ハイスクールフリート~鋼鉄の鳥~   作:疾風海軍陸戦隊

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密封指示書 パート4

山口提督と別れた幸子。

一方、その頃、銭湯の休憩室では西崎と立石が将棋をしていた。

 

「よーし、打っちゃうよぉ~取っちゃうよぉ~ソレ」

 

「うぅ~うぃ~」

 

大事な駒が取られ、立石は次の手を打つ。

 

「おぉっと、また取れちゃうねぇ」

 

「うぃ~」

 

折角打った手も西崎には通じず、かえって被害が大きくなる立石。

 

「タマの仲間はどんどん減って行く~」

 

立石が西崎に将棋で勝つのはまだまだ先の様だった。

 

 

 

ところ変わって横須賀市内のゲーセンでは、水雷科の姫路と松永がボーリングをして、砲術科の小笠原、武田、日置の三人はダーツをやっていた。

 

「崩れないねりっちゃん!」

 

ポジションを崩さない理都子に果代子は、驚く。

 

「此処のレンコンリションは、もう把握したからね!」

 

既に理都子は、此処のレンコンリションを把握していたので、何処から行くか分かっていた。

 

「う~」

 

果代子も負けていられず、ストライクを出す。

 

「やるね!」

 

「でしょう!」

 

流石は、水雷員だ。

それを隣で見ていた晴風砲術員の光、美千留、順子の3人。

 

「流石水雷員!・・・恐ろしい角度で命中させるね・・・」

 

「ドキュンと当てたけど、普通ありえないよあれ?」

 

果代子と理都子の腕に2人は、驚きながらゲームを続ける。

 

「次、私の番ね!」

 

矢は、全弾同じ場所に命中する。

 

「やっぱダーツでは、光ちゃんには、勝てないな・・・」

 

姫路と松永はストライクを連発しており、ダーツをしている砲術科の三人で小笠原が一番の成績でビリは日置だった。

 

「次、ビリーヤードやろうよ!・・・台あるみたいだし!」

 

それに対して、美千留がビリーヤードを進めるが

 

「此処輪投げないの?」

 

順子は、得意な輪投げは無いのか問う。

 

「無いよね普通・・・」

 

「有るとこ教えて欲しいわ!」

 

流石にボウリング場に輪投げは無いだろう。

 

「う~輪投げが無いんじゃ、丘にいるより、艦の方が楽しいかも!」

 

輪投げが無い事に順子は嘆き、晴風の居た時が良かったと言い張る。

 

「私も艦の方が良いよ・・・大変だったけど、面白かったし!」

 

それに光も同意する。

 

「早く治らないかな・・・晴風!」

 

「直せれば良いんだけどね・・・」

 

三人は深刻そうな表情を浮かべていると

 

「失礼しまーす」

 

幸子達がやって来た。

 

「あっ、一緒にダーツやる?」

 

小笠原は幸子達にダーツをやらないかと誘う。

 

「ビリヤードでもいいよ」

 

「いや~みんなでやるならボーリングでしょう」

 

「いやいや、ここはやっぱりドキュンと輪投げで‥‥」

 

「「「「ないから」」」」

 

ゲームセンに輪投げが無い事に対して日置以外の砲術科と水雷科の全員がツッコム。

 

「いえ、任務が残っているので‥‥ですが、近いうちに是非、一緒に遊びたいです。できればクラスのみんなで」

 

幸子はまだ封筒配りが残っているので、遊ぶのはまた今度と言う。

 

「クラス皆って大げさな‥‥」

 

「ドキュンと集まるかな?」

 

陸ではやはり船と違い、集まる機会が少ない晴風のクラスメイト。

現に何人かは固まっているが、基本バラバラになっている。

幸子はそんな現状に恒例の一人芝居をして一人項垂れた。

 

「大丈夫?ココちゃん」

 

そんな幸子を慧は慰める。

 

「なんかただ事じゃないってのは伝わって来たよ」

 

「皆で集まれるのは今の内だけかもしれないので‥‥」

 

「えっ?それって私達船がないから‥‥」

 

「じゃあ、私達のクラス‥‥」

 

幸子の呟きを聞いて今まで幸子と行動を共にして来た鶫と慧もここでやっと自分達のクラスが解体されるかもしれない可能性に気づいた。

 

「ま、まだ、決まった訳ではありませんから、御内密に‥‥」

 

確かにもえかからも古庄からも真雪からも直接、晴風クラスが解散になるとは言われていない。

あくまでも幸子の予想の範疇である。しかし、この場にいる皆に与える不安は大きかった。

 

