「まさかもなにも、こんな登場をしておいて、事件の首謀者じゃないと思ったのかな〜?」

 

俺の問いかけに、背の小さいひょうきんそうな男が答える。

 

「チョコノイズもとい、アルカ・チョコノイズを量産して、バレンタインっぽいものを破壊する貴様らは何者だッ!?」

 

俺の問いかけに、3人は高笑いして答えた。

 

「オレの名は現今の真理の探求者・アクチュアルッ!」

 

と、いじわるそうな男、アクチュアルが名乗る。

 

「吾輩は往昔の探求者・ガンゲンハイト……」

 

と、強面の男、ガンゲンハイト。

 

「そして、オイラは曇りなき未来の探求者・ツークンフトだいッ!」

 

と、ひょうきんそうな男、ツークンフト。

 

「「「我ら! 3人合わせて錬金術師トリオ・クラウディオッ!!! 見知り置くがいいッ!!!」」」

 

3人が堂々と名乗る……!

 

「トリオ・クラウディオ……ッ!」

「ふ、オレたちの威光に恐れたか」

「シンフォギアといえど、所詮は小学生よ……」

「オイラたちの方が100倍スゴイんだ!」

「いや、どこの組織?」

 

初耳の組織であった。

 

「お、オイラたちの事知らないとか……!?」

「ば、バカなッ!? 錬金術師界に彗星の如く現れたニューホープ、かの有名なクラウディオだぞッ!?」

「いや、知らん……」

 

初めて聞いた。

え、原作に居たっけ?

あ、オリジナル組織か!

 

「がはッ!」

 

アクチュアルが膝から崩れ落ちる。

 

「リーダー、しっかりしろ!」

 

ガンゲンハイトがアクチュアルを支える。

 

「ウチのリーダーは繊細なハートの持ち主なんだぞッ! あんまりイジメるなよッ!」

「ええ……」

 

ツークンフトに責められた。

 

「おい」

 

と、ここでキャロルちゃんから通信。

 

「トリオ・クラウディオという組織だが、サンジェルマンに確認を取ったら確かに存在していた」

「ウワハハハハハ! それ見たことかッ! お前たちが物知らずなだけなのだッ!」

「ソイツらは元々パヴァリア光明結社の一員だ」

 

へー、この3人元パヴァリアなのね。

 

「いかにも! 吾輩たちはアダム様に見出された優秀な錬金術師……」

 

と、ガンゲンハイト。

キャロルちゃんが説明を続ける。

 

「結社の資金を流用して追放されてる」

「追放されてんじゃねーか!」

 

しかも資金流用って……。

 

「ち、違う!」

 

と、アクチュアル。

 

「我らは崇高な目的の為にアダム様に頼んで資金を融通して貰っていたのだ! 断じて流用ではないッ!」

「……結社の統括局長アダムは適当な性格だから、資金の融通はサンジェルマンを通すルールらしいが?」

「ぐぅッ……!!」

 

キャロルちゃんのツッコミにうずくまるアクチュアル。

 

「リーダーッ!」

「しっかりしろッ!傷は浅いぞッ!」

「つまり適当な性格のボスを騙くらかして資金流用したって事か」

「小悪党ね……」

 

藤尭さんと友里さんが好き勝手言う。

いやまあ、小悪党だけどさ……。

 

「い、言うに事欠いて小悪党、だとぉ……!」

「落ち着けリーダー。無知蒙昧な人間の言葉など……」

「ヘヘっ、サンジェルマン師もオイラたち3人の崇高な思想を理解出来なかった負け惜しみさ!」

 

と、クラウディオの3人。

 

「……いや、バレンタインで使うチョコを買い占める為に資金援助してくれ、は流石に駄目だろ」

 

キャロルちゃんのマジレスである。

というか、え、バレンタインのチョコを買い占める?

え、え?

