明乃から密封指示書をクラスメイト全員に手渡す様に頼まれたその日、幸子はやはり以前から噂になっていた晴風クラスの解体は現実のものなのだと確信をした。
美甘と杵﨑姉妹は間宮から、麻侖と黒木は明石からのヘッドハンティングの話がきていた。
航海科のメンバーは鈴も比叡あたりからヘッドハンティングが来るのではないかと言う。
そして自分もついさっき、ミーナからドイツのヴィルヘルムスハーフェン校への留学を勧められた。
『おぬし…わしの学校に留学せんか?』
好きな任侠映画を見ながら幸子はミーナの言葉が頭をよぎっていた
「ドイツに行けばミーちゃんと一緒で‥‥でも・・・折角シロちゃんとも親友になったのに・・・それに岬さんじゃない艦長になるんですよね・・・」
ミーナの言う通りにドイツに留学すればミーナと同じ艦に乗れるが、これまで共にした晴風の生徒達と別れる事になる。
如何すれば良いのか、幸子の心は、迷っていた。
幸子も選択肢を突きつけられた結果になった。
6月10日
横須賀女子海洋学校、正門
翌日、幸子は登校途中にましろと出会い、これまでの事を話す。
「あの指示書でそんな事が?」
幸子から聞いて、指示書にクラス再編の件が記載されている事に驚くましろ。
「シロちゃんは何か聞いていますか?」
「いや、私からは何も‥‥母は家では仕事のことはあまり言わない人だから‥‥」
「じゃあ、マー君は?」
「守か…そういえばこの頃、姉さんに呼び出されることが多いから、この頃私も会っていないんだ」
「そうなんですか・・・・」
守は退院後、真霜に航空機についての資料や講義などで忙しく、家に帰ってなかった。そしてましろも守になかなか会えずじまいだった
「とにかく状況は分かった。艦長に直ぐ報告する!・・・その間にクラス全員を上手く纏めて置いてくれ!」
それに対して、ましろは、自分から明乃に相談すると言って、その間に幸子には、晴風の生徒をまとめるよう命じる。
「了解しました!!」
ましろの命令に素直に了承する幸子。
「ん・・・」
素直に了承する幸子に気が乗らないましろだが、今は、任せるしかなかった
「えっ!?うちのクラスが?」
「はい。どうやら。晴風クラスが解散になるって噂が立っている様なのです」
学校図書室では書類仕事をしている明乃はましろの報告を聞いて驚く
「そんな話は聞いてないけどなぁ・・・」
同じく彼女の書類仕事をしている親友のもえかは、そんな話を聞いてはおらず、冷静な様子。
「もかちゃん何か知っているの?」
「明石や間宮の艦長が晴風クラスの子を欲しがっていたって噂は、耳にしたけど・・・」
もえかは、珊瑚や優衣が麻侖や美甘達をスカウトしていた事を知っていた。
「え・・・!家族がバラバラになるのは嫌だな、唯でさえ、家なき子なのに・・・」
「じゃあミケちゃん、うちに来る?」
そんな明乃にもえかは、武蔵に誘うが
「ん・・・もかちゃんと一緒は、嬉しいけど、私の家は、晴風だから!」
明乃は、あっさり断る。
「フフフ・・・そう言うと思ってた・・・じゃ私もちょっと情報を集めて見るね!」
明乃が断る事は、もえかは、分かっていた。そんな明乃に協力し様ともえかは、スマホを使って情報を集め始める。
「私も皆の所に行かなきゃ!」
明乃も行動しようとするが
「今、納沙さんに、全員の取り纏めを頼んであります・・・なので、艦長はまず始末書の提出を急いでください!」
ましろは、明乃に始末書を先に仕上げるよう言う。
「ええ・・・・!?じゃあ、シロちゃんも手伝ってよ・・・!!」
だが、流石に始末書が終わらない事に明乃は、ましろに救援を頼む。
「はぁ~仕方ありませんね・・・」
明乃の救援にましろは、仕方なく応じる。
「わ~い、ありがとう!!」
