【完結】ONE PIECE Film OOO ―UNLIMITED DESIREー 作:春風駘蕩
胸から火花を散らせ、シャムネコ型のヤミーが背中から倒れる。
伊達丸はすぐに銃のセルメダル用マガジンを取り換え、再び銃弾をお見舞いする。
超重武装のコトとともに、ヤミーを次々に屠っていく。
だが手持ちのメダルが足りなくなり、徐々に押され始めた。
一瞬のすきをついて、一体のカブトムシヤミーが伊達丸を殴りつける。
「うっ!!」
伊達丸は多少よろめくも、すぐに持ち直してカブトムシヤミーを蹴り飛ばす。
数体のヤミーを破壊したコトが目線だけを伊達丸に向けた。
「師匠!! 大丈夫ですか!?」
伊達丸はぶるぶると頭を振りながら肯定する。
「情けねぇ……。助けに来といてこのざまかよ……」
ぼやきつつも銃と武装を構えなおす二人。
すると、目の前に迫っていたヤミーの一体が火花を体から出して吹き飛んだ。
「!?」
何事か、と思って振り向いた二人は、そこにいた一人の女性に目を剥いた。
真っ黒なスーツに身を包み、二人と同じ銃を構えるコウガミの秘書。サトナカが、乗ってきたらしいバイクのそばに立っていたのだった。
「……サトナカサン?」
「なにしてんの」
思わず棒読みになるコトに、サトナカ・リカはこともなげに答える。
「ビジネスですから」
間髪入れず、腕を振り上げてきたハゲワシヤミーの顔面に強烈なハイキックを叩き込み、至近距離からの銃弾をお見舞いする。
背後から迫ったフクロウヤミーの攻撃をひらりとかわし、すれ違いざまに背中を蹴り倒す。
よろけた両者に銃口を向け、容赦なく光弾をお見舞いしていく。
「あらやだ、素敵!!」
「俺も
「……アホが」
秘書とは思えない華麗な動きに、サンジと伊達丸から称賛の声が上がる。
声の届いたサトナカは、戦闘中にもかかわらずウィンクで応える。
そして、懐から出した緑の缶のプルトップを開け、伊達丸の方へ投げつけた。
缶は空中で展開し、小さな三本角の恐竜型カンドロイドへと変わる。
トリケラカンドロイドは砂浜に着地すると、散らばったメダルを尻尾で拾い上げて伊達丸の方へ発射していく。
「お! おーおーおー!! ご苦労ご苦労!!」
伊達丸はとっさに銃のメダル用のマガジンを取り外し、飛んできたセルメダルを受け取る。
そして、いっぱいになると同時に銃に取り付け、再び銃弾の雨をお見舞いするのだ。
「おおっ! こりゃ便利だ」
感心する伊達丸を見やってから、サトナカは再び懐に手を突っ込む。
「それから……、これも社長からのプレゼントだそうです」
サトナカ秘書はそう言って、懐から黄色い缶を取り出した。
サトナカはその缶のプルトップも開け、バイクの前に放り投げる。
缶はすぐさま変形して、円柱を背負った小さな虎のロボットになる。
虎カンドロイドはバイクのハンドル部分の乗っかると、ひと声小さく啼いてから再び缶の状態に戻る。
カランッ、コロンッ!!
