太平洋の波の上に真っ黒な一隻のインディペンデンス級沿海域戦闘艦が横須賀港に向かっていた
「ふ~ひっさしぶりに横須賀に帰って来たな~」
と、艦橋の展望台でほかのブルーマーメイドの隊員の制服とは違う黒い制服をし、まるで宇宙海賊みたいなマントを着た女性が背筋を伸ばし深呼吸してそう言う。
彼女の名は宗谷真冬。宗谷三姉妹の次女で、真霜の妹であり、ましろ、そして守の姉でもある。そんな彼女は今、母港である横須賀に帰って来たのだ
「さて、家に帰ったら、シロの様子でも見に行くか。あいつちゃんと勉強しているかな?」
そう言いマントを翻し歩き出す。すると一枚の写真が彼女から落ちる。乗員の一人が落ちた写真を取る。
「あ、艦長。写真を落としましたよ?」
「ああ、すまない」
真冬は写真を受け取り写真を見ると、どこか懐かしいような顔をする。その写真に写っているのはと小さい少年の写真であった
「艦長。その写真の少年は?」
「ああ。こいつは私の弟の写真だ」
「え!?艦長、弟さんがいたんですか?」
「ああ。でも9年前から行方不明でな。本当にどこに行ったのやら……」
「そうなんですか……また会えるといいですね艦長」
「ああ。いつもそう思っているよ」
そう言い写真を胸ポケットにしまう。そして彼女たちの乗る『べんてん』は横須賀港へと進むのであった
「ここは・・・・・何処だ?」
暗い空間の中、守は歩いていた。前も後ろも何も見えない暗い中、戦期もわからないまま守はさまよっていた。いったいどれほど歩いたのかはわからない。出口も何も見えない暗い空間の中、彼はただ歩いていたのだ。すると・・・・・
「守・・・・・」
声が聞こえ、振り向けばそこには明るい空間があり、そこには真雪、真霜、真冬。そして・・・・・
「ましろ姉さん」
自分が最も敬愛し、本当の姉のように慕っているましろであった。そしてましろはニコッと笑って
「ほら、何をしているんだ守。早くこっちに来い」
と笑顔で手招きする
「うん。今行くよ・・・・・」
守はましろたちのいる空間へ向かおうとする。だが、足が動かない
「え?何で?」
守は必死に歩こうとするが動かない。そして足になにかの違和感を感じ始めた。守が自分の足を見るとそこには血まみれの手が彼の足を掴んでいた
「っ!?」
守が驚くと空間のあっちこっちから憎悪と憎しみの声が聞こえ、そしてそこから、かつて守が撃ち落としたナチスやファシストなどの敵航空兵たちが守を掴もうと迫ってくる。守はその手を振り払い、ましろたちのもとに向かおうとするが、ましろたちは守の元からどんどん遠ざかっていく
「待ってくれ・・・・待ってくれ姉さん!」
守は必死にましろたちの元へ走る。そしてましろたちのもとにたどり着く直前。何か見えない壁が張られているのか守はその先にへと進めなかった
「姉さん!!姉さん!!」
守は壁を叩き、ましろの名を呼ぶがましろたちはどんどん守の元から離れていく。そして・・・・・・
『貴様があの女に会う資格なんてない・・・・・』
急に恨みと怨念の入り混じった声が守の頭に響き渡る
『自分の手を見てみろ。今まで我々を殺してきたその血まみれ手では愛する者すら抱きしめられない』
『その手に残っているのは血と鉄と罪だけなのだ』
『さあ、ともに地獄へ行こうぞ・・・・』
声の言葉に守は自分の手を見るとその手は赤黒い血で染まっていた。守は震える手を恐怖を抱いた顔をし、絶望する。そしてその瞬間、血で染まった無数の手が守の体を掴む。その瞬間、守は身動きが取れないまま怨念の亡者たちが群がる暗い闇に包まれるのであった
「うわあぁぁぁl-!!!」
守は飛び起きる、荒い呼吸をし目は瞳孔が開き体中から酷い汗を流していた
「はア・・・・はア・・・・・夢か」
守はそう言うと時計を見る時刻は朝の5時でまだ日が昇らない時刻であった。
「・・・・・朝飯でも作るか。今日も仕事あるし」
そう言い布団から起き上がり、洗面台で自分の顔を見る
「ひどい顔だな・・・・・・」
先ほどの悪夢のせいなのか若干やつれた顔をしていた。あの夢は自分が今までした罪のことを決して忘れるなという警告なのだ。そう自分に言い聞かせ守は朝食の準備をするのであった。今日の朝ご飯はトーストとスクランブルエッグとコーヒーであった。守は朝食を取り、警備員の服に着替える。そして部屋を出て自分の仕事である警備員の仕事に入るのであった
「マーちゃんの様子がおかしい?」
お昼頃、真霜はいつものように仕事をしてお昼休み頃、守がどんな様子か気になって今、母であり守が働いている海洋学校の校長である真雪に電話をしていたのだ
