未練
イズモ「さて、レムの治療と悪食の処理はクデュックに任せるとして」
静まり返った宮殿の一室で、イズモは一人、思考を巡らせていた。
イズモ「残りは、あとひとつの試練か」
イズモ「とはいえ、また二十四時間経たないと挑めないんだよな」
視線を上げ、天井の淡い光を見る。
焦りはないが、時間が限られていることは理解している。
イズモ「まずは今日中に、カエデとラム、それからロズワールに話を通さないとな」
そのまま、頭の中で人員配置を整理していく。
イズモ「配属先は……」
イズモ「レムは基礎スペックが高いし家事能力もある」
イズモ「アリアパイロット、エヴァパイロット、VVVパイロットの給仕と護衛を兼任だな」
イズモ「ラムは戦闘と交渉班」
イズモ「フレデリカはレムのアシスト」
イズモ「エミリアはショーコのアシスト、それとルグニカ王国の国家元首」
イズモ「ロズワールは魔法部門戦術課のトップ」
イズモ「ベアトリスはロズワールの補佐」
イズモ「フェルトは諜報班」
イズモ「騎士団はエミリア直属の軍に再編」
イズモ「クリュシュを含む貴族は、基本的に現状の地位を維持」
イズモ「ガーフィールは戦闘か警備」
イズモ「エキドナは……俺のアシストだな」
一通り考え終え、イズモは小さく息を吐く。
イズモ「これでよし」
その後、カエデ、ラム、ロズワールに説明を行い、多少の戸惑いと議論はあったものの、最終的には全員が納得し、その役職で動くことが決まった。
そして二十四時間が経過する。
最終試練。
神殿の中心で、イズモは静かに立っていた。
イズモ「最終試練は、なんだ?」
エキドナ「さて、始めよう」
エキドナ「過去との別れの試練を」
視界が反転する。
気づけば、無機質なIT企業のオフィスビルの中に立っていた。
白い壁、並ぶデスク、モニターの光。
イズモ?「さてと、このプログラムをコンパイルして……っと」
次の瞬間。
轟音とともに、世界が砕けた。
大爆発。
ガラスが飛び散り、金属が歪み、炎が室内を飲み込む。
外では救急車、消防車、警察車両、ガス会社の車両が次々と集結し、辺り一面に破片と黒煙が広がっていた。
レスキュー隊員1「生存者は?」
レスキュー隊員2「奥に一名、生存者あり。呼吸あります」
レスキュー隊員2「意識はありません」
レスキュー隊員1「了解。他に生存者は?」
レスキュー隊員2「……他は、なしです」
イズモ「……これが、俺の死んだ後の光景か」
イズモ「いや、正確には昏睡状態だったな」
担架に乗せられ、救急搬送される。
病院で手術を受けるが、意識は戻らない。
家族が面会に訪れ、必死に延命を願う。
医師はその希望を受け入れ、処置を続ける。
しかし一年後、脳死判定。
静かに告げられる終わり。
そして、葬儀。
イズモ「……エヴァの世界から別の世界へ転移した間隔と同じくらいか」
イズモ「危なかったな。少しでも遅れてたら、シンジが俺の身体に取り残されてた」
場面が崩れ、光が溶ける。
試練終了。
エキドナ「お疲れ様」
エキドナ「これで試練はすべて終わりだよ。シールドも壊した」
イズモ「ああ」
イズモ「でも、最後にしてはあっけなかった気もするな」
エキドナ「でも、君にとっては心残りだったんだろう?」
イズモ「まあな」
イズモ「でも、新しい仲間は転移先でも見つかる」
イズモ「この世界も、魔女教さえ除けば嫌いじゃない」
エキドナ「そうか」
エキドナ「試練も終わった。これからこの世界をどうするかは、全部君次第さ」
イズモ「……ありがとう」
イズモ「贖罪と未練を手放す機会をくれて」
エキドナ「試練に対して、そんな感想を言うのは君が初めてだよ」
イズモ「これが俺流だからな」
融合まで、あと一週間。