転生者はシンフォギア世界でオリジナルシンフォギア装者として生きるようです   作:アノロン在住の銀騎士

8 / 137

(前回のあらすじ)
【次回、オリ主やっとシンフォギアを纏う】と言ったな。スマン、ありゃ嘘だ。



第三話 フィーネ二課入り/バルベルデOTONA無双/サンジェルマンの憂鬱 の豪華三本立て

 

「なるほど、つまり貴様は櫻井了子ではなくフィーネ。先史文明の巫女か」

「了子くん……」

 

櫻井了子は拘束された。

現在、二課の取調室にて風鳴訃堂と風鳴弦十郎から取調べを受けている所だ。

 

七年前にフィーネとしての人格が目覚め、アメリカに情報と技術を横流ししてF.I.S.を作り、邦人をレセプターチルドレンとして拉致させたのがバレたのだ……。

ちなみにバラした奴は英雄志望でキレイキレイなドクターウェルである。

現在了子はメガ盛りMAXな髪型から金髪ストレートのフィーネスタイルで拘束されていた。

 

「ええ、そうよ。櫻井了子は天羽々斬の起動実験の時に目覚めた過去の亡霊フィーネ。櫻井了子の意識はその時にフィーネに取り込まれたの」

「で、目覚めた貴様はシンフォギアなどの技術を提供する代わりにアメリカにレセプターチルドレンを集めさせた。次の自身の依り代にするために」

「ええ。私の血を継ぐ子どもたち。彼らは皆、フィーネになる資格を持っている」

 

少し考え込む訃堂。

 

「一つ良いか?」

「なにかしら?」

「レセプターチルドレンには男の子も居たが……」

「彼もフィーネになる資格はあるわ」

「そうか……」

「ちなみに何回も男になっているわよ?」

「なんと!」

「そうなのか了子くん!?」

 

どよめく訃堂と弦十郎。

ちなみに騎士として生きたこともある、と答えたら更にどよめいた。

 

「で、他に聞きたいことはあるかしら?」

「……了子くん。本当に君の中に櫻井了子は残っていないのか?それとも……」

 

弦十郎がじっと目を見る。

 

「……わからない。私のリインカーネーションシステムは今までの私の知識を引き継ぐ。知識と共にある記憶、そして想いも……。だから、私の何処かに櫻井了子が居てもおかしくはない」

「そうか……」

「だが、私を櫻井了子とは思わない事だ。私はフィーネ。先史文明の巫女で、この場においてはスパイなのだからな」

 

それは決別だった。

櫻井了子に惹かれていた風鳴弦十郎に対する、決別であった。

 

「ならば、次は儂の番だ」

「あら、なにかしら?」

 

訃堂が空気を読まずに切り込む。

フィーネは平気な顔で対応した。

 

「なぜ、貴様は数千年もの間、子孫の身体を乗っ取り続けた?」

「……」

「なにが目的なのだ?」

 

黙り込むフィーネ。

黙秘するらしかった。

 

「ちなみに儂は気配で人の心を読むぞ」

「……わかったわよ。言うわよ」

 

降参するフィーネ。

 

「バラルの呪詛は知っているわよね?」

「ギリシャのアレスが言っていたな。アメリカから送られてきたビデオの中で」

 

他にも殴らないで、とか、もっと薬をくれ、とか言っていたが割愛である。

 

バラルの呪詛。

人の言葉を乱し、相互理解を阻む神の呪い。

その発生源は月にあるカストディアンの遺跡。かつての地球観測ベース基地だ。

 

「あれの破壊よ」

「月を、か?」

「ええ。馬鹿げてると思った?」

「ああ。月の破壊による重力異常は?降り注ぐ月の欠片は?」

「必要な犠牲よ」

「何のために?」

「……」

「何のために月を壊す。バラルの呪詛を止める」

「……」

「答えよ、フィーネ。何のために無辜の民を殺す」

 

訃堂の眼光が鋭く貫く。

何度も転生し、尋問も拷問も経験してきたフィーネをも震え上がらせる眼光であった。

その眼光は、フィーネの心の奥底を照らし出す……!

