次はオリジナルと転スラを書いていきたいなと思います
クデュック中枢セクター。
白い照明に満たされた会議室の中央で、複数のホログラムが重なっていた。
星図。
空間座標。
世界間距離。
膨大な数式。
その全てが。
一つの未来へ収束していく。
カヲル「……確定したよ」
向かい側。
リツコが端末から顔を上げる。
リツコ「いつ?」
カヲル「あと数週間」
星図の一点。
イズモがいる世界。
もう一方。
クデュック。
二本の軌道線が。
ゆっくり。
確実に。
重なっていく。
カヲル「イズモ君がいる世界と融合する」
リツコ「……」
数秒。
リツコは。
小さく息を吐いた。
リツコ「もう」
眉間へ手を当てる。
リツコ「そんなことで驚かなくなった自分が怖いわね」
異世界。
平行宇宙。
使徒。
空間融合。
かつてなら。
一つ発生するだけで。
人類史を書き換えるほどの事件だった。
今では。
クデュックの日常業務へ組み込まれている。
カヲル「今回は少し面白いよ」
リツコ「面白い?」
カヲル「魔法が存在する世界だ」
リツコの表情が変わった。
リツコ「……魔法?」
カヲル「ああ」
リツコ「科学体系として解析できる?」
カヲル「恐らく」
リツコはすぐ端末へ向き直った。
リツコ「なら」
新規項目。
魔法。
入力。
リツコ「戦力増強」
次。
リツコ「エネルギー技術」
次。
リツコ「医療」
次。
リツコ「空間制御」
さらに。
リツコ「クデュックの技術体系そのものが一段階進む可能性があるわ」
カヲル「イズモ君も」
少し笑う。
カヲル「似たことを考えていると思う」
リツコ「でしょうね」
カヲル「人事案も作ってるみたいだ」
リツコ「もう?」
カヲル「もう」
リツコ「融合まで数週間あるのに」
カヲル「イズモ君だから」
リツコ「納得したわ」
カヲル「次に会った時、詳細を聞いてくる」
リツコ「お願い」
◆
一週間後。
ルグニカ側。
境界観測拠点。
空。
青。
雲。
一見すれば。
何も変わっていない。
だが。
空間センサーは。
既に正常な数値を示していなかった。
光が。
時折。
ほんの僅かに曲がる。
遠くの山の輪郭が。
一瞬だけ。
二重に見える。
カヲル「イズモ君」
イズモ「ん?」
観測窓。
外を見たまま答える。
カヲル「人事の方」
一拍。
カヲル「決まった?」
イズモ「ああ」
すでに。
共有データ。
一覧。
レム。
ラム。
フレデリカ。
ロズワール。
ベアトリス。
フェルト。
ガーフィール。
騎士団。
貴族。
そして。
エミリア。
各人の能力。
希望。
適性。
既存社会での立場。
全てを考慮した。
暫定配置。
カヲル「かなり細かいね」
イズモ「初日に全員迷子になるよりマシ」
カヲル「強制は?」
イズモ「なし」
即答。
イズモ「本人が嫌なら変える」
イズモ「国ごと生活継続したいなら、それでもいい」
カヲル「うん」
少し。
安心したように微笑む。
カヲル「みんなには?」
イズモ「一応言った」
カヲル「反応は?」
イズモ「半信半疑」
カヲル「まあ」
外を見る。
カヲル「世界が数週間後に融合します、なんて」
イズモ「普通信じないよな」
カヲル「僕でも」
少し考える。
カヲル「昔なら信じなかったかもしれない」
イズモ「カヲルが言う?」
カヲル「それもそうだね」
二人。
少し笑う。
外。
一瞬。
空に。
別の星空が重なった。
イズモ「……」
カヲル「始まってる」
イズモ「ああ」
融合まで。
もう。
それほど長くない。
◆
数時間後。
クデュック中枢。
カヲル「――ってことみたいだね」
会議室。
ミサト。
リツコ。
レイシア。
マヤ。
その他。
各部門責任者。
ホログラム。
融合後の世界構造。
ミサト「受け入れ先だけど」
星系図。
指を動かす。
ミサト「サードアース側」
拡大。
プロキシマ・ケンタウリ。
ミサト「A系統が空いてたわね?」
リツコ「確認する」
端末。
数秒。
リツコ「問題なし」
ミサト「じゃあ」
リツコ「一般市民は」
惑星候補。
環境条件。
大気。
重力。