 

「いや、なんでさ」

「ふん、理解出来んようだな」

 

と、アクチュアル。

 

「バレンタイン等というくだらぬ行事から、人間たちの目を覚まさせてやるのだッ!」

「デパートの商戦、資本主義にまんまと騙された哀れな者共よ……」

「聖ヴァレンティヌスの逸話とチョコレート、なんにも関係ないじゃないかッ!」

 

3人がまくしたてる。

 

「でも、楽しいじゃろ。好きな人と過ごすバレンタイン。好きな人から贈られるチョコレート美味しいし」

「ぐぅぅぅぅ、キラキラオーラがぁぁぁぁッ!」

「リーダーッッッ!!!」

「傷は深いぞッッッ!!!」

 

3人が膝をつく。

 

「おのれ、これみよがしにリア充オーラを……ッ!」

「だけど、これを見てもそんな態度を取れるかな……?」

「さぁ来い、アルカ・チョコノイズ!」

 

ぞろぞろと、チョコノイズたちが歩いてくる。

その中心には……。

 

「マリアさんッ!? セレナちゃん!? 調ちゃん!?」

 

俺の恋人たちが捕らえられていた。

 

「ごめんなさい、一鳴……」

「捕まっちゃいました……」

「うぅ……ごめんなさい」

 

3人は抱き合って震えている。

可哀想に……。

 

「人質、と言うことか……ッ!」

「そうだッ! お前が小学生のクセに、彼女が3人も居るのは知ってるんだよッ!」

「大人しくしてもらおうか……」

「さあやれ、アルカ・チョコノイズたちッ!」

 

またアルカ・チョコノイズが現れて、街を破壊していく。

 

「ああッ、あの雑貨屋! 行きたかったのに……」

「ヒドいよッ!」

「どうしてこんな事するのッ!?」

 

マリアさんが叫ぶ。

3人は哄笑した。

 

「どうして、だとッ!?」

「吾輩たちはバレンタインが憎いのだッ!」

「そうだ、バレンタインなんてなくなってしまえばいいんだいッ」

 

バレンタインへの憎しみを隠さない3人。

 

「一体、なにがアンタらをそんなに憎悪させるんだ……ッ」

「ふ、聞きたいか? ならば教えてやろう……」

 

アクチュアルが語りだす。

 

「あれはオレがまだ小学生の頃───」

 

 

 

 

 

 

アクチュアルがまだ小学生の時。

アクチュアルには好きな人が居た。

同じクラスのナターシャちゃんだ。

ナターシャちゃんは銀糸のような髪に碧玉のような瞳。

美少女である。

 

さて、バレンタイン。

アクチュアルはナターシャちゃんに告白する事にした。

アクチュアルの国では、男が女にチョコレートを贈るのだ。

だから、アクチュアルもチョコレートを用意した。

あちこちガタガタしているが、自家製のチョコレートだ。

だが……。

 

「ニェット。ごめんなさい。私、恋人います」

 

と、にべもなく断られてしまう。

そしてナターシャちゃんはそのまま去ってしまった。

アクチュアルのチョコレートを受け取らずに……。

 

アクチュアルは叫んだ。心の奥底から。

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

と。

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳だッ!」

 

アクチュアルの話が終わる。

俺も、マリアさんも、セレナちゃんも、調ちゃんも。黙って聞いていた。

 

「吾輩はバレンタインの日に恋人に振られた……」

 

と、ガンゲンハイト。

 

「オイラはクラス皆にチョコレートを配ってる女の子が、オイラにだけチョコレートをくれなかったんだ……、うぅ」

 

ツークンフトが涙を滲ませる。

 

「………………」

 

言葉が出ない。

 

「わかったか、オレたちに憎悪を植え付けたバレンタインの正体がッ! バレンタインがもたらす愛や夢や希望など、幻想ッ! その本質は絶望なのだッ!」

 

熱弁するアクチュアルに、マリアさんが口を挟む。

 

「あの、気の毒だとは思うけれど……。ノイズ使って暴れるほど?」

「そうだよね……」

 

ノイズ使って暴れるにしては、理由がしょっぱい。

いや、普通に悲しい過去だけどさ。

 

「酒飲んで忘れなよ、そんな思い出」

「忘れられるかッ! この前ナターシャちゃんの結婚式の招待状が届いたんだぞッ!」

「ウォッカ飲んで寝ろ!」

「うるさいッ!」

 