 

「……あの方に」

「あの方?」

「神たるあの方に、私の想いを伝えるため」

「想い?」

「ずっと、恋い焦がれてきた。何度も会って話をして。ずっと、ずっと。感じていた想いを伝えたかった」

「……」

「あの日も、いつものように待っていた。あの方を。でも、月が光って、人々の言葉が乱れて。あの方の声が聞こえなくなって。他の神の声もわからなくなって。いつの間にか他の神々は居なくなって……」

「了子くん」

「ずっと待っていたけど、あの方は来なくて。声も聞こえなくて。私はずっと待っていたのに」

「もういい、了子くん。もういいんだ」

 

そっと、フィーネの肩に手をやる弦十郎。

一瞬の後、その手をはたき落とした。

 

「…………私はフィーネよ」

「いや、俺にとっては櫻井了子だ」

 

弦十郎は振り払われた手を再び肩に置いた。

 

「……好きにしなさい」

 

そっぽを向くフィーネ。

訃堂がまた空気を読まずに切り込む。

 

「フィーネ、バラルの呪詛は月の遺跡から発せられてる。間違いないのだな?」

「ええ、そうよ。それは確認済み」

「なら、お前の願い叶うやもしれぬぞ?」

「どういうことよ」

「アルテミス」

 

突然、オリュンポス12神の中の一柱の名を出す訃堂。

 

「月を司る神性にして、オリュンポス12神。そして地球に残されたアヌンナキ」

「バラルの呪詛について何か知っていると?」

「顔見知りか?」

「いいえ。オリュンポス12神たちとは話したことはないわね。私が話したのはあの方とイシュタル様とあとは……」

「ならば可能性はある」

「親父、それじゃあギリシャと交渉するというのか!?」

 

弦十郎が突っ込む。

日本とギリシャの交渉。

人と神の取引。

世界に大きな波紋を生む事だろう。

それは訃堂も心得ている事だ。

 

「案の一つだ。他にもアメリカをせっついて(金だけ出させて)月に直接乗り込んだり」

「……」

「とにかくやりようはある。幾らでもな」

「……」

「月を壊すこともない」

「それで」

 

口を開くフィーネ。

 

「それで、私に何をさせようというの?そこまで譲歩して、何を」

「現在、世界は岐路に立たされている。人と神、正道と異端、そして力と力」

 

一瞬。

たった一瞬、訃堂の目に火が灯る。

決意と覚悟の火だ。

 

「もう、国を焼かれたくはない。美しい大地が、無辜の人が。焼かれるのは見たくない」

「親父……」

「力を貸してくれフィーネ。儂らには貴様の知恵が必要なのだ」

「……」

「頼む……!」

 

訃堂が頭を下げた。

下に立ち、故に頭を垂れる。

されど、そこには国を護るものの覚悟があった。

誇りがあった。

 

「わかったわ」

「……了子くん!」

「これまで通り、技術部の責任者として二課に貢献する。これで良いのよね」

「ああ、そうだ。ありがとうフィーネよ」

「その代わり、約束は守りなさい。風鳴訃堂、貴方が生きている間に私を月に連れていき、バラルの呪詛を停止させること」

「無論だ」

「これからは、櫻井了子としてだけじゃなくてフィーネとしてもお世話になるわね。風鳴司令、弦十郎くん」

「ああ」

「よろしくな、了子くん」

 

そういう訳で。

フィーネが仲間になった。

以下ダイジェスト。

 

「と、言うわけで櫻井了子くんは先史文明の悪い悪霊に取り憑かれてアメリカとのスパイをしていた(カバーストーリー感)

みんな、許してあげてくれ」

「迷惑かけてごめんなさい(素直)」

「……うん、皆も許してくれるようだぞッ!良かったな了子くん!」

「みんなありがとう(素直)」

「了子くんだが、引き続き技術部の方で責任者として在籍して貰うことになった。ウェル博士とキャロルくんも、了子くんの下で働いて貰うことになる」

「後で資料保管庫に来い(よろしくね、ドクターウェル)」

「アッハイ」

 

そういう事になった───

 

 

 

 

「ところで儂は後五十年生きる予定なんだがな?」

「えぇ……(困惑)」

「親父は人魚の肉でも食ったのか?」

 

 

 

 

綺麗な訃堂は激怒した。

必ずや邪智暴虐たるヴリル協会と強硬派を血祭りにあげなければならない。

訃堂は原作よりキレイキレイである。

キレイキレイなのであかんたれなドイツを見限り、貰ったガングニールを大切に保管しつつドイツの聖遺物関連組織から距離を取った。今ではお歳暮を送り合うだけの関係である。

