ついでに新作を計画中
青い光に満ちた神殿は、現実感を失わせるほど静まり返っていた。
床も天井も淡く発光し、どこまでが空間なのか判別がつかない。
イズモ「ここからか……って、あれ。いつの間にか死んでた?」
自分の状況を一瞬で理解し、肩をすくめる。
イズモ「まあいいか」
視線の先には、力を失いかけたエミリアが立っていた。
魔力の消耗は明らかで、今にも意識を手放しそうだった。
イズモ「エミリア、君には負担が大きすぎる。済まないが眠っててくれ」
イズモは迷いなくカプセル型の救命ポットを展開する。
内部は医療用の青白い光に満ち、生命反応を安定させる設計だ。
事前に調合していた香料を、分量計測通りに投入する。
念のため、稼働時間は少し長めに設定した。
エミリアは抵抗することなく、静かに眠りへと落ちていった。
その後、拠点へ戻ったイズモは、自分が試練を受ける流れになったことを把握する。
再び神殿。
空気が重く、何かが始まる前兆だけがはっきりと伝わってくる。
イズモ「まあ、腸狩り対策するか」
通信を開き、淡々と指示を飛ばす。
イズモ「カエデ、そっちのセンサーを感度十倍に。あとレールガン、捕虜捕獲システムおよび投下システムを預ける」
イズモ「何としてもレムと家を守ってくれ」
カエデ無線「わかりました」
短い返答に、イズモは一度だけ深く息を吸う。
イズモ「さあ、エキゾナ。試練を始めよう」
イズモ?「ありうべからざる今を見ろ」
視界が一瞬で反転する。
気づけば白銀の世界に覆われたロズワール邸が広がっていた。
屋敷の上空には、巨大なパックが顕現している。
世界の終わりを象徴する存在だった。
ラインハルト「イズモ君……君は一体なんなんだ」
問いかけには答えられない。
喉が詰まり、言葉が出ない。
ラインハルト「君が元凶なのか」
イズモ「ン……パ……クト……ハ……ジマル……」
呟きと同時に、赤い輪が空間に展開する。
それは理解する間もなく世界を覆い、地球人口の九割が魂として抽出された。
フェリス「イズモキュン……最低」
その言葉を最後に、フェリスの姿も光へと変わる。
全ての人が吸収され、世界は不可逆の沈黙に包まれた。
その世界が元に戻ることは、二度となかった。
ありうべからざる今を見ろ。
場面は再び切り替わる。
腸狩りが、ロズワール邸へと侵入してくる。
イズモ「おまえを待っていた」
腸狩り「そう」
戦闘に意識を集中させた瞬間、背後から魔獣の気配。
反射的に回避する。
だが次の瞬間、少女が魔獣を引き連れて姿を現した。
イズモ「まさか……おまえが魔獣使い?」
それは、かつて村で見かけた青髪の少女だった。
理解が追いつく前に、前後から同時に刃が突き立てられる。
視界が暗転する。
試練終了。
エキゾナの虚数空間、エキゾナの茶会。
白いテーブルと椅子が浮かぶ異界で、イズモは目を覚ます。
イズモ「今ので二つ目の試練?」
エキドナ「ああ。にしてもタフだね。あの試練でも動じないって」
イズモ「まあ、パラレルワールド行き来するようになったら自然とね」
一瞬視線を落とし、問いを投げる。
イズモ「ひとつ聞いていいか」
エキドナ「僕に答えられることなら」
イズモ「なぜ俺は召喚された?」
エキドナ「もちろん、最初の腸狩り戦で君が運命を変えなければ、エミリアが死に、パックが出てきて、この世界は滅んでたからさ」
イズモ「だとしたら、俺はもう必要ないんじゃないか」
エキドナ「君には、もう一つ大切な使命があるんじゃないかな?」
イズモ「エミリアの当選か」
エキドナ「そうさ」
イズモ「なあ、俺。不死身なんだろ」
エキドナ「ああ。ただし、嫉妬の魔女がそうさせてるってことだけどね」
イズモ「なら、そろそろ幸せになってもいいんじゃないかな」
エキドナ「それと、エミリアの当選が何か関係あるのかい?」
イズモ「ああ。俺はエミリア、次期女王の夫になる」
エキドナ「いいと思うよ。ただ、クデュックはどうする気だい?」
イズモ「まあ、融合させるかな。この世界と」
エキドナ「融合って、なんだい?」
イズモ「クデュックと別な世界が融合した事例があってな。その原因がわかった。俺の意志が関連している」
イズモ「俺が会いたいと思うと行くんじゃなくて、融合する。だから当選後くらいに融合するかもな」
イズモ「まあ、通常空間に戻……」
サテラ「ねぇ、イズモ」
イズモ「あんたは?」
エキドナ「来てはダメじゃないか。嫉妬の魔女」
イズモ「はぁ……あんたが嫉妬の魔女にして原罪か」
イズモ「っち、また創造使えんのかよ」
イズモ「エキゾナ、さっさと通常空間に戻すか、創造使えるようにしろ」
エキドナ「まあまあ、落ち着いて」
サテラ「私のこと、嫌い?」
イズモ「嫌いというか、認識的には敵」
サテラ「私はイズモが好き」
イズモ「いずれ殺される可能性のある人間を好きって、どういう意味だ」
エキドナ「イズモ、そこまでにしといてあげて。サテラが可哀想」
イズモ「まあ、わかった。エキゾナが言うなら」
エキドナ「僕のことはどう思ってるんだい?」
イズモ「ただの話し相手で、第三区分警戒人物かな」
エキドナ「僕もイズモが好きだよ」
イズモ「ツンデレって解釈されてねえか、それ」
イズモ「まあいいや。通常空間に……」
ミネルヴァ「ひとーつ。人の世の不条理を殴り。ふたーつ。不埒な悪行三昧なんて知ったことかぁ。みっつ。醜かろうが美しかろうが、浮世にいるならことごく!」
イズモ「!!」
次の瞬間、クレーターが生まれるほどの超破壊的な拳が振り抜かれる。
イズモ「おまえ、仲間もろとも殺す気か……って、なんか知らんけど気が楽に……なんだこいつ」
エキドナ「憤怒の魔女だよ。さっきのパンチで癒している」
イズモ「突然すぎてびっくりしたわ」
ミネルヴァ「サテラをいじめるなよ」
イズモ「この世界、誰が敵で味方かわからんわ」
エキドナ「って、残りのみんなも出てきちゃったみたいだね」
セクメト「めんどくさーい」
ダフネ「お腹空いた」
テュフォン「あなた、悪人?」
次の瞬間、イズモの腕が粉砕される。
痛みはない。
違和感だけが遅れてやってきた。
テュフォン「悪人じゃないみたいだね」
そこでようやく、腕が消えていることに気づく。
イズモ「!!!!」
イズモ「何してくれてんだぁぁ!!!!!!」
エキドナ「君はテュフォンに触らない方がいいみたいだね」
カーミラ「まあまあ、落ち着いてほしいなぁ」
イズモ「腕は……修復すんだよな?」
エキドナ「ええ」