異世界介入ログ:最上イズモ   作:最上 イズモ

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お久しぶりです
進路関係で忙しくあまり投稿出来ずお待たせしてしまいすませんでした
さて続きをどうぞ


世界が重なる日まで

元の青い宮殿。

 

淡く発光する柱と天井。

足音だけが広い空間へ静かに響いていた。

 

イズモは一人、壁際へ寄りかかりながら頭の中で状況を整理する。

 

魔女教。

 

エルザ。

 

魔獣使い。

 

そして。

 

まだ姿を見せていない、大兎。

 

イズモ「とは言ったものの……」

 

額へ手を当てる。

 

イズモ「魔女教と腸狩りを同時に相手するなら、普通に戦力足りないな」

 

白鯨討伐。

 

ペテルギウス。

 

王都襲撃。

 

ここまで。

 

何とか手持ちの戦力で処理してきた。

 

だが。

 

次は違う。

 

屋敷。

 

聖域。

 

村。

 

複数地点を同時に守る必要がある。

 

イズモ「しかも殺人うさぎ」

 

思い出す。

 

雪原。

 

地面を覆い尽くす白。

 

一匹なら。

 

ただの小動物。

 

だが。

 

数千。

 

数万。

 

それらが一斉に人間へ群がる。

 

イズモ「……あれはシャレにならない」

 

火力だけなら焼ける。

 

だが。

 

住民と混ざった瞬間。

 

殲滅兵器は使えない。

 

イズモ「試練は終わった」

 

立ち上がる。

 

イズモ「大兎が来る前に、先に避難させる」

 

その瞬間。

 

通信。

 

カエデ『イズモ』

 

イズモ「どうした?」

 

カエデ『ロズワール邸に侵入者』

 

イズモ「エルザ?」

 

カエデ『可能性、高』

 

イズモ「捕縛システムは?」

 

一拍。

 

カエデ『突破されました』

 

イズモ「……」

 

空気が変わった。

 

イズモ「分かった」

 

端末を開く。

 

イズモ「警備システム」

 

カエデ『はい』

 

イズモ「殺害モードへ移行」

 

カエデ『確認』

 

イズモ「許可する」

 

カエデ『了解』

 

衛星。

 

接続。

 

イズモ「武器投下衛星を屋敷上空へ」

 

カエデ『投下準備』

 

イズモ「レールガンも使っていい」

 

カエデ『屋敷損傷の可能性があります』

 

イズモ「レム優先」

 

即答。

 

イズモ「必要なら建物は捨てる」

 

カエデ『了解』

 

イズモ「あと」

 

地下。

 

避難設備。

 

イズモ「レムをシェルターB二八九〇へ」

 

カエデ『分かりました』

 

イズモ「絶対守って」

 

カエデ『はい』

 

通信終了。

 

静寂。

 

イズモ「……」

 

また。

 

離れている。

 

自分がここにいる間に。

 

向こうで戦いが始まっている。

 

拳を握る。

 

イズモ「やっぱ」

 

小さく。

 

イズモ「俺らだけじゃ無理そうだな」

 

その言葉を合図にしたように。

 

視界が歪んだ。

 

イズモ「また?」

 

青い宮殿が消える。

 

 

白。

 

黒。

 

虚無。

 

地面らしいものすら曖昧な空間。

 

イズモ「……」

 

見覚えがある。

 

エキドナの領域。

 

だが。

 

今日は一人ではなかった。

 

少し離れた場所。

 

白いシャツ。

 

黒いズボン。

 

銀色の髪。

 

穏やかな笑み。

 

イズモ「……」

 

知っている。

 

カヲル「やあ」

 

イズモ「カヲル」

 

カヲル「久しぶりだね、イズモくん」

 

イズモ「あんたがここにいるってことは」

 

周囲を見る。

 

イズモ「また何か起きる?」

 

カヲル「ああ」

 

背後。

 

エキドナが現れる。

 

エキドナ「待って」

 

