転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
「来たか、奏」
「ダンナ。準備は出来てる」
特異災害対策機動部二課。
その聖遺物実験場。
そこに風鳴弦十郎と天羽奏の姿はあった。
目の前には、完全聖遺物が一つ浮かんでいた。
巻き貝のような見た目のそれは、神話において終末の時を知らせる【ギャラルホルン】と呼ばれる角笛である。
その角笛は今、高エネルギー反応を発している。
アラームを、鳴らしている。
「こっちと平行世界を繋げる聖遺物、か」
奏はギャラルホルンを見て、そう呟く。
ギャラルホルン、その特性は平行世界に異変が起こったときにこちらと平行世界を繋げること。
なぜ、そんな機能を持っているのか。
どうやって、そんな機能を実現したのか。
極めて特異なその力は、二課の頭脳たる櫻井了子を持ってしてもその全容を知ることが出来なかったが。
「アッチはどんな世界なのかな」
「平行世界、こちらとはまた、別の可能性を拾い上げた世界。なにがあるか、予想はつかない……」
弦十郎は申し訳無さそうに言う。
それは、奏一人を平行世界に送り出すからか。
「でも、いくしかない」
奏は覚悟を決めていた。
ギャラルホルンは平行世界へと通じている。
そして、ノイズの生産工場があると言われている【バビロニアの宝物庫】にも。
こちらの宝物庫と、平行世界の宝物庫。ふたつの宝物庫からノイズが溢れているのが現状。
故に、奏は平行世界に赴き異変を解決する。
それが、ノイズを憎み恨む奏の使命である。
「奏、すまん」
「翼のことか? いいよ、仕方ないさ。あの爺様が許さなかったんだろう」
風鳴翼。
天羽奏の片翼であり、シンフォギアの完全適合者。
奏とは違う、純正のシンフォギア装者である。
だからこそ、彼女の祖父が許さなかった。
よくわからない完全聖遺物の使用と、帰ってこれるかもわからない平行世界への訪問を。
「なるべく早く帰るからさ、翼には適当に言っておいてくれよ、ダンナ」
「ああ。……奏、無事に帰ってこい」
「もちろん! 今度ライブもあるからな!」
奏は笑う。
そして、LiNKERを注射し聖詠を唄う。
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
奏がガングニールのシンフォギアを鎧う。
「じゃあ行ってくるよ、ダンナ! オミヤゲ期待しといてくれ!」
そう言って、天羽奏は平行世界に向かった。
◆
5月中旬。
日差しが日に日に強くなってきたある日の休み。
俺はとあるコンサートホールにいた。
ステージがよく見える天井近くのボックス席。
その中でも上等なVIP席とも言うべき場所にいた。
「ウオオーッ! 翼ッ! 翼ーッ!」
隣では両手に青いペンライトを持った八紘さんが奇声を上げている。
その更に奥では……。
「奏ーッ! ほ、ホアアーッ! 奏ーッ!」
オレンジのペンライトを振る中年男性。
彼は二課の聖遺物発掘チームを率いる幹部の一人であり、奏さんのお父さんでもある。
そう、このコンサートホールでは現在、ツヴァイウィングのライブが行われている。
一年前ぐらいにはデパートの屋上でミニライブをしていた彼女たちもコンサートホールでライブをする程の成長を遂げていた。
いや、それでは足りない。
現在、ツヴァイウィングの人気は絶頂にあり。
テレビで彼女たちを見ない日は無く、彼女たちの歌声を聞かない日はない。
それぐらいの、人気。
それでもなお、俺たちはVIP席を手に入れている。
それは、翼さんの父親である八紘さんや奏さんのお父さんたちが権力を行使したからとか。
「翼も奏ちゃんも、キレイじゃのぅ」
八紘さんとは、反対側に座る訃堂司令がしみじみと言う。
翼さんの歌やライブは緒川さんが撮影した映像で見ていたらしいが、生で見たのは初めてだとか。
今回のライブ、訃堂司令が見てみたいと言うことで八紘さんが全力で乗っかった形になるらしい。
だからこそ、大々的に権力行使したとか。
そして、俺がいるのも、訃堂司令のボディーガードというタテマエである。
……うん、俺もツヴァイウィングのファンなの。
ファンクラブ入ってるし。
だから俺も乗っかりました。
テヘペロでやんす!(恋人の持ち芸感)
