【完結】ONE PIECE Film OOO ―UNLIMITED DESIREー 作:春風駘蕩
ご了承ください。
「〝
ブルックのバイオリンと、エールの笛が、心地よくも妖しい旋律を紡ぎ、ヤミーたちの眠気を誘う。
「ヨホホホホホホホホホ!!!」
そのままブルックは、杖を携えてヤミーたちの間を駆け抜けていく。
最後に最も大きな、ワニの顔を持った玄武のようなヤミーのそばを通り過ぎると、唐突に速度を落とした。
「〝鼻唄三丁”……」
いつの間にか仕込み刀から刃を抜いていたブルックは、静かに刃を収めていく。
「〝矢筈切り〟!!」
ズバァァァッ!!
強固な爬虫類の鎧のような鱗が切断され、セルメダルが鮮血のようにドバっと噴き出す。
一瞬の間も許さないように、エールが走る。
ベルトにスキャナーをかざし、両の足で高く飛び上がる。
[スキャニングチャージ!!]
空中で大きく足を開くと、足に巨大なワニの姿をしたエネルギーが発生し、鋭い牙が並んだ顎を大きく開く。
「〝ワーニング・ライド〟!!」
エールがワニ怪人の体を挟み込み、エネルギー波がそれを噛み砕く。強靭な鎧を持つ怪人の体は一瞬でひしゃげ、直後に大爆発を起こした。
すたっときれいに着地したエールを見ながら、ブルックは一瞬彼女の袴の隙間から見えた物がなんなのか気づいた。
「あ。パンツは、履いてないんじゃなくて、パンツじゃないだけなんですね……」
ドゴッ!!
そう言った瞬間、ブルックはエールに容赦なく蹴り飛ばされた。
「どこ見てんだァ!!」
「手キビシ―――っ!!」
―――ブルック&エール・ブラカワニVS玄武ヤミー
勝者・エール。
ブルック・戦線離脱。
轟音を上げて、サイとゴリラとゾウが混ざったような巨大なベヒモスのようなヤミーの脚が落とされる。
チョッパーは間一髪それを躱し、懐から取り出したオレンジ色の飴玉のようなものを口に含み、かみ砕いた。
「〝ランブル〟!! 〝
すると、チョッパーのシルエットがぐにゃりと歪む。そして次の瞬間、手足が細く長く変貌したチョッパーが空高く跳び上がった。
キメラヤミーはそれを目で追うが、そのスピードは変形したチョッパーには遠く及ばなかった。
「うらぁぁぁぁぁぁ!!〝剛力無双〟!!」
ドン! ドン!! ドン!! ドドドドン!!!
その真下で、サゴーゾコンボと呼ばれる鎧をまとったエールが、雄叫びをあげながら胸を叩き始めた。
ゴリラのドラミングと呼ばれる威嚇行為によく似たその行為は、周囲の大気すらも振るわせる。
すると突然、キメラヤミーやほかのヤミーの脚が急に浮かび上がった。急に消えた重力のために、ヤミーの巨体がぐらりとふらつく。
それどころか、ドラミングで震えていた大地までもが持ち上げられ、砕けた破片がヤミーたちに襲い掛かり始めた。
ヤミー同士がぶつかって辺りにセルメダルがばらまかれ、甲高い音が立て続けに起こった。
巨大な怪物が空中で振り回され、叩き付けられる光景はまるで、渦の中に閉じ込められているようだった。
渦の中で跳ねまわっていたチョッパーは、隙を見てエールのそばに降り立つ。
エールもドラミングをやめ、スキャナーを外してメダルの順にかざしていく。
[スキャニングチャージ!]
その隣でヤミーを睨むチョッパーは、蹄と蹄を合わせる構えを取った。
「〝
その瞬間、チョッパーの腕が、樽ほどの太さに膨れ上がった。
同時に、空中で渦を巻いていたヤミーたちが、一か所にまとめて地面に叩き付けられた。
地面にめり込んだ彼らは、そのまま見えない力に引っ張られてチョッパーたちの方に近づいていく。
二人は並んで構えを取り、近づいてくるヤミーを見据える。
そして、片や鋼鉄の硬さを誇る蹄の掌底を、片や岩をも貫く角の
「〝刻蹄・
「〝サゴーゾ・インパクト〟!!」
閃光に包まれた一撃が、巨大なヤミーの腹に大穴を穿つ。
ドゴォオオオオン!!
