転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです 作:アノロン在住の銀騎士
ゴールデンウィーク、俺を置いてどこに行くの……。
あんなに一緒だったのに……。
夕暮れにはもう違う色なの……。
行かないで、ゴールデンウィーク。
もっと俺に休みを頂戴。
そんな感じで六十七話です。
「一鳴、明日デートに行かないか?」
カルマノイズに対する為の訓練のあと、奏さんにそう誘われた。
「美人の誘いは断らない俺ですが、どこか行きたい所があるんです?」
「うん、まぁな。……少し、聞いてほしい事があってな」
そう言う奏さんは、どこか思いつめた顔であった。
そんな訳でデートに行くことになった。
そんな訳で翌日。
「おまたせしました、奏さん」
「いや。ごめんな、無理言って」
「いいですよー。奏さんとデート出来るならこれくらい」
「そんなキザなセリフ言って、彼女三人作ったのかー?」
「ノーコメントで」
むしろ向こうからガンガンいこうぜで俺を落としに来たのだけれど。
まあそれはそれとして。
奏さんとデートである。
デート、というよりは甘い雰囲気はさほど無いのだけれど。
「……やっぱりな」
街を歩きながら、奏さんがそう呟く。
「何がです?」
「あたしの世界と、こっちの世界。あまり変わらないなって」
ほら、と奏さんが指をさす。
ケーキ屋さんだ。
「あのケーキ屋、あたしの世界にもある。あのゲーセンも、あの雑居ビルも」
「平行世界でも、そんなに変化はないんですね」
「だな。……でも」
奏さんは寂しそうな顔をした。
「こっちのあたしの家族は、ちゃんと生きてるんだよな」
「そうですね……」
奏さんの家族、父親と母親と妹。
その3人は、ノイズに殺された。
皆神山の発掘チームだった両親とついてきた奏さんと妹さんは、神獣鏡目当てだったフィーネが呼び出したノイズに襲われた。
そして生き残ったのは、奏さんだけだった。
だが、この世界では。
フィーネの正体が早々にバレたので、皆神山の発掘が邪魔されず、結果奏さんの家族は全員生存しているのであった。
「それだけじゃない。翼のお父さんもさ、翼のライブを見に行くような人間じゃなかったよ」
それは、最初にカルマノイズが襲撃してきたライブの事を言っているのだろう。
ツヴァイウィングのライブを応援していた八紘さんを、視認したのだろうか。
まあ、この世界訃堂じいじがマトモだから、翼さんが八紘さんの実の子だし。
「まるで、あたしの世界が間違ってるようじゃないか……ッ」
奏さんが絞り出すように、言う。
それは、怒りと悔しさなのだろうか。
方や家族が死に、あるいは距離があり。
方や家族が生きていて、娘を堂々と応援している。
どちらが光でどちらが影か。
そう、奏さんが悩むのも仕方ないか。
「なぁ、あたしたちはどこかで間違えたのかな……」
「それは、違うと思います」
だから俺は毅然と言った。
「こっちの世界もろくでもないですよ。オリュンポス十二神蘇ったし。神霊名乗る奴らが暗躍してますし」
オリュンポス十二神については俺のせいかもしれないけれどもネ……。
でも転生前の運命ガチャだし、ノーカウントだノーカウント!
神霊はマジで知らぬい……。
ツァバトとか原作出てないよ。
「それにオリュンポスと欧州の戦争でたくさん人が死んでます。人類全体で見たら、こっちが間違ってますよ」
少なくとも、奏さんが来た世界ではオリュンポス十二神による欧州支配はされてない。
アメリカはパーフェクトソルジャーなんて作ってないし、ツァバトによる市街地の襲撃なんて起こってない。
人が、死んでいない。
逆に言えば。
こっちは、余計に人が死んでいる。
人口を人類全体の発展と利益として見るならば、こちらは劣っているのだ。
例えそれが、死ぬはずだった人が生きているとしても……。
代わりに別の誰かが死んでいるのだ。
……ドライな考え方だけれどね。
「それは、そうかもだけどさ……」
奏さんは納得出来ない様子。
「……そこでお茶しながら、話をしましょう」
俺は、喫茶店を指差す。
奏さんは頷き、ついてくる。
俺たちは喫茶店に入り、席に座る。
俺も奏さんも、アイスコーヒーを注文した。
「奏さんは、こっちの世界が正しい世界で、そっちの世界が何かを間違えた世界だと思ってるんですよね」
「ああ……」
運ばれてきたコーヒーを一口飲む。
「じゃあ奏さんは、こっちの奏さんとして生きられるってなったら、どうします?」
「え?」
「ご両親と妹さんの生きている『天羽奏』として生きられるなら? 奏さんはどうします? ツヴァイウィングもあるので翼さんと一緒に歌えますよ?」
「……それは」
「悩む話ですか?」
