【完結】ONE PIECE Film OOO ―UNLIMITED DESIREー   作:春風駘蕩

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時間的には、スリラーバーグとシャボンディ諸島の中間です。
ついでに、まだ変身はしません、しばらく。


第一章 少女とメダルと幻の島
1.空からの訪問者


 照りつける太陽。その下で広がる海は、深い青の光を放っている。

 空には雲一つなく、どこまでも続く海とは違った青色が広がっている。

 静かな波がさざめく海原を、一艘の大型船が突っ切っていた。

 船の船首(ヘッド)には、太陽に似たライオンの顔が飾られ、どこか楽しげな顔を前方に向けている。

 風をはらんで膨らむ帆には、麦わら帽子をかぶったどくろの海賊旗(ジョリーロジャー)のマーク。

 海賊『麦わらのルフィ』一味の乗る船、『サウザンドサニー号』だ。

 芝生の敷かれたサニー号の甲板では。

 

 半分ミイラ化した少年が倒れ伏していた。

 

 黒い短髪の上に、トレードマークである麦わら帽をかぶったその少年の名は、モンキー・D・ルフィと言った。

 この海賊団の船長である。

「……腹減ったぁ~」

 ややこけた顔で呟くルフィの腹から、ぐぎゅるるぅ~という恐ろしいほど響く音が届き、ほかのクルーたちを呆れた顔にさせた。

「魚どころか、カモメすらいねぇ。どうなってんだこの海は…」

 釣竿を手にぼやく、マリモのような髪型の剣士ゾロ。その手の釣竿は、ただ波に揺られてぷかぷか浮かぶだけだ。

 その傍で、水色のリーゼントの大柄の男・フランキー、長身の骸骨男・ブルック、赤い帽子の人間トナカイ・チョッパーもぐったりと伏していた。

「ぅおお…。今週の俺様、全然スーパーじゃねェぜ~…」

「ぁああ…。わたし、今すぐにでも干からびそうです…。もう、干からびてんですけど」

「ぅええ…。おれ、この暑さだめだ…」

 三人仲良く、ぐったりした顔で倒れ伏す人外3匹。

 なぜ、骸骨とトナカイが話すことができるのかは、後々述べよう。

 いつもは突っ張っているフランキーのリーゼントも、今日はだらんと垂れている。

「おっかしいわね~…」

 甲板の先で首を捻るのは、優秀な航海士の力を持つ、ナミ。お金とみかんが大好きな女の子だ。

 鮮やかな水着を纏い、目の前にかかげる古びた地図を睨みながら、しきりに首を捻っている。

「そろそろ見えるはずなんだけどなぁ~…。宝島」

 ナミがその手に持つ地図に描かれているのは、とある島。北を上に向けると、三つの円が横に並び、斜めに傾いた形をしている。

 

 『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』を求める海賊の一味であるルフィたちだったが、偶然この地図を見つけたため、一時的に進路を少し離れている。この島が近いこともあり、寄り道の真っ最中なのだ。

 主に、金のにおいにつられたナミの要望で。

 

「方位もしっかりしてるし、何より『本物』のにおいがするのに……。何よもう!! ガセネタだったの!!」

 憂さ晴らしのように地図を握りしめ、天に向かって吠えるナミだが、たださらに虚しくなっただけだった。

「私の鑑定も、まだまだだったのかしらね…」

 ナミにそっと声をかける、黒髪の美女、ロビン。今回の地図は、考古学者である彼女のお墨付きだったようだ。

「んナミすわぁ~んぬ!! ルォビンちゅわぁ~ん!! 冷たい飲み物持ってきたよ~❤」

 そこへ、足を竜巻のように回転させながら、金髪ぐるぐる眉毛のコック・サンジがトレイと一緒にグラスに入ったジュースを持ってくる。目をハートマークにしながら、甘ったるい声でやってくる様子は、暑苦しいことこの上ない。