ちなみに一緒に貰うはずだったイチイバルはUボートが撃沈して海の藻屑となった。だからクリスちゃんは装者になれないの……。

 

綺麗な訃堂は考える。

アメリカに土下座されたから、という理由でバルベルデ内戦に介入してヴリル協会をグリルに掛けるのはいささか無理矢理過ぎる。

政治的な理由が必要だった。

綺麗な訃堂は八紘を呼びつけ、なにか策はあるかと問うた。この世界の訃堂は綺麗なので、息子たちと仲が良い。

八紘は答えた。2035年からバルベルデで行方知れずとなっている【雪音クリス】ちゃんの捜索を方便にするべきである、と。

 

なるほど、と言って訃堂は雪音クリスに関する資料を見た。

 

雷が落ちた。

 

訃堂は再び激怒した。何故邦人の、しかもまだ幼い少女が内戦地で行方知れずになっているのに日本政府はなにもしてないんだ、と。

 

八紘は冷や汗を拭いて答えた。外務省担当者がバルベルデ政府に再三捜索を打診し、此方も捜索隊を派遣すると言っているのに、なかなか首を縦に振らない。様々な人道支援もするし、袖の下を渡そうとしても断る。何かある、そう思って調べようとしたらギリシャと欧州とアメリカが戦争を起こしたのだ、と。

 

訃堂はその報告を静かに聞くと、こう宣言した。

儂が行く。あとの事はお前に任せる。

 

訃堂を黙って見送った八紘は内線で弦十郎を呼ぶと、訃堂がバルベルデに行くこと、選りすぐりの戦闘要員と一緒に着いていって欲しいこと、あとの仕事は自分がやることを伝えた。

そして静かに気を失った。これからくる激務に備える為の緊急睡眠だった……。

 

 

 

 

後日。

風鳴訃堂は息子の弦十郎と共に南米バルベルデ共和国にいた。

周りには戦闘要員の黒服たちを従えている。

雪音クリスちゃんを助ける為であった。

あとついでにヴリル協会と強硬派の抹殺。

 

「総司、この基地に雪音クリスちゃんは捕らえられているのだな?」

「はい御前。三年前のテロから、幾つかの組織に奴隷として売られた後、このヴリル協会の実験基地に売られたと。内部の地図は確認を取りましたが、間違いなく本物であります」

 

緒川総司は飛騨忍群の若き頭領であり、有能な忍である。二課の諜報活動は本来、日本政府に雇われた弟慎次の仕事だ。しかし今回は外国バルベルデでの諜報に加え情報の深度と速度を最優先とするため、まだ若い慎次より経験豊富な総司を連れてきたのであった。

ちなみに慎次は家に帰れない八紘に代わり、翼の世話をしていた。

 

「まさか米軍が追い返されたヴリル協会の基地に雪音クリスちゃんが捕らわれているとはな……。よし、弦十郎。最終確認を。」

「はっ。

では一班は親父と共にヴリル協会及び強硬派の始末を。

二班は俺と共に捕らえられた人たちの救出。

三班は総司くんをリーダーとし、基地前にて俺たちの脱出経路の確保。

時計合わせ。五分後に突入する」

 

そして五分後。

 

「……作戦開始!」

 

防人の戦が、OTONA無双が始まった。

 

 

 

 

訃堂は飛んで来る銃弾を愛刀群蜘蛛で切り払いつつ基地内の廊下を進撃していた。

後に続く黒服一班は芸術的な連携で支援している。皆、アホみたいに強い訃堂と共に戦うのではなく、後ろで支援する為の訓練を積んでいるのだ。

そんな訃堂の前に巨大な異形が現れる。

人を何人も潰して捏ねて、一つの人の形に直したような。そんな姿。

ヴリル協会のパーフェクトソルジャーだ。

 

「いま、楽にしてやるぞ」

 

一閃。

ただ、群蜘蛛を振るっただけ。

それだけで、異形パーフェクトソルジャーは八分割された。

恐ろしい、業前であった。

だが訃堂は一言、ぼそりとこぼした。

 

「少し、鈍ったか」

 

帰ったら鍛え直さねば、そう言ってさらに進撃していく。

目指すはこの基地の一番偉い男のオフィス。

そこに、訃堂が切らねばならぬ相手がいる。

 

 

 

 