「あっ、そう言えばさっき、メイちゃんとタマちゃんの居場所を掴んだんだけど、ちょっと離れているんだよね」

 

鶫が西崎と立石の居場所を幸子に教える。

 

「じゃあ、私達でメイちゃんとタマちゃんに届けておくよ」

 

慧が幸子に代わって二人に封筒を渡しておくと伝え、西崎と立石の分の封筒を慧に渡す。

 

「航海科はこの後、ドブ板通りのレストランでご飯だって」

 

航海科のメンバーの居場所が分かったので、幸子は其方へと向かう。

幸子が去り、

 

 

「やばいよ、クラス無くなるの?」

 

 

砲術科と水雷科のメンバー+鶫と慧がクラス解散の危機かもと言う事実にあれやこれや言っていると、

 

「あれ?皆お喋りタイム?」

 

そこへ、先程麻雀をしてきた機関科のメンバーがやってきた。

駿河は額を手で抑えていた。あの後、また罰ゲームを受けた様子。

 

「あれ?機関科の‥‥」

 

「麻雀していたんじゃ‥‥?」

 

「留奈が負けてばっかで、おでこ痛くなったから他のコトをして遊ぼうって」

 

若狭がゲーセン来た訳を話す。

 

やはり、瑠奈はあの後、連戦連敗した様だ。

 

「皆さん、仲がよろしい様で何より。で?お揃いで何のお話ですか?」

 

広田が皆で何の話をしているのかを尋ねる

「いや、それがね、此処だけの話なんだけど・・・」

 

7人は不安そうな顔でクラスが解散になるかもしれない噂を機関科の4人に話した。

 

その頃、銭湯の休憩室では、西崎と立石がまだ将棋をしていた。

 

立石の手には将棋の本があった。

 

恐らくあまりにも弱い立石にハンデとして西崎がOKを出したのだろう。

 

序盤は将棋の本のおかげで勝っていた立石であったが、僅かな隙を西崎に見破られて

 

「ココが急所なんだなぁ、これでタマの船はバラバラだ~~」

 

「う、うぃ~」

 

ハンデを貰っても立石は不利な立場となり、志摩は目を回すのであった。

 

 

漁港では麻侖と黒木が漁船のエンジンの修理をしていた。

 

「いい自主研修ね、コレ」

 

「だろう?勘も鈍らねぇしな」

 

機関科のメンバーが言っていた研修とは学校側が提案した研修ではなく、麻侖と黒木が自主的に行っているボランティアで漁船のエンジンの点検や修理、整備をするものであった。

研修と言われ幸子達は学校側が提案し麻侖と黒木がそれに参加しているのではないかと勘違いしているだけだった。

しかし、当の麻侖と黒木は勘違いされていることなど知る由もなかった。

 

「マロンと二人で何かをするのって結構久しぶりね」

 

晴風に居た時は当然、黒木は麻侖と一緒に居たが、二人っきりではなく、他の機関科のメンバーもいたので、二人っきりと言うカテゴリーからは外れる。

 

「ああ、たまにはいいもんだろう?」

 

そんな漁船のエンジンの修理をしていた二人に声をかける人物が居た。

 

「やっぱりいい腕しているね」

 

その声に反応して麻侖と黒木が桟橋を見ると、そこには横須賀女子の制服の上に防水コートを羽織った小柄な女子生徒が一人立っていた。

 

「なんでぇ、あんたは?」

 

怪訝そうな表情をする麻侖。

 

「明石艦長、杉本珊瑚‥‥妙な噂を耳に挟んだんで会いに来た」

 

漁港で麻侖と黒木が明石の艦長、杉本と邂逅を果たしている頃、みかんと杵﨑姉妹がバイト兼修業をしている和菓子屋でも‥‥

 

「いらっしゃいませ」

 

「貴女は確か‥‥」

 

和菓子屋の自動ドアを潜り入って来たのは横須賀女子の制服を身に纏う一人の女生徒で、みかんと杵﨑姉妹はその女生徒に身に覚えがあった。

 

「話があるんだけど、いいかしら?」

 

優衣も珊瑚と同様、美甘達に用事があった

 

 

 

辺りが夕焼けに包まれ始めた横須賀の町を幸子は一人トボトボ歩いていた。

しかし、その顔色は優れず不安に包まれている。

 

「まだ‥‥決まった訳じゃ‥‥あっ‥‥」

 

