転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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お待たせしました。
仕事でトラブったり、クビの危機になったり、仕事が忙し過ぎたり、小説の展開に四苦八苦してた為投稿が遅くなってしまいました。

次回以降も、投稿は2〜3週間おきになりそうです……。
でもエタりはしないので、ご安心ください。

(ワンピースばりに伏線広げまくったんだから、畳むのは)当たり前だよなぁ?



第五十七話 殺戮迷宮霊廟 後編

 

 

「ワシを倒してみせい、渡一鳴!!」

 

訃堂司令が群蜘蛛を抜き、言い放つ。

と、同時に一息にこちらに踏み込んでくる。

 

「ぐッ!」

 

群蜘蛛の鋭い一撃を大戦輪で受け止める。

鋭く、重い一撃。

 

「そらそらそらッ! 守ってばかりでは勝てんぞッ!」

 

訃堂司令は連撃を繰り出してくる。

それらをなんとか大戦輪で捌き切る。

俺は一瞬の隙を突いて、反撃を試みる。

たとえそれが、ワザと作られた隙であっても。

 

「やってやらァ!」

 

「来い、一鳴ィ!」

 

 

 

一鳴VS訃堂【1D10】

 

一鳴【5】+5(本気補正)

訃堂【7】+10(ほんのり本気補正)

 

 

 

「イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

俺は腕を振るい、大戦輪を叩きつける。

訃堂司令の群蜘蛛が弾き、受け流す。

 

「しまっ…!」

 

「イヤーッ!」

 

巧みなパリィを前に、大きく隙を見せてしまう。

そして。

 

()ッ!」

 

訃堂司令による群蜘蛛の突きは俺の胸を貫いた。

 

「が……ッ!?」

 

「取ったぞ、一鳴ィ」

 

訃堂司令が群蜘蛛をひねる。

傷を抉られた俺は思わず呻く。

 

「う……ぐぅ!」

 

「死ぬか一鳴? 死んで屍晒すか?」

 

更にひねられる群蜘蛛。

傷口から血が溢れ出る。

マジで、生命取りに来るとか……!

 

「死ぬか一鳴? 家族と友、恋人を残して逝くか?」

 

手足の力が萎えていく中、訃堂司令の言葉が染みる。

ああ。

そうだ。

両親も、響ちゃんも未来ちゃんも。

そして、調ちゃんもマリアさんもセレナちゃんも。

遺して死ぬ訳にはいかない。

きっと、皆哀しんでしまう。

死ぬ訳には……!

 

「ぐ……ぅ!」

 

「……ほう?」

 

俺は左腕を動かして、なんとか群蜘蛛の刀身を掴む。

そして、腰アーマーから小型戦輪射出!

訃堂司令の首、脇、腹、股関を狙う。

人体の弱点を狙う同時攻撃。

攻撃を弾くための群蜘蛛は左手で封じている。

 

「まだまだ、よ」

 

訃堂司令は群蜘蛛から手を離すと同時に跳躍。

空中で身体を旋回させた。

小型戦輪を巧みに回避。

 

「今のを」

 

「避ける。そして……」

 

訃堂司令は俺の横に着地。

シンフォギアの腰アーマーに着けてた七支刀を掴む。

 

「あ」

 

「これで終いよ」

 

その七支刀で俺の首を斬る。

しかし。

 

「ぐ、あ……」

 

「まだ、倒れぬか」

 

訃堂司令の一閃は、俺の頸動脈を切り裂いた。

血が止まらない。

だが、倒れる訳にはいかない。

死ぬ訳には……!

 

腕はもう動かない。

脚ももう動かない。

立つだけで精一杯。

倒れないだけで精一杯。

胸には群蜘蛛が刺さったまま。

だから。

脳波でコントロール出来る小型戦輪で倒すしかない。

そして。

きっとチャンスは一度きりだ。

 

「…………ッ」

 

俺は花弁のように下半身を守る腰アーマーの全てから、一斉に小型戦輪を射出。

その数、108個。

 

「下手な鉄砲、と言う奴か?」

 

訃堂司令が使い心地を確かめるように七支刀を振るう。

きっと、訃堂司令なら小型戦輪全てを切り落としてしまうかもしれない。

()()

 

「……いけッ」

 

「来いッ」

 

訃堂司令を囲むように展開した小型戦輪全機を、訃堂司令に突撃させる。

訃堂司令は七支刀を構える。

 

小型戦輪が訃堂司令の射程距離に這入る直前。

小型戦輪を爆発させた。

 

「なにッ……!?」

 

訃堂司令が驚く。

アームドギアが突然爆発したのだから当然である。

 

シンフォギアは聖遺物のエネルギーを固着化させた物だ。

アームドギアもまた然り。

そして、俺のシンフォギアである【スダルシャナ】はそれ自体が太陽を意味する武具である。

太陽神の光から造られた、遍く照らす太陽光を神格化したヴィシュヌの戦輪。

故にスダルシャナは。

太陽の属性を持つ。

 

()()()()()()()()()()()()でしょう?」

 

太陽面爆発。

太陽フレアとも、言われるそれ。

太陽は爆発する天体なれば。

俺の小型戦輪もまた、爆発する!

