異世界介入ログ:最上イズモ   作:最上 イズモ

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二度目の空に、白鯨を討つ

イズモ「クリュシュのところへ行く」

 

レム「……え?」

 

イズモ「白鯨の件を伝えなきゃならない」

 

先ほどまでとは違う。

 

声に迷いがなかった。

 

レムは、そんなイズモの横顔をじっと見る。

 

レム「何か……見えたんですか?」

 

イズモ「見た」

 

それだけ答え、端末を操作する。

 

空中に疑似映像が展開された。

 

霧に包まれた街道。

 

山岳地帯。

 

そして。

 

その中を泳ぐ、巨大な白い影。

 

レム「白鯨……」

 

イズモ「さっきのじゃない」

 

レム「?」

 

イズモ「過去の衛星記録」

 

映像が切り替わる。

 

別の日。

 

別の場所。

 

同じ巨大な影。

 

イズモ「ロズワール邸の近くで魔女教の集団を確認した」

 

次の映像。

 

洞窟。

 

大量の人影。

 

イズモ「それとは別に、白鯨の出現記録も洗った」

 

レム「……いつの間に」

 

イズモ「今」

 

レム「今?」

 

イズモ「衛星に残ってるデータをAIに全部投げた」

 

複数の軌道。

 

日時。

 

高度。

 

霧。

 

白鯨の影。

 

データが次々と重なっていく。

 

イズモ「次の出現予測」

 

一点を指す。

 

イズモ「二十一時ちょうど」

 

レム「……」

 

イズモ「推定体重二千五百キログラム。全長十メートル」

 

表示が切り替わる。

 

白鯨が攻撃を受ける。

 

その肉体が複数へ分裂する。

 

レム「これは……」

 

イズモ「一定量のダメージを受けると分裂」

 

さらに拡大。

 

複数の個体。

 

その中の一つだけ、反応が違う。

 

イズモ「ただし、本体がいる」

 

レム「本体?」

 

イズモ「最上位個体」

 

指を動かす。

 

本体を示す反応だけが赤く表示された。

 

イズモ「こいつを落とせば、分裂個体も全部消える」

 

レム「……つまり?」

 

イズモは映像を消した。

 

イズモ「白鯨を先に潰す」

 

レム「その後、魔女教ですか?」

 

イズモ「ああ」

 

少しだけ表情が硬くなる。

 

イズモ「白鯨を討伐した直後、ほぼ確実に魔女教が動く」

 

レム「なぜ、そう思うのですか?」

 

イズモ「前回がそうだった」

 

レムの目が揺れる。

 

イズモ「説明は後でする」

 

イズモ「でも、時間も距離も近すぎる」

 

地図を表示。

 

白鯨出現地点。

 

ロズワール領。

 

魔女教の洞窟。

 

三つの位置が一本の線に近い。

 

イズモ「偶然として無視するには出来すぎてる」

 

レム「……」

 

イズモ「だから」

 

指を折る。

 

イズモ「白鯨を討つ」

 

二本目。

 

イズモ「部隊の消耗を最小限にする」

 

三本目。

 

イズモ「そのまま魔女教へ移行」

 

レム「連戦になります」

 

イズモ「だから俺一人で全部やらない」

 

レムが少し驚く。

 

イズモ「何?」

 

レム「いえ」

 

レム「少し安心しました」

 

イズモ「どういう意味だよ」

 

レム「そのままの意味です」

 

イズモ「……」

 

否定できない。

 

イズモ「白鯨は事前準備しながら、俺のリハビリも兼ねて仕留める」

 

レム「リハビリで白鯨を討伐する人は、イズモ君くらいだと思います」

 

イズモ「じゃあ訂正」

 

一拍。

 

イズモ「負荷試験」

 

レム「もっと悪くなりました」

 

イズモ「まあいい」

 

戦術画面を出す。

 

イズモ「最初に爆弾を落とす」

 

