異世界介入ログ:最上イズモ   作:最上 イズモ

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久しぶりリゼロ更新します



奪われた名前、残された命

王都へ戻る街道。

 

竜車の窓から流れる景色を眺めながら、イズモは何度目か分からない確認を繰り返していた。

 

白鯨。

 

魔女教。

 

ペテルギウス。

 

どれも倒した。

 

村人も避難させた。

 

エミリアも無事。

 

今回は、前回とは違う。

 

そう思いたい。

 

それでも。

 

胸の奥に残った違和感だけが消えなかった。

 

イズモ「……レム、どうしてるかな」

 

エミリア「?」

 

イズモ「別動隊で王都に向かっただろ」

 

窓の外を見る。

 

イズモ「無事に着いてるかな」

 

エミリア「レムって……誰?」

 

イズモ「……」

 

音が消えた。

 

車輪が地面を叩く音も。

 

風も。

 

周囲の会話も。

 

一瞬だけ、何も聞こえなくなる。

 

イズモ「……何?」

 

エミリア「だから、レムって誰のこと?」

 

冗談ではない。

 

エミリアの表情には、本当に何の心当たりもない。

 

イズモ「青い髪の」

 

エミリア「?」

 

イズモ「ラムの妹」

 

エミリア「ラムに妹なんていた?」

 

イズモ「……くそ」

 

胸の奥が、一気に冷えた。

 

前回とは違う。

 

だが。

 

何かが起きた。

 

エミリア「イズモ?」

 

イズモ「間違いない」

 

端末を開く。

 

通信。

 

レム。

 

応答なし。

 

位置情報。

 

消えている。

 

過去ログ。

 

存在していた痕跡まで、いくつか欠けている。

 

イズモ「敵の仕業だ」

 

エミリア「敵?」

 

イズモ「魔女教」

 

拳を握る。

 

イズモ「まだ終わってなかった」

 

 

王都へ入った瞬間。

 

異変は誰にでも分かった。

 

イズモ「……」

 

道の中央。

 

倒れた人。

 

馬車。

 

騎士。

 

折れた武器。

 

血。

 

まだ乾いていない。

 

エミリア「これは……」

 

イズモ「止めろ!」

 

竜車が停止するより先に飛び降りた。

 

走る。

 

生命反応。

 

ある。

 

ない。

 

弱い。

 

イズモ「レム!」

 

視界の端。

 

青。

 

イズモ「いた!」

 

倒れている。

 

駆け寄る。

 

イズモ「レム!」

 

返事はない。

 

肩を抱き起こす。

 

呼吸。

 

浅い。

 

首元。

 

指を当てる。

 

イズモ「……」

 

一拍。

 

イズモ「脈はある」

 

息が漏れた。

 

生きている。

 

だが。

 

イズモ「レム」

 

反応なし。

 

目を開かない。

 

外傷だけでは説明できない。

 

イズモ「存在を……消された?」

 

エミリア「その子がレム?」

 

イズモ「ああ」

 

エミリア「でも私、本当に……」

 

イズモ「分かってる」

 

責める意味はない。

 

エミリアが忘れたのではない。

 

忘れさせられた。

 

周囲を見る。

 

少し離れた場所。

 

鎧を着た女性が座り込んでいる。

 

イズモ「クリュシュ?」

 

女性が顔を上げる。

 

クリュシュ「……」

 

その目。

 

先日までの鋭さがない。

 

クリュシュ「あなたは?」

 

イズモ「……」

 

今度は。

 

本人自身が失われている。

 

イズモ「最上イズモ」

 

クリュシュ「申し訳ない」

 

困惑。

 

クリュシュ「記憶がないようなのだ」

 

イズモ「記憶喪失……」

 

だが。

 

レムとは違う。

 

レムは、周囲から存在そのものを忘れられている。

 

クリュシュは本人の記憶だけが消えている。

 

イズモ「いや」

 

周囲の状況を見る。

 

イズモ「記憶を食われた……?」

 

エミリア「食われた?」

 