 

「ぬおォォォォォッ!!」

 

訃堂司令が叫ぶ。

気付いた所でもう遅い。

戦輪は斬り払える訃堂司令とて、爆発によって生じた熱と衝撃は斬り払えないだろう。

 

 

火烏(かう)(まい)烈花(れっか)

 

「ぼんばー」

 

少し気の抜けた俺の合図と同時に小型戦輪を一斉に起爆させる。

気が抜けたのは仕方ないのよ、今俺瀕死の重傷だし。

胸と首から血がダクダクと流れてるし。

 

小型戦輪の爆発は小規模だ。

大体、1メートル程の範囲だろうか。

だが、しかし。

それが108もあれば?

そしてその中心にいた人間は?

いかな風鳴訃堂といえど、ダメージは受けるだろう。

 

爆煙が訃堂司令を覆う。

だがしかし。

訃堂司令が倒れるのを確認する前に。

俺の意識が限界である。

息が荒い。

血が無いから、酸素を身体に運んでいない。

マジでヤバい。

流石に医療班は来てる筈。

筈、よね?

マジで死ぬぞ、これ。

両親や響ちゃんや未来ちゃんや調ちゃんやマリアさんやセレナちゃん遺して死ぬ。

あかん。

前世だって妻と子ども遺して死んだのに。

今世くらい妻子を哀しませたくないのに!

もう、誰かを哀しませて逝きたくないのに!

あ、やば。

目の前が真っ暗になりつつある。

 

爆煙が晴れる。

視界が闇に包まれる。

意識が、遠く。

だが。

耐える。

ギリギリの、ギリギリまで。

そして。

 

「見事」

 

という声が聞こえて。

俺の意識が────

 

 

 

 

 

 

───。

……───。

…………───。

 

ぅ……ん───。

 

あ、れ。

俺は、確か。

寝かされてる?

目を、開けた。

 

目の前に埴輪の顔があった。

 

「オアーッ!?」

 

「グギギ、おはようございます」

 

埴輪は離れた。

と、同時に目から緑色のレーザー光。

身体中を走査される。

 

「オアーッ!?」

 

「スキャン終了…………異常ナシ」

 

あ、もしかして。

この埴輪……。

 

「ハニーちゃん?」

 

「そうじゃよ」

 

と訃堂司令の声。

身体を起こし、声の方を見る。

 

「お目覚めじゃな」

 

フンドシ一丁の訃堂司令が片膝立てて座っていた。

 

「オアーッ、変態!」

 

「失礼な! 一鳴くんが戦輪を爆発させたせいで服が吹き飛んだんじゃ!」 

 

「あ、すんません……」 

 

俺のせいだった。

 

「ごほん。とにかく、目覚めて良かった」

 

「ダメージ甚大、甚大。主要血管切断、肺臓損傷、血液22%流出。死にかけ、ダッタゾ」

 

ハニーちゃんから聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 

「あの、重傷なんですけど(震え声)」

 

「殺す気で、いったからのぅ」

 

「えぇ……(恐怖)」

 

訃堂司令が怖いんじゃが……。

 

「だって一鳴くん、死ぬのに躊躇いが無かったじゃろ?」

 

と、言われた。

 

「……いや、怖いですけれど」

 

「怖いのは怖いじゃろ? だが一鳴くんは死に対して躊躇いが無い。負けた時に抵抗しなかったり、迷わず絶唱を使うからの」

 

訃堂司令の言葉が、胸に刺さる。

 

「一鳴くんは、死を恐れておらぬ。……正確には、()()()()()()()()()()()()()、と言うべきか」

 

訃堂司令が手に持った群蜘蛛を天に向ける。

ボロボロになった刀身が、蝋燭の光に照らされる。

 

「人は未知を恐れる生き物よ。その際たるものこそ、【死】。故に人は死を恐れる。死ねばどうなるのか。極楽に往くか、地獄に落ちるか。閻魔の裁きを受けるのか。それとも……輪廻転生し、別人になるのか」

 

訃堂司令が群蜘蛛の切っ先を俺に向ける。

 

「一鳴くん、お主にとって、死は未知ではないのだな」

 

「……」

 

どうやら。

俺の正体に気付いているらしい。

 

「いつから、気付いてました?」

 

「出会った時から」

 

「……どこで、気付いたんです?」

 

「眼、よ」

 

眼?

