【完結】ONE PIECE Film OOO ―UNLIMITED DESIREー   作:春風駘蕩

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プロローグ

 ―――おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。

    探してみろ。この世のすべてをそこにおいてきた。

 

 史上唯一、世界で最も危険な海(グランドライン)を制した伝説の男。

 海賊王、ゴール・D・ロジャー。

 彼が死に際に放った一言は、世界中の男たちを、海へと駆り立てた。

 『大海賊時代』の幕開けである。

 

 彼が夢を抱き、そしてこの世のすべてを手に入れたのは、20年前。

 しかし、それとは別の時代、同じようにこの世のすべてを欲し、儚く消えていった一人の〝王〟がいた。

 〝王〟がその夢を抱いた始まりと終わりは、今から800年ほど前まで遡る―――。

 

 *

 

 ざわざわと木々が怪しく囁く。

 黒い雲が星と月の光を持呑みこむ闇の世界の中。

 とある島で、二つの影が対峙していた。

 一方は、もはや人には見えない、全身をうろこで覆ったヒト型の異形。

 もう一方は、黒い袖なしの着物に黒い袴、そしてカラフルな甲冑を付けた、人らしきもの。顔には深紅の鳥を模したフェイスアーマー。腕には黒いラインの入った爪甲。脚には緑の足甲をつけている。

 鎧の者は、異形を鋭い目で睨みながら、その拳をきつく握りしめた。

「……王よ。退くことはできぬのですね?」

「くどい。この力を手にした時から覚悟はできている」

 異形の者がその外見に似合わぬやわらかい口調で言うと、王はその問いを低い声で一蹴した。

「……王よ。お考え直しください。あなたは間違っています。『力』は、しかるべきものが、しかるべき使い道をすることでのみ、真に発揮されるのです」

「黙れ!!」

 幼子に諭すような言葉を、王は一喝する。

「…お前の戯言はもう聞き飽きた」

 王が小さく、その一言を発すると、王の胸から何枚ものカラフルなメダルが呼応するように飛び出した。

「これで終わらせる!!」

「! 王よ! まさか!!」

 異形が止める間もなく、王は腰元に着いた器具を取り外し、全てのメダルの上にかざしていく。

 すると、同時にメダルが光輝く円陣を出現させ、王の胸に吸い込まれるように取り込まれていった。

 すべての円陣の光を取り込んだ瞬間、王の胸の中心にぽっかりと真っ黒な穴が現れた。

「ッぐ! ぅおおおおおおおお!!!!」

 王は苦痛に顔をゆがめながら、あごをそらして吠える。

 すると、胸に空いた穴は、そこにあったすべてのものを吸い込み始めた。廃墟も、木も、岩も、そして自分と異形も。

「王よ!! おやめください!! それではアナタも……!!」

 自分をのみこもうとする穴の力に耐えながら、異形は王に向かって叫ぶ。

 だが王は、それに激しい言葉をぶつけることで答える。

「お前に奪われるよりはマシだ!! 私とともに!! 眠れ――――!!!!」

 王が叫んだ瞬間、深夜の島に、夜闇をも覆う黒い光が現れた。

 

 

 一夜にして、島の一部が消し飛んだこの事件を、島の人々は今日まで語り続けた。

 史上最も欲深かった王が、何かを守るために戦った最期を―――――。


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