缶は転がり、バイクの前に落ちる。すると、バイクの前輪部分が扉のように開き、後輪部分に重なって合体。同時に缶もどういう原理かムクムクと巨大化して、前部分が開いたバイクの方に転がって接続される。
缶の中から新たなパーツが起き上がってハンドル部分に繋がり、その中に現れた目の部分がギラリと光った。
バイクから一転、まるで虎のような姿へと化したバイクは、周囲を埋め尽くすヤミーを見据えて、その口から高く轟く咆哮を上げた。
―――ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
放たれた咆哮が、ビリビリと空気が震わせる。
思わず耳を塞ぐナミたちを尻目に、ルフィたちはまたも。
「すっげェェェ〰〰〰〰〰〰〰!!!!」
と、キラキラと目を輝かせて釘付けになった。
トラロボット・トライドベンダーは前足部分を振り上げると、後輪をギュルギュルと滑らせ、一気に加速してヤミーの群れに突っ込んでいく。
猛烈な勢いで激突されたサメヤミーは遠く吹っ飛ばされ、後ろにいたほかのヤミーを巻き込んでメダルを吐き出す。
前足を振り上げ、後輪を振り上げ、まるで竜巻のようにトライドベンダーは暴れ回る。
しかし、奴が暴れるたびにメダルが飛礫となって降り注ぎ、地味に迷惑なことになっていた。
と思った瞬間、向こうで暴れていたトライドベンダーが急旋回し、パチンコ玉を撃っていたウソップの方へ突進し始めた。
「ギャァァァ〰〰〰〰!!」
「あっ、あぶっ、あぶなっ!!」
仲間たちは一瞬だけ頼もしく思えたトラロボットの暴走に慌て、右往左往に逃げ回った。
トライドベンダーの突進を躱したゾロは、追い掛け回されるウソップを見やると舌打ちし、その方向へと駆け出していく。
「クソっ……。オラッ!!」
ゾロは助走をつけてから、駆けまわるトラロボットの背中に飛び乗った。
ゾロはハンドルをしっかりと掴み、トライドベンダーを抑え込もうと奮闘するが、そのバカ力は半端じゃなかった。
「うぉっ!!」
右に曲げようとすれば、左に頭を向け。
下を向かせようとすれば、無理矢理上を向き。
止めようとすれば、操縦者の意志など関係なくエンジンを全開にして走り出す。
まるで暴れ馬に乗っているようだった。
ついには、ゾロの望まない方向を向いて爆走を始めてしまった。
「おおおおおおおおおおお!!?」
「ちょっと!! どこ行くのぉ〰〰〰!?」
ナミの制止にも答える余裕はなく、ゾロはトラロボットともに猛然と駆け出して行ってしまった。
その様子に呆然となりながら、黄色のメダルを持ったエールは頭を抱えた。
「ああもう!! しょうがない!!」
エールは慌てて、ゾロの乗るトラロボットの方に走っていく。
暴れるトラを前にエールはいったん二の足を踏むも、「やっ!!」と思い切って飛び掛かる。
「ゾロ、前空けて!!」
ゾロが言われたとおりに応え、後ろにずれるとエールはそこへ乗る。
「あ」
だが、もはやロデオよりも激しく暴れるトラロボットを制御するのは、並大抵の事ではなかった。
「うきゃぁぁぁぁぁぁ〰〰〰〰〰〰!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
仲良く悲鳴の合唱をしながら、ゾロとエールはヤミーの群れへと突っ込んでいく。
トラロボットの暴走に巻き込まれ、ヤミーたちも次々とふっとばされていく。反撃しようにも、上に乗るエールたちの武器も一緒に振り回されて近づけない。
「ちょっ……、と待っ……、止まってェ〰〰〰〰〰!!!」
エールは必死にトラにつかまりながら、器用に懐に手を入れる。
「なら……、これ!!」
エールはトラに跨りながら、右手だけでメダルを入れ替え、スキャナーを順にかざしていく。
―――キン!キン!キン!
メダルが光を放つと、ベルトも高らかに鳴り、黄色い円陣が少女の周りを舞い、歓喜の歌を響かせる。
[ライオン・トラ・チーター!! ラタラタ・ラトラ―ッタ――!!]