キメラヤミーは、絶叫を上げることもなく、赤い火を吹き上げて爆散した。
バラバラと降り注いでくるセルメダルの雨を見上げて、チョッパーとエールは顔を見合わせる。
そして、ふいににっと笑うと、二人で空高く拳を突き上げた。
―――チョッパー&エール・サゴーゾVSベヒモスヤミー
勝者・チョッパー&エール。
ワルツのように軽やかに、船上を舞うコックと踊り子。
怪物たちのパーティの中を舞いながら、自慢の蹴りで薙ぎ払っていく。
するとエールはサンジの手を両手で掴み、目で合図してから高く放り上げる。
エールはバサリとスカートを広げ、その中から強烈な勢いで大量の水を発射した。
「〝
水の奔流を受けたヤミーは、鉄の塊を受けたごとき衝撃で空高く放り上げられた。
エールは両肩から伸びる管を取り外し、ビシッと鞭のように打ち据える。
鞭はそのまま黄色い電気をまとい、ヤミーの粘度のある体を砕き、地面に叩き付けた。
全身を強打したヤミーたちは、叫ぶこともなくメダルに還る。
ふぅっと息を吐いたエールの頭上に、黒い影が迫った。
「!!」
振り返ると、そこには巨大なタコのようなヤミーが一本の脚を振り上げていた。吸盤に牙の生えた足の先には、何故かウナギかシャチらしき首が生えている。
巨大な足が迫る中、エールはふっと微笑んだ。
彼女にめがけて、クラーケンヤミーは足を薙ぐ。
しかしその瞬間、エールの体は青い飛沫となって四散した。
「!!」
攻撃が空振りしたクラーケンが真ん丸な目を見開く。
それを見たエールは、液体の状態のままにやりと笑った。
ゴボッ!! ドッパァァァン!!
水になったエールの足もとが膨れ上がり、クラーケンヤミーの巨大な体を激流で押し上げた。
クラーケンは八本の脚を広げ、打ち上げられた空中で必死にバランスを取る。
だが次の瞬間、クラーケンの背筋(?)をぞくっと寒気が走った。
「……〝
右脚を溶岩のように真っ赤に燃え上がらせたサンジが、クラーケンの上に跳んでいた。
「焼き加減は、いかほどに?」
ボゴン!! と烈火の右脚が答えを促すように燃え上がる。
[スキャニングチャージ!]
クラーケンの下で、エールが青いメダルにスキャナーをかざしていく。
すると、エールの脚を覆う水色の吸盤模様のブーツが展開し、タコの足へと変貌する。
エールはブーツの外れた足で砂を蹴ると、クラーケンの体に肩の鞭を巻きつけ、自分の方へ引き寄せる。
すると、八本の脚がドリルのように足に巻きつき、回転して風を切り始めた。
同時に、サンジが空中で構え、悪魔の炎のごとき一撃を振り落した。
「〝
「〝
頭上から、八本の脚をドリルのように回転させ迫る青き戦姫。
真下からは、業火に燃える足を突き立てる悪魔の槍。
空中にとどめられたクラーケンに、それを躱す術はなかった。
「ギィィィ―――――!!!」
一瞬のうちに、クラーケンの体に大穴があき、そこから炎が膨れ上がって弾ける。
ドォォン!!
花火のように爆散したヤミーの中から、二人はかろやかに着地した。
「恋と料理は、お熱いうちに」
「でも……、火傷にご注意を」
最後に二人で、誰とも知れず深く礼をした。
―――サンジ&エール・シャウタVSクラーケンヤミー
勝者・サンジ&エール
「こっ……の!!」
「キシャァァァ!!」
エールは片刃の剣、メダジャリバーをふるいながら、右手の獣の頭骨と赤い牙で襲い掛かってくる鵺のようなヤミーを迎え撃つ。
渾身の力を込めたメダジャリバーの斬撃を、鵺ヤミーは牙で受け止めた。
「うそぉっ!?」
エールは目を見開いて顔を引きつらせる。
鵺ヤミーはエールの剣をくわえたまま、とんでもないバカ力でエールを持ち上げる。
慌てるエールをつないだまま、鵺ヤミーは剣を遠く放り投げた。
「うわわわわわ……ぎゃん!!」
放り上げられたエールは、そのまま砂の中に頭を突っ込んだ。
お尻を突き出した姿勢になって倒れたエールは、すぐさま起き上って鵺ヤミーを睨みつける。
「このぉ……!!」
鋭く尖るエールの目が、紫の光を放つ。
エールは拳を握りしめると、すぐ真下に腕を突き立てる。砂浜にひび割れが入ると、その奥が瞳と同じ紫の光を放った。
エールが腕を引き抜くと、紫の鎧をまとった時と同じ竜の姿をした巨大な戦斧が姿を現した。
刃の中にセルメダルを入れ、口を閉じてもう一度開くと、戦斧の目が金色に光り輝いた。
[タトバ!]