「…なんでこいつだけこのテンションを保っていられるのか、不思議でしょうがないわ……」

「考えるのはやめましょう。ナミ。きっと誰にも解き明かすことは不可能だわ」

 そして誰も解き明かそうとしないでしょうね、と付け足すのを聞きながら、ナミは深く深くため息をついた。

 その様子に、海に向かったままのゾロが小さく呟く。

「…うるせぇコックだ」

「あ゛ん!?」

 すぐさまケンカ腰になる二人。そこへ。

「あーあー。やめたまえよ、お二人とも」

 やけにのんびりした声が制止をかけた。

「そんなに生き急がなくても……………、どうせ最後はみんな死ぬのさ」

 麦わらの一味の狙撃手・ウソップは、ネガティブ全開の状態でさらっと恐ろしいことを呟いた。その目は虚ろで、体はガリガリに痩せている。

「大変だ〰〰!! ウソップが即身仏みたいになってる〰〰〰〰!! 医者―!! 医者―!! っておれだぁ〰〰!!」

 仲間の窮地に、パニックに陥ったチョッパーが叫ぶ。

 かつてない一味のピンチに、船長ルフィはどうしたものかと空を見上げる。

 ふと、視界の端に何かが映り、ん? と目を凝らす。

 見上げる空は、何も見えない青。だが、その中に、小さな影が映っていた。

 そして、それが何か分かった時、ルフィは希望に目を輝かせて飛び起きた。

「サンジ―!! 肉だ―!!!」

 突然のルフィの叫び声に、仲間たちがなんだなんだと集まる。

「…おい、どうしたルフィ。腹減らしすぎておかしくなったか?」

 そういいながらも、つられて全員が上を見上げる。

 どこまでも続く青空。

 その中に、ぽつんとたったひとつ、黒い影が浮かんでいた。空をまっすぐに飛んでいく十字の影は、まさしく鳥の影だ。しかも、距離からしてかなり大きい。

「……あのでかさはまぁおいといて間違いなくあれは肉だぁー!!」

「総員、狙撃よ――――い!」

「ウソップ復活はやっ!!」

 すぐさま顔色の戻ったウソップの号令のもと、仲間たちがあわただしく動き出した。

「…食べ物が絡んだ時のこの団結力は、いったいなんなのかしらね……」

「ふふふ…」

 あきれた声を出すナミに、その言葉に微笑むロビン。

 ルフィはマストの後ろに立つと、両足を力強くふんじばり、両腕をそこから『伸ばし』た!!

 

 海の秘宝『悪魔の実』の一つ、『ゴムゴムの実』の能力だ。

 世界中に存在する、悪魔の実を食べて力を手にした能力者たち。

 ルフィが食べたのは、全身がゴムになる『ゴムゴムの実』。

 同じように、ブルックは死んで一度だけよみがえる『ヨミヨミの実』、チョッパーは人間の姿になれる『ヒトヒトの実』を食べている。

 ちなみに、ロビンも体の各部を花のように展開することのできる『ハナハナの実』の能力者だ。

 

 びよよんとしなる腕に力を込め、ルフィは狙撃手からの指示を待つ。

 ウソップは自慢のゴーグルを装着し、目標までの距離を正確に測る。

「よ―――し、ルフィ・発射ぁ!!」

「〝ゴムゴムのぉ〰〰〰〰〰ロケットォ〟!!!」

 ゴムの力を利用して、ルフィはパチンコのように空へと飛ぶ。

 すると空を飛んでいた鳥の姿が、どんどん近づいてきた。

 その鳥は、あまりにもデカかった。翼を広げれば、小さな島ほどはありそうだ。眼光は鋭く、普通の人間であれば、その姿に恐れをなして逃げ出していただろう。

 

 だが、飢えたルフィにはそんなものどうでもよかった。

 