クワガタムシのヘッドギアが、獅子を模した王冠のようなヘッドギアに変わり、トラの爪はそのままで、両足がぴったりとしたブーツのような鎧へと換装される。最後にウェーブのかかった髪が長く伸び、金色のウルフテールになると同時に、三角形の耳がぴょこんと生えた。
すると、トラロボットは唐突にズン、と前足を振り下ろし、それ以上暴れようとはしなかった。
「……あれ?」
「大人しくなりやがった」
「しかもなんか……、だんぜん楽!!」
エールはハンドルを握りなおし、ヤミーたちの群れへと突っ込んでいく。
雄叫びを上げて襲い掛かってくる彼らに、エールとゾロはクローと刀での一撃をお見舞いする。
そのまま二人はトライドベンダーを駆ると、息の合った攻防で兵士ヤミーたちに躍り掛かる。ゾロが座席に後ろ向きに座り、背後からの敵を斬り捨てると、前方でエールが爪甲でヤミーを切り裂く。
時たまバイクの上で宙返りして位置を代わると、前方のヤミーをゾロが斬り捨て、頭上から降ってきたヤミーを二人で高速のスピードで蹴り飛ばす。
「〝牛鬼・勇爪〟!!」
「〝マシンガンファング〟!!」
二人は狭い陣地で見事な連携を見せ、ヤミー軍団に果敢に向かっていった。
だが、息ぴったりの二人の戦いっぷりが気に入らない、一人のコックがいた。
「あ!! あんのクソマリモ野郎ォ……!! エールちゃんとランデブーだとぉ!?」
「なら、こっちの私とワルツはどう?」
サンジが「え?」と振り向くと、エールはメダルを青色のものへと変え、スキャナーをかざす。
[シャチ・ウナギ・タコ!! シャ・シャ・シャウタ! シャ・シャ・シャウタ!!]
ヘッドギアが青い流線型のサンバイザーのようなものに変わり、肩の上にギザギザ型のケープのようなものが羽織られる。両手をぴったりとした手袋が包むと、手の甲の鎧から長く白いチューブが伸び、肩に先端が刺さる。脚にはタコの吸盤模様のブーツが履かれ、腰の周りを長くボリュームのある波の模様のスカートがつつむ。最後にエールの髪がウェーブのかかった長い長い青色のものに変わり、変身が完了した。
「喜んで〰〰〰〰〰〰!!!」
令嬢のような姿に変わったエールに、目をハートマークにしたサンジがダッシュする。
エールは傍に来たサンジの手をやさしくつかむと、勢いの死なないサンジの体をそのままヤミーに叩き付けた。
「ぐべっ!!」
奇声を上げるサンジを無理矢理立たせ、エールはそのままくるくると回り始める。
襲い掛かってくるヤミーを回転の威力で蹴り飛ばし、エールはサンジとともに回る。サンジはとっさにエールの腰に手を回し、エールも逆の手でサンジの腰に手を添えた。
二人で手を合わせると、飛び掛かってくるヤミーの強烈な蹴りを放った。
「〝
回転の勢いを利用してヤミーの腹に回し蹴りを決め、時にエールがターンして蹴りの嵐を叩き込む。
絶妙な息の合ったテンポとリズムで戦う二人の姿は、確かにさながらダンスのようだ。
エールとともにおどるサンジは、終始目をハートマークにして狂喜していた。
それを、人型になったチョッパーが興味深げに見つめていた。
「すげ~な、あいつら」
「じゃあ、今度は私たち!!」
チョッパーのそばにいたエールはそう言うと、メダルを灰色の三枚に入れ替え、素早くスキャンした。
[サイ・ゴリラ・ゾウ!! サゴ―ゾ! サゴ―ゾ!!]
