転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

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サブノーティカという海を探検するゲームを買いました。
まだ序盤だけど、海怖いわ……。
海面近くを泳いでても、底が見えない海は怖いわ……。



第七十話 屍人の国のアリス③

 

 

 

「赤伯爵と黒男爵を名乗る怪人たちだが、米国政府も追っていた」

 

と、八紘さん。

二課に帰還した俺と弦十郎さんが二課のメンバーに事情を説明した後で教えてくれたのだ。

 

「アメリカが?」

「ああ。向こうの外交官が教えてくれたのだが、どうやら米軍が独自に保有していた聖遺物を盗まれたらしい」

「米軍、ですか?」

 

八紘さんの言葉にウェル博士が疑問を持つ。

 

「アメリカの聖遺物は全てF.I.S.にて保管されるはずです」

「ああ、こちらもそう聞いている。だが、そのせいで米国政府内でF.I.S.の発言力が増してるようでな。それに反発した軍部の若手将校が勝手をしたらしい」

 

そしてその結果、ベリアルとネビロスに聖遺物を奪われた、と。

おそらくその米軍若手将校一派は聖遺物についての知識が少なくて、それが恐ろしい力を持っているが故に多数の人間に狙われているとは思わなかったのね。

 

「だからネビロスは最後にフォニックゲインが必要だ、と言ったのだな」

 

弦十郎さんが納得する。

【お前たちの娘は今はまだ殺さん。フォニックゲインが必要なのでな】とネビロスはクリスちゃんの両親に囁いていた。

クリスちゃんを使って聖遺物を起動させようとしているのか……。

 

「それで、奴らが盗んだ聖遺物はなんていうんです?」

 

と、俺が聞くと、八紘さんは了子さんと目を合わせる。

そして、こちらを向いて教えてくれた。

 

「……終末兵器アバドン、というらしい」

「アバドン?

ヨハネの黙示録の?」

 

俺の言葉に頷く八紘さん。

 

アバドンとは、ヨハネの黙示録に記された天使である。

その名は【破壊者】【奈落の底】などを表す。

ヨハネの黙示録はキリスト教における世界の終わりが描かれているのだ。

その黙示録によれば、7人の天使がラッパを吹くと隕石が落ちたり水が毒になったりして、世界を終わらせるのだとかなんとか。ざっくりとした理解だけど。

 

そしてアバドンは、5人目の天使のラッパで奈落から現れるのだという。

「馬に似て金の冠をかぶり、翼と蠍の尾を持つ」という天使であり、奈落の底でルシファーを千年見張るのだと。

蝗害が神格化したものであり、死より苦しい苦痛を与える蝗を従える。

蝗害はすべてを食い荒らして無に返す。奈落の底を意味するアバドンもまた、すべてを無に返すという事か。

 

まあ要するにとんでもないビッグネームだということ。

 

「で、このアバドン。フィーネは知っているらしい」

 

八紘さんの言葉で、この場にいた全員が了子さんを見る。

髪と瞳が黄金に変わった了子さん、フィーネを。

 

「……と、言っても前世での話だ。第二次世界大戦の時か」

 

フィーネの話によれば。

第三帝国の総統閣下の指示の元、世界中から聖遺物が集められたらしい。

その聖遺物を調べるのがアーネンエルベ機関であり、トゥーレ協会であり、ヴリル協会であった。

二課の前身である風鳴機関は、それらの組合から技術や知識を提供されていたらしいのだが、アバドンは秘中の秘であった為に風鳴機関に情報は流されていない。

 

アバドンはエジプトの遺跡で見つかった完全聖遺物である。

その側には、アバドンについて書かれた文書が残されていたという。

 

不活性時には手のひら大の卵であるのだが、エネルギーを溜め込むと5メートル以上の大きさになり、最終的にアバドンが孵化する。

アバドンは体内が際限なく広がる異空間になっており、全てを喰らい無に返すという。

また、アバドンは護衛として小型の蝗型自立兵器を無限に生成し続ける。

この自立兵器は有機物無機物を問わずに齧って破壊し、自らの体内に取り込む。

まさに蝗害の具現である。

 

もし第三帝国がアバドンの孵化に成功していたら、歴史は変わっていただろう。

 

「ならなんで総統閣下はアバドンを孵化させなかったんですか?」

「危険すぎたのよ」

 

アバドンの側で見つかった文書にはこう書かれていたという。

【アバドンによって、一つの国が滅びた。国のあった場所はただ荒野のみが広がっていた。アバドンが喰らったのだ。荘厳な王宮も、肥沃な大地も、国を支えた人々も。全て。

知らぬ者よ、アバドンを永遠に眠らせよ】

と。

 

それ故にアバドンを持て余した総統閣下は、Uボートに命じて、不活性状態のアバドンの卵を大西洋に廃棄させたという。

 

「そして、その捨てられたアバドンの卵を米軍が見つけた、と」

「それをベリアルとネビロスに奪われた、か」

 

俺と弦十郎さんはそう話し合う。

了子さんが口を開いた。

 