雪音クリスは地下区画の小部屋にいた。

一人であった。

畳一枚分しかないような狭さの部屋である。

それが幾つも隣り合わせで作られていた。

そういった部屋に一人ずつ、人が詰められていた。

ここは、実験基地の【備品】倉庫。そう言われている。

詰められた人たちは皆奴隷だ。

安く買われ、命を散らす。

あるものは実験材料にされ、あるものはパーフェクトソルジャーとは名ばかりの怪物にされる。

 

そんな備品たちの中でクリスは上等な扱いであった。

クリスの歌はフォニックゲインと呼ばれる、実験基地の人間が重要視する何かを発生させる事が出来た。

それに気付いた研究者たちはクリスの扱いを数段引き上げた。

死なれては困るからだ。

それでもクリスは備品扱いだった。

高級な備品。

それが雪音クリスという少女の全てだった。

 

その日も実験で、研究者たちが満足するまで変なオブジェ相手に歌わされた。

喉が嗄れ、研究者たちのお気に召す結果が得られなくなったので、罵られて備品倉庫に帰されたのだ。

罵られてもクリスは何も感じなかった。

そんなクリスも二年前までは普通の少女だった。

 

【歌で世界を平和にしたい】

 

そう言っていた両親と共にこのバルベルデ共和国に来て、内戦で苦しむ人たちを歌と音楽で癒していた。

そんな両親がクリスは大好きで、自慢だった。

だが。

そんな両親は死んだ。

歌で世界を平和にしたい、そう言っていた両親は戦争で死んだのだ。

それからクリスの人生は変わった。

 

庇護者の居ない子どもなぞ、紛争地では良いカモである。

しかもクリスの見目は整っていた。

怖い大人に捕まり、奴隷として売られて。

怖い目に遭って、飽きたら売られて。

それが、何度も。

備品扱いはクリスにとっては随分上等な扱いであった。

でも、クリスはそれを喜べなかった。

心が擦りきれていたから。

 

(パパ、ママ……。会いたいよ……もういやだよ……)

 

クリスの心は限界だった。

喜びも楽しみも。

それを感じる心も。

きっと二年前に。

両親と共に。

死───

 

爆音が響いた。

 

基地内にサイレンが鳴り響く。

慌ただしく足音が鳴り響く。

備品倉庫の住人たちも何事かと浮き足立つ。

だが、クリスは動かなかった。

もしこれが戦争の足音なら。

もう終わりにしてほしかった。

 

銃撃音が鳴り渡る。

それと同じように、衝撃と叫び声。

そして駆ける足音。

足音はどうやら備品倉庫の中の人たちを連れ出しているらしい。

そして。

クリスの部屋の扉がこじ開けられた。

 

入ってきたのは、赤いシャツの大男。

赤い髪を撫で付け、何故かピンクのネクタイの先を胸ポケットに入れていた。

 

「君は雪音クリスくん、かい?」

 

そう聞かれた。

クリスは小さく頷いた。

 

「俺は日本政府の風鳴弦十郎というんだ。君を助けに来たんだ」

 

そう言ってクリスを抱えた。

 

「なんで……」

「ん、どうしたんだ?」

「なんで、もっと早く来てくれなかったの?」

 

大男はビクリとした。

 

「なんで、パパとママ助けてくれなかったの?」

「ッ、すまない」

「なんで、私を助けてくれなかったの?」

「すまない……」

 

ギュッと、抱き締められた。

久々に感じた、人の暖かさだった。

 

 

 

 

「ギャアアアア!!!」

 

断末魔の叫びを上げて、異形パーフェクトソルジャーが八分割される。これで四体目であった。

 

「ヒィィィ……」

 

その背後で男が座り込んで怯えていた。

この基地を任されているヴリル協会の幹部であった。

 

「儂は貴様らに何も聞かん」

「ヒ、ア……ぁ」

 

一歩、歩く。

 

「何も求めん」

「ゆ、許して……」

 

もう一歩、歩く。

 

「ただ、何も言わず」

「ほ、他の基地の」

 

群蜘蛛を振り上げ、

 

「死ね」

「じょ」

 

幹部の首は泣き別れ。

ボトリと落ちて、コトリと倒れた。

 

「御前、証拠及び資料の回収完了しました。二班も雪音クリスちゃん及び他の人間の救助を済ませたとのことです」

 

黒服一班の一人が報告を済ませる。

 

「よし、引き上げるぞ。今日はあと二つの基地を落とさねばならん」

「ハッ!」

 