顔を覆う白い角の生えたフェイスアーマーが構成され、髪が真っ白になってうなじで二つにまとめられると、瞳が深紅に変わる。忍者服が胴着のような服装に変わり、腕には灰色の巨大な籠手が生み出され、肩に硬い鎧がまとわれる。最後に両足を黒い甲冑が覆うと、その上が白い腰布が覆う。
「ふん!!」
エールが右足を踏み出すと、それだけで地面がズン!! と震えた。
エールは両足を地面にめり込ませると、巨大な籠手をサイもどきに向かった振り抜いた。
「〝バゴーン・プレッシャー〟!!」
その途端、籠手は煙を上げて力強く飛び立ち、サイもどきの顎を下から打ち上げた。
巨体が軽々とふっとび、ズズゥゥン、と沈むのを目にし、チョッパーは目のキラキラを全開にしてエールを凝視した。
「すっげ――――!! ロケットパンチだ―――――!!」
「……そう、なの、かな……?」
困惑するエールだったが、また別のヤミーが向かってくるのを目にし、チョッパーと二人で構えなおす。
「行くよ、チョッパー!!」
「おう!!」
エールとチョッパーは互いに拳を打ち合わせ、ヤミーの群れに向かって駆け出していった。
離れたところで、サングラスをかけたフランキーが隣にいたエールの肩を叩く。
「よっしゃぁ!! 俺たちも行くぞ!!」
「うん!!」
頷くと、エールは懐から紫のメダルを取り出す。
スリットに入れ、スキャナーを斜めにかざして胸の前に構える。
[プテラ・トリケラ・ティラノ!! プットッティラ―ノザウル―――ス!!]
もはや聞きなれた歌とともに、エールの体が冷気に包まれる。
一瞬だけ現れた翼と尾の幻影とともに、砕け散った氷の中から現れる、紫の鎧をまとった鎧武者。
紫のマフラーをはためかせ、エールは高々と咆哮を上げる。
「ウオオオオオオオオ!! スゥ〰パ〰〰〰〰!!」
エールは隣に並んだフランキーとともに、ぐるぐると腕を回してしゃがみこむと、立ち上がって腕を合わせるという独特のポーズをする。
一瞬ポカンとなったヤミーたちは、ふいにはっと我に返って襲い掛かってくる。
向き直ったフランキーは大きく息を吸い込み。
「〝フレッシュ・ファイア〟!!」
口から真っ赤な炎を噴射し、かかってきたヤミーの集団を丸焼きにする。
「グオオオオオオオオオ!!」
熱さに悶え苦しむヤミーたちに、今度は容赦なくエールが向かっていく。
「〝
火炎の次に、氷点下のブレスを受け、ヤミーたちが一瞬で凍り付いていく。
すると、かすかな空気に触れただけで、ビシッとその体に大きなひびが入った。
エールは腰の鎧をお尻で合わせ、巨大な長い尾に変えると、遠心力を含めた強烈な打撃を叩き込んだ。
「〝
一撃を受けた氷漬けのヤミーは、さしたる抵抗も出来ずに粉々に砕け散ってしまった。
唸り声を上げ、エールは次の獲物を探す。
「ア〰〰〰〰ウ!! いくぜぇ!!」
「オウ!!」
再びポーズをとったフランキーとともに、エールは高らかに吠えながら踊りかかっていった。
ブルックとともにいた別のエールは、持っていたオレンジ色のメダルを見て首を傾げた。
「……そう言えば、このメダルはどう使うんだろ………?」
試してみよう、とベルトに入れ、スキャナーをかざしていくと。
[コブラ・カメ・ワニ!! ブラカ――ワニ!!]