エールは強大なエネルギーをため込んだ戦斧を構え、バッタの脚の力で空高く飛び上がった。
鋭い光を放つ戦斧を片手に、鵺ヤミーに向かって振り下ろす。
その時唐突に、夕方の空に真っ黒な雲がモクモクと広がっていった。
しかしそれはやけに局地的で、赤い牙をがちがちと鳴らす鵺ヤミーは訝しげに首を傾げた。
その真下では、ナミが
「行くわよ……、〝サンダー=ボルト=テンポ〟!!」
ナミがタクトを振り払い、小さな電気の球体を黒い雲の中に投げ込む。
その瞬間。
ゴロゴロゴロ………ピシャァアアアン!!!
辺りが真っ白に染められるほどの閃光が走り、天に刻まれた地割れのような雷が落ちた。
……宙に跳んでいたエールの上に。
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ、ごめん」
骨が浮き出るくらいの電撃を食らい、エールの意識が一瞬ふっと遠くなる。
しかし、最期の力を振り絞って、エールは戦斧を握りしめる。
欲望を食らう戦斧は、強烈な雷撃すらも喰らい始めた。
「と……、〝
雷撃をまとったまま、エールは巨大戦斧を鵺ヤミーに叩き付ける。
腕を交差させてこれに耐えようとした鵺ヤミーだったが、雷を帯びた刃はそんなものをいとも簡単に切り裂いた。
「ギャァアアアアアアア!!」
鵺ヤミーは甲高い悲鳴を上げると、一気に胸を膨れ上がらせ、弾けて炎に包まれた。
炎が消えた後には、戦斧を持ったエールだけが残っていた。
フラフラの状態で。
「ちょっ……、大丈夫なのエール!?」
ナミが駆け寄ると、エールはおぼつかない足取りのまま振り返った。
「あーうー。ビリビリのグルグルのフラフラだよぉー……」
ふらふらとよろけ、目をグルグル渦巻にしたエールは、そのまま糸の切れた人形のようにバターンと倒れ伏した。
「エ――ル―――!!!」
エールを抱き起すナミの悲鳴が、やけに広く響き渡った。
―――ナミ&エール・タトバVS鵺ヤミー
勝者・ナミ。
エール・戦闘不能。
「〝
ロビンが両手を交差させると、甲虫型の混合ヤミーの全身に無数の白い手が生えていく。
花のように生えた腕は、同じく無数に生えているヤミーの長い腕に組みつき、絡め取っていく。
白い手が、ヤミーの全身を覆い尽くした瞬間。
「〝クラッチ〟」
ボキボキボキィ!!
強固な外装が絞め技を食らい、ヤミーの細い体がエビぞりになった。
すかさずエールがスキャナーを取り外し、メダルにかざす。
[スキャニングチャージ!]
同時にほかの分身エールもスキャナーを構え、ベルトに当ててかざしていく。
強力な破壊のエネルギーを脚にため込んだエールの軍団は、両足をバッタのように変形させて跳び上がる。
「〝超多連ガタキリバ・キック〟!!」
無数の緑の光となったエールが、まるで流星群のように、腹をむき出しにしたヤミーに突撃していく。
腹部に大量の穴を空けられたヤミーは、内側から膨れ上がるようにして爆散した。
分身が皆消え、ロビンのそばに降り立ったエールは、覆面を外してからふっと微笑んだ。
―――ロビン&エール・ガタキリバVS甲虫系キメラヤミー
勝者・ロビン&エール。
強固な鎧を持つ何本もの首の生えたヒュドラのヤミーに、フランキーの拳が振り下ろされる。
「〝アルティメットハンマー〟!!」
ゴワン!! と甲高い音を立てて、鎧がひしゃげる。
ふらついたヤミーを、そばにいたヤミーごとエールが尻尾で薙ぎ払った。
「がるるる……」
エールは唸り声をあげながら、目下の砂の中に右手を突き刺す。
穴の開いた砂の中から紫の光が漏れて巨大な戦斧が現れると、エールは拾い上げたセルメダルを刃の中に投入する。
そして戦斧の装飾の顎を回転させ、牙を噛み合わせる。
[ゴックン!]