訃堂は部屋の窓から外を見た。

三班の黒服が運転するトラックの荷台に捕らえられた人たちが収用されていく。その中に、雪音クリスちゃんを抱き抱えて荷台に入れる弦十郎の姿。

その背中はどこか小さくなっていた。

 

あとで喝を入れねばならんな、訃堂はそう思い、撤退を開始した。

 

 

 

 

訃堂と弦十郎による、ヴリル協会への強襲は概ね成功となった。

総司の諜報活動と速攻戦術により、情報が渡るのが遅れた為であった。

ほとんどのヴリル協会会員と強硬派は抹殺されるか、アメリカに引き渡された。OTONAが介入した結果がこれである。

しかし、耳聡い者や勘の優れた者はバルベルデから即刻逃げ出した。

彼らの逃亡先はパヴァリア光明結社。

歴史の闇に潜み続けた錬金術師たちの総本山。異端技術のメッカである。

ヴリル協会は最近パヴァリアとの友好関係構築に成功したばかりであるが、パーフェクトソルジャー強化薬を初めとして手土産は十分であった為、受け入れられた。

 

 

 

パヴァリア光明結社の本拠地【1D6】

 

1 欧州(ギリシャにスルーされた)

2 欧州(ギリシャにスルーされた)

3 アフリカ(ギリシャに襲撃されお引っ越し)

4 アフリカ(ギリシャに襲撃されお引っ越し)

5 インド(ギリシャに襲撃されお引っ越し)

6 中国(ギリシャに襲撃されお引っ越し)

 

結果、【2】

 

 

 

パヴァリア光明結社の本拠地はギリシャ統一戦争から変わらず欧州の某所にあった。

戦地から離れていた上に、結界を張って徹底的に情報を遮断していた為に戦禍を免れたのだ。

 

指定ポイントからテレポートジェムにより送迎されたヴリル協会と強硬派の残党。

彼らを待っていたのは統制局長、アダム・ヴァイスハウプト。

そして最高幹部の三人。サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ。

 

「此度は我々ヴリル協会を受け入れていただき感謝に絶えません」

「水臭いじゃないかずいぶんと。同盟関係だよ?僕たちは」

 

ヴリル協会の幹部が謝辞を述べると、独特な語法で返事をするアダム。

ちなみに結社の中では無能とか凡人とか呼ばれている。

 

「そう言ってくださるならば、幸いでございます」

「災難だったね、出るとはねまさか、かの防人が。……それで、渡して欲しいな、君たちの持つ人形を」

「ただちに。……おい」

 

呼び掛けられ、下っぱ会員たちが棺を運ぶ。

蓋を開けるとそこにはオレンジ色の結晶が入っていた。その中に、一つ目のバイザーを付けた少女の人形。

この人形は旧ドイツ海軍が海底より引き揚げたオートスコアラー。最近まで聖遺物だと思われていたが、元々パヴァリア光明結社の所有する異端技術人形であったという事が判明したので返還されたのであった。

もちろん、パヴァリアとヴリル協会の同盟締結に多大な影響を及ぼしたのは、言うまでもない。

 

「久しいね。何年ぶりかな、この子と会うのは」

「おおよそ400年ぶりかと」

 

アダムの問い掛けにサンジェルマンが答える。

そしてその言葉にヴリル協会と強硬派がざわめく。

パヴァリア幹部が不老不死というのは嘘ではなかった、と。

 

「うん、そうだ。長かったよ、ここまで。出してあげないとね、早くこの結晶から」

「ではティキの解凍を急がせます」

 

サンジェルマンが指を鳴らすと、どこからかフードを被った錬金術師たちが現れ人形、ティキを運び去る。

 

「さあ、しないとね歓迎会を。しなくていいよ遠慮は、仲間だからね僕たちは」

「ありがとうございます」

「あるけどね、積もる話も。まずは休んでほしいね、心と身体をゆっくりと」

「では部屋までご案内します」

 

そうして。

ヴリル協会と強硬派の残党は、三幹部に連れられて去っていった。

残ったのはアダム。

 

「ピースはあと一つ。戦争で魂も集まった。でも……動くべきじゃないね、まだ」

 

アダムは思案する。

 

「防人とオリュンポス、そしてフィーネ。動けないね、彼等が生きている内は」

 

 

 

 

「はぁ……」

 

深夜。

パヴァリアの幹部用ラウンジで、サンジェルマンは一人酒を飲んでいた。

ドンペリであった。

 