「それに楽しそうに歌声を重ねる。良いデュオじゃな」
舞台では、翼さんと奏さんが「逆光のフリューゲル」を唄っている。
二人の歌声を聞くと、心が高まる。高揚する、と言うべきか。
二人の歌から、フォニックゲインが大量発生しているのかもね。
「翼ーッ!」
「奏ーッ!」
八紘さんと奏さんパパも盛り上がる。
「いい歌ですねぇ」
「そうじゃのぅ」
俺と訃堂司令はしみじみと言い合った。
その時である。
爆発音がコンサートホールに響く。
歌声は止まり、伴奏も消えた。
観客たちは悲鳴を上げる。
「皆さん落ち着いてください」
と、コンサートホールのスタッフがアナウンスする。
「……弦十郎か」
訃堂司令の通信機に、弦十郎さんから通信が入る。
「親父、そこのコンサートホールに高エネルギー反応だッ!」
「……ノイズか?」
「ああ。……もしやッ」
「もう侵入しとる」
爆発音は、コンサートホールの天井に穴が空いた音であった。
陽の光が、天井から降り注ぐ。
それと同時に、極彩色の災厄もまた降り注ぐ。
人のみを灰と変換するノイズたちであった。
「───── Sudarshan tron」
俺は聖詠を唄う。
赤銅色の装甲装着。
6つの花弁の如きスカートアーマー装着。
シンフォギア各所から漏れ出した炎が背中に集まり、光輪形成。
その光輪を手に取る。
光輪は物質化し、108の刃を持つ戦輪、チャクラムに変わる。
シンフォギア、装着完了。
「ノイズの迎撃に向かいます!」
「うむ、任せた」
どっしり構えて落ち着いている訃堂司令に見送られて、俺はボックス席から飛び出した。
ボックス席は、コンサートホールの最上階にあり。
故に、俺は中空に身を投げだした形になる。
だが、堕ちず。
脚部装甲から、太陽のプロミネンスめいた炎噴出。
推進力を得て、コンサートホール内を跳躍する。
ノイズたちの一部がこちら側に殺到する。
俺は、スカートアーマーを二枚貝めいて開き、中に納められた小型チャクラムを当たり一面にばら撒いた。
ばら撒かれた小型チャクラムは、刃の間から炎を噴出し、向かってきたノイズを逆に殲滅していく。
火烏の舞・繚乱
それと同時に、既にコンサートホールに降りたノイズたちに向かって手に持ったアームドギア戦輪を投げる。
戦輪は炎を吹き出し、高速回転。
人を襲おうと走るノイズたちを灰に変えていった。
黄道転輪
ノイズたちは、まず俺を排除するべしと考えたのか。
地上の人たちから俺に目標を示したらしい。
殺到するノイズたちを小型チャクラムや、戻ってきたアームドギア戦輪で対応する。
その間に、八紘さんや緒川さんを中心に観客の避難を進めるようだった。
俺はこのまま逃げ回りつつ、地上に向かうノイズを倒して一般客が退避するまで時間を稼げばいいね。
そう、考えていたのだが……。
天井の穴から、高速で飛来する黒いナニカ。
周りのノイズとは一線を画する速度で向かってきたモノを、俺はなんとか迎撃する。
戦輪で弾いて迎撃したそれは、黒いノイズであった。
「カルマ、ノイズッ!」
世界蛇の手先、通常ノイズとは異なり呪いの力を宿すが故に装者の絶唱でなければ倒せないほど強いそのカルマノイズが、向かってきたナニカの正体であった。
初撃を弾かれたカルマノイズは、側にいた飛行型ノイズを足場にして再び俺に攻撃する。
「イヤーッ!」
俺は再び戦輪で攻撃を弾く。
今度は戦輪を回転させ炎を噴出させながら、である。
攻撃してきたカルマノイズの腕が削れる。焼ける。
ノイズは俺を蹴り飛ばして距離を取る。
カルマノイズの腕が、あっという間に再生する。
この再生力こそが、絶唱でしか倒せない理由である。
バランスを崩した俺は客席に向かって墜落する。
それを逃がすカルマノイズではなく、別の飛行型ノイズを足場にして蹴り飛ばしてこちらに突貫。
俺はそれを、戦輪で受ける。
カルマノイズと共に客席まで落ちる。
攻撃の衝撃で大きなクレーターが落下地点に発生。
「ぐ、ぅ……」
墜落した俺に、カルマノイズが攻撃を加え続ける。
俺はそれを受け続ける。
カルマノイズめ、俺を逃さないつもりだろうか。
そんな俺の耳に、声が聞こえた。
「あ……助けて……!」
少し離れた所に女の子が一人。
たった一人で客席の床にへたり込んでいた。
避難しそびれたのか……!