「ベリアルとネビロスが、そのアバドンの起動を目論んでいたとしても、クリスちゃんの歌だけだと最低2週間は歌わないといけないわよ」

「なら時間はあるか」

 

と、八紘さんが答えるけれど。

ベリアルとネビロスに囚われているのは、クリスちゃんだけではないのだ。

 

「いや、ソネットさんもいる」

 

ソネットさん。

クリスちゃんのお母さんである彼女は、世界的な声楽家である。

高フォニックゲイナーであるクリスちゃんのお母さん、ソネットさんも高フォニックゲイナーである可能性は高い。

 

「フォニックゲインは、心を重ねる事で効果が向上するわ。もし、クリスちゃんとソネットさんの心を重ねたとしたら……、3日、保つかどうか」

 

3日。

それよりも短い時間。

あまりにも短い時間であった。

 

「なら、早く助けに行かないと!」

 

と、俺は訴えるが。

それを制したのは八紘さんだ。

 

「落ち着け一鳴くん。敵の拠点は既に把握している。問題はない」

 

 

 

ベリアルとネビロスの拠点【1D10】

 

1 六本木

2 六本木

3 六本木

4 冬木(難易度上昇)

5 六本木

6 六本木

7 六本木

8 六本木

9 冬木(難易度上昇)

10 皆神山(難易度急上昇)

 

結果【6】

 

 

 

「ベリアルとネビロスは六本木ヒルズに潜伏している」

 

八紘が教えてくれた。

 

「ヒルズ、ですか?」

「ああ。六本木ヒルズ内のホテルに暮らしているらしい」

「……なら、なんでさっさと捕まえないんです?」

「敵の腹の中に飛び込むようなものだからな」

 

冷や汗をかきながら、八紘さんが説明の続きを言った。

 

「……現在、六本木ヒルズ内の人間は全てゾンビ化しているのを確認している」

「……ハァ!?」

 

ヒルズ内の人間全員?

何人がいるんだ?

職員だけでなく、お店の客も居たでしょ?

 

「被害者数は軽く千人を超えるだろうな……」

「なんという……ッ!」

 

弦十郎さんの顔が険しくなる。

ベリアルもネビロスも、アリスの為に何人殺すつもりだろうか……。

 

「だが、ベリアルとネビロスの撃破には米軍と連携する事になる」

「米軍?」

 

俺の疑問に八紘さんは頷いた。

 

「ああ。若手将校の暴走であるとはいえ、国内の聖遺物を奪われたのだからな。対ベリアル及びネビロス戦に同行させてほしいと頼まれてな……」

 

 

 

米軍の戦力【1D10】

 

1 精鋭部隊(戦闘ダイス +10)

2 特殊部隊(戦闘ダイス +15)

3 パーフェクトソルジャー部隊(戦闘ダイス +20)

4 精鋭部隊(戦闘ダイス +10)

5 特殊部隊(戦闘ダイス +15)

6 パーフェクトソルジャー部隊(戦闘ダイス +20)

7 精鋭部隊(戦闘ダイス +10)

8 特殊部隊(戦闘ダイス +15)

9 パーフェクトソルジャー部隊(戦闘ダイス +20)

10 (F.I.S.所属の)特殊部隊(最終的に裏切る)

 

結果【7】

 

 

 

米軍のスタンス【1D10】

 

1 ジャップは下がってな!(連携✕)

2 事務的な対応(連携△)

3 日本のオトモダチのサポートするね(連携○)

4 ジャップは下がってな!(連携✕)

5 事務的な対応(連携△)

6 日本のオトモダチのサポートするね(連携○)

7 ジャップは下がってな!(連携✕)

8 事務的な対応(連携△)

9 日本のオトモダチのサポートするね(連携○)

10 じゃぽん好き……ちゅきちゅき……(連携◎……?)

 

結果【6】

 

 

 

「米軍も必死なのだろうな、精鋭部隊を送り込む予定らしい」

「予定? まだ日本に着いてないんです?」

「ああ。今日の深夜到着予定だそうだ」

「じゃあヒルズに突入は明日以降ですか」

 

果たしてそれで、間に合うだろうか……。

 

「だが、連携には問題ないと思う。今回来日する部隊は皆、変な思想に傾いておらず純粋にこちらをサポートするようだしな」

 

来てくれるのはまともな部隊らしい。

それは良いんだけれどね……。

やっぱりすぐにクリスちゃんを助けに行きたい気持ちがあるのよね。

 

「一鳴くん、この後いいか」

 

と、弦十郎さん。

 

「あの時、俺も不覚を取った。身体を動かさないと、一人で動いてしまいそうでな……」

 

模擬戦の誘いである。

弦十郎さんも、目の前でクリスちゃんを連れて行かれたのが響いてるよう。

 

「ええ、もちろん」

「二人共、怪我しないようにしろよ」

 

そう八紘さんに言われる。

 

「ああ、それなら私が見ておくわ。少しギアの調整もしておきたいし」

 

了子さんに戻ったフィーネがそう言う。

 

「では一鳴くん行こう」

「ええ、行きましょう」

 

そういう事になった。

 

 