「サーンジェルマン♪」

「珍しいワケダ、サンジェルマンが酒を飲むなんて」

 

そこにやって来たのはカリオストロとプレラーティ。

二人はそれぞれサンジェルマンの横に腰を落とすと、芋焼酎と冷えた牛乳を注文した。

 

「……私だって、飲みたくなる日ぐらいあるわ」

「ストレスで限界の時とかに飲むワケダ」

「ヴリル協会の事でしょ?」

 

なんでもお見通しね、そう言って笑うサンジェルマン。

しかし、すぐに真面目な顔に戻る。

 

「ティキ確保の為とは言え、人体実験を是とする組織と手を組むのは……」

「そりゃあね……」

「しょうがないワケダ。ここで奴等からティキを確保しなければ、次にいつチャンスが巡ってくるかわからないワケダ」

 

もしここでティキを確保出来なければ、ヴリル協会の影響が薄れたバルベルデ政府は体制建て直しの為に、ティキを初めとした旧ドイツ軍残党の残した聖遺物を売り飛ばすだろう。大国アメリカや、防人の国日本に。

そうなれば、ティキを確保する難易度は跳ね上がる。

だからこそ、サンジェルマンの理念に反するとは言え、ヴリル協会を受け入れざるを得なかったのだ。

 

「人体実験といえば、あの支部の娘たちはどうなったの?」

 

巧みに話題を変えるカリオストロ。

奥歯を噛み締めるサンジェルマンを見てのフォローであった。

 

「支部……ああ、人体を直接改造して【完全】を目指そうとした支部の話なワケダ?」

「ええ、サンジェルマンその支部で実験に使われた人たちを助けたって言ってたから」

 

その支部は欧州辺境にあった。

人体を直接改造して神経を強化したり、ヴァンパイアを再現しようとしたり。

サンジェルマンの嫌う実験をしていた。

勿論、秘密裏に。

故に実験体は社会の爪弾き者や、裏社会の落伍者など居なくなっても誰も構わない存在であり、その悪行がバレる事はないはずだった。

 

だが、ギリシャの欧州統一戦争である。

 

欧州が飲み込まれた戦乱は、その辺境の支部も被害を受けた。

戦争の被害を確認し、必要ならば支部を放棄させて、結社の人間を守るために動いていたのは幹部たるサンジェルマンであった。

サンジェルマンは有能であった。

被害報告があれば、即座に出立し現場対応をしていた。

アポイントメントなしで。

 

サンジェルマンは見た。

人が意識を保ちながら作り替えられているのを。

目を覆いたくなるような実験と、そのレポートを。

 

一時間後。

その支部で人体実験に荷担していた結社構成員はアルカ・ノイズにより分解され、人体実験の被験者たちは助け出された。

 

その被験者たちの事をカリオストロは聞いたのだ。

 

「彼女たちの経過は順調よ。最初は警戒して治療を受けてくれなかったけれど、一人だけ私の事を知っている人がいたから」

「ああ、義体の娘なワケダ」

「でも、治療を受けてくれて良かったじゃない!」

「……それでも完全に治すのはほぼ不可能ね。彼女たちの改造は根深いわ……。根治にはそれこそ、【神の力】が必要よ」

 

神の力。

サンジェルマンたちが求めるもの。

純粋無垢にして、莫大なエネルギー。

ティキ、生贄の命、錬金術。

ピースは揃いつつあるものの───

 

「しばらく活動は禁止、だものねぇ」

「オリュンポスに睨まれたくない局長の指示なワケダ」

「仕方ないわ。地道にやるしかないのよ、私たちは。それに、被験者の娘たちも自分たちに出来ることをやらせてくれって言ってくれてね。ヴァネッサ……私を知っていた娘を中心に事務仕事を任せているわ」

「ほぉー、働き者なワケダ」

「良いコたちねぇー!」

 

感心するプレラーティとカリオストロ。

その二人を細い目で見るサンジェルマン。

 

「ええ、良い娘たちよ?本来ならどこかの幹部がやるはずだった事務仕事をしてるんだもの」

「……へぇー」

「……ほぉー」

「申し開きは?」

「ここは奢るから♪」

「許してほしいワケダ♪」

「このラウンジのドリンクはタダよ」

 

そんなこんなで。

三人の夜は更けていった……。





次回は装者になれるはず。頑張れ一鳴くん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。