生態系。
表示。
リツコ「第二惑星を中心に、新生ルグニカ大国を建国」
ミサト「元の行政単位は?」
リツコ「可能な限り維持」
ミサト「貴族制度も?」
リツコ「初期段階では」
資料を切り替える。
リツコ「急激に破壊すると行政が止まる」
ミサト「了解」
リツコ「改革するなら」
一拍。
リツコ「向こうの住民自身が決めるべきよ」
ミサト「同意」
次。
魔法適性。
リツコ「魔法使い」
大量のデータ。
リツコ「希望者はクデュック新設」
項目。
魔法部。
リツコ「魔法部戦術科」
ミサト「研究部門は?」
リツコ「別」
ミサト「本人の同意必須ね」
リツコ「当然」
ミサト「珍しいからって研究施設へ連行とかしたらイズモに怒られるわよ」
リツコ「私も怒るわ」
カヲル「そこはもうイズモ君から念押しされてる」
ミサト「さすが」
資料。
人事案。
ミサト「後は」
スクロール。
ミサト「この資料通りね」
リツコ「ええ」
レム。
生活支援。
ラム。
交渉・戦闘。
ロズワール。
魔法戦術。
ベアトリス。
補佐。
ガーフィール。
警備。
フェルト。
情報。
そして。
エミリア。
新生ルグニカ国家元首候補。
ミサト「……」
一瞬。
イズモとの関係。
欄。
ミサト「イズモ、さらっと将来設計まで書いてない?」
カヲル「書いてるね」
リツコ「それは放置しましょう」
ミサト「そうね」
◆
融合まで。
あと数時間。
管制室。
誰も。
大声を出していない。
警報も。
鳴っていない。
だが。
空気だけが。
明らかに違った。
マヤ「世界間距離」
数値。
減少。
マヤ「臨界値へ接近」
レイシア「全通常タスク」
目を開く。
レイシア「中断」
システム。
次々と。
待機状態へ。
レイシア「全セクター」
レイシア「世界融合受け入れモードへ移行」
マヤ「了解」
レイシア「再構築そのものは」
ホログラム。
レイシア「一瞬です」
ミサト「問題は?」
レイシア「既存物質が」
二つの世界。
重なる。
レイシア「融合先世界の法則に合わせて、一部置換される可能性」
リツコ「重要ユニット」
レイシア「独立モード推奨」
ミサト「エヴァ」
マヤ「切り離します」
リツコ「コア研究施設」
別系統。
リツコ「独立」
レイシア「クデュック中枢AI」
カヲル「隔離済み」
ミサト「じゃあ」
正面。
巨大スクリーン。
ミサト「待つしかないわね」
誰も。
返事をしなかった。
世界の終わり。
ではない。
だが。
これまでの世界が。
そのままではなくなる瞬間。
始まり。
と。
終わり。
その両方を。
全員が待っていた。
◆
同時刻。
ルグニカ。
大地。
イズモは。
足元の感覚に眉を寄せた。
イズモ「……来てる」
振動。
地震ではない。
地面ではなく。
空間そのものが。
僅かに。
揺れている。
空を見る。
青空。
一瞬。
星。
消える。
また青。
イズモ「兆候がはっきりしてきた」
エミリア「イズモ」
横。
不安そうな顔。
イズモ「うん?」
エミリア「私たち」
空を見る。
エミリア「大丈夫なのよね?」
イズモ「大丈夫」
迷わない。
イズモ「景色は変わる」
イズモ「建物も」
イズモ「場合によっては土地も」
エミリア「……」
イズモ「でも」
彼女を見る。
イズモ「人は変わらない」
エミリア「本当に?」
イズモ「少なくとも」
少し笑う。
イズモ「今までの融合ではそうだった」
エミリア「今までがあるのが凄いわね……」
イズモ「俺もそう思う」
エミリアの肩。
少し。
力が抜けた。
イズモ「あと」
エミリア「?」
イズモ「融合後」
一拍。
イズモ「新生ルグニカの統治」
イズモ「頼む」
エミリア「え?」
イズモ「王選」
イズモ「まだ途中だけど」
遠く。
村。
街。
人。
イズモ「世界そのものが変わる」
イズモ「その時」
イズモ「向こうの住民から見て」
彼女を見る。
イズモ「一番分かりやすい代表はエミリアだ」
エミリア「私……」
イズモ「もちろん」
イズモ「嫌なら別案考える」
エミリア「……」
数秒。
深く。
息を吸う。