 

 

 

 

六本木ヒルズ。

地上54階地下6階と、大きな複合商業施設である。

普段は様々な人々で賑わうその巨塔は今、一人の少女の為の城となっていた。

 

その六本木ヒルズ内にある、ホテルの一室。

無論、最高級クラスの部屋であるそこで、ヒルズの幼い女主人であるアリスは家族と共に歌を唄っていた。

 

「ら、ら、ら♪」

「うふふ、アリスはお歌が上手ね」

「ああ、自慢の娘だよ君は」

 

アリスが唄い、母親であるソネットと父親である雅律が褒めそやす。

ソネットと雅律は穏やかな顔である。

 

「ねぇクリスお姉ちゃん、私のお歌どうだった」

「ああ、綺麗な歌声だったぞ」

 

そして、アリスの姉であるクリスもまた、穏やかな顔でアリスを褒める。

頭を撫でられたアリスはクリスに笑い掛ける。

 

「クリスお姉ちゃんも一緒に唄いましょう!」

「あたしもか? ……ああ、そうだな唄うか!」

「うふふ、ママも一緒に唄って良いかしら?」

「ええ、もちろんよ!」

「なら、伴奏は僕にやらせておくれ」

 

雅律がヴァイオリンで曲を奏でる。

その音に合わせて、アリスたちが唄う。

 

「ら、ら、ら♪ うふふ、楽しいわ楽しいわ楽しいわ! 家族で唄えるなんて夢みたい!」

 

アリスが笑う。

無邪気に笑う。

そこに、呪詛で全てを殺す魔人の姿などなかった。

ただの少女であった。

 

そのアリスを、部屋の隅から眺める二人の紳士。

赤伯爵と黒男爵である。

彼らはティータイムを楽しんでいた。

 

「雪音クリスへの幻術は上手く働いているようだな」

「ああ、そこに抜かりはないさ」

 

黒男爵は紅茶を飲みながら自慢げに言う。

優れた死霊魔術の使い手である黒男爵は、幻術にも通じていた。

クリスを攫った後、クリスに幻術をかけたのだ。

 

バルベルデで両親は殺されておらず。

アリスという妹と仲良く暮らしている。

そういう幻術を。

 

「ソネットと雅律も無事に動いている」

「彼らは元々、実の娘への愛情が強すぎてアリスを娘と認識していなかったのだ。

だが、ああやって雪音クリスを連れてきてやれば、アリスを雪音クリスの妹と認識させてやる事が出来る」

「死霊魔術とは、難しいものだな」

「今回は、人の心の問題だよ伯爵」

 

二人の紳士は紅茶を楽しむ。

家族に囲まれながら唄うアリスを慈しむ。

 

「ああ、アリスがあのように笑うなど思ってもみなかった」

「ワガママばかりだったアリスも、家族が出来てからは良い子になった」

 

メイドが二人に紅茶を注ぐ。

そのメイドはゾンビであった。

元はヒルズに遊びに来ていた少女である。

だが、黒男爵によりゾンビに変えられたのだ。

そしてメイドとして使われている。

 

「アリスは今、間違いなく幸せなのだろうな」

 

赤伯爵が感慨深く呟く。

 

「ああ、無論だ」

「だからこそ、アバドンを早く目覚めさせなければ」

「問題はないさ伯爵。このまま行けば、卵は明日の夜には孵るだろう」

 

アバドンの卵は現在、一階に置かれている。

ベリアルとネビロスの力で、アリスたちから発生したフォニックゲインが注ぎ込まれている。

ソネットとクリス、そしてアリスの歌から生まれたフォニックゲインである。

アリスもまた、高フォニックゲイナーだったのである。

卵の大きさは既に5メートルに達しようとしていた。

 

「アバドン、その胎内に世界を持つもの」

「その世界をアリスに捧げよう」

「アリスが永遠に幸せに暮らせるように」

 

二人の紳士がアリスを眺める。

その瞳には慈愛が宿る。

紛れもない、愛が。

 

「この世界は、アリスに厳しすぎる」

「残酷すぎる」

「だから、別の世界に」

「アリスが幸せに暮らせる世界に行こう」

 

愛とは、偏執である。

偏執は、狂気に変わる。

彼らの愛は狂気であった。

世界全てを生贄にしてでも、一人の少女を幸せにする。

そういう、愛だ。

 

「ネビロス、邪魔は入るだろうな」

「米国も、この国も攻めてくるだろう。アバドンを破壊しにな」

 

黒男爵が嗤う。

 

「その時は、我が屍人と死霊総計10000体で迎え撃とう」

 

赤伯爵が嗤う。

 

「ならば私も、本気を出すとしよう。孤児院は、天井が低すぎて本来の姿になれなかったからな」

 

紳士たちは嗤う。

今度こそ自分たちに歯向かう愚か者を殺す事に愉悦を覚える。

これこそが、彼らの本性。

残酷な悪魔の本性。

 

タイムリミットは、刻一刻と迫っていた……。





今回は状況説明回。
次回は戦闘回です。
ダイスいっぱい振るぞぉ!
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