イズモ「?」

 

エキドナ「誰だい、この人は」

 

イズモ「え?」

 

エキドナ「君の知り合いなんだろうけど」

 

カヲルを見る。

 

エキドナ「僕には分からない」

 

イズモ「俺の記憶、読めるんじゃなかった?」

 

エキドナ「全てではないよ」

 

少し困ったように笑う。

 

エキドナ「君はイレギュラーすぎる」

 

イズモ「どういう意味?」

 

エキドナ「一部の記憶が欠けている」

 

イズモ「俺の?」

 

エキドナ「僕から見た場合、ね」

 

イズモ「なるほど」

 

エキドナ「以前、君の過去を再現した時も」

 

指を立てる。

 

エキドナ「欠けている場所については、周囲の情報から推測して作った」

 

イズモ「だから妙にクオリティ高かったのか」

 

エキドナ「褒め言葉として受け取っておくよ」

 

イズモ「まあいい」

 

カヲルを見る。

 

イズモ「彼は渚カヲル」

 

エキドナ「渚カヲル」

 

イズモ「俺と同じ」

 

一拍。

 

イズモ「使徒」

 

カヲル「正確には」

 

穏やかに笑う。

 

カヲル「アダム」

 

イズモ「うん」

 

カヲル「そして、第十七使徒」

 

イズモ「うん」

 

カヲル「別の世界線では、第十三使徒でもある」

 

エキドナ「……」

 

イズモ「説明すると長い」

 

エキドナ「君の周囲、本当に何でもいるね」

 

イズモ「否定できない」

 

 

イズモ「それで」

 

本題。

 

イズモ「カヲル」

 

カヲル「うん」

 

イズモ「世界融合」

 

カヲルの笑みが少し薄くなる。

 

イズモ「近い?」

 

カヲル「ああ」

 

イズモ「やっぱり」

 

カヲル「ただ」

 

イズモ「?」

 

カヲル「今回は安心していい」

 

イズモ「世界壊れない?」

 

カヲル「壊れない」

 

イズモ「よかった」

 

以前。

 

世界融合。

 

その言葉には。

 

あまり良い思い出がない。

 

イズモ「Xデイは?」

 

カヲル「数週間後」

 

イズモ「数週間」

 

エキドナ「待って」

 

二人を見る。

 

エキドナ「さっきから何の話をしているんだい?」

 

イズモ「世界がくっつく」

 

エキドナ「……」

 

イズモ「クデュックの世界線と」

 

足元を指す。

 

イズモ「この世界」

 

エキドナ「世界が?」

 

イズモ「融合する」

 

エキドナ「それは」

 

一瞬。

 

珍しく言葉に詰まる。

 

エキドナ「止められるのかい?」

 

イズモ「カヲル?」

 

カヲル「無理だね」

 

即答。

 

エキドナ「即答するんだ」

 

カヲル「既に世界同士の距離が近すぎる」

 

イズモ「前と同じ?」

 

カヲル「似ている」

 

イズモ「衝突ではない?」

 

カヲル「今回は再構築に近い」

 

イズモ「なら大丈夫か」

 

エキドナ「君たち」

 

二人を見る。

 

エキドナ「随分軽く話しているけど」

 

イズモ「慣れてる」

 

エキドナ「慣れるものなのかい?」

 

イズモ「慣れたくはなかった」

 

カヲル「僕もそう思う」

 

エキドナ「……」

 

イズモ「まあ」

 

腕を組む。

 

イズモ「止められないなら、準備するしかない」

 

エキドナ「この世界の人間は信じると思う?」

 

イズモ「別に」

 

エキドナ「別に?」

 

イズモ「信じてもらう必要ない」

 

エキドナ「どういうこと?」

 

イズモ「起きた後に説明すればいい」

 

エキドナ「随分強引だ」

 

イズモ「起きる前に」

 

指を立てる。

 

イズモ「数週間後に宇宙文明と世界融合します」

 

二本目。

 