 

「死を知り、死を乗り越えた者の眼は独特な色を持つ」

 

「色……」

 

「お主しかり、フィーネしかり。……そして、ワシも」

 

「え……?」

 

「ふふ、ワシも輪廻転生しとるのよ」

 

え、マジで?

 

「マジじゃ。……、大昔、ワシは神と呼ばれていた存在だった」

 

群蜘蛛を鞘に収めて、語りだす訃堂司令。

神。

この世界の神、という事は。

 

「カストディアン・アヌンナキ。5000年以上前にこの星に生命の種を蒔いた、まあ、宇宙人じゃな」

 

「いや、宇宙人って……」

 

確かに宇宙から来たのがアヌンナキだから、宇宙人って言うのは間違ってないけれど……。

風情がないなぁ。

 

「で、まぁ、宇宙人同士で内乱起こった結果、世界は大混乱に陥ってな。弟は内乱起こした奴封印して死ぬし、ワシは地上に置いてけぼり食らうし仲間はさっさと別の銀河に逃げるし」

 

あぁ、シェム・ハ関係の。

……弟、封印?

訃堂司令、エンキのお兄ちゃん?

 

「で、あちこち彷徨った挙げ句に辿り着いたのが、この日本列島という訳じゃ。そこでまぁ、嫁に出会って、人間たちに製鉄とか農法とか教えてな」

 

そう言う訃堂司令は、遠い昔を懐かしむようであった。

 

「ワシ、人間嫌いじゃったのよ。騒がしいし鬱陶しいし、木を切り水を汚すし。でも、そんなワシに嫁がこう言ったのよ。『人もまた、この星に生きる生命。天然自然の一部です』、とな」

 

「天然自然の、一部」

 

「そうじゃよ。それを聞いてな、ワシは人を見る目が変わった。騒がしいし鬱陶しいし、木を切り水を汚すが、それでも懸命に生きる生命なのだと。他の自然と変わらぬ、とな」

 

「……」

 

「ワシは人が愛おしくなった。その日、ワシは神としての名を捨てて、人として【タケハヤ】と名乗る事にした」

 

タケハヤ。

それが、訃堂司令のかつての名前。

タケハヤ。タケハヤ……どこかで、聞いたような。

神話?

古事記か?

 

「そして、この霊廟にはタケハヤとその嫁が祀られておるのじゃ」

 

あ、そう繋がるのか。

この霊廟はそう言う由来があるのか。

 

「ワシも嫁も、民衆からすっごい祀られておったからのぅ。盗掘者は必ず殺すような罠を仕掛けておっての。だからこそ、今回の特訓にはちょうど良かった訳じゃが」

「それで俺は死にかけたんですが……」

「命の儚さを思い知ったじゃろ?」

 

そんなもん、この仕事してたら嫌でも思い知る。

 

「人はすぐ死ぬ。死んで、何かを遺す。形ある物、形のない物。……なにかを」

 

「……」

 

「だが。置いていかれた者には何が残る?」

 

「……」

 

「お主の父母は、友は、恋人には? 何が残る? 愛する一鳴くんはもう居ないというのに」

 

「……」

 

「一鳴くん、お主にとって死は未知ではない。しかし、しかしな。死は断絶よ。一鳴くんの死は、渡一鳴という存在の断絶を示す。

忘れるな。渡一鳴の生は一度切りなのだ。お主が何度目の人生なのかはわからぬ。だが、渡一鳴の人生は今生限りと知れ」

 

「……はい」

 

俺は静かに頷いた。

 

俺は転生者だ。

前世では妻が何人もいて、子どもはもっといた。

だが。

前世には帰れない。

俺はここで生きていく。

渡一鳴として。

そう決めたのは俺だ。

そして、訃堂司令の言う通り。

渡一鳴としての生もまた、一度切りなのだ。

 

「だから、先程の、あのアームドギアを爆発させる技を出してきた時は嬉しかった。お主はまだ諦めていなかったのだと」

 

「瀕死も瀕死でしたけどね」

 