「そりゃそうだろ。あっちにも、あたしの友だちもいるし。翼だっている」
「こちらが正しい世界なのに?」
「……あぁ、そうだな」
「それが答えでしょ」
コーヒーをグビッと飲む。
奏さんはコーヒーに手を付けてない。
「奏さんにとっては、こっちが正しい世界に見える。でも、奏さんはこっちよりも、そっちの世界の方が大切なんですよ。だから、悩んでるじゃないです? 自分の大切な世界が、間違ってるように見えるから」
「……そう、だ。あたしは」
奏さんは絞り出すように語りだした。
「あたしにとっては、あの世界は家族を奪って、翼も一人ぼっちで、ひどい世界だ。でも、あの世界でも、帰りを待ってる人がいるんだ。一緒に歌える翼がいるんだ……!」
「なら、それで良いんでしょう。自分の帰りを待ってくれている人が居るのが一番の幸せですよ。そこに世界の正誤は関係ないです」
「そっか、そうだな。……そうだな」
奏さんはコーヒーを一気飲みした。
その表情は、どこかスッキリとしていた。
「ありがとな一鳴。ぐちぐちして、辛気臭かっただろ」
「いいえ、こちらこそ若造が好き勝手言っちゃいました」
「でも、ありがとな」
若造云々言ったけど、前世含めて奏さんの倍以上生きてるけどね。
でも、偉そうに説教垂れるような人生は送ってない。
特に女性関係でね……(震え声)
だから、俺の言葉に怒るかと思ったけれど、納得してくれて良かった。
「あ」
と、奏さん。
窓の外を見ながら口を開いた。
「どうしました」
「あれ」
そう言って示したのは、町中にあるホログラム投射機である。
様々なCM映像をホログラムで映し出す装置である。
なんやかんやで2040年。
ああ言った近未来感溢れる装置があるのだ。
「ツヴァイウィング、この近くでライブやってるんだな」
ホログラム投射機が、翼さんと奏さんの歌う映像を投射する。
投射しているのは、この近くの小さな劇場で行われているライブの映像だ。
「押しも押されぬ人気アイドルですからねぇ」
新進気鋭のツヴァイウィングは人気急上昇である。
だからこそ、積極的にライブを行っている。
未来ちゃんも密かに応援してるしね。
逆に響ちゃんはあまり興味なし。
未来ちゃんが如何にして響ちゃんをツヴァイウィング沼に落とそうかと画策しているが。
「奏さんは、そっちのツヴァイウィングのライブは良いんです?」
「こっちは装者と二足のわらじだからなぁ。あまり積極的にライブは出来ないんだ」
「あらら」
「その代わり一曲一曲魂込めて歌ってるけどさ」
ニカッと笑う奏さん。
「そっちのツヴァイウィングのライブも、聞きたいですねぇ」
「ギャラルホルンが見つかったらさ、聞きに来てくれよ。一鳴なら大歓迎さ!」
やったぜ。
そんな会話をしていると。
ホログラム映像が乱れる。
「ん?」
「お?」
そして、ホログラム映像が停止する。
と、同時に二課から通信が入る。
イヤな予感がする。
カルマノイズは、人の集まる所に現れるよね……。
「こちら一鳴です」
「緊急事態だ。奏も一緒だな?」
通信してきたのは弦十郎さん。
その声は張り詰めている。
「ツヴァイウィングのライブ会場で何かありました?」
「ああ。ライブ中にカルマノイズが出現した!」
「……ッ! すぐに向かいます!」
「頼む……ッ!」
俺は通信を切った。
「奏さんッ!」
「わかってるッ! 急ぐぞッ!!」
俺と奏さんはライブ会場に向った。
会計?
テーブルに1万置いていったよ。
緊急事態だものね。
釣りとか貰ってる場合じゃないよ。
◆
ひびみくライブ会場にいるかしら?【1D10】
1 未来ちゃんが!
2 いないよ
3 いないよ
4 未来ちゃんが!
5 いないよ
6 いないよ
7 いないよ
8 いないよ
9 未来ちゃんが!
10 響ちゃんと未来ちゃんが!
結果【4】
ライブ会場の被害【1D10】
1 緒川さん負傷!
2 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
3 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
4 緒川さん負傷!
5 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
6 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
7 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
8 ニンジャのワザマエで被害ゼロ
9 観客の【2D10】%が被害に……
10 カルマノイズのせいで観客が暴徒と化した!