レム「爆弾?」

 

イズモ「開幕で削る。分裂させるのも兼ねる」

 

イズモ「そこから、本体を俺たちで特定」

 

魔法部隊の位置を表示。

 

イズモ「俺じゃ対処しにくい範囲攻撃は、この世界の魔法使いに任せる」

 

地上部隊。

 

イズモ「接近戦は剣士」

 

航空支援。

 

イズモ「俺は上から支援」

 

最後。

 

魔女教。

 

イズモ「白鯨が終わったら、魔女教」

 

レム「そちらは?」

 

イズモ「下っ端は俺が潰す」

 

ペテルギウスの姿を思い出す。

 

イズモ「最後に頭を落とす」

 

レム「……いいですね」

 

そのまま肯定しかけて。

 

レム「ただし」

 

イズモ「?」

 

レム「創造能力の制限を忘れないでください」

 

イズモ「忘れてない」

 

レム「本当に?」

 

イズモ「本当に」

 

レム「一日に十回」

 

イズモ「うん」

 

レム「一度に生成できる重量にも限界があります」

 

イズモ「一日十トンまで」

 

レム「そうです」

 

イズモ「じゃあ」

 

兵器の重量を計算する。

 

イズモ「一個あたりの威力を上げる」

 

レム「嫌な予感がします」

 

イズモ「一発で半径三キロは消せる」

 

レム「何を作る気ですか?」

 

イズモ「N2」

 

レム「えぬつー?」

 

イズモ「でっかい爆弾」

 

レム「最初からそう言ってください」

 

イズモ「分裂後はクリュシュとアナスタシアの部隊に頼む」

 

レム「協力してくれるでしょうか」

 

イズモ「白鯨の位置と出現時刻」

 

映像を見る。

 

イズモ「これが本物なら、十分交渉材料になる」

 

レム「なるほど」

 

イズモ「あとエミリア」

 

レム「はい」

 

イズモ「爆弾作るのに必要な資源がある」

 

イズモ「領内の採掘権を一時的に借りる許可を取る」

 

レム「伝えておきます」

 

イズモ「前回のことも含めて説明する」

 

レム「……分かりました」

 

少しだけ微笑む。

 

レム「流石です、イズモ君」

 

イズモ「今回は」

 

立ち上がる。

 

イズモ「一人でやる気ないからな」

 

 

クルシュ邸。

 

会議室。

 

イズモは席につくなり言った。

 

イズモ「同盟を組みたい」

 

クルシュ「随分と唐突だな」

 

イズモ「時間がない」

 

クルシュ「目的は?」

 

イズモ「白鯨討伐」

 

空気が変わった。

 

それまで壁際に控えていた兵士たちの視線まで、イズモへ集まる。

 

クルシュ「……続けろ」

 

イズモ「こちらが出せるものは三つ」

 

指を立てる。

 

イズモ「一つ。白鯨の出現地点」

 

二つ。

 

イズモ「高度」

 

三つ。

 

イズモ「出現時刻」

 

クルシュ「見返りは?」

 

イズモ「エミリア陣営との一時同盟」

 

少し考え。

 

イズモ「それと資源の採掘支援」

 

クルシュ「採掘?」

 

イズモ「兵器材料が足りない」

 

クルシュ「なるほど」

 

腕を組む。

 

クルシュ「だが」

 

イズモを見る。

 

クルシュ「その情報の根拠は?」

 

イズモ「衛星」

 

クルシュ「……衛星?」

 

イズモ「これ」

 

端末を置く。

 

白鯨の映像。

 

霧。

 

位置。

 

時刻。

 

軌道。

 

過去の出現履歴。

 

クルシュの表情が変わる。

 

イズモ「過去の移動を全部追った」

 

クルシュ「これが……空から?」

 

イズモ「ああ」

 

その時。

 

扉の外から声。

 

???「その話」

 

軽い足音。

 