胸の柄が変わり、全身の装いも一瞬で変化する。
上下が黒く長い丈の着物に変わり、頭には金色のターバンが巻かれる。両腕に亀の甲羅を半分に割ったような盾が装備され、肩にも亀を模した鎧が装着される。腰からくるぶしにかけて、オレンジ色の鰐の形をした装甲が張り付き、ガシャンと鈍い音を立てる。髪の色が銅金色に変化し、両目が紫色に変わる。最後に髪がうなじでまとめられ、オレンジ色の光が弾けた。
エールは拳を握り、ボクシングのようなファイティングポーズをとってヤミーを威嚇した。
その時、紫色の目が光輝き、エールの脳に新たな情報を伝える。
「……! そうか!!」
何やらはっとなったエールは、どこからか笛を取り出し、すっと息を吸い込んでから軽快な音楽を響かせ始めた。
妙に響く笛の音が鳴ると、蛇型のヤミーが妙に反応し始めた。
コブラやアナコンダのヤミーが、自身の意思に関係なくくねくねし始め、ほかのヤミーの進撃の邪魔になる。
すると同時に、エールの縛っていた髪がムクリと起き上がり、蠢きながら一匹のコブラへと変身した。
「シャァァァァ……」
コブラは下をチロチロと動かしながら、突然そばにいたルフィの肩に噛みついた。
「いでぇ!!?」
「!!」
悲鳴を上げたルフィの方に、全員の視線が殺到した。
「な!? ちょっと、何してんのよ!!」
怒鳴るナミ。
しかし、噛まれていたルフィはぶるぶると体を震わせたと思うと。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
突然雄叫びを上げて、群がり始めたヤミーたちを渾身の力で殴り飛ばした。
その威力が上がっているのは、一目瞭然だった。
コブラの牙をルフィの肩からズポン!! と抜き、エールは得意げに笑って見せた。
「ブラカワニは〝再生〟を司るコンボ!! 回復してほしい奴はガブガブしてやるからこっち来て!!」
「俺もお願いします!!」
「では、私も………」
「こらこらこらぁ!!」
何故か興奮した様子のサンジとブルックにナミが拳骨を食らわせる。
エールは笑いながらも、二人にシュルシュルとコブラを向かわせた。
一方で、二人並んで戦うコトと伊達丸の方にも、一人の助っ人が向かっていた。
銃でヤミーの数を減らす伊達丸と、ドリル付きのクレーンを伸ばしてヤミーを薙ぎ払うコト。
トリケラカンドロイドのサポートがあり、勢いが復活していたものの、あまりの数に徐々にまた押され始める。
「〝必殺・火薬星〟!!」
「ギャアアアアアアアアアアア!!!」
すると、群れていたヤミーたちの顔面を、いくつもの爆発が襲い、進撃を妨げた。
目を見開いた伊達丸とコトが振り向くと、そこにいたのは。
「……けがはないかね?」
黄色い太陽のような仮面をつけ、風に揺れるマントを身にまとった男が、巨大なパチンコを手に堂々と仁王立ちしていた。
「…………」
奇妙な男の出現に、伊達丸とコトは一瞬言葉を忘れて呆然となる。
先に我に返ったコトが、何かを察して棒読みがちに尋ねた。
「あ……、あなたはいったい誰なんですか」
「!?」
伊達丸は今度はコトに目を見開いて凝視する。
「ふふふ……。私の名は、そげキング!!」
ドン!! と胸を張り、自称そげキングは名乗りを上げた。
「…………」
あきれ顔になった伊達丸は、コトの肩を抱いて声を潜めた。
「……なぁ、あれウソップ君だよな? あれの相手すんのめんどくさそうなんだけど……」
「いや、でもかまってあげないと死んじゃうかもしれませんし……」
二人の会話など聞こえないウソップは、自信満々の様子で二人の方に寄る。
「安心したまえ。私がいる限り君たちに手出しはさせない。ここからは私に任せなさい!!」
「…………」
微妙な顔になった伊達丸とコトは、顔を見合わせてため息をつく。
すると、
ビクッと震えたウソップが、思いっきり目を飛び出させながらそれを避けた。
「ギャアアアア!!」
「だめだこいつ役たたねぇ!!」
スライディングしながら伊達丸たちの側に逃げてきたウソップに、伊達丸は吐き捨てる。
サソリヤミーはすぐさまハサミを抜き、今度は標的を伊達丸たちに変更して襲い掛かる。
「ちっ!!」
伊達丸とコトはとっさにウソップを抱えてそれを躱し、邪魔だと言わんばかりに放り捨てる。
サソリは何度も刺突を繰り返し、二人を徐々に追い詰めていく。
何度も躱していくうちに、重武装のコトの足がもつれ始めた。
「あっ…」
ついにことは後ろ向きに倒れ、サソリヤミーのハサミが迫った。
「コト!!」
焦る伊達丸だが、その手はヤミーに阻まれて届かない。
コトはせめて一矢報わんと、ドリルを突き出す。
しかしハサミが突き立てられる直前。
ドンドンドンドドドン!!