「それでも、最後の最後まで足掻いていた。それを忘れるでないぞ。限界を越え、死の直前にまで戦い続ける。それこそが、一鳴くんに必要なものだからな」

 

「わかりました」

 

「それじゃ、帰るかのぅ」

 

よっこいせ、と訃堂司令が立ち上がる。

フンドシ姿のままで。

……まぁ、服は本邸にあるか。

 

「そういえば」

 

「なんじゃ?」

 

「ここは霊廟の第一層なんですよね」

 

霊廟。

訃堂司令の前世とその嫁が埋葬されている遺跡。

いったいいくつの階層から成っているのだろうか。

 

「7層じゃな」

 

「結構多いっすね」

 

「ちょっと民衆が本気出しすぎたみたいじゃ。

あ、だが、この下には行けんぞ」

 

「え、そうなんですか?」

 

「うむ。この先の階段から行けるんじゃがな……。大昔、一歩踏み入った瞬間レーザーで狙撃された。3連続で額を狙われたわ!」

 

「えぇ……」

 

物騒さのグレードがアップしてる……。

 

「あれは奥まで行かせる気はないの!」

 

ワハハと笑う訃堂司令。

笑い事なのかなぁ……。

 

「だからアレは一鳴くんがもっと強くなってからじゃ」

 

「わかりました。……お宝ありますかね?」

 

「まぁ、奥の奥、ワシ(タケハヤ)の亡骸はスゴイお宝と共に埋葬されておるが……これだってお宝じゃぞ?」

 

と言って、青錆びた七支刀を掲げる訃堂司令。

 

「錆び錆びですよ?」

 

「経年劣化がのぅ……。それでもこれは異端技術の用いられた剣よ。フィーネに渡せば、シンフォギアを強化してくれる筈」

 

なんでもエネルギー効率が良くなって、攻撃にエネルギーを回せるようになる筈とかなんとか。

お宝じゃないの!

 

「当たりの宝箱には同じような技術で造られた勾玉があったんじゃが……」 

 

「俺を食べようとしてくる宝箱は居ましたね(震え声)」

 

「中身は……?」

 

「なにも、無かった、です」

 

訃堂司令は悲しげな目をした。

 

「その……ドンマイ、じゃ」

 

「はい……」

 

「罠の宝箱には、中に良いのが入ってるモンじゃがのぅ……」

 

俺は自分の不幸さに泣きそうになった。

彼女3人出来た件といい、運の振れ幅がデカすぎる。

 

「帰るか……」

 

「あい……」

 

俺は訃堂司令に肩を叩かれながら出口に向かった。

 

 

 

 

 

 

今回のオチ。

 

後日。

二課の廊下にて。

訃堂司令が正座していた。

首からは『私は一鳴くんを危険な遺跡に放り込み、刀で胸を貫き首筋を切りました』と書かれたプラカードを提げていた。

 

弦十郎さんと八紘さんから怒られた結果であった。

 

まぁ、仕方ないね。

 

 





◆リザルトな◆

○危険な罠に引っ掛かった回数:3回

○偽の宝箱に引っ掛かった回数:1回

○瀕死回数:2回

○手に入れたお宝:青錆びた七支刀

○称号『自殺志願か?』を獲得しました。
○称号『ウカツ!』を獲得しました。
○称号『薄幸』を獲得しました。

○スキル『戦闘続行』を獲得しました。
説明:名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
戦闘ダイスで敗北しても、一度だけ戦闘ダイスを振り直す事が出来る。


○青錆びた七支刀を手に入れたので、シンフォギアでの戦闘ダイスに『+5』の補正が付きます。

◆リザルト終了な◆


そんな訳で殺戮迷宮霊廟編、終了です。お疲れ様でした。
拙作でダークソウルの攻略みたいなのをやりたい、あと一鳴くんを強くしたいという思いから始めたこの話ですが、……一鳴くん運が悪すぎる。
多種多様なタノシイアスレチック感溢れる罠を用意してたのに、出せたのは殺意溢れる罠だけだった。ナンデ?

あと訃堂じいじの設定は拙作だけの設定です。
Twitterのシンフォギアオタク集合知からねるねるねるねした設定です。
訃堂じいじの過去に本格的に触れるのはひびみくがシンフォギアになってからかしら?
それまでお楽しみにね!
あとこれはネタバレなんですが、その時には今回の霊廟、アメリカの軍事衛星質量兵器によって破壊されます。神の杖な。


次回はマリアさんとの温泉旅行回を書きます。
作者はそろそろ一鳴くんとヒロインのスケベを書きたいんだ!(早漏感)
それじゃまた、次回!

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