アクチュアルが怒る。

 

「もう怒ったッ!街中のバレンタインというバレンタインを破壊し尽くして……」

「いまだ!」

 

俺はアクチュアルたちの隙をついた。

腰アーマーから、小型戦輪を射出。

マリアさんたちを捕らえるチョコノイズたちを溶かして破壊する。

 

「ああッ! 卑怯だぞッ!」

 

と、ツークンフト。

 

「人質取ってる方が卑怯でしょーが!」

「一鳴ッ!」

 

マリアさんたちが駆け寄ってくる。

俺はマリアさんたちの前に庇うように立つ。

 

「怪我はない?」

「ええ、大丈夫よ」

「でも、街が……」

「めちゃくちゃ……」

 

セレナちゃんと調ちゃんが言うように、バレンタイン一色だった街はチョコノイズによって破壊されていた。

 

「おのれ目の前でイチャイチャと……ッ!」

「リーダー! 吾輩たちの理想のため、さらなるアルカ・チョコノイズをッ!」

「もちろんだッ!」

 

と、またしてもチョコノイズを呼び出す。

が。

 

「種は見切った!」

 

俺は戦輪を投げる。

戦輪は炎を吹き出して飛ぶ。

炎の熱でチョコノイズが溶ける。

チョコノイズ殲滅!

……うん。

 

「なんでチョコレートでアルカ・ノイズなんて作っちゃったのさ……」

「うう、うるさいッ!」

 

怒鳴るアクチュアル。

 

「吾輩たちが買い占めたチョコレートの使い道がこれしか思い浮かばなかったのだ……」

「エコの精神だいッ!」

「その精神は偉いが……」

 

だからってアルカ・ノイズの素材に使っちゃ駄目だよ。

というか、結局チョコレートは買い占めたのか……。

この3人、憎むに憎みきれんなぁ。

 

「もう投降しなよ」

 

俺はそう投げかけた。

 

「これ以上罪を重ねちゃ駄目だよ」

「うるさいッ! オレたちの思想のため、諦める訳にはいかないんだッ!」

「そうだッ! 吾輩たちには負けられない理由があるッ!」

「そうだいッ! リア充爆発しろッ!」

 

3人が叫ぶ。

 

「いや、彼女作りなさいよ」

 

と、マリアさんがぶっこんだ。

 

「こふっ」

「がはっ」

「きひゅ」

 

クラウディオの3人が倒れた。

 

「……そうだよね」

「どうして彼女作らないんですか?」

 

調ちゃんとセレナちゃんもそう問いかけた。

 

「や、止めてあげてよぉ!」

「え、なんでよ?」

「彼女作ればいいのに」

「あ、なにか理由があるんですか!?」

 

クラウディオの3人はびくんびくんしている。

もう駄目そうだ。

 

「あのね、3人とも。ああいうリア充爆発しろ、とかバレンタインが憎い、とか言う人たちって、彼女は欲しくても彼女作る努力はしない人たちだから。楽な方楽な方に行って、文句しか言わないのよ」

「ごぼぉッ!」

「がはぁッ!」

「ぜひぃッ!」

「おごぉッ!」

 

クラウディオの3人が血反吐を吐いてしまった。

聞こえてしまったか……。

あと何故か、通信から藤尭さんの吐血音も聞こえたけど、まさかそんな筈はあるまいよ。

ハハ……(乾いた笑い)

 

「あ、そういうのね」

 

と、マリアさん。

 

「ちゃんと自分を磨く努力をすればいいのに」

 

と、セレナちゃん。

 

「……ダメ人間?」

 

と、調ちゃん。

クラウディオの3人はわなわな震えているかと思ったら、一気に立ち上がった。

 

「おのれ、よくも好き勝手言ってくれたな!」

「もう許さん!」

「オイラたちの本気をくらいやがれ!」

 

そう言うと、3人とも両手を前にかざした。

そして、その3人の前にチョコノイズが現れる。

 

「……む」

 

先程までのチョコノイズとは違う。

ただ立ってるだけなのに、隙が無い。

見た目にも、艷やかでどこか気品がある。

なによりも……。

 

「美味しそう……」

 

と、調ちゃん。

うん、そうなのだ。

目の前のチョコノイズ、とても美味しそうなのだ。

 

「ハッハッハッ! 見よ、これこそオレたちトリオ・クラウディオの最高傑作!」

「設計、造形、味! 全てに気を使った!」

「その名も、クリオロ・チョコノイズ!!!」

 

最高傑作、クリオロ・チョコノイズ……!