サソリヤミーの脚の関節が突如爆発し、半ばからちぎられる。バランスを崩したサソリヤミーはそのまま崩れ落ちた。
「!!」
命拾いしたコトは、すぐさま立ち上がって胸の砲門を向け、赤い光線を放ってサソリヤミーを砲撃する。
攻撃を受けたサソリヤミーは砂浜の上を滑りながら吹っ飛び、他のヤミーを巻き込んで爆散した。
「…………」
コトは自身の無事に、伊達丸は弟子の無事に安堵しながら、離れた位置で巨大パチンコを構えている男を凝視した。
彼は二人の無事を確認すると、マントを払って立ち上がる。
「……人は私の事を、恐れをもってこう呼ぶ」
―――狙撃の島で生まれた、百発百中の
「〝
「かっけぇ!!」
堂々と胸を張り、雄々しく立つウソップに、伊達丸とコトは思わずそう叫んでしまった。
その時、周囲が影に覆われ、いきなり風が吹く。
「!!」
思わず見上げた空には、ユウユウと飛行するガラの姿があった。
ガラはルフィたちを見下ろしながら、がぱっと大きく口を開いた。
『小賢しいゴミどもが………、死ね!!』
喉の奥で炎が蠢き、轟音を上げて放たれる。
ドッカァァァン!!
砂浜で爆炎が巻き起こり、衝撃波がヤミーごと吹き飛ばす。
「うぉっ!!」
ルフィたちはその場で踏ん張って、衝撃に耐える。
間髪入れず、ガラは次々に火炎を発射していく。
『死ね!! 死ね!! 死ね!!!』
呪詛のように吠えながら、ガラは麦わらの一味の命を奪わんと襲い掛かる。
エールはその攻撃を紙一重で躱し、ルフィのそばまで後退する。
そして、命を軽視し、簡単に死ねとのたまうガラに怒りの炎を燃やし、エールは頭上を睨みつける。
すると懐から、真紅のメダルが飛び出し、エールの手のひらの上に収まる。
「……私は、もう手放したくない!! 持てるすべてをかけて、大切なものを守る!! だから、力を貸して、アンク!!!」
その言葉に応えるように、メダルはきれいな深紅の光を放ち、凛とした音を響かせる。
その意志を受け取るように、かざされる金色のスキャナー。
キン・キン・キン!!
エールはスキャナーに宿らせた思いを胸に抱くように構え、同時に力強く駆け出した。
今はいない空の王が付き添うように、清らかな声が響き渡る。
[タカ・クジャク・コンドル!! タ―ジャ―ドル――!!]
落下する火炎の間を駆け抜けて行くエールの体が、真紅の炎に包まれる。
次の瞬間、真っ赤な鎧をまとったエールが、炎の軌跡を描きながら飛び立った。体を黒い袖なしの着物で覆い、肩と四肢には鳥類の翼を模した装甲をまとい、胸にはその豊かな形にフィットした円形のプレートアーマーが張り付いている。顔を覆う鳳凰のフェイスプレートに、炎とともにまた赤いバイザーが展開する。
背中から生えた深紅の翼が風を切り、エールの体を天空へといざなう。
「〝ギア
ルフィは腕を後ろに伸ばし、ゴムの性質を持つ血管を一気に脈動させる。ゴムであるがゆえに、血管は急激に加速した血流に耐えられる。
ドクン!! と体が震え、体の熱が一気に高まる。
そして、まるで蒸気機関のように、ルフィの全身から真っ白な蒸気が噴き出し始めた。
ギア
「ルフィ!!」
「おう!!」
心優しき王は、未来の海賊王の背中をしっかりをつかみ、遥かなる天空へと飛び立った。