ましろの救援もあって、明乃は、スムーズに始末書を仕上げて行く。
一方某所では
「はぁ~~~いつになったら終わるんねんこれ?」
「ぶつぶつ文句言うなよ。俺だって大変なんだから」
「そりゃ、司法取引で無罪放免になって家賃代わりにブルマーで働くのは分かるさかい…でもこれたった二人で作るんじゃ、時間かかりすぎるやないか~。しかもこの資料、明後日までやろ?」
「仕方ないよ。航空屋は俺とお前だけだからな」
守とハルカが大量の書類作成をしていた。内容は航空機についての細かなな資料であった
「てか、あんたの姉さん。飛行機の組織作るて言うてたけど・・・・できるん?」
「可能性は0ではないけど…まったくのゼロから始めるからな・・・・飛行機を作る技術や技術者。整備者、そして肝心の飛行機と飛行機を操縦するパイロットがまったくいないからな…時間はかかるよ」
「そやな・・・・パイロット育成だけでも数年はかかるからな・・・・長い道のりになりそうやな」
「だな・・・・なんとか終わらせよう」
二人は深いため息をつきながら、黙々と書類仕事をする。
「そういや、あんたの姉ちゃんの乗っている『晴風』のクラスが解散になるちゅう噂を小耳に挟んやけど、何か知っとるか?」
「ん?ああ・・・・あの話か・・・多分大丈夫だと思うぞ?」
「ん?どういうことや?」
「それはな・・・・・」
諏訪大神社、諏訪公園
その頃、諏訪大神社の諏訪公園のベンチで幸子は、鶫、慧の3人で、如何やったらクラス解散を阻止できるのかを話し合っていた。
「クラス全員を纏めるなんて・・・如何やったら良いんでしょうか?」
「先ずは、連絡!」
「それだけだと、何か足りなさそうですね・・・」
3人が悩んでいると
「あっ!?」
幸子の視線の先に戦艦三笠の装甲板が目に入った。
「東郷ターンですよ!!・・東郷ターン!!」
『?』
幸子の言う東郷ターンの意味が分からず首をかしげる鶫と慧。
「直進する艦隊に向け、進路を塞いで、頭を抑える為に敵前で大回頭する・・・・」
鶫はスマホを使い東郷ターンとは何なのかを調べる。
東郷ターンとは、かつて守の世界でも行われた東郷平八郎の戦術
別名「丁字戦法」とか呼ばれている戦法だ。
日露戦争の最後の戦いである日本海海戦で日本の連合艦隊がロシアのバルチック艦隊を前にして、司令長官の東郷平八郎は全艦に取舵を指示し、敵に横腹を見せる様に舵をきった。
この時のターンの事を東郷ターンと呼ぶ。
「これに何の関係が?」
鶫が調べ、慧は、東郷ターンとクラス解散阻止と一体何の関係があるのか問うと
「『敵前で進路変更!的になるだけです!!・・・いや、前撃てる砲に少ない方にこの距離では、簡単には、当たらない!!・・・それより、相手の進路を塞ぎ、両方戦に持ち込む!!・・・成程、全艦力合わせって砲撃すれば・・・』」
恒例の幸子の一人芝居が始まる。
それを鶫と慧は冷えた目で見る。
「そう・・・皆が一つになれば、どんな難関でも打ち破れます・・・その為に署名を集めましょう!!」
幸子は、クラス再編を阻止しようと署名活動を思い付く。
「何で署名?」
慧は、何故署名なのか分らなかったが
「全員の一致団結には最適じゃないですか!」
「横須賀市の人にも広く呼び掛けて、晴風存続を学校に訴える・・・一石二大黄土・・・」
鶫は、幸子が何故署名をするのか理解できた。
「いや、そのネタ古すぎるよ!」
「それです!」
「え・・・」
慧は本当に大丈夫なのか?と疑問視していた。
果たして幸子の言う東郷ターンは成功するのであろうか?
新たに登場してほしい軍艦
-
航空母艦瑞鶴
-
航空母艦飛龍
-
戦艦ビスマルク
-
戦艦フッド
-
戦艦キングジョージ5世
-
駆逐艦リンチェ