異世界介入ログ:最上イズモ   作:最上 イズモ

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死に至る病そして2

二日後。

治療を終えたイズモは、王都の一室で無線を起動し、エミリアに連絡を取ろうとした。

しかし、何度呼びかけても応答はない。

 

イズモ「……やはりか」

 

衛星映像を展開した瞬間、喉の奥がひりついた。

ロズワール邸の建物だけが、焼け残った墓標のように立っている。

周囲一帯には、動くものが何一つ映らない。

 

イズモ「無人兵器、衛星砲、その他すべて弾切れ。衛星で見ても、ロズワールの建物以外……何もない」

 

レム「……早く行きましょう」

 

レムの声は震えていたが、視線は強く前を向いていた。

 

イズモ「ゲートを使う。

いいか?」

 

レム「過度に使いすぎなければ大丈夫です。

一日に十回までですから」

 

イズモ「了解だ。これに乗ってくれ」

 

イズモが空間を歪めると、VTOLが姿を現す。

レムは迷いなく乗り込んだ。

 

レム「分かりました」

 

飛行中、霧に包まれた空と、遠方を悠々と泳ぐ巨大な空飛ぶクジラが視界を横切る。

だがイズモは一切視線を向けなかった。

 

ロズワール邸付近に差し掛かった瞬間、魔女教徒の魔法弾が降り注ぐ。

次の瞬間、タービンに直撃。

機体は激しく傾き、制御を失った。

 

イズモ「くっ……!」

 

緊急脱出。

だが地面に叩きつけられるより早く、視界の端で何かが弾けた。

次の瞬間、体が一気に重くなる。

 

暗転。

 

洞窟の冷たい床。

イズモは意識を取り戻し、歯を噛みしめた。

 

イズモ「……ちっ。捕まっちまったか」

 

拘束具の感触を確かめ、顔を上げる。

 

イズモ「で、あんたは?」

 

闇の奥から、歪んだ声が響く。

 

ペテルギウス「私はぁ、大罪司教。

怠惰担当、ペテルギウス・ロマネ・コンティでぇす」

 

イズモ「へぇ。それにしても、あんたらにATF貫通麻酔弾を作れる技術があるとはな」

 

ペテルギウス「私たちは、嫉妬の魔女様に言われた通りに使っているだけでぇす」

 

ペテルギウス「それでぇ、同乗者は?」

 

ペテルギウスは陶酔したように首を傾げる。

 

ペテルギウス「うんうん。青髪の少女。生死は不明。怠惰ですねぇ。不安要素を残すあなたは、怠惰怠惰怠惰です」

 

ペテルギウス「少女を連れてくるのです」

 

ペテルギウス「にしても、あなた……本当に怠惰ですねぇ」

 

イズモ「それは、あんたの方だ」

 

ペテルギウス「……は?」

 

イズモ「時間稼ぎセンキュー」

 

次の瞬間、拘束具が外れ、装甲服が瞬時に展開される。

 

イズモ「Shall we dance?」

 

高周波ブレードが起動し、空気が裂ける音が響く。

切り伏せ、切り伏せ、血と狂気が洞窟に散った。

 

その中で、鬼の角を生やしたレムが姿を現す。

 

イズモ「来るな!」

 

レム「どうしてですか!」

 

イズモ「こいつには、見えない手がある!」

 

ペテルギウス「なぜ……なぜあなたに見えているのですかぁ?」

 

イズモ「科学の力だ。この眼鏡は、赤外線、空気の流れ、物理的に存在するすべてを可視化する」

 

ペテルギウス「脳が……震えるぅぅぅ!」

 

イズモ「俺が盾になる。ゴーグルを作る。まだ五回目だ、問題ない」

 

レム「……分かりました」

 

イズモ「The show time」

 

ステルス起動。

指先が閃き、ペテルギウスの存在が断ち切られる。

 

洞窟を飛び出した瞬間。

 

イズモ「……嘘だろ……」

 

視界に広がっていたのは、地獄だった。

破壊されたロボットの残骸。

ラムの亡骸。

ロズワールの亡骸。

エミリアの亡骸。

村人たちの亡骸。

 

レムは、ラムの前で膝をつき、声を殺して泣き崩れていた。

 

空気が凍りつく。

次の瞬間、パックが巨大化し、空を覆う。

 

パック「……もう遅すぎたんだよ」

 

パック「エミリアとの契約で、今から僕は世界を滅ぼす」

 

イズモ「君がやらなくてもいい」

 

イズモ「この罪は、俺が背負う」

 

イズモ「パック。何もしなくていい」

 

その言葉と同時に、歪んだ光が開く。

ガフの扉。

 

イズモは迷わず、ロンギヌスの槍を突き立てた。

 

世界が砕ける衝撃。

光と闇が反転し、時間が巻き戻る。

 

次の瞬間。

イズモは、レムと共に出かけた、あの日に立っていた。

 

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