 砲弾のように飛びながら、ルフィは再び腕を伸ばす。

「〝ゴムゴムのぉ〰〰〰〰〟」

 そこでようやく怪鳥が、自分に近づいてくる小さな影に気が付き、払いのけようと鎌首をもたげた瞬間。

「〝バズーカ〟!!!!」

 戻ってきたルフィの両手による掌底が、怪鳥のどてっぱらに直撃し、怪鳥は白目をむいて悶絶した。

「!!?」

 怪鳥が腹に受けた衝撃で、こみ上げてきたいろんなものが口から漏れ出ていく。

 おえぇぇぇ、と涙目でもだえる姿に、ルフィはガッツポーズを向けた。

 

 

「よっしゃ―! もろ入ったぁ!!」

 サニー号でも、自分の狙撃が命中したウソップがガッツポーズをした。

「…今更ながら、えぐいな」

「そーですねー…」

 煙草をくゆらせて呟くサンジに、ブルックが答える。

「………ん?」

 その時、ずっと見上げていたサンジが、何かに気付いた。

 

 

「ん?」

 怪鳥を仕留めて、帰還を落下に任せていたルフィは、怪鳥の吐しゃ物の中に違和感を覚えて振り向いた。

 怪鳥の口から吐き出される粘っこい液体。

 

 その中から、一人の若い娘が抜け出した。

 

「は!!?」

 

 

「そ……空から……」

 サニー号の上で、サンジが声を漏らした。

「空から美女が降ってきたぁ――――――!!!」

「見えてんですか!? この距離で!!」

 目をハートマークにしたサンジの叫びに、ブルックが突っ込む。

「あ…、あの鳥公!! 人を食ってやがった!!」

 ゴーグルを再装着したウソップが声を上げる。

 

 

 茶色い光沢のある髪を携えた娘は、気を失っているのか、重力の導くままに落ちていく。

 目を見開いたルフィは、慌てて右手を伸ばし、その手をつかんで腕を引き戻した。

 ルフィの腕の中に、ぐったりした長身の少女が引き寄せられる。

「! お、おい!!」

 ルフィの呼びかけにも、少女は応えず、だらりと首を垂らしたままだ。

 ルフィは少女の手をつかんだまま、海へとまっさかさまに落ちていく。

「ブルック――――――――――――――!!!」

 ルフィが呼ぶと、すぐさまブルックが船の縁に足をかけた。

「お任せを!! ヨホホホホホ!!」

 ブルックは海上に躍り出ると、足を超高速で動かし、海の上を駆けた。骨だからこそできる芸当である。

「あ!! …くそぉ、おれも海の上走れりゃなぁ……」

 娘の救助に出遅れたサンジがぼそりとつぶやく。

 いち早くルフィのもとに走ったブルックは、二人を受け止めようと、細い骨の腕を伸ばす。

 

 ―――さぁ、マドモアゼル。もう安心ですよ……。

 

 そう声をかけながら差し出されたブルックの腕は。

 

 ぐんっ!!

 

「え」

 予想以上にかかってきた重さに耐えきれず、がくんと下がった。

 当然、いきなりバランスを崩した姿勢を戻すのは、難しい。

「ああああああああああああああああああああああ!!!!」

 二人は泣きながら、高い水しぶきを上げて海の中へ落ちた。

 

 ―――悪魔の実を食べて、海の悪魔の力を手に入れた能力者は、海に嫌われて二度と泳げない体になる。

 

 その法則のもと、二人は海深くへと沈んでいく。

「あ!? 何やってんだあいつら!!」

 ゾロがすぐさま身を乗り出そうとするも、それより早くサンジが飛び出していった。

 しぶきを上げ、海面を駆けながら。

「うおおおおお!! 待っててね、麗しのレディ!!」

「海の上走っとるぅぅぅ!!」

 人間、その気になれば海の上も空も走れる。

 だが恋は盲目とは言うが、その時のサンジは、頭上からさっきルフィが仕留めた怪鳥が落ちてきているのに気付かなかった。

 

 

 その後、海面に再び水しぶきの花が咲いたのは言うまでもない。




主人公の名前がだせねぇ…。
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