イズモ「惑星移住します」

 

三本目。

 

イズモ「異世界の人間と一緒に暮らします」

 

手を下ろす。

 

イズモ「って説明して」

 

エキドナ「信じないだろうね」

 

イズモ「でしょ?」

 

カヲル「イズモくんらしい」

 

イズモ「だから」

 

イズモ「融合後」

 

空中へ配置図を描く。

 

イズモ「住民はそのまま生活継続」

 

次。

 

イズモ「希望者はクデュック側へ」

 

次。

 

イズモ「適性があるなら職業選択」

 

エキドナ「職業?」

 

イズモ「それぞれ好きな仕事すればいい」

 

エキドナ「王族や貴族は?」

 

イズモ「本人次第」

 

エキドナ「騎士は?」

 

イズモ「本人次第」

 

エキドナ「魔法使いは?」

 

イズモ「研究でも軍でも民間でも」

 

エキドナ「随分自由だ」

 

イズモ「世界変わるからって」

 

一拍。

 

イズモ「人生までこっちが決める必要ないだろ」

 

エキドナ「……なるほど」

 

 

イズモ「カヲル」

 

カヲル「何かな」

 

イズモ「ミサトさんに伝えて」

 

カヲル「受け入れ準備?」

 

イズモ「そう」

 

指を折る。

 

イズモ「難民扱いじゃなく、世界融合住民として受け入れ」

 

カヲル「分かった」

 

イズモ「医療」

 

カヲル「うん」

 

イズモ「言語」

 

カヲル「翻訳システム」

 

イズモ「文化摩擦」

 

カヲル「教育と案内を用意しよう」

 

イズモ「あと魔法」

 

エキドナ「?」

 

イズモ「研究対象として乱獲しないように」

 

カヲル「重要だね」

 

イズモ「魔法使える人が珍しいからって」

 

イズモ「研究施設へ全部連れてくの禁止」

 

カヲル「リツコさんに伝えておくよ」

 

イズモ「あと外惑星系」

 

カヲル「人手?」

 

イズモ「ああ」

 

イズモ「惑星調査」

 

イズモ「パラレルワールド調査」

 

イズモ「世界維持」

 

少し考える。

 

イズモ「普通に人足りない」

 

カヲル「ルグニカの人々を使うの?」

 

イズモ「希望者だけ」

 

カヲル「了解」

 

イズモ「俺と関係ある人については」

 

少し。

 

思考。

 

エミリア。

 

ラム。

 

ロズワール。

 

ベアトリス。

 

フェルト。

 

クルシュ。

 

ユリウス。

 

ガーフィール。

 

レム。

 

イズモ「ある程度、配属案作っとく」

 

カヲル「分かったよ」

 

イズモ「強制はしない」

 

カヲル「もちろん」

 

イズモ「じゃ」

 

エキドナを見る。

 

イズモ「要件終わり」

 

エキドナ「僕が呼んだわけではないんだけど」

 

イズモ「そうなの?」

 

エキドナ「勝手に入ってきた」

 

カヲル「ごめんね」

 

エキドナ「悪びれていないね」

 

カヲル「必要だったから」

 

イズモ「カヲルだしな」

 

エキドナ「君も大概だと思うよ」

 

イズモ「そろそろ帰して」

 

エキドナ「いいけど」

 

少し。

 

目が変わる。

 

エキドナ「一つ聞いていいかな?」

 

イズモ「何?」

 

エキドナ「クデュックでは」

 

一拍。

 

エキドナ「自動人形に魂を入れることができる?」

 

イズモ「……」

 

その質問だけは。

 

すぐに答えなかった。

 

 

イズモ「形式的には」

 

エキドナ「形式的?」

 

イズモ「できる」

 

エキドナ「では魂は存在する?」

 

イズモ「分からない」

 

エキドナ「……」

 

イズモ「そこは区別しないとダメ」

 

エキドナ「詳しく聞きたい」

 

イズモ「例えば」

 