イズモ「表現は分からない」

 

イズモ「でも、精神か記憶へ直接干渉した奴がいる」

 

視線が鋭くなる。

 

イズモ「こんなことする連中、魔女教以外に心当たりない」

 

レムを見る。

 

何度呼んでも。

 

反応はない。

 

そして。

 

気づいた。

 

視界がぼやけている。

 

イズモ「……?」

 

目元へ触れる。

 

濡れている。

 

イズモ「……待って」

 

一滴。

 

レムの頬へ落ちる。

 

イズモ「なんで……」

 

エミリア「イズモ?」

 

イズモ「涙……?」

 

自分でも理解できなかった。

 

悲しい。

 

怖い。

 

腹が立つ。

 

それは分かる。

 

だが。

 

今まで。

 

戦場で仲間を失っても。

 

誰かが倒れても。

 

泣くことだけは、ほとんどなかった。

 

イズモ「俺……」

 

声が震える。

 

イズモ「人のために泣けたんだな」

 

エミリアは何も言わなかった。

 

ただ。

 

イズモの肩へ、静かに手を置いた。

 

 

翌日。

 

王都。

 

イズモ「最低限、状態は安定した」

 

生命維持装置。

 

レムを固定する。

 

意識は戻らない。

 

それでも。

 

生きている。

 

クリュシュも治療を続けることになった。

 

イズモ「また来る」

 

クリュシュ「……ああ」

 

まだイズモのことは分からない。

 

それでも、クリュシュは小さく頭を下げる。

 

クリュシュ「では、また今度」

 

イズモ「うん」

 

外へ出る。

 

イズモ「次はロズワールだ」

 

エミリア「何か知ってると思う?」

 

イズモ「魔法絡みなら、俺より詳しい」

 

イズモ「援護も欲しい」

 

VTOLへレムを収容。

 

イズモ「ロズワール邸に戻る」

 

 

屋敷の前。

 

着陸。

 

ハッチを開ける。

 

イズモ「……?」

 

見覚えのない女性が立っていた。

 

長い金髪。

 

メイド服。

 

だが。

 

イズモには。

 

妙な既視感があった。

 

イズモ「……本来ここにいた人?」

 

女性「?」

 

イズモ「いや」

 

記憶を辿る。

 

自分がこの世界へ来た時。

 

屋敷にいたのは。

 

レム。

 

ラム。

 

それだけ。

 

だが。

 

レムの存在が世界から抜け落ちたことで。

 

空いた役割を埋めるために。

 

別の人物が戻ってきた?

 

イズモ「なるほど」

 

女性「何がでしょう?」

 

イズモ「パラドックスを埋めるために呼び戻されたか」

 

女性「……?」

 

カエデ「敵対反応ありません」

 

イズモ「ありがとう」

 

女性は丁寧に頭を下げる。

 

フレデリカ「フレデリカ・バウマンと申します」

 

イズモ「最上イズモ」

 

フレデリカ「存じております」

 

イズモ「俺は知らない」

 

フレデリカ「でしょうね」

 

イズモ「なんか複雑だな」

 

 

屋敷内。

 

レムを寝室へ移す。

 

フレデリカにも事情を説明した。

 

エミリアからレムの記憶が消えていること。

 

レム自身が目を覚まさないこと。

 

クリュシュの記憶も失われていること。

 

フレデリカ「なるほど……」

 

眠るレムを見る。

 

フレデリカ「魔女教が、彼女の存在意義そのものへ干渉した結果」

 

フレデリカ「世界がその欠落を補うため、私が呼び戻された……と?」

 

イズモ「仮説だけどね」

 

フレデリカ「随分と突飛ですわ」

 

イズモ「異世界転移してる俺が言うのもなんだけど、俺もそう思う」

 

フレデリカ「ですが」

 

レムへ視線を戻す。

 

フレデリカ「今の状況を説明する仮説としては、理解できます」

 

イズモ「この芸当できる連中、他に知らないんだよな」

 

少し考える。

 

イズモ「フレデリカ」

 