???「うちも聞かせてもらってええ?」

 

イズモ「?」

 

入ってきたのは、小柄な女性。

 

その後ろに商人風の男。

 

クルシュ「アナスタシア・ホーシン」

 

続いて。

 

クルシュ「ラッセル・フェロー」

 

イズモ「ああ」

 

イズモ「来てたか」

 

アナスタシア「何やその反応」

 

椅子を引く。

 

アナスタシア「呼び出された思うたら、もう白鯨討伐の話まで進んどるやないか」

 

イズモ「参加する?」

 

アナスタシア「ほんまに白鯨を倒せるんやったらな」

 

笑う。

 

アナスタシア「うちの傭兵団も出すで」

 

イズモ「助かる」

 

クルシュ「待て」

 

机の映像を見る。

 

クルシュ「まだ一つ確認がある」

 

イズモ「何?」

 

クルシュ「衛星というものだ」

 

クルシュ「私が知る限り」

 

窓の外を見る。

 

クルシュ「衛星と呼ばれるものは月しか存在しない」

 

イズモ「ああ」

 

クルシュ「ではこれは何だ?」

 

イズモ「作った」

 

沈黙。

 

アナスタシア「……作った?」

 

イズモ「今日はまだ創造能力使ってない」

 

レムが横から睨む。

 

イズモ「一個だけ」

 

レム「イズモ君」

 

イズモ「証明用」

 

手を上げる。

 

光。

 

一基。

 

小型衛星が形を成す。

 

アナスタシア「……」

 

クルシュ「……」

 

ラッセル「……」

 

イズモ「これ」

 

窓を開ける。

 

イズモ「宇宙まで飛ばす」

 

推進機。

 

点火。

 

一瞬で上空へ消えた。

 

アナスタシア「……えらいもん見せられたなぁ」

 

イズモ「こいつが上から地上を見る」

 

イズモ「データ解析はAI」

 

クルシュ「AIとは?」

 

イズモ「すごく頭のいい自動人形だと思って」

 

アナスタシア「雑な説明やな」

 

イズモ「正確に説明したら今日終わる」

 

投影。

 

新しい衛星からの映像。

 

王都。

 

クルシュ邸。

 

そして。

 

遠方。

 

イズモ「時間予測誤差、十分以内」

 

高度データ。

 

イズモ「高度誤差、一メートル以内」

 

クルシュが映像を見る。

 

イズモ「白鯨の特性も解析済み」

 

分裂映像。

 

イズモ「一定ダメージで分裂」

 

本体を表示。

 

イズモ「ただし本体を倒せば、全部消える」

 

アナスタシア「本体の見分けは?」

 

イズモ「こっちでやる」

 

クルシュ「成功率は?」

 

イズモ「高い」

 

クルシュ「数字で」

 

イズモ「準備なしなら低い」

 

少し間を置く。

 

イズモ「今から準備するなら、十分勝てる」

 

クルシュは目を閉じた。

 

長い沈黙。

 

そして。

 

クルシュ「白鯨討伐は」

 

目を開く。

 

クルシュ「我が一族の悲願でもある」

 

ビル爺――ヴィルヘルムが、一歩前へ出る。

 

その目には、今まで見たことのないものがあった。

 

静かだが。

 

深い。

 

ビル爺「最上イズモ殿」

 

イズモ「はい」

 

ビル爺「この老体に」

 

頭を下げる。

 

ビル爺「白鯨討伐の機会を与えてくださること、感謝いたします」

 

イズモ「……」

 

事情は知らない。

 

だが。

 

軽い気持ちで言っているわけではないことだけは分かる。

 

イズモ「こっちこそ」

 

頷く。

 

イズモ「お願いします」

 

クルシュ「決まりだ」

 

立ち上がる。

 

クルシュ「白鯨討伐を開始する」

 

イズモ「よし」

 

戦術画面を開く。

 

イズモ「じゃあ」

 