幸子が航海科もメンバーがあつまるレストランに向かっている最中、前方からセグウェイミニに乗った晴風衛生長の美波らしき人物が見えた

 

「あっ美波さん!」

 

幸子は声をかけるが、美波は気づかないのか町の角を曲がる

 

「あ!待ってください!!」

 

そう言い追いかける幸子。そして角を曲がり

 

「待ってください!美波さん!!」

 

と、声をかけると、セグウェイミニを止め彼女は振り返る

 

「っ!?」

 

その顔を見たとき、幸子は驚いた。確かに顔立ちは美波にそっくりであったが、よく見ると髪は白髪のような銀髪で、顔は暗くまるで死神か亡霊でのような感じの青白い表情をしていた

 

「・・・・・なにか?御用ですかな?学生さん?」

 

まるで氷のようにまるで喉元に刃を突き付けられたかのような冷たし声が彼女の耳に響いた。何よりその瞳の奥は闇のように暗く吸い込まれそうな感じがした

 

「す、すみません!人違いでした!!」

 

と、慌てて幸子は逃げだすように去る。そしてその姿を見た少女は冷たく微笑むのであった

 

 

 

「はぁ…はぁ‥‥怖かった・・・・・」

 

息を切らし、さっきの少女を思いだす幸子。理由は分からないが怖かった。あんな恐ろしい目を見たのは初めてだったからだ

すると・・・・

 

「…何をしている?書記長?」

 

「え?」

 

誰かに声を掛けられ顔を上げるとそこには、セグウェイミニに乗って不思議そうに首をかしげる美波だった

 

「えっと・・・・美波さんですよね?」

 

「そうだ・・・・・幽霊でも見たような顔だぞ?」

 

「ああ・・・さっき・・・あそこで・・・・」

 

「ん?」

 

「いいえ。なんでもありません。それよりも・・・・」

 

幸子は美波に封筒を手渡す。

 

「ん?」

 

「学校からの期日付の密封指示書です」

 

「感謝する」

 

美波が封筒を受け取った瞬間に彼女のスマホが鳴り出す。

 

「もしもし‥‥分かった」

 

「あの?」

 

「研究室に戻る。衣帯不解‥‥」

 

幸子が声をかける間もなく美波は大学へと戻っていく。

研究が忙しい様子で此処には夕食でも食べに来たのだろう。幸子は美波が去り際に残した『衣帯不解』の言葉の意味を調べた。

 

タブレットには

 

「衣服を着替える事もせず、不眠不休で仕事に打ち込む事・・・」

 

衣帯不解‥‥衣服を着替える事もせず、ある事に熱中する事。

不眠不休で仕事に打ち込む事。

「衣帯」は着物の帯の意。

 

と表記されていた。

 

 

 

一方、佐野天然温泉湯処「のぼり雲」

休憩室では、まだ芽衣と志摩が将棋を続けていた。

 

「いよぉし・・・此処は一気に広げて行こう!!」

 

芽衣は、志摩に止めを刺そうと志摩の駒を囲む。

 

「うぃ!!!!!!」

 

志摩にはもう打つ手がない。

 

「一度火が着くと、ぅあ!っと言う間にこうなるんだよ~♪」

 

芽衣の腕に志摩は今日一日。将棋で惨敗してしまうのであった

 

 

 

航海科のメンバーがいるレストラン「YOKOSUKA SHELL」では、まるでお通夜のような暗い雰囲気を出していた。

 

「「「「‥‥」」」」

 

テーブルに置かれた横須賀名物の横須賀海軍カレーをメンバー達は手をつけずにただジッと頷いていた。

そこに幸子が来店した。

 

「あの‥‥失礼します~」

 

幸子も航海科のメンバーの暗い雰囲気に声を掛け辛かったのだが、いつまでも黙って立っている訳にはいかないので恐る恐る声を掛ける。

幸子の声に反応して航海科のメンバーが一斉に幸子へと視線を向ける。

 

「ココちゃん‥‥」

 

幸子の姿を見て鈴と内田が涙目になる。そして、一斉に幸子に駈け寄る。

 

「「うわぁぁぁん!!」」

 

「ど、どうしたんですか?皆さん!?」

 

突然泣きつかれて狼狽える幸子。

 

「私達、皆バラバラになっちゃうんだって~」

 

「お、落ち着いてください。公式にそんな発表は‥‥」

 

「でも、見たぞな。さっき和菓子屋でみかんちゃんと杵﨑姉妹が間宮の艦長にスカウトされていたぞな」

 