結果【1】
ライブ会場は小さな劇場であり、そのライブはファンクラブ会員限定のライブであった。
観客は百人ほど。
そのライブ会場に、カルマノイズが出現した。
カルマノイズは近場の人を灰燼に帰そうとするも、緒川さんの影縫いで動きを止められた。
その隙に観客を逃がそうとするも、すぐに影縫いを解除したカルマノイズがその触腕を伸ばす。
緒川さんは、その触腕を回避し続けた。
だが、カルマノイズの触腕が、一人の観客に狙いを変えた。
それは一人の少女。
その少女を殺そうと伸びた触腕、一瞬実体化したその隙に、緒川さんが触腕をクナイで弾く。
だが、カルマノイズは。
弾かれた触腕とは別の、他の触腕で緒川さんを狙う。
その数、3本。
緒川さんは素早く少女を抱えて回避行動に入るが、触腕が弾き飛ばした座席に直撃。
少女を遠くに放り投げる。
だが、緒川さんは。
背中を強打!
すぐには動けない。
「緒川さんッ!」
「翼、ダメだッ!」
ステージの上、翼さんが叫びながら緒川さんを助けようとステージを降りようとするが、奏さんに止められる。
カルマノイズは緒川さんを仕留める為に触腕を振り下ろす。
だが。
劇場の天井から赤銅色の戦輪が炎を纏わせながら飛び出し、触腕を弾く。
戦輪は無論、俺が投げた物!
「緒川さん生きてるッ!?」
俺は天井から跳躍して、緒川さんの側に降り立つ。
「はい……ありがとうございます一鳴さん」
「お礼は良いので、彼女たちをステージから下げて下さいな。【彼女】がステージに上がれないので」
俺の言葉を察したのか、緒川さんは頷くと煙と共に姿を消す。
と、思ったらステージの上に現れる。
ワザマエ!
「翼さん、奏さん。ここから避難を」
「緒川さんッ! 無事でしたか」
「はい。さ、早く」
緒川さんは翼さんと奏さんを連れてステージの裾に消えた。
さてと。
俺は後ろをチラリと見る。
緒川さんが助けた少女を。
黒い髪に大きな白いリボンの少女。
未来ちゃんである。
ライブに来てたのね。
てかファンクラブ入ってたのね。
「ナルくん……」
「ん、大丈夫」
俺の言葉に安堵する未来ちゃん。
側にいた女性客に連れられて、避難していく。
さて。
ツヴァイウィングはもう居ない。
観客もみんな避難した。
だから、もう現れても大丈夫だ。
「奏さんッ!」
「ああッ!」
現れたのは奏さん。
シンフォギア装者の奏さんだ。
「さあ、ラストバトルです!」
「ああッ! いくぞ一鳴ッ!」
その言葉を合図に、カルマノイズが触腕を伸ばした。
一鳴&奏VSカルマノイズ【1D10】
一鳴【5】+5+3(マリア補正)+3(セレナ補正)
奏【3】+5(身体に優しいLiNKER補正)
カルマノイズ【2】
双陽・TWIN∞IMPACT
戦輪の一撃と槍の一撃を叩き込む。
槍の一撃でカルマノイズの身体にヒビが入り、戦輪の炎がヒビを焼く。
カルマノイズは消滅した。
ユニゾンするとカルマノイズも楽に倒せるね。
「お疲れ様でした」
「ああ、お疲れ一鳴」
そう、奏さんと言い合う。
これでカルマノイズはすべて倒された。
これで、奏さんとはお別れね……。
ウェル博士に頼んでた
そんな事を考えていると。
「待ってくれ!」
ステージから声。
そこには、アイドル衣装を纏った奏さん。
「あ……」
「……」
こっちの世界の奏さんと、平行世界の奏さんが見つめ合う。
「アンタ、何者だッ!」
こっちの世界の奏さんが言う。
「この前のライブの時も、ノイズと戦ってたよな!?」
こっちの世界の奏さん、この前の戦闘見てたんだね……。
「わかるんだ、……わかるんだ! あたしと同じ顔で、あたしと違ってノイズと戦ってるアンタがッ! あたしと一緒なんだって! あたしなんだって!」
「…………」
平行世界の奏さんは黙ったままだ。
「だから、わからないんだッ! アンタは何者なんだよ。本当に、あたしなのか……ッ!?」
「あたしは」
平行世界の奏さんが口を開いた。
「あたしは、平行世界から来たんだ」
「平行、世界……?」
「ああ、何かが違う世界。どこか違う世界。あたしは、ノイズと戦う事を選んだあたしなんだよ」
「ノイズと……」
「なぁ、あたし」
「なんだよ」
「父さんと母さんと、妹は元気か?」
「……ああ」
こっちの世界の奏さんの言葉を聞いて、奏さんは静かに微笑んだ。