フレデリカ「はい」

 

イズモ「聖域って場所、知ってる?」

 

フレデリカの表情がわずかに変わった。

 

フレデリカ「……どこでその名を?」

 

イズモ「ロズワールが行きそうな場所を洗った」

 

半分は推測。

 

半分は、前回の時間から得た違和感。

 

フレデリカ「郊外にございます」

 

イズモ「案内できる?」

 

フレデリカ「途中までなら」

 

一拍。

 

フレデリカ「あまりおすすめはいたしません」

 

イズモ「なんで?」

 

フレデリカ「閉鎖的な場所です」

 

イズモ「なるほど」

 

フレデリカ「ガーフィールという人物を訪ねてください」

 

イズモ「ガーフィール」

 

フレデリカ「その先は、地竜が導いてくれます」

 

イズモ「了解」

 

 

森。

 

地竜。

 

イズモ。

 

エミリア。

 

カエデ。

 

木々の間を進む。

 

イズモ「この辺、衛星でも見づらいな」

 

カエデ「空間異常があります」

 

イズモ「やっぱり?」

 

カエデ「地形データが一致しません」

 

イズモ「結界系かな」

 

その瞬間。

 

景色が揺れた。

 

イズモ「っ」

 

重力。

 

方向。

 

距離。

 

全部がおかしくなる。

 

イズモ「空間転移――」

 

次の瞬間。

 

森が消えた。

 

 

目の前。

 

小柄な少女。

 

銀色に近い髪。

 

長い耳。

 

イズモ「……」

 

小学生ほどに見える。

 

少女はこちらを見る。

 

イズモ「君は……?」

 

カエデ「イズモ」

 

声が硬い。

 

カエデ「やばいです」

 

イズモ「分かる」

 

空間がおかしい。

 

現実の物理情報と。

 

目の前の景色が一致しない。

 

少女へ近づこうとした。

 

その瞬間。

 

再び。

 

世界が跳ねた。

 

 

白。

 

空。

 

地面。

 

境界が曖昧な空間。

 

イズモ「……」

 

先ほどの少女はいない。

 

代わりに。

 

成人した女性。

 

白い髪。

 

黒い瞳。

 

白と黒だけで構成されたような姿。

 

女性「驚かせてごめんなさい」

 

イズモ「……」

 

女性「久しぶりに人間と話すものだから」

 

柔らかく笑う。

 

女性「少し高ぶってしまったみたいね」

 

イズモ「誰?」

 

女性「私はエキドナ」

 

イズモ「……」

 

知っている単語。

 

女性「強欲の魔女」

 

笑みを深くする。

 

エキドナ「そう言った方が分かりやすいかな?」

 

イズモ「魔女」

 

即座に距離を取る。

 

掌。

 

創造――

 

何も起きない。

 

イズモ「……?」

 

もう一度。

 

反応なし。

 

イズモ「創造が使えない」

 

エキドナ「ここでは、少し制限させてもらっているよ」

 

イズモ「お前が元凶か」

 

エキドナ「いきなり随分な言われようだね」

 

イズモ「魔女教」

 

エキドナ「?」

 

イズモ「あいつら、魔女を崇拝してる」

 

イズモ「お前がトップなら何とかしろ」

 

エキドナ「待って」

 

イズモ「レムもクリュシュもやられた」

 

エキドナ「僕は魔女教の――」

 

イズモ「まあ」

 

目を細める。

 

イズモ「お前らが敵ならまとめて潰すけど」

 

エキドナ「会話というものをしないかい?」

 

イズモ「してる」

 

エキドナ「一方的に宣戦布告されているように感じるけど」

 

イズモ「誤差」

 

エキドナ「誤差かなぁ」

 

周囲を見る。

 

空間。

 

物質的な反応がほとんどない。

 

イズモ「ここ」

 

足元を確かめる。

 

イズモ「虚数空間に近いな」

 

エキドナ「虚数?」

 

イズモ「現実空間の外側みたいなもん」

 

イズモ「で」

 