少しだけ笑う。

 

イズモ「白鯨をキルしよう」

 

 

作戦準備。

 

時間は限られていた。

 

イズモ「創造上限、一日十トン」

 

レム「十回です」

 

イズモ「分かってる」

 

一つ。

 

N2。

 

二つ。

 

小型VTOL。

 

三つ。

 

対白鯨用ミサイル。

 

四つ。

 

ガトリング。

 

五つ。

 

装甲服。

 

レム「残り五回」

 

イズモ「後は温存」

 

レム「絶対ですよ」

 

イズモ「はい」

 

アナスタシア側から傭兵団。

 

クルシュ側から騎士団。

 

魔法使い。

 

地竜部隊。

 

作戦会議。

 

イズモ「単純にいく」

 

地図。

 

大樹。

 

白鯨出現予測位置。

 

イズモ「俺が最初に爆弾を落とす」

 

クルシュ「距離は?」

 

イズモ「最低三キロ」

 

アナスタシア「うちらまで吹き飛ばさんといてや」

 

イズモ「そのための三キロ」

 

イズモ「爆発後、分裂を確認」

 

別映像。

 

イズモ「ビル爺と近接部隊で本体を削る」

 

魔法部隊。

 

イズモ「分裂体は魔法で牽制」

 

航空。

 

イズモ「俺は上から支援」

 

ビル爺「承知しました」

 

イズモ「白鯨の霧には何かある」

 

レム「精神へ影響を与えるものがあります」

 

イズモ「だから霧対策も用意した」

 

散布装置。

 

イズモ「霧を飛ばして、汚染対策用のガス撒く」

 

アナスタシア「そのガス、大丈夫なん?」

 

イズモ「人間用に調整してる」

 

アナスタシア「今の一言だけ聞くと怖いなぁ」

 

イズモ「大丈夫」

 

アナスタシア「二回言う人ほど不安やねん」

 

 

夜。

 

出撃。

 

VTOLのエンジンが低く唸る。

 

ミミ「うおおおお!」

 

イズモ「?」

 

ミミ「かっけーのだ!」

 

機体の周囲を走り回っている。

 

イズモ「触るなよ」

 

ミミ「乗っていい?」

 

イズモ「今回はダメ」

 

ミミ「ぶー!」

 

イズモ「戦争しに行くんだぞ」

 

ミミ「じゃあ終わったら乗る!」

 

イズモ「生きて帰ったらな」

 

ミミ「約束なのだ!」

 

イズモ「はいはい」

 

操縦席へ。

 

ハッチ閉鎖。

 

地上。

 

クルシュたちの部隊が地竜で進軍する。

 

イズモ「全隊、通信確認」

 

クルシュ『聞こえている』

 

アナスタシア『こっちも大丈夫や』

 

ビル爺『問題ありません』

 

イズモ「目標方位二八〇」

 

機体上昇。

 

イズモ「高度一〇〇〇」

 

夜の空。

 

霧。

 

視界が徐々に悪くなる。

 

イズモ「地上隊、爆心地から三キロ以上を維持」

 

クルシュ『了解』

 

時刻。

 

二十時五十九分。

 

イズモ「……」

 

レーダー。

 

何もない。

 

二十時五十九分三十秒。

 

レム『来ます』

 

イズモ「分かってる」

 

五十秒。

 

イズモ「全員、伏せる準備」

 

二十一時。

 

レーダーに。

 

巨大な反応。

 

イズモ「……来る」

 

霧が動いた。

 

最初は山かと思った。

 

だが。

 

白。

 

巨大な口。

 

空を泳ぐ肉体。

 

白鯨。

 

地上部隊にどよめきが走る。

 

クルシュ『総員、動くな!』

 

イズモ「ターゲット確認」

 

照準。

 

ロック。

 

イズモ「N2、投下」

 

機体下部。

 

爆弾が切り離される。

 