エミリア「ううん」
目。
強く。
イズモを見る。
エミリア「やる」
イズモ「いいの?」
エミリア「王になりたいって」
少し笑う。
エミリア「ずっと言ってたんだから」
イズモ「そっか」
エミリア「それに」
ほんの少し。
柔らかい声。
エミリア「イズモも一緒でしょ?」
イズモ「ああ」
即答。
エミリア「なら」
頷く。
エミリア「大丈夫」
◆
融合開始。
最初。
音はなかった。
ただ。
世界から。
色が消えた。
イズモ「……!」
白。
上。
下。
右。
左。
全て。
境界がない。
重力。
一瞬。
消える。
人々の身体が。
数センチ。
浮く。
エミリア「イズモ!」
手。
掴む。
イズモ「大丈夫!」
次。
光。
世界。
反転。
◆
音。
風。
空。
戻る。
だが。
景色は。
同じではなかった。
イズモ「……」
ルグニカの街。
村。
城。
存在している。
だが。
空。
星。
明らかに。
別。
そして。
上空。
影。
人々が。
一斉に見上げる。
巨大。
あまりにも。
巨大な。
人工物。
星間連絡船。
エミリア「……何」
ラム「冗談でしょう」
ガーフィール「なんだァ、ありゃ……」
ロズワール「これはまたぁ……」
イズモ「来たな」
各地。
拡声装置。
起動。
スピーカー「ルグニカ世界の皆様へ」
ざわめき。
スピーカー「私たちは」
一拍。
スピーカー「パラレルワールド組織、クデュックです」
イズモ「……」
ちょっと説明が硬い。
スピーカー「世界融合は正常に完了しました」
人々。
まだ。
理解できていない。
スピーカー「各地域の指導者との事前協議に基づき」
イズモ「事前協議ってほぼ俺だけどな」
エミリア「今言うこと?」
スピーカー「希望する住民は」
巨大な船体。
ゆっくり下降。
スピーカー「星間連絡船により」
星図。
空へ投影。
スピーカー「プロキシマ・ケンタウリA星系へ移動します」
さらに。
スピーカー「移動後」
スピーカー「新生ルグニカ大国の建国を支援します」
スピーカー「移住を希望しない住民への強制移動は行いません」
イズモ「よし」
エミリア「最後の一文でちょっと安心した」
イズモ「重要だからな」
船。
着陸。
巨大なハッチ。
開く。
人々。
後退。
当然。
怖い。
理解できない。
技術。
巨大すぎる。
存在。
エミリア「……私たち」
イズモ「うん」
エミリア「本当に」
イズモを見る。
エミリア「どうなるの?」
イズモ「大丈夫」
空を見上げる。
イズモ「俺がいた組織」
エミリア「クデュック」
イズモ「そう」
イズモ「向こうに着いたら」
指を折る。
イズモ「今まで通り暮らしてもいい」
イズモ「別の仕事してもいい」
イズモ「魔法研究してもいい」
イズモ「宇宙行ってもいい」
エミリア「宇宙?」
イズモ「後で説明する」
エミリア「そればっかり」
イズモ「説明すること多すぎるんだよ」
エミリアは。
不安そうな仲間たちを見る。
ラム。
ロズワール。
ベアトリス。
ガーフィール。
村人。
騎士。
皆。
同じ顔。
イズモ「まあ」
少し苦笑。
イズモ「初めてならこうなるよな」
エミリア「イズモは慣れてるの?」
イズモ「世界融合は」
一拍。
イズモ「多少」
エミリア「多少なんだ」
イズモ「怖いもんは怖い」
エミリア「……」
少しだけ。
笑う。
エミリア「じゃあ」
船を見る。
エミリア「とにかく」
一歩。
エミリア「乗りましょう」
イズモ「うん」
その一歩へ。
イズモも並んだ。
◆
星間連絡船。
内部。
エミリア「……」
壁。
照明。
自動ドア。
無人搬送。
案内AI。
エミリア「イズモ」
イズモ「うん?」
エミリア「前から思ってたけど」
イズモ「何?」
エミリア「あなた」
周囲を見る。
エミリア「とんでもない世界から来てたのね」
イズモ「今さら?」
エミリア「今さら実感したの」
イズモ「そっか」
エミリア「あなたが物を出すのと」
巨大な窓。
宇宙。
星。
エミリア「世界そのものがこうなのは別よ」
イズモ「確かに」
エミリア「……」
しばらく。