最高傑作というだけあって、今までのチョコノイズとは格が違うな。

 

「……クリオロ?」

 

と、藤尭さんから通信が入る。

 

「もしかして、クリオロ種のカカオを使ってるのかッ!?」

 

クリオロ種?

なにそれ?

 

「ハッハッハ! どうやら知ってる奴がいるようだなッ!」

 

と、自慢げなアクチュアル。

さらにガンゲンハイトが続ける。

 

「そうとも。このクリオロ・チョコノイズにはクリオロ種のカカオ豆が使われている……」

「とっても高価なチョコノイズなんだいッ!」

 

高いカカオ豆使ってるから、美味しそうなのね。

 

「そんなもんじゃないよ!」

 

と、藤尭さん。

 

「クリオロ種は絶滅危惧種ッ! 生産量は世界全体のカカオ豆の3%以下って言われてるんだッ!」

「へあッ!?」

 

予想以上に貴重なカカオ豆だった。

絶滅危惧種のカカオ豆。

コイツらもしかして非合法な手段で……。

 

「いやあ、まさかアダム様に貰った資金が全部吹っ飛ぶとは思いませんでしたねリーダーッ!」

「まったくだツークンフト。しかしその甲斐はあったッ!」

 

普通に買ったのか……。

どうやらマリアさんも同じ事を思ったようで、

 

「奪ったとかじゃないのね」

 

と聞いた。

 

「そんな事をするはずないだろうッ!」

「そんな事をしたら、吾輩たちが国際指名手配されてしまう……」

「オイラたちはリスクマネジメントが出来る錬金術師なんだいッ!」

 

と、怒られた。

なんでさ。

 

「フン、まあいい。さあやってしまえクリオロ・チョコノイズッ!」

 

アクチュアルの命令に従い、クリオロ・チョコノイズが動き出す。

が……。

 

「……え。ちょ、待てクリオロ・チョコノイズッ! なぜこっちに来るッ!?」

 

クリオロ・チョコノイズはアクチュアルの方に向かった。

そして、アクチュアルを殴り飛ばした。

 

「グワーッ!」

「リーダーッ!?」

「な、なんでリーダーの命令に反逆を……?」

 

どうやら暴走状態らしい。

だが、クリオロ・チョコノイズはさらに行動する。

 

両手を広げる。

街に散らばるチョコノイズの残骸が、クリオロ・チョコノイズに集まってくる。

 

「な、なにが……」

 

アクチュアルが慄く。

クリオロ・チョコノイズの行動は止まらない。

どんどん集まってくるチョコノイズの残骸が、クリオロ・チョコノイズと同化して、大きくなっていく。

そして。

クリオロ・チョコノイズは、バルタン星人めいた20メートル程のアルカ・ノイズ形状に変わった。

 

「な、何だこれ……ッ!?」

「吾輩の設計に、不備が……ッ!?」

「一体、なにが起こってるんだッ?」

 

クラウディオの3人にも不測の事態らしい。

 

「なにか原因は思い浮かばないの?」

「そ、そんな事を言われても……あ」

 

原因があったらしい。

 

「強くなるかと思って、アダム様に頂いた【ラインの黄金】を仕込んだのが、原因か?」

「絶対それじゃねーかッッッ!!!」

 

ラインの黄金。

北欧神話や、ニーベルングの指環に出てくる聖遺物である。

詳細は省くがドヴェルグのアンドヴァリによって、手に入れると破滅する呪いのかけられた黄金である。

そら、そんなもん突っ込んだら暴走するわ……。

 

実際、クリオロ・チョコノイズは巨大化し、持ち主であるアクチュアルを攻撃している。

 