落下。

 

数秒。

 

イズモ「全員伏せろ!」

 

光。

 

夜が昼になった。

 

音より先に。

 

衝撃。

 

空気が押し潰される。

 

VTOLが激しく揺れる。

 

イズモ「うおっ!」

 

警報。

 

姿勢制御。

 

イズモ「爆心確認!」

 

霧が吹き飛ぶ。

 

中心。

 

白鯨。

 

イズモ「生きてる」

 

アナスタシア『あれ食らって生きとるん!?』

 

イズモ「だからボスなんだろ」

 

白鯨が咆哮する。

 

その肉体が。

 

歪んだ。

 

イズモ「来る」

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

イズモ「分裂確認!」

 

クルシュ『総員――』

 

剣を抜く。

 

クルシュ『戦闘開始!』

 

地上部隊が動いた。

 

 

イズモ「ターゲット上空一五〇〇!」

 

複数の白鯨。

 

だが。

 

一つだけ。

 

データが違う。

 

イズモ「本体捕捉!」

 

下を見る。

 

イズモ「ビル爺!」

 

ビル爺『はい!』

 

VTOLを下降。

 

横付け。

 

イズモ「乗って!」

 

ビル爺が地竜から跳ぶ。

 

ハッチ。

 

掴む。

 

引き込む。

 

イズモ「白鯨の背中へ降ろす」

 

ビル爺「願ってもない」

 

イズモ「危なくなったら即回収」

 

ビル爺「承知」

 

イズモ「絶対ですよ」

 

ビル爺「善処します」

 

イズモ「その言い方信用できないんだけど」

 

ビル爺が笑う。

 

機体を白鯨へ寄せる。

 

イズモ「三」

 

高度。

 

イズモ「二」

 

白鯨がこちらを向く。

 

イズモ「一!」

 

ハッチ。

 

ビル爺が飛び出す。

 

落下。

 

剣閃。

 

白鯨の背中が大きく裂けた。

 

イズモ「……すげ」

 

ビル爺が走る。

 

斬る。

 

斬る。

 

巨大な肉体の上を、人間一人が駆けていく。

 

白鯨が叫ぶ。

 

霧。

 

一気に濃くなる。

 

イズモ「霧来る!」

 

警報。

 

外部センサーが乱れる。

 

イズモ「これが精神汚染か」

 

装置起動。

 

送風。

 

霧を吹き飛ばす。

 

イズモ「対汚染剤散布!」

 

機体からガスが広がる。

 

地上部隊へ降りていく。

 

クルシュ『効果確認!』

 

イズモ「よし」

 

別個体。

 

地上へ突進。

 

イズモ「ミサイル!」

 

ロック。

 

発射。

 

一発。

 

誘導。

 

着弾。

 

アナスタシア『当たったで!』

 

イズモ「次!」

 

二発。

 

三発。

 

白鯨の動きが鈍る。

 

ビル爺『イズモ殿!』

 

イズモ「回収する!」

 

機体を寄せる。

 

ビル爺が跳ぶ。

 

収容。

 

数秒だけ呼吸を整える。

 

イズモ「もう一回行く?」

 

ビル爺「無論」

 

イズモ「ですよね」

 

再出撃。

 

ビル爺が飛ぶ。

 

白鯨の口が大きく開く。

 

イズモ「ビル爺!」

 

飲み込まれた。

 

イズモ「……!」

 

通信が途切れる。

 

クルシュ『ヴィルヘルム!』

 

レム『ビル爺!』

 

イズモ「待て!」

 

白鯨を見る。

 

反応。

 

内部。

 

まだある。

 

イズモ「生きてる!」

 

次の瞬間。

 

腹部が。

 

内側から裂けた。

 

血。

 

肉。

 

そして。

 

ビル爺が飛び出す。

 

イズモ「マジかよ!」

 

アナスタシア『あの爺さん何者やねん!』

 