『ええ、仕事は普通以上にしてはいるのだけど、同僚の警備員や古庄先生の話ではなんかやつれたというか、元気があんまりないらしいのよ。本人は大丈夫だって言っているけど・・・・・・』
「そう・・・・・母さん。何か心当たりとかはない?」
『そうね・・・・・守君ぐらいの年頃の子はいろいろ複雑だから・・・・・もしかしたら守君は何か悩んでいるかもしれないわね』
「そう・・・・」
真雪の言葉に真霜は心配そうな表情をする。すると真雪が
『そう言えば真霜。今日は真冬の乗るべんてんが帰ってくるみたいね』
「ええ、今日の午後に横須賀港に着くらしいわ。母さん。マーちゃんにそのことは?」
『伝えたわ。でも結果は同じだったわ。まだあの子は立ち直れていないみたい』
「そう・・・・・悔しいわね。マーちゃんのことわかってあげられないっていうのは」
『仕方がないわ。異世界の出来事だもの。私たちにできることはあの子を見守ることしかできないわ』
「そうね・・・・」
と、その後二人は軽い会話をしたのち、電話を切るのであったそして真霜は深いため息をつくと、
「そう言えば今日の夕方。マーちゃん二式水戦の様子を見に行くって言っていたっけ」
午後、ブルーマーメイドの格納庫附近
「久しぶりの横須賀だな~」
真冬はべんてんを降り、久しぶりに帰ってきた横須賀の港を歩いていた。すると
「ん?」
ある倉庫に通りかかったとき、真冬はその倉庫に置いてあるあるものを見た
「なんだこれ?」
倉庫に置いてあったのはこの世界にはない航空機、二式水戦であった。それを見た真冬は倉庫に入り、二式水戦に近づく
「これ・・・・・スキッパーか何かか?」
首をかしげていると
「あ、真冬さん。横須賀に戻っていたんですか?」
と、そこへ夕張がやってくる
「おお、夕張さん。久しぶりだな。根性注入してやろうか?」
「あはは・・・・遠慮するわ。それにしても相変わらずのセクハラね~」
「冗談だよ・・・・・・・ところで夕張さん。これは一体なんだ?新しいスキッパーか何かか?」
真冬は二式水戦を見て夕張にそう訊くと
「ああ、二式水戦のこと?」
「二式・・・・・なんだそれ?」
「これはね。航空機と言ってね。今までヘリウムや水素を使っていた飛行船を凌ぐ空を飛ぶ乗り物ですよ」
「空を飛ぶ?・・・・・・・これがか?」
「ええ。信じられないと思うけど。速度は560キロで航続距離は千キロ以上らしいわ」
「らしい?これあんたらが作ったものじゃないのか?」
「ええ。これ実は異世界からの産物らしいのよ」
「い、異世界?」
夕張の言葉に真冬は訳が分からず首をかしげる
「そう。真冬さんも聞いたでしょ硫黄島で発見された謎の漂流物のことを」
「ああ・・・・・・まさかこれが?」
「ええ。真霜さんから聞いていないの?」
「いいやまったく。本当にこれが飛ぶのか?」
「まだ飛ばしてないからわからないけど、調べた結果、理論的には可能よ」
「ふ~ん‥‥なら、飛ばしてくれ。ホントに飛ぶならそれぐらい良いだろう?」
真冬は夕張に二式水戦を飛ばしてくれというが夕張は首を横に振り
「それは難しいかな~」
「なんでだ?」
「これを飛ばすことができるの守君だけだもの」
「……守?」
夕張の守っという言葉に真冬は反応する
「ええ、森守君。この二式水戦の操縦者よ。真冬さんも隅に置けないわね。あなたたちに異世界の弟がいるなん・・・・・「おいっ!」・・・え?」
夕張がそう言いかけた時、真冬はいきなり夕張の肩を掴む
「守って言ったな!もしかしてこの子か!!」
と真冬は胸ポケットから幼いころの守の写真を見せると夕張は
「ええ、写真の子は幼いけど。確かにこの子よ」
「夕張さん!守は何処にいるんだ!!教えてくれ頼む!!」
「え?え…と。確か今は横須賀海洋学校の警備員をしているみたいよ。でも確か今日の午後くらいにこの子を見に行くとか言っていたけど?」
「守が・・・・・・」
夕張の言葉に真冬は真剣な顔つきになるのだった
数時間後、
「夕張さん。来ましたよ~」
しばらくして守は警備員の仕事を終えて二式水戦の様子を見に格納庫に来たが、中は電気が消えて薄暗かった。
「あれ?いないのかな?」
守は首をかしげて中へ入る。そして中央辺りまで来手当たりを見渡すが二式水戦があるだけで誰もいなかった
「おかしいな・・・・・皆出かけているのかな?」
と、そう呟くと、自分の前に黒い影が伸びる。それはすぐ後ろの入り口に誰かが立って日の光によってできる陰であった。守は振り向くと、そこには黒い制服とマントを着た女性が立っていた。その女性に守は見覚えがあった
「(・・・・・真冬姉さん?)」
そう、守の姉の一人である真冬であった。そして真冬は真剣な顔つきで
「お前・・・・・守なんだな?」
と、じっと守を見てそう言うのであった