「グワーッ! グワーッ! グワーッ!」

「このままじゃ、リーダーが!」

「なあ、頼むよッ! リーダーを助けてくれよッ!」

 

ツークンフトに助けを求められた。

 

「このままでは、取り返しのつかない事になってしまうッ! この通りだッ!」

 

ガンゲンハイトにも頭を下げられた。

 

「貴方たち……」

「一鳴さん……」

「……」

 

マリアさんたちにも見つめられてしまう。

 

「もーッ! しょうがないなぁッ! みんな少し離れてて!」

「す、済まないッ!」

「ありがとうッ!」

 

はた迷惑な奴らだが、流石に死なれると悲しい。

だから助けよう。

というか、アクチュアルは今もボコボコにされてるので、早く助けないと……!

 

「うおおおおおおおおッッッ!!!」

 

俺はアームドギアを2つ、両手に1個ずつ持つ。

身長を越える直径の大戦輪2つ。

回転させて炎を纏わせる。

 

「燃えろ燃えろ。熱く、燃えろォッ!!!」

 

炎が滾り、弾ける。

思うは愛。

バレンタイン、共に過ごす恋人たちとの夜。

愛しく楽しい、特別な日。

愛が炎と変わり、戦輪から溢れ出る。

 

シンフォギアを強くするのは愛だ。

故に、心に愛を滾らせる。

そして、この手に愛を焚べるのだ。

 

2つの戦輪を同時に投げる。

戦輪は2つ重なり、巨大化クリオロ・チョコノイズの胴体を貫通する。

 

 

双ツ日輪(ふたつにちりん)愛燦燦(あいさんさん)

 

 

戦輪が貫通した跡がハートめいている。

そのハートから、熱く燃える炎が巨大化クリオロ・チョコノイズの全身を走り出す。

そして、一気に燃え上がり。

巨大化クリオロ・チョコノイズはドロドロに溶けて崩れ落ちた。

 

「リーダーッ!」

「リーダー返事してくれよッ!」

 

ガンゲンハイトとツークンフトがアクチュアルに駆け寄る。

 

「うう……、まだ、まだだ……」

 

アクチュアルはまだ諦めていない。

 

「リーダー……」

「…………もう、止めようリーダー」

 

ツークンフトが言う。

 

「ツークンフト……ッ、お前、オレたちの大義が間違っていたというのかッ!?」

 

アクチュアルが言葉を荒げる。

 

「認めようよ。オイラたち、本当は羨ましかったんだって……」

 

ツークンフトが静かに言う。

 

「リーダー、吾輩も、我々が間違っていたと認識している」

「ガンゲンハイト、貴様まで……ッ」

 

ガンゲンハイトにまでそう言われて、アクチュアルは声が出なくなる。

 

「もう、止めなよ。アクチュアル、本当はわかってるんでしょ……」

「シンフォギア……」

 

アクチュアルは黙り込んでしまった。

 

「羨んでも、憎んでも。本当に欲しいものは手に入らないんだぜ」

「…………」

「本当に欲しいなら、誰かの足を引っ張るんじゃなくて、手を伸ばさないと」

「………………ああ、そうだな」

 

俺の言葉を聞くと、アクチュアルは一つ頷いた。

 

「投降するよ、シンフォギア」

「リーダー……ッ!」

「リーダー!」

 

トリオ・クラウディオの3人は手を上げる。

そこに、2課の黒服さんたち。

 

「さあ、3人とも行こうか」

 

連行されていくアクチュアルたち。

 

「獄中で罪を償ったら、3人でナンパに行こうか」

「吾輩は、婚活パーティの方が良いと進言する……」

「どっちでもいいさ。3人で行こう!」

 

3人は仲良く連行されていった……。

俺はシンフォギアを解除した。

 

「これでめでたしめでたし、かな?」

「ええ、そうね」

「人騒がせな人たちでしたね……」

 

セレナちゃんの言う通り、人騒がせだったけど憎めない奴らだったよ。

 

