【完結】ONE PIECE Film OOO ―UNLIMITED DESIREー   作:春風駘蕩

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作り上げてきたものが完成する、というのは、うれしいことでもありながら、さびしいことでもあると分かった今日この頃。
長いこと続けてきたこの作品が、ついに完結です。


エピローグ

 少女は夢を見ていた。

 朝、寝ぼけ眼のところをナミに叩き起こされ、欠伸をしながら朝日を浴びる。

 すると、ハイテンションのサンジが女性陣にコーヒーを持ってきてくれる。

 気ままに波に揺られ、ウソップとともに釣糸をたらしながら、彼のホラ話に大笑い。

 工作中のフランキーを冷かして、その横でゾロが昼寝をする。

 海風に吹かれながらロビンと語らい、海図を広げるナミと水平線を眺める。

 音楽を奏でるブルックとともに、チョッパーと歌い、踊る。

 持ち味の好奇心でトラブルを連れてくるルフィとともに秘境を駆け巡り、お宝を探して毎日冒険。

 最後はみんなで食卓を囲み、一日の出来事を語り合って笑いあう。

 

 そんな夢が、陽炎のように揺らいでは、消えていく。

 あったかもしれない未来を夢見て、少女は深い眠りの中にいた。

 

 ―――陽炎島。欲望の島グリーディア。

 失われた古代都市の片鱗が残る遺跡に、彼女はいた。

 かつて世界のすべてを欲した王の居城のなれの果てで、エールは一人、深い眠りについていた。

 その顔は、まるで憑き物が取れたかのように、満足げに微笑んでいた。

 

 *

 

 遠く島を離れていくサニー号を見やりながら、コウガミは崖の上に立っていた。

「……行ってしまったか。〝D〟の遺志を継ぐ者は」

 その隣で、サトナカがいつもの無表情のまま寄り添った。

「……後悔しておいでですか? 封印を解いたことを」

欲望の王(オーズ)になってもらおうと思っていたのにね。だが、私は満足さ」

 コウガミの返事に、サトナカは首を傾げた。

 その様子に気付いたコウガミは、にんまりと笑った。

「世の理を超える、人の欲望の無限の可能性を見ることができたからね。彼らとの出会いは、間違いじゃなかった。そう思う」

 すがすがしい表情で船を見つめるコウガミに、サトナカは珍しく眉間にしわを寄せて不機嫌な顔になった。

「ですが、だれも救われません」

「そうかな?」

「!」

 笑ったまま、コウガミはサトナカに振り向いた。

 その目には、もうこの世のすべてが面白くて仕方ないというような雰囲気にあふれていた。

「欲望は尽きることはない。棺の中で眠っていた彼女を見た瞬間、私は確信したのさ! 彼女が、こんなところで眠り続けているような(たち)ではない、とね!!」

 

 *

 