空中へ人間の脳を模した図。

 

イズモ「記憶」

 

次。

 

イズモ「人格モデル」

 

次。

 

イズモ「行動傾向」

 

次。

 

イズモ「判断履歴」

 

統合。

 

人型。

 

イズモ「これを自動人形へ移す」

 

エキドナ「それが魂?」

 

イズモ「違う」

 

即答。

 

イズモ「少なくとも科学的には」

 

エキドナ「では何?」

 

イズモ「情報」

 

エキドナ「でも」

 

イズモ「その情報が」

 

目を見る。

 

イズモ「生前と同じ記憶を持って」

 

イズモ「同じ人を好きになって」

 

イズモ「同じことで怒って」

 

イズモ「自分を自分だと認識したら」

 

少し考える。

 

イズモ「社会的には本人として扱える」

 

エキドナ「社会的には」

 

イズモ「うん」

 

エキドナ「魂が宿ったとは言えない?」

 

イズモ「証明できない」

 

エキドナ「なるほど」

 

楽しそうに。

 

エキドナ「では」

 

イズモ「?」

 

エキドナ「記憶こそ魂なのでは?」

 

イズモ「可能性はある」

 

エキドナ「否定しないんだ」

 

イズモ「否定する根拠もない」

 

イズモ「二〇四五年でも」

 

指で頭を示す。

 

イズモ「意識」

 

胸。

 

イズモ「魂」

 

自分。

 

イズモ「自己同一性」

 

手を広げる。

 

イズモ「全部、未解決」

 

エキドナ「科学は随分進んでいるように見えるけど」

 

イズモ「分からないことは普通にある」

 

カヲル「それが科学だからね」

 

イズモ「そう」

 

エキドナ「では」

 

イズモを見る。

 

エキドナ「君の異世界転移は?」

 

イズモ「説明不能」

 

エキドナ「即答だね」

 

イズモ「ポータルなし」

 

指。

 

イズモ「装置なし」

 

次。

 

イズモ「予兆なし」

 

次。

 

イズモ「世界法則無視」

 

イズモ「どう説明しろと」

 

エキドナ「神?」

 

イズモ「そう呼ばれてる何か」

 

エキドナ「信じている?」

 

イズモ「存在は観測してる」

 

エキドナ「信仰は?」

 

イズモ「してない」

 

エキドナ「面白い」

 

イズモ「神だろうが」

 

肩をすくめる。

 

イズモ「仕組みが分かれば現象」

 

カヲル「イズモくんらしいね」

 

イズモ「でも分からない」

 

イズモ「だから」

 

深く息を吐く。

 

イズモ「科学的に説明できないことだらけ」

 

エキドナ「それでも調べる?」

 

イズモ「もちろん」

 

エキドナ「欲深いね」

 

イズモ「そっちに言われたくない」

 

エキドナ「確かに」

 

小さく笑う。

 

 

イズモ「ってことで」

 

立ち上がる。

 

イズモ「戻して」

 

エキドナ「ええ」

 

カヲル「じゃあ僕も戻るよ」

 

イズモ「受け入れ準備よろしく」

 

カヲル「任せて」

 

イズモ「数週間後か」

 

カヲル「ああ」

 

イズモ「……」

 

この世界。

 

ルグニカ。

 

エミリア。

 

レム。

 

まだ。

 

やることは多い。

 

イズモ「それまでに」

 

目を閉じる。

 

イズモ「こっちの問題、全部片付ける」

 

カヲル「君ならそう言うと思った」

 

イズモ「一人ではやらないけどな」

 

カヲル「それでいい」

 

白い光。

 

空間がほどける。

 

最後。

 

エキドナの声。

 

エキドナ「イズモ」

 

イズモ「何?」

 

エキドナ「魂について」

 

イズモ「うん」

 

エキドナ「また話そう」

 

イズモ「暇な時なら」

 

エキドナ「楽しみにしているよ」

 

イズモ「じゃあまた」

 

世界が反転した。

 

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