「ましろお姉ちゃん!早く!戦艦三笠見に行こう!」
「ちょっと待ってよ。マー君。そんなに走ったら危ないよ!」
これは……子供ころの夢なのか?横須賀の三笠公園で二人の少年少女が戦艦三笠に向かって走っているのが見える。少女は紛れもない幼いころの私だ。そしてその先を走る少年は……
「(守……)」
たった一か月の間だったが、私にとって弟のような存在であった守だった。そして幼き頃の私と守は三笠の展望台に行き、海を眺めていると
「あっ!マー君、見て大和だよ!!」
「ほんとだ!すごい!!
幼いころの私と守ははしゃいで横須賀の港に停泊する大和を見て目を輝かせてみていた
「すごいな~あの戦艦大和を撮影用の模型じゃなくて本物をこの目で見られるなんて。大和って太平洋戦争で沖縄に向かう途中で沈んだんだよな~」
「マー君。何を言っているの?太平洋戦争て?」
「え?ごめん。何でもない。何でもないよ姉ちゃん」
この時、私は守の言った意味がよくわからなかった。守は時々変な事を言う子であった。そして守は空を見上げていた
「マー君。なんで空を見ているの?」
「やっぱ。飛行機飛んでいないな……」
「え?なんて言ったの?」
「ああ、ごめん独り言。独り言」
「変なマー君?でも大和はかっこいいね~私もお母さんみたいにブルーマーメイドに入って艦長になりたいよ」
「なれるよ。姉ちゃんならきっと」
「ほんと、マー君?」
「うん。姉ちゃんなら絶対いい艦長さんになるよ。しかも戦艦のね」
「ありがとうマー君。じゃあ私が艦長になったらマー君を私が乗る艦に乗せてあげる!」
「アハハ!ありがとう姉ちゃん。じゃ僕は飛行機のパイロットになるよ」
「飛行機?何それ?」
「飛行機って、飛行船や気球よりも早い乗り物だよ」
「そんなの聞いたことないよマー君?」
「ほんとだよ。本当に飛行機は風を切り裂くように速い空飛ぶ乗り物なんだよ」
「へ~そうなんだ~。じゃあ、マー君がその飛行機のパイロットっていうのになったら一番初めに?私を乗せてくれる?」
「うん。絶対に姉ちゃんを飛行機に乗せるよ!そして見せてあげる空の世界を」
「じゃあ、約束ねマー君」
そう言い指切りをする私と守はその後、夕方になるまで一緒に大和を見ていたのだった。そして数日後……
「嘘だもん!!」
「ましろ。寂しいかもしれないけどマー君は家族のいる家に帰ったのよ」
あれは確かブルーマーメイドフェスタが終わったすぐ後だったか……突然、守の姿が消え。私と姉さんたちが探しに行ったあとしばらくしてお母さんが『守は家族のもとに帰った』と言われた時のことだ
「ましろ……」
「だって、マー君は私と約束したもん!ずっと一緒にいるって!飛行機に乗せてくれるって!だからきっとまだどこかにいるもん!きっとどこかで迷子になっているんだよ!私探しに行ってくる!」
「あ、ちょっと。ましろ!?」
私は母の制止を振り切って家を飛び出し、守といった思い出の場所やら街やら走り回った
「マー君!!マー君!!何処に行ったのーー!!マー君!!返事してよー!!」
私は泣きながら町中大声をあげて守を探し回った。声が嗄れても疲れて足が動かなくなりそうになっても私は大切な弟を探し続けた。だが、いくら叫んでもいくら探し回っても守は返事もしない。そしてその姿を見つけることはできなかった
「ま……マー君!!!!」
それでも私は諦めずに泣きながら最愛の弟の名を呼ぶのであった
「守!!」
私は飛び上がってあたりを見渡すとそこは自分の部屋であった。そしてよく見れば私は椅子に座って目の前には入試の参考書やノートがあった。
「ああ……そうだった。勉強中に私は寝ていたんだな……」
私はそう呟き、カレンダーを見る。横須賀海洋女子学校の入試まであと数日。ここで頑張らなければ、今までの努力が水の泡となる。それは嫌だった。絶対に合格してブルーマーメイドになる。そう約束したんだから……私はちらっと机に置いてある写真立てを見る。そこには戦艦三笠を背に守と一緒に撮った写真であった。
「守……」
三姉妹の中で一番の末っ子であった私に初めてできた弟。どんな時でも私を守ってくれた人、
「守……お前は今どこにいるんだ?」
悲しさと寂しさの入り混じった表情をし私はそう呟く。あれから6年間、ずっと探しているが守は見つからない。本当にどこに行ってしまったのか?それは私にもわからなかった。もし守がここにいてくれたらきっと励ましてくれるだろうか。そんな在りもしないことを考えている私。
「ええい!何を弱気になっているんだ私は!」
そう言い、私は気合を入れるため両頬をたたき受験勉強に集中する
「頑張らないと……もし合格できなければ守に合わせる顔がない」
ブルーマーメイドになれば少なからず、守を見つけるきっかけが見つかるかもしれない。それ以前に幼いころ守と交わしたあの約束。そう立派な艦長になるためにも私は頑張らないといけない。そう自分に言い聞かせて私は受験勉強に集中するのであった。
一方、とある寮では一人の少女がとある夢を見ていた
『よし!杉田一番!杉田一番!ナチスの敵戦闘機隊を発見!!森!西沢ら301飛行隊は私に続け!!』
「了解!森二番!これより戦闘に入る!!」
彼女の目には大空の中、見たこともないような飛行物体が激しい空中戦をしている夢を見た。その飛行物体とは彼女の世界にはない戦闘機、零戦とBf109戦闘機であった。
激しい戦いの中、一機、また一機と炎と化して墜ちてゆく。その光景は地獄絵図であった。そんななか
「森二番!被弾した!!これより脱出する!!」
そう言い、その物体の窓らしきところが開けられそこから人が飛び降りた。そしてその人の背負っていたリュックからパラシュートが飛び出し、その人物はふわふわと浮いていた。すると一機の黒い飛行隊がその人に迫ってきた
「くそっ!来るなら来いナチ野郎!!」
そう言いその少年は拳銃をその飛行物体に向け発砲するのであった
「っ!?」
その瞬間、少女は目が覚めた
「(なに、今の夢・・・・?)」
少女は先ほどまで見た夢を思い出す。どこかの国と国との戦争だろうか?だがあの空を飛んでいたものはいったい何だったのだろうか?
「受験を前に変な夢を見ちゃったな……」
と、少女、岬明乃はそう呟くのであった