王都へ戻る道すがら、イズモは不安を拭えずに空を見上げていた。
イズモ「レム、どうしてるかな。
無事に着いてるかな」
エミリア「レムって、だれ?」
その一言で、胸の奥が冷たく沈んだ。
イズモ「……くそ」
エミリア「どうしたの?」
イズモ「間違いない。
敵の仕業だ」
王都に足を踏み入れた瞬間、異変は誰の目にも明らかだった。
通りには折り重なる死体。
血と絶望の匂いが街全体を覆っている。
イズモ「……レムは……いた」
倒れ伏した彼女の体を抱き起こし、必死に首元に指を当てる。
イズモ「脈は……ある」
安堵と同時に、強烈な怒りが込み上げる。
イズモ「クリュシュ?」
近くにいた騎士の姿を見つけ、声をかける。
クリュシュ「あなたは?」
その瞳には、何の記憶も映っていなかった。
イズモ「記憶喪失か」
イズモ「いや……記憶を消されて、精神を壊された状態か」
イズモ「魔女教なら、やりかねない」
ふと気づくと、視界が滲んでいた。
イズモ「……待って。
なんで、涙が出る」
エミリア「大丈夫?」
イズモ「俺、人のために……泣けたんだな」
翌日。
イズモ「ロズワールに援護してもらわないとな」
クリュシュ「では、また今度」
最低限の処置を施し、レムを固定してvtolでロズワール邸へ向かう。
屋敷の前には、見覚えのあるが本来いないはずの人物が立っていた。
イズモ「なるほど。
パラドックスを埋めるために呼び戻されたか」
フレデリカ「フレデリカと申します。
よろしくお願いします」
カエデ「敵ではないですね」
イズモ「警戒ありがとう」
屋敷内で事情を説明すると、フレデリカは静かに頷いた。
フレデリカ「なるほど。
魔女教が彼女の存在意義そのものを消したため、抜け殻のような状態に」
イズモ「この芸当ができる連中は、他に知らない」
イズモ「フレデリカ。
聖域って場所、分かるか?」
フレデリカ「郊外にありますが、あまりおすすめはできません」
フレデリカ「ガーフィールという人物を訪ねてください」
フレデリカ「その後は地竜が導いてくれます」
森を進んでいると、突如として視界が歪み、空間が跳ねた。
目の前に現れたのは、小学生ほどの年齢のエルフの少女。
イズモ「君は……?」
カエデ「イズモ、やばいです」
次の瞬間、再びワープ。
今度は成人した女性が立っていた。
女性「久しぶりに人間と話すから、少し高ぶってしまったみたいね。
驚かせてごめんなさい」
女性「私はエキドナ。
強欲の魔女って言った方が分かりやすいかな?」
イズモ「お前が元凶か。
……創造ができない」
エキドナ「そんなに警戒されると、さすがに傷つくわ」
イズモ「お前がトップなら、魔女教をどうにかしろ」
イズモ「まあ、やらなくても魔女は皆殺しにするが」
イズモ「ここは虚数空間だな。
帰るには波動砲か、エヴァの暴走か、創造主のお前にキスすればいいのか」
エキドナ「待ちなさい。
私の知識を――」
イズモ「間に合ってる」
イズモ「暇なら、こっちに空間作ってやる。
また来るから」
エキドナ「分かった。
では、ここでのことは他言無用よ」
イズモ「多分、パラレルワールドで使う可能性はあるが」
エキドナ「私が分かるのは、この世界だけだもの。
それなら構わないわ」
イズモ「了解」
エキドナ「それと、お土産よ。
試練の参加券」
イズモ「ありがと」
元の空間へ戻ると、何かが襲いかかってきた。
だが関係者だと分かると、なぜか深々と謝罪される。
そのまま聖域へ到着。
ラム「どこのイズモか知りませんが、遅すぎる到着で」
イズモ「悪かったな。
王都で用があってさ」
エミリア「立ち話もなんだし、どこかで話しましょ」
ラム「ええ。
こちらです」
ロズワール「エミリア様にイズモ君。
ずいぶん久しぶりの再会だねー」
イズモ「まず、クリュシュとの同盟は成立した。
良かったな」
ロズワール「君は本当に、待望の拾い物だーよ」
イズモ「そうかい」
ロズワール「あ、そうそう。
僕たち、ここで軟禁状態なんだーよ」
イズモ「結界か」
ロズワール「しかも、エミリア様じゃないと解除できない仕様だーね」
イズモ「なら、汎用性の高い兵器を作る」
対人用マスティマを即席で構築する。
試練の場所へ向かうが、エミリアが突如姿を消す。
慌てて追いかけた先で、倒れている彼女を見つけた瞬間、イズモの意識も闇に沈んだ。
目を覚ますと、そこにいたのはクデュックだった。