刃を抱え込み、柄の部分を折り曲げると、戦斧は白い砲身を持つ大型銃器へと変形した。
フランキーはその場で両足を踏ん張ると、両手を胸の前で合わせて低く構える。
「うっとうしい奴らだ……。こいつで決めてやるぜ!!」
「おっし!!」
手首の部分から口径70ミリの砲身を突き出させると、星のマークのついた腕が二倍近くまで膨れ上がった。
エールの銃も、銃口に紫色の光が凝縮し始める。
「プットッティラ――ノヒッサ――――ツ!!」
軽快な歌とともに、2つの大砲から、凶悪な威力を誇る咆哮が解き放たれた。
「〝
「〝
紫の破壊の咆哮と、全てを吹き飛ばす空気砲が並び、混ざり合う。
斑に彩られた破壊の光は、ズン!! と大気を揺らし、ヒュドラの胸にに突き刺さる。
ヒュドラヤミーは受けた光をすべての口から漏れださせると、短く絶叫して大爆発を起こした。
ドゴォォン!!
ヤミーが起こした風が二人の髪をなぶる。
「ん〰〰〰〰〰スーパ――――!!!」
暴風が吹き荒れる中、二人は仲良くポージングで勝利の喜びを表した。
「……ところで、あの歌はなんなんだ?」
「……歌は気にしないで」
―――フランキー&エール・プトティラVSヒュドラヤミー
勝者・フランキー&エール。
ガシャガシャガシャッ……!!
突然コトが牛乳缶をショベルの腕で持ち上げ、中の残りのセルメダルをベルトの挿入口に入れていく。
こぼれたメダルも下にいるゴリラカンドロイドが拾い、全てを使用する。
「ああああああ、存分に使えって言ったけどせめてもうちょっと節約をぉ……!!」
自分でコトにやったとはいえ、ずっとため込んできた伊達丸にとってはあまりの仕打ちだった。
コトは小さく「すみません」と呟いてから、ベルトのダイヤルを回した。
キュルキュルッ、キュポンッ!!
[ドリル・アーム!][ブレスト・キャノン!]「クレーン・アーム!」[ショベル・アーム!][キャタピラー・レッグ!][カッターウィング!]
低い電子音が幾重にも重なり、バースの武装のすべてが顕現される。
と、そのすべてがバースのもとから離れ、徐々に巨大化しながら一つになり始めた。大砲の砲身をキャタピラが挟み込み、クレーンの先にドリルが付き、砲台の持ち手にショベルと折りたたまれた翼が合体する。
千枚ものメダルを取り込んだ鉄の武装は、巨大なサソリへと変貌を遂げた。
―――――オオオオオオオオ!!
両のハサミを振り回し、サソリは重い咆哮を上げる。
「すっげェェェ!!」
「え、これこういう機能があったの?」
本来の持ち主でありながら、まったくメカに興味のなかった伊達丸も、これには目を丸くした。
コトはそんな伊達丸を見ながら、はぁっとため息をついた。
「……ちゃんと説明書読まないからですよ」
サソリはハサミを振り、キメラヤミーへと果敢に向かっていく。
ドガァァァン!!
体格には、まだ一回りほどの差があったものの、サソリメカはサソリモドキの突進を余裕で受け止めた。
キャタピラを懸命に回転させ、サソリメカは徐々に相手を押しやっていく。
ふいに、サソリメカはギュルンと回転して、サソリモドキを弾き飛ばした。
吹っ飛ばされたヤミーは腹を上に向けて倒れる。しかし、すぐに尾を支えに起き上がった。
サソリモドキは怒りの咆哮を上げると、ドスドスと足を踏み鳴らしながら接近し始めた。
すると、サソリメカの上に突然、そげキングがマントをひるがえして飛び乗った。
すぐさまパチンコを構え、弾を備えてゴムをギチギチと引き絞る。
「〝必殺、
そげキングのパチンコから、
それは寸分違わず、サソリモドキの鼻面の中心に命中し、ガン!! と重い音が響き渡る。
それだけではサソリの勢いは死なず、かまわず突進を続けるサソリ。
だが、一瞬遅れて再びガン!! と衝撃が走る。
ガン!! ガン!! ガン!! ガン!! ガン!!