窓を見る。
イズモ「怖い?」
エミリア「少し」
イズモ「うん」
エミリア「でも」
手。
イズモの袖。
少し掴む。
エミリア「嫌じゃない」
イズモ「そっか」
◆
移住。
調整。
数週間。
数か月。
魔法を持つ者。
希望者。
適性審査。
クデュック魔法部門。
ロズワール。
戦術課。
ベアトリス。
補佐。
ラム。
交渉・戦闘部門。
フレデリカ。
生活支援。
ガーフィール。
警備。
フェルト。
情報部門。
騎士団。
新生ルグニカ直属軍。
そして。
レム。
イズモ「どう?」
巨大格納庫。
アリア。
エヴァ。
VVV。
並ぶ。
レム「……」
上を見る。
さらに。
上を見る。
レム「想像より大きいです」
イズモ「だよな」
レム「これに」
指す。
レム「人が乗るのですか?」
イズモ「うん」
レム「その方々の生活管理」
イズモ「あと護衛」
レム「分かりました」
一拍。
レム「お任せください」
イズモ「適応早い」
レム「イズモ君の仕事ですから」
イズモ「俺の仕事ではないけどね」
◆
プロキシマ・ケンタウリ星系。
第二惑星。
青。
緑。
新しい大地。
旧ルグニカの建築様式を残した街。
その向こう。
新しい交通網。
医療。
通信。
魔法。
科学。
両方が。
少しずつ。
混ざり始めている。
そして。
中央。
新生ルグニカ。
イズモ「……」
高台。
街を見る。
エミリア「どうしたの?」
イズモ「いや」
新しい国。
人。
暮らし。
イズモ「本当に国できたなって」
エミリア「イズモが言い出したんでしょう?」
イズモ「そうだけど」
エミリア「もう」
笑う。
エミリア「私はまだ勉強することだらけよ」
イズモ「俺も」
エミリア「イズモが?」
イズモ「こっちの世界のこと」
エミリア「……」
少し。
嬉しそうに。
エミリア「そっか」
◆
その後。
平和だった。
とは。
言えない。
世界融合。
未知文明との接触。
魔法と科学の統合。
政治。
異星系。
新しい問題。
そして。
イズモ自身。
ある日突然。
また。
別世界へ消える。
エミリア「……また?」
カエデ「転移反応です」
エミリア「いつ戻るの?」
カエデ「不明」
エミリア「もう……」
何度目か。
分からない。
それでも。
数日。
数週間。
時には。
もっと長く。
そして。
必ず。
イズモ「ただいま」
帰ってくる。
エミリア「遅い!」
イズモ「ごめん!」
怒られて。
謝って。
何があったか話して。
また。
日常へ戻る。
◆
夕暮れ。
新生ルグニカ。
花畑。
かつて。
ロズワール領で見たものによく似ている。
イズモ「……きれいだな」
エミリア「ええ」
二人。
並ぶ。
随分。
遠くまで来た。
ルグニカ。
白鯨。
魔女教。
聖域。
試練。
世界融合。
それでも。
イズモ「ひさしぶりに」
エミリア「?」
イズモ「平和だね」
エミリア「またそれ?」
イズモ「前にも言った?」
エミリア「言った」
イズモ「そっか」
エミリア「それで」
少し。
顔を近づける。
エミリア「また突然どこか行くんじゃないでしょうね?」
イズモ「俺に聞かれても……」
エミリア「戻ってくる?」
イズモ「もちろん」
エミリア「絶対?」
イズモ「絶対」
エミリア「なら」
前を見る。
エミリア「いいわ」
イズモ「いいんだ」
エミリア「しょうがないもの」
風。
銀色の髪。
花。
遠く。
新しい街。
イズモ「エミリア」
エミリア「なに?」
イズモ「国」
見渡す。
イズモ「作れたね」
エミリア「うん」
イズモ「一緒に」
エミリア「うん」
少し。
間。
イズモ「これからもよろしく」
エミリア「こちらこそ」
世界は変わった。
国も。
空も。
暮らしも。
出会う人も。
これから。
また何度も変わる。
それでも。
自分たちで選んだ未来だけは。
誰にも。
変えさせない。
イズモは。
新しい世界の夕焼けを見上げた。
長かった。
ルグニカでの物語は。
ここで。
一度。
幕を閉じる。
だが。
最上イズモの異世界介入ログは。
まだ。
終わらない。
――リゼロ編 END