しばし、4人で街に佇む。

アクチュアルたちが逮捕されて、避難命令が解除されたのか、街に人が戻ってくる。

壊されたバレンタインっぽいものも多いけれど、無事だったものもある。

 

「岩の戦士ハベル像、凄い人だかりだね」

 

ハベル像の下で愛を誓いあったカップルは、岩のように変わることなく永遠に愛し合える、そんなジンクスのある高強靭マンのオブジェである。

何度かチョコノイズに攻撃されていたものの、その持ち前の防御力と高強靭で耐えきったスゴイオブジェだ。

 

そして、そんなオブジェの下には沢山のカップル。

 

「私達、近づけませんね……」

 

少し、出遅れてしまったわね……。

 

「うーん、みんな、ここでチョコレートくださいな♪」

「え、一鳴?」

「でも、永遠に愛し合えないよ……?」

 

マリアさん達は不安そうというか、なんでそんな事言うの、永遠に愛し合えなくていいの、という表情。

 

「俺たちなら、ハベル像の下じゃなくても永遠に愛し合えると思うのね」

「一鳴さん……」

「もしそれが不安だって言うなら、また来年、四人でこうやってデートしましょ?」

 

俺がそう言うと、3人は花が咲くように笑顔になった。

 

「もう、口が上手いんだから」

「えへへ、約束ですよ一鳴さん?」

「……また一緒に行こうね」

 

そう言って、チョコレートを渡してくれる。

可愛らしく梱包された、3人の手作りチョコレート。

 

「チョコレートありがとうね!」

「帰ってから開けてね」

「腕によりをかけました!」

「切ちゃんやクリス先輩に手伝って貰ったの」

 

それは、味わって食べないとね。

そう言うと、3人は微笑んだ。

その微笑みは、とても愛らしかった。

 

 

 

 

 

 

3人のチョコの出来栄え【1D10】

 

マリア【2】

セレナ【10】

調【8】

 

 

 

バレンタインデートの後。

テレポートジェムで家に帰ってきた俺は、自分の部屋でマリアさんたちのチョコレートを食べようとしていた。

 

「チョコレートヨシ! ホットミルクヨシ! 開封!」

 

まずはマリアさんのチョコレートを食べよう。

そう思って梱包を開けた。

…………、なるほど。

見た目は、うん。シュルレアリスムである。

サルバドール・ダリを超えてる。

うん、大事なのは味だ。

一口食べよう。

…………、普通に美味しい。

普通に美味しいのに、シュルレアリスム。

なるほどね。

なるほどね!

 

「マリアさんのチョコ、ヨシ!」

 

ごちそうさまでした。

次はセレナちゃんのチョコレートやね。

はい、開封!

見た目は、スゴク美味しそう!

小さな箱に、トリュフチョコが6個。

ココアパウダーが掛かったものや、細かな模様のもの。

色んな種類のチョコが入ってる。

そして、味や口触りも様々。

すごく、手の込んでるチョコレートだ。

これは下手な店売りよりも美味しい。

 

「セレナちゃんのチョコ、ヨシ!!」

 

ごちそうさまでした。

よし最後。

調ちゃんのチョコレート。

開封!

見た目は、大きなハート型のチョコレート。

表面には『かずなりさんだいすき』と、ホワイトチョコで書かれている。

文字書くために大きくなったのね。

照れくさいわね。

そういえば、切歌ちゃんやクリスちゃんにも手伝ってもらったとか。

つまりこの文字見たのね。

…………うん!

食べよう!

……味は美味しい。

口当たり滑らかで、甘さ控えめ。

大きいのに食べやすい。

気配りが効いた一品。

美味しゅうございました。

 

「調ちゃんのチョコ、ヨシ!」

 

ごちそうさまでした。

ホットミルクを飲み干す。

愛のこもったチョコレートだった。

また来年、貰えると良いな。

では。

はい、穢土転生(エドテン)




執筆前ワイ「まあ5000字で終わるやろ余裕やガハハ……」

執筆中ワイ「なんで10000字越えるの?ドウシテドウシテ……」

そんな感じのバレンタイン回でした。
次回はホワイトデー回。
男たちがホワイトデーのお返し作りに挑むようです……。
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