指を折る。

 

イズモ「帰る方法」

 

エキドナ「話を聞く気になった?」

 

イズモ「波動砲」

 

エキドナ「?」

 

イズモ「エヴァ暴走」

 

エキドナ「??」

 

イズモ「それか」

 

エキドナを見る。

 

イズモ「この空間の創造主っぽいお前にキス」

 

エキドナ「待ちなさい」

 

イズモ「どれ?」

 

エキドナ「どれでもない」

 

イズモ「そっか」

 

エキドナ「君、もう少し未知への恐怖というものはないのかな」

 

イズモ「あるよ」

 

エキドナ「全くそう見えない」

 

イズモ「慣れた」

 

エキドナ「……」

 

エキドナが小さくため息をつく。

 

エキドナ「まあいい」

 

椅子。

 

テーブル。

 

茶。

 

何もなかった場所へ突然現れる。

 

エキドナ「僕には膨大な知識がある」

 

イズモ「うん」

 

エキドナ「この世界について知りたいなら――」

 

イズモ「間に合ってる」

 

エキドナ「……」

 

イズモ「AIあるし」

 

エキドナ「僕の知識を断った人は初めてだよ」

 

イズモ「必要になったら聞く」

 

エキドナ「欲がないね」

 

イズモ「欲しいものは自分で調べる方が楽しい」

 

エキドナ「なるほど」

 

少し。

 

興味深そうに笑う。

 

イズモ「暇なんだろ?」

 

エキドナ「まあね」

 

イズモ「なら今度、話せる空間くらい作ってやるよ」

 

エキドナ「君が?」

 

イズモ「俺の世界なら」

 

エキドナ「面白い」

 

イズモ「また来る」

 

エキドナ「では、一つ条件を」

 

イズモ「何?」

 

エキドナ「ここで僕と会ったことは、他言無用」

 

イズモ「理由は?」

 

エキドナ「面倒だから」

 

イズモ「分かる」

 

エキドナ「随分早く納得したね」

 

イズモ「俺も秘密多いし」

 

エキドナ「なら契約成立だ」

 

イズモ「ただ」

 

エキドナ「?」

 

イズモ「パラレルワールドで必要になったら情報使うかも」

 

エキドナ「僕に分かるのは、この世界のことだけだ」

 

イズモ「なら問題ない」

 

エキドナ「よろしい」

 

手を伸ばす。

 

光。

 

小さな何かがイズモの中へ入る。

 

イズモ「何した?」

 

エキドナ「お土産」

 

イズモ「お土産?」

 

エキドナ「試練への参加資格」

 

イズモ「試練?」

 

エキドナ「いずれ分かる」

 

イズモ「ありがと」

 

エキドナ「そこも警戒しないんだ」

 

イズモ「害ある?」

 

エキドナ「今のところは」

 

イズモ「じゃあいい」

 

エキドナ「本当に変わっているね、君」

 

世界が白く染まる。

 

 

イズモ「――っ」

 

森。

 

戻った。

 

同時に。

 

巨大な影。

 

イズモ「うおっ!?」

 

反射的に避ける。

 

地面。

 

何かが砕ける。

 

イズモ「敵!?」

 

獣のような男がこちらを睨んでいる。

 

???「てめぇ、何者だ!」

 

イズモ「最上イズモ!」

 

カエデ「攻撃準備」

 

イズモ「待って!」

 

エミリア「イズモ!」

 

こちらへ駆けてくる。

 

獣の男が止まる。

 

エミリア「その人、私たちの仲間!」

 

???「……」

 

イズモ「……」

 

数秒。

 

男が。

 

ものすごく気まずそうな顔をした。

 

???「悪かった」

 

イズモ「謝るの早いな」

 

深々と頭を下げる。

 

イズモ「まあ、こっちも侵入者みたいなもんだからいいけど」

 

どうやら。

 

この男がガーフィールらしい。

 

 

聖域。

 

ようやく到着した頃には。

 

かなり時間が経っていた。

 

ラム「遅い」

 

開口一番。

 