イズモ「俺が聞きたい!」

 

VTOLを寄せる。

 

回収。

 

ビル爺「まだ行けます」

 

イズモ「一回休んで!」

 

 

戦闘継続。

 

ミサイル。

 

残数。

 

低下。

 

ガトリング弾薬。

 

残り僅か。

 

イズモ「……まずい」

 

次は魔女教。

 

ここで全部使えば。

 

前回と同じになる。

 

イズモ「これ以上弾使えない」

 

レム『どうしますか?』

 

イズモ「創造は?」

 

確認。

 

今日の回数。

 

すでに上限へ近い。

 

イズモ「……ダメだ」

 

イズモ「今は追加で作れない」

 

白鯨。

 

まだ動いている。

 

地上部隊にも疲労。

 

時間がない。

 

イズモ「……」

 

地形。

 

大樹。

 

白鯨。

 

突然。

 

一つの線が繋がった。

 

イズモ「クルシュ!」

 

クルシュ『何だ!』

 

イズモ「大樹使う!」

 

クルシュ『何を――』

 

イズモ「全軍、大樹方向へ誘導!」

 

VTOL上昇。

 

イズモ「魔法部隊、白鯨を俺の方へ!」

 

アナスタシア『何する気や!?』

 

イズモ「倒す!」

 

白鯨がこちらを向く。

 

イズモ「来い」

 

推力。

 

前へ。

 

白鯨が追う。

 

イズモ「もっと」

 

距離。

 

速度。

 

イズモ「もっと来い!」

 

白鯨が加速。

 

大樹。

 

イズモ「ビル爺!」

 

ビル爺『はい!』

 

イズモ「大樹を――」

 

拡声器。

 

最大。

 

イズモ「切れ――――!!」

 

剣士たちが一斉に動く。

 

大樹。

 

亀裂。

 

白鯨。

 

イズモ「俺は――」

 

視界が揺れた。

 

イズモ「っ……!」

 

胸。

 

激痛。

 

ゲート。

 

限界。

 

レム『イズモ君!?』

 

イズモ「まだ!」

 

操縦桿を握る。

 

イズモ「俺は……」

 

時間。

 

距離。

 

速度。

 

すべてを読む。

 

イズモ「タイム……」

 

身体が軋む。

 

視界が白くなる。

 

だが。

 

ここだけは。

 

外さない。

 

イズモ「今!」

 

大樹が倒れた。

 

白鯨。

 

回避不能。

 

巨木がその身体へ叩きつけられる。

 

轟音。

 

地面。

 

振動。

 

白鯨が押し潰される。

 

イズモ「止まった!」

 

ハッチを開く。

 

イズモ「ビル爺!」

 

ビル爺「承知!」

 

跳ぶ。

 

剣。

 

最後の一撃。

 

白鯨の頭部へ。

 

振り下ろす。

 

静寂。

 

一秒。

 

二秒。

 

白鯨の身体から力が抜けた。

 

分裂体。

 

同時に崩れる。

 

消えていく。

 

霧が晴れる。

 

イズモ「……」

 

通信。

 

誰も言葉を発さない。

 

そして。

 

クルシュの声。

 

クルシュ『白鯨――』

 

わずかに震えている。

 

クルシュ『討伐、完了』

 

地上から。

 

歓声。

 

巨大な歓声が夜を揺らした。

 

イズモ「……勝った」

 

操縦席へ身体を預ける。

 

レム『イズモ君、大丈夫ですか?』

 

イズモ「大丈夫じゃない」

 

レム『イズモ君!』

 

イズモ「でも」

 

白鯨の亡骸を見る。

 

その向こう。

 

ロズワール領。

 

そして。

 

魔女教。

 

イズモ「まだ終わってない」

 

目を閉じる。

 

一度だけ。

 

深く息を吸う。

 

イズモ「次」

 

目を開く。

 

イズモ「魔女教だ」

 

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