 薄れていく船の姿を見ながら、ヒナは必死に涙をこらえていた。

「……ヒナ。出会いに別れはつきものだ。泣くなよ」

「な……、泣かないもん!!」

 シンゴがそういうと、ヒナはキッと睨みつける。

 だが、その目はこすられて真っ赤だ。

「また来なさいよぉ〰〰〰〰〰!!」

「待ってるわ~」

 口々に感謝の叫びをあげる島の住人たちを見やりながら、崖に座っていた伊達丸は憂いを込めたため息をついた。

 その隣のコトも、悲しげに顔を伏せている。

「……師匠。私たちは結局、何のために戦ったんですか……?」

「決まってんだろ? 生き残るためだよ」

「けど!! こんな結果、だれも望んでないのに!!」

 コトが声を荒げると、伊達丸はさらに深く息を吐いた。

「あたしだってそうさ………。けど、それでもあの子は、満足そうに眠ってた。それなら、あたしらに何か言う資格はないよ」

 コトは何か言いたげに口元をまごつかせるが、ぷいと顔をそむけた。

 そこへ、イズミ爺がやってきた。

「なんじゃ、おぬしらはまだここにおるのか?」

「……だが、いずれ行くさ。こんだけ溜まったしね」

 伊達丸はそう言って、傍らのケースをバンバンと叩いた。中にはお金がぎっしりと入っている。

「そうか。……ヒナがまた泣くのぉ」

「そんときは、かわりに謝っといて」

 イズミ爺はやれやれと頭をかいた。

 そして、しわに埋もれた目を水平線に向けながら、口元にわずかに笑みを浮かべた。

「……まさか、再び彼のような男に会えるとはのぉ。長生きはするもんじゃ」

「……?」

 訝しげな顔になった伊達丸をよそに、イズミ爺は黙って腰を下ろした。

 しばらくすると、はるか先を眺めていたことが急に立ち上がった。

「……決めました」

「!」

 コトはぐっと拳を握りしめると、覚悟を決めた表情を浮かべた。

「私、いつかグランドラインへ行きます。まだ弱いけど、あの人たちのように戦えるように。……あの人のそばに、立てるように」

 伊達丸はポカンとなって、コトの横顔を凝視した。

「こ……、コトちゃん、それって……!! つーかあの人ってまさか、あのマリモ……」

「私、いつまでも子供じゃないですよ?」

 コトのそんな告白に、伊達丸とイズミ爺は度肝を抜かれた。

「コトちゃん……!! いつの間にそんな…………!!」

「青春じゃのぉ………」

 そんな二人の妙に熱い視線を受けながら、コトは右手を銃の形にすると、陽炎とともに消えていく船に向けて、指先を向けた。

 

 *

 

 もうほとんど薄れてしまった島の方を見ながら、麦わらの一味は暗い雰囲気に包まれていた。

 誰も何も言わず、各々の位置で項垂れたり、もたれかかったりしている。

 一番重症なのはルフィだった。

 サニー号の船首の上に寝っころがり、麦わら帽をかぶって黙り込んでいる。

 大切な何かが失われてしまった気分だ。来る前と何も変わらないのに、どこか空っぽに感じてしまう。

 ルフィは帽子をどけて、朝もやの空を見上げた。

 島から飛んできたらしい鳥が頭上をかすめ、さらに虚しさが募る。

 再び帽子を目深にかぶって、不貞腐れた。

 その時だった。

 

 ―――がんばれ!!

 

 聞こえないはずの声が、そこにいた全員の耳に届いた。

 思わず全員が駆け出し、サニー号の後方に集まる。

 小さくなって、蜃気楼に消えていく島の方を凝視しながら、ルフィたちは声も出せずにいた。

 ふと、沈んでいた表情が嘘のように笑顔になったナミが、隣のチョッパーの方を向いた。

「……チョッパー、聞いた!?」

()ぃたぁ〰〰〰!!!」

 涙を零したチョッパーがそう嬉しそうに答えた。

 その瞬間、一味の表情が変わった。

「オウ、おめーら!! んな辛気くせぇつらじゃあいつに顔向けできねぇぞ!!」

「やかましいわぁ!! ……うおぉぉぉん!!」

 ゾロが号令をかけ、ウソップが泣きながら位置につく。

「おうコラマリモ剣士!! あったりまえの事いちいち言ってんじゃねェ!!」

「ア〰〰〰ウ!! こっちゃぁいつでも準備満タンだぜぇ!!」

「ヨホホホホホ!! 悲しくなんかないですよぉ〰〰〰!!」

 テキパキと帆を張り、ロープを張り巡らせていく。

「……いつか、きっとね」

 ロビンが呟き、持ち場に戻る。

 全員が、力を取り戻したようだった。

 打って変わって、生き生きと働く。

 ルフィは船首の上に立つと、胸を張って仁王立ちした。

「………わかってる。約束だ。おれはぜってぇ、諦めねェ!!」

 どこへとも知れない空に向かって、ルフィは誓いを立てる。

「よっしゃやるぞ!! 見ててくれ、エール!!」

 ルフィはぐっと拳を掲げ、天を仰ぐ。

 その声が、彼女に届くように。

 

「海賊王に、俺はなる!!」

 

 まだ見ぬ冒険を求める海の勇者たちに贈られた、もう一人の仲間からの声援(エール)を胸に―――――。

 

 

                                   ―FIN―




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