衝撃が何度も同じ場所に走り、サソリの顔面が徐々に歪み始める。
―――バキン!!!
ついには、サソリの顔を覆う鎧が粉々に砕け散り、内側の弱い部分がむき出しになった。
一点への集中狙撃。
彼にしかできない、繊細かつ強烈な技だった。
「でかしたァ!!」
伊達丸とコトは銃を構え、セルメダルマガジンを銃口に取り付けた。
そしてサソリの上に飛び乗り、ゆっくりと銃口をヤミーの方に向けた。
[セル・バースト!]
同時に巨大なサソリも自慢の尾をヤミーに向け、ぐるぐると回転させていく。
その先のドリルが、光を放ちながら唸りを上げた。
ウソップもその背中の上に乗り、巨大パチンコ・カブトを構えた。
「〝必殺・ファイヤーバード・スター〟!!」
「〝ダブルバースブラスト〟!!」
真っ赤に燃える火の鳥と、二筋の真紅の閃光、そして七色の光線が、鎧のはがれたサソリモドキを貫く。
光が弾けて、サソリモドキがビクンと体を震わせて停止する。
額に大穴を開けたサソリモドキは、ギシッと体を軋ませたのち、炎を吹き上げて弾け散った。
バラバラと降り注いでくるセルメダルを見上げた三人は、一斉に顔を見合わせると、にっと笑ってハイタッチした。
「ぃよっしゃぁぁぁ!!!」
パン!! と、小気味よい音が、その場に広く響き渡った。
―――伊達丸&コト&そげキング(ウソップ)VS甲殻類系キメラヤミー
勝者・伊達丸&コト&そげキング。
爆音を上げて、一機の猛虎の鉄騎が砂浜を駆け抜ける。
銀と金の輝きを放つ刃に、トラと獅子と豹の三つの首を持ったケルベロスのようなヤミーが迫る。
「ゴァァァァァァァ!!」
ケルベロスヤミーは三つの首を大きく開き、そこから高熱の真っ赤な炎を発射した。
ボゴォン!!!
唸りを上げていた鉄の虎は、一瞬で炎に包まれた。
どす黒い色の炎が、二人を焼き尽くそうと食らいつく。
ヤミーが勝利を確信してにやりと笑った瞬間、赤い炎が、内側から現れた金色の炎にのみこまれた。
ごうごうと燃え上がりながらなおも進みを止めない炎の中に、ゆらりと何者かの影が浮かび上がる。
「〝鬼気九刀流・阿修羅〟」
そこにいたのは、武神だった。
三つの首にそれぞれ刀を加え、六本の腕にも刀を持った何者か。
金色の炎の中に、三面六臂の鬼神と化したゾロが現れる。
九本の刃を構え、鋭い眼光がキメラヤミーをとらえた。
[スキャニングチャージ!]
炎の中でもう一つの声が上がったと思うと、今度は二人を覆う炎が姿を変えた。
金色の炎が揺らめき、燃え上がる獅子の姿を現す。
「お前が煉獄に住まう番犬を模すなら、とっとと地の底に堕ちやがれ……!!」
ごく短い手向けの言葉を最後に、武神と獅子の王は刃を振り抜いた。
「〝阿修羅・
「〝ライオ・ディアス〟!!」
鋭く尖る牙を携えた怪物と、二体の武神が相まみえる。
バキィィィン!!
甲高い音が響き渡り、すれ違った両者が立ち止まる。
しばらくの静寂を断ち切ったのは、うめき声をあげたヤミーの方だった。
「グ……ォォォオオオオオオオオ!!!」
ケルベロスヤミーは断末魔の咆哮を上げると、堂々とその場に立ちながら、真っ赤な炎を吹き上げて爆散した。
振り返ってその最期を見届けたエールは、満面の笑みを浮かべてガッツポーズ。
「ぃよっし!!」
トライドベンダーを「よしよし」と撫でるエールをよそに、ゾロは小さく鼻で笑って見せた。
「……
―――ゾロ&エール・ラトラーターVSケルベロスヤミー
勝者・ゾロ&エール。