イズモ「ただいま」

 

ラム「どこのイズモか知りませんが、遅すぎる到着ね」

 

イズモ「王都で色々あったんだよ」

 

ラム「言い訳?」

 

イズモ「事実」

 

エミリア「まあまあ」

 

二人の間へ入る。

 

エミリア「立ち話もなんだし、どこかで話しましょ」

 

ラム「ええ」

 

視線だけイズモへ向ける。

 

ラム「こちら」

 

イズモ「はいはい」

 

 

簡素な建物。

 

中。

 

ロズワール。

 

イズモ「……」

 

ボロボロ。

 

包帯。

 

イズモ「何したの?」

 

ロズワール「色々あってねぇ」

 

エミリア「ロズワール」

 

ロズワール「エミリア様にイズモ君」

 

少し笑う。

 

ロズワール「ずいぶん久しぶりの再会だーね」

 

イズモ「こっちは白鯨倒して魔女教潰して、王都が襲撃されてた」

 

ロズワール「……」

 

イズモ「まず」

 

座る。

 

イズモ「クリュシュとの同盟は成立した」

 

エミリア「本当?」

 

イズモ「ああ」

 

イズモ「白鯨討伐も共同でやった」

 

ロズワール「それは素晴らしい」

 

イズモ「よかったな」

 

ロズワールの目が細くなる。

 

ロズワール「君は本当に」

 

楽しそうに。

 

ロズワール「待望の拾い物だーよ」

 

イズモ「そうかい」

 

褒められているのか。

 

利用価値を測られているのか。

 

多分両方。

 

ロズワール「ああ、そうそう」

 

イズモ「?」

 

ロズワール「僕たち」

 

笑顔のまま。

 

ロズワール「ここから出られないんだーよ」

 

イズモ「……は?」

 

エミリア「結界があるの」

 

イズモ「軟禁?」

 

ロズワール「そんなところかなぁ」

 

イズモ「解除は?」

 

ロズワール「エミリア様」

 

イズモ「だけ?」

 

ロズワール「だけ」

 

イズモ「面倒だな」

 

エミリア「試練を突破する必要があるみたい」

 

イズモ「なるほど」

 

考える。

 

イズモ「じゃあ」

 

手を上げる。

 

光。

 

ラム「何を作る気?」

 

イズモ「汎用性高いやつ」

 

機械。

 

人型。

 

装甲。

 

対人用マスティマ。

 

イズモ「警備と非常時対応」

 

ラム「また物騒なものを」

 

イズモ「今回は先に用意する」

 

前回。

 

備えが足りなかった。

 

その結果を知っている。

 

もう。

 

後手には回りたくない。

 

 

夜。

 

試練が行われるという遺跡。

 

エミリアと並んで進む。

 

イズモ「大丈夫?」

 

エミリア「うん」

 

イズモ「無理なら戻る」

 

エミリア「……ありがとう」

 

内部。

 

青白い光。

 

静寂。

 

エミリアが一歩前へ進む。

 

その瞬間。

 

イズモ「エミリア?」

 

姿が消えた。

 

イズモ「おい!」

 

走る。

 

イズモ「エミリア!」

 

通路。

 

奥。

 

光。

 

その先。

 

倒れている。

 

イズモ「エミリア!」

 

駆け寄る。

 

呼吸。

 

ある。

 

イズモ「何が――」

 

触れた瞬間。

 

頭の奥。

 

強い衝撃。

 

イズモ「っ……」

 

世界が暗転した。

 

 

音。

 

機械。

 

空調。

 

電子機器。

 

イズモ「……」

 

目を開く。

 

白い天井。

 

見覚えがある。

 

ありすぎる。

 

イズモ「……は?」

 

身体を起こす。

 

モニター。

 

研究設備。

 

自動ドア。

 

窓の向こう。

 

都市。

 

イズモ「ここ……」

 

聖域ではない。

 

ルグニカでもない。

 

イズモ「クデュック……?」

 

戻ってきた。

 

自分の世界へ。

 

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