その女の子を、ノイズが包囲していく。
助けようと、小型チャクラムを向かわせる。
が。
「な……!?」
小型チャクラムが全て撃ち落とされる。
撃ち落とした者は……。
「二体目の……、カルマノイズッ!」
複数の触腕を持った、タコめいた姿をした二体目のカルマノイズであった。
天井から落下しながら、小型チャクラムを撃ち落としたのだ。
そして、一体目のカルマノイズと共に、俺への攻撃を再開。
「ヌゥーッ!」
2体のカルマノイズからの攻撃をなんとか耐える。
たが、だからこそ余力はなく。
逃げ遅れた女の子を助ける力が無かった。
ノイズが女の子への包囲網を縮める。
……歌うか、絶唱。
そうして、俺が絶唱を歌おうとした時。
STARDUST∞FOTON
天井から無数のエネルギー弾が降り注ぐ。
それは、槍。
穂先の広く大きい、剣槍とも言うべき槍状のエネルギーがノイズへと降り注ぐ。
更に、そのエネルギー弾はカルマノイズへも降り注ぐ。
咄嗟に回避するカルマノイズ。
カルマノイズが避けた為に、槍状エネルギーが俺に向かうが、俺に刺さる直前に霧散する。
天井からその人が落下する。
黒い部分の多い、橙色の装甲。
赤くふわふわとした長髪を揺らす女性。
その手には、エネルギー弾によく似た物理槍。
俺は、この人を知っている。
つい先程まで、この場所でライブをしていた人。
フィーネの挫折によりアイドルとして、生きることになった人。
俺は、知っている。
風鳴翼の片翼。
フィーネの手により家族を殺され、復讐鬼となったシンフォギア装者。
ガングニールの、第二種適合者。
立花響を、身を挺して守った女性。
嗚呼、彼女は───。
「無事か!?」
天羽奏、その人である───!
「……ええ、なんとか。ありがとうございます、奏さん」
「……奏であって、奏じゃないんだけどな」
「その話は、また後で。とりあえず、ノイズの殲滅を……」
ノイズたちは遠巻きに見ている。
その背後に、カルマノイズ2体。
そのカルマノイズたちの姿が薄れていく。
「逃がすかッ!」
奏さんがガングニール投擲!
しかし、カルマノイズは消失し、ガングニールは何もない空間を穿つのみであった。
「カルマノイズは消えたが、ノイズはまだいるか」
後ろを見る。
まだ避難出来ていない人が何人か。
ノイズに襲われそうになった女の子は、あ、黒服さんに助けられてる。
良かった……。
「さて、奏さんっぽい人。話を聞かせてもらう前に」
「ああ、ノイズを皆殺しだ!」
奏さんは槍を振るい。
俺は戦輪を投擲して。
ノイズを全て殲滅した。
カルマノイズは逃したものの、被害は最低限で良かった良かった。
で、問題の奏さんは。
手錠をはめられて、俺たちと共に二課に連行されることとなった。
と、いうか十中八九、平行世界の奏さんだよなぁこの人。
まあ、話は二課でするでしょう。
そう思い、俺は訃堂司令と共に二課の本部に向かった。
そんな訳で装者の奏さん登場です。
もちろんこの世界の奏さんでなく。
じゃあ、どこの奏さん、と聞かれたら……。
また次回に、と答えさせていただきましょう♪