「えっ?」

 

聡子の言葉を聞いて幸子も驚く。

 

「マロンちゃんとクロちゃんも明石の艦長がヘッドハントしに来たって聞いたよ」

 

「ええっ!?」

 

内田の言葉に更に驚く幸子。

美甘と杵﨑姉妹、麻侖と黒木が他艦の艦長にお誘いを受けたなんて幸子には寝耳に水だった。

 

「きっと私達の航海長も比叡あたりから引き抜きに来るよ」

 

炊飯員、機関長と機関助手が声を掛けられたのだから航海長もきっと他艦からのお誘いが来るのではないかと予想する山下。

 

「いやだ!!皆と離れたくないよぉ~!!艦長は、岬さんがいいよ!うわぁーん・・・!!!!」

 

鈴は晴風のクラスメイト達と離れるのを泣いて嫌がった。

卒業すればそれぞれの進路はバラバラになるがせめて高校の時だけはこうして仲良くなったクラスメイト達と一緒に過ごしたい。

それはクラスメイト達全員の総意だった。

 

「ココちゃん、マー君は!?マー君は今どこにいるの!?」

 

「そうだよ、マー君なら何か知っているかもしれないし、知恵をかしてくれるかもしれないじゃん」

 

鈴と山下が守の行方を幸子に尋ねる。

 

「それが、皆さんもマー君の行方を捜しているみたいなんですけど、見つからなくて‥‥」

 

幸子はその後、山口提督の情報をもとにブルーマーメイド本部を尋ねたのだが一歩遅かったのか、彼は外出していて結局会えずじまいだった

 

「うぅ~」

 

「マー君、何処に行ったぞな‥‥」

 

クラスがバラバラになるかもしれないと言う不安と力になってくれるかもしれない守が行方不明と言う事態に晴風のクラスメイト達の不安は益々募るばかりだった。

 

 

 

 

暗い面持ちで寮に戻る幸子。

彼女は寮の手前で自分の名前が書かれた封筒を見る。

 

「これは‥‥転属指示書と言う訳ですか‥‥」

 

此処までの話を総合するとクラスの解散は既に決定されており、有能だと思われる人材は他艦の艦長らが直接赴いてヘッドハンティングしてクラスの能力を高めようとしている。

 

幸子にはそう思えて仕方がなかった。

 

いずれは自分の下にも他艦の者がヘッドハンティングに来るのだろうか?

 

それとも封筒の中身には既に今度転属するクラスが既に表記されているのだろうか?

 

沈んだ気持ちで寮に入る幸子。

 

ロビーではミーナが任侠物のDVDを見ていた。

 

「‥‥」

 

「ん?おう、帰りが遅かったから視聴会先に始めていたぞ」

 

幸子に気づいたミーナが片手をあげて声をかける。

 

「ミー‥ちゃん‥‥」

 

ミーナの姿を見て、幸子はこれまで我慢していたモノが一気にあふれ出し、ミーナに抱き付いて声を上げて泣いた。

 

「ココ‥‥」

 

「うちのクラス‥解体‥されるかも‥‥しれないんです‥‥」

 

「噂は本当じゃったか‥‥」

 

「クラスがバラバラに‥‥もう、私の居場所無くなっちゃう‥‥」

 

「‥‥もし、そうなったら‥‥お主、わしの学校に留学せんか?」

 

「えっ?」

 

ミーナの提案に暫し呆然とする幸子だった。

 

 

一方・・・・・

 

その頃、横須賀女子海洋高校の校長室では真雪があるところへ電話をかけていた。

 

「‥そうですか‥では予定通りの期日に就航できると‥‥分かりました。ご苦労様です」

 

真雪が受話器を置き、チラッと机の上の書類に目をやる。

そこには『クラス再編成案』と書かれた書類が置いてあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、守は

 

「はぁ・・・・・やっとメルダースやクラーケン少佐の事情聴取と今後についての処分は終わり。あとは…」

 

学校の夜間警備員室で守は山済みになったある計画の書類を見る

 

「ゼロから始めるとはいえ・・・・・やること山済みだな。家に帰れるのいつだろ?」

 

と、ため息をつくのだった

新たに登場してほしい軍艦

  • 航空母艦瑞鶴
  • 航空母艦飛龍
  • 戦艦ビスマルク
  • 戦艦フッド
  • 戦艦キングジョージ5世
  • 駆逐艦リンチェ
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