「そっか、ならいい」
「なぁ、そっちのあたしの、家族は……」
平行世界の奏さんは首を横に振った。
「なぁ、あたし」
「……なんだよ」
「アイドル、頑張れよな」
「……ああ、勿論だ! そっちも、頑張れよ!」
こっちの世界の奏さんの言葉を聞いて、平行世界の奏さんは一つ頷く。
そして、こちらを向いた。
「帰ろう、一鳴」
「良いんです?」
俺はこっちの世界の奏さんをチラリと見た。
「いいさ。これ以上はな」
「そうですか。わかりました」
俺は平行世界の奏さんを見る。
本当に、同じ顔の、同一人物。
でも、こっちの奏さんは顔や髪に埃が着いている。
それでもこの平行世界の奏さんは、美しく見えた。
「帰りましょうか、奏さん」
◆
次の日。
カルマノイズをすべて倒したので、奏さんは平行世界に帰る事になった。
その前に、二課に挨拶に来た。
「短い間、お世話になりました」
奏さんは頭を下げた。
「こちらこそ、貴重な平行世界の装者のデータが取れたわ」
ホクホク顔の了子さん。
「そっちの俺によろしくな」
奏さんと握手をする弦十郎さん。
「ツヴァイウィングが2度も世話になった。ありがとう」
弦十郎さん同様に、奏さんと握手をする八紘さん。
「奏さん、これをあげますよ」
ウェル博士が10cm程度の小さな瓶を渡す。
中には緑色の液体。
「これは……LiNKERか?」
「はいッ! 短時間用のLiNKER投与装置です」
「へぇ、ありがとな。でも、なんでコレを?」
と、奏さんが問う。
「僕は一鳴くんに頼まれて作ったので」
「一鳴が?」
俺を見る奏さん。
「奏さん、LiNKER使わないと装者になれないんですよね。だから、いざ言うときの為に必要かなって」
そう。ウェル博士に作ってもらった、この小型LiNKER投与装置は、奏さんのいざという時の為の秘密兵器である。
2041年の、ライブの惨劇を回避する為の秘密兵器なのだ。
あのライブの惨劇の原因、原作で奏さんが死んだ原因は、絶唱による負荷のバックファイアを一身に受けた為である。
ライブの裏で進められた、ネフシュタンの鎧の起動実験、その実験のデータ採取に
そんな、適合率が低下した中で絶唱したので、負荷を一身に受けて死亡したのだ。
ならば、逆に。
適合率が上がっているなら絶唱で死ぬことはないはずだ。
故に、小型LiNKER投与装置である。
常に持ち運び出来るLiNKERがあるならば、ライブ中でも持ち運び出来るLiNKERがあるならば。
それを使って、絶唱の負荷を和らげることが出来るはずだ。
そんな訳でウェル博士に小型LiNKER投与装置の作成を依頼していたのだ。
「そっか、ありがとな一鳴」
ニカッと笑う奏さん。
うーん、笑顔が似合うお姉さんだ。
「奏ちゃんや」
訃堂司令である。
「あ、爺様」
「寂しくなるのぉ。ずっとこっちに残らぬか? その間に向こうのワシ殺しとくし」
「そ、それはいいかなぁ!」
奏さんが引いていた。
殺意がヤバイヤバイ。
キレイな訃堂じいじ的に外道訃堂は許されないらしい。
「向こうで待ってる人がいるからさ」
「そうか、じゃあ仕方ないの」
訃堂司令が懐から手紙を取り出す。
「コレを、向こうの弦十郎に渡しておいてくれぬか」
「いいけど、コレは?」
「次に奏ちゃんや翼を捨て駒にするような事があれば、ウチの装者をヒットマンとして送り込むぞ、という脅しじゃな」
「お、おう……」
奏さんの顔がヒクつく。
「あとはまあ、激励とか色々じゃな」
「そっちメインでいいんじゃないかなぁ」
俺もそう思うよ奏さん……。
「うん。まぁ、とにかく渡しとくよ」
「頼むぞ」
そうして。
奏さんは平行世界に帰っていった。
次に会えるのは、いつになることやら。
でもまあ。
次に会うと時も。
笑顔で会えたら、そう思った。
長いような短いような、平行世界の装者編プレリュード、これで終わりです。
奏さんは生きて会えるのか、それはまた次回の平行世界編で。
次回はいつかって?
そんな先のことはわからない(ボトムズ感)
あと今回のダイスで、翼さんの緒川に対する好感度と、未来さんの一鳴くんへの好感度がぐーんと上がりました。
つまりどういう事か?
おがつばと、なるみくに近づきました。
やったぜ。
それと次回はクリスちゃん編。
女神転生のアイドルであるあの子も出ます。
お楽しみにね。