「お前・・・・・・守なんだな?」
真冬はじっと守を見つめてそう言う。守は真冬を見て少し顔を背ける。真冬はそんな守の表情に気づかず、守に近づく
「お前、本当に守なんだな!本当に心配したんだぞ。9年前から私とシロはお前のことをずっと探していたんだぞ。守!」
9年ぶりに弟分と再会し嬉しそうに真冬はそう言い守の肩をポンっと叩き
「なんで・・・・・なんで帰って来たんなら帰ってきたで言わなかったんだ?もしかしてあれか?すぐに会わなかったのは姉ちゃんたちを驚かそうと思ったのか守?」
「・・・・・・・」
「守。家に帰ろ。母さんや姉ちゃん。それにシロもお前の帰りを待っている。それに私もお前と話したいことがいっぱいあるんだ」
嬉しそうにそして少し涙ぐみながらそう言う真冬。しかし・・・・・・
「・・・・・・人違いです」
「え?・・・・・な、何言っているんだ守?面白くない冗談だぞ?」
守の言葉に真冬は一瞬、頬けたがすぐに首を横に振り
「冗談じゃありません。俺はあなたの探していた人とは違います」
「いいや。お前は守だ。森守。9年前私たちの家に住んでいた男の子で私たちの大切な弟だ。9年間で成長しているけど私にはわかる。お前は間違いなく守なんだ!!」
そう必死に言う真冬だったが、守はぐっと唇を噛み締め、辛い表情で
「ちがう・・・・・俺は守じゃない!!人違いだ!!」
「あっ!?」
守は肩を掴んでいた真冬の腕を振りほどき、倉庫を出て走り出す
「あっ!待て守!!」
真冬は逃げる守を追いかける、
「待て!待てよ守!なんで逃げるんだよ!!」
ようやく会えた弟分が逃げるのを見て真冬は必死に叫び追いかける。9年前も守がいなくなったあの日も真冬はましろ同様、守が帰ったことを信じずにきっとどこかで迷子になって泣いていると、体中汚れながらも必死に探し回っていたのだ。そして今、9年ぶりに会えた弟がなぜか自分の前から去ろうとしていたのだ
「(嫌だ!ようやく会えたのに!また私の前から消えるなんて私は認めない!!)」
そう心でそう言い守を追いかける。そして守が角を曲がると
「あそこなら近道がある。よし!先回りだ!!」
そう言い真冬は別の道へと回るのであった。そして真冬は先回りをし、道を出るとちょうど守の目も前に現れる形に飛び出る
「っ!?」
急に目の前に飛び出た真冬に守は驚き、一瞬だけ動きを止める。その隙を真冬は見逃さず守の腕をつかむ、守は抵抗しようとするが、いきなりのことに足を滑らせた。そして真冬は守の両手首をつかみ壁に押し当てた。いわゆる壁ドン?みたいな状態だ
「守!私だ!私を忘れたのか!?ほら、真冬だよ。お前の姉ちゃんだよ!!」
「ち・・・ちがう。俺は守じゃ、・・・・・ないよ!」
「いいや!お前は守だ!それに!!」
そう言うと真冬は守が胸から下げているペンダントを持つ
「このペンダントは9年前、真霜姉さんと私が作ったペンダントだ。それに・・・・・・・」
そう言うと真冬はペンダントの蓋を開け
「これに張られている写真は9年前の三笠公園でお前とシロが撮った写真だ。この写真を埋め込んだペンダントを持っているのはお前だけなんだよ守!」
激しい剣幕でそう言う真冬に守は無言のまま項垂れる。もう否定のしようがない。もう隠せない。もう誤魔化しきれない。
守自身も真冬には会いたいと思っていた。そして再会したときは嬉しい気持ちがこみあげていた。だがそんな気持ちはすぐに消沈した。今の自分はもう真冬の知る自分ではない。今の自分はあの戦争だったとはいえ多くの命を奪ってきた。そんな自分が
堂々と姉に会うにためらいがあった。真霜は大丈夫だと慰めてくれるが、やはり守の心の中では人殺しの自分が姉に会うことを許せない自分もあった。だから守は真冬の前から逃げた。会えた喜びを殺して・・・・・
「守・・・・・なんで逃げるんだよ・・・・・なんで私を避けてあんな嘘をついたんだよ・・・・・私のことが・・・・・姉ちゃんのことが嫌いになったのか?」
悲しげな表情をする真冬。その言葉に守は
「違うよ・・・・・姉さんを嫌いになるはずがないじゃないか」
「だったらなんで逃げたんだよ!」
「もう俺は昔の俺とは違うんだよ姉さん!!」
「何が違うんだよ!お前は私の弟だ!血は繋がっていないけど、私たち宗谷姉妹の弟じゃないか!」
真冬は心の底からそう叫ぶと守は
「俺は人を殺しているんだよっ!!」
「っ!?」
守の言葉に真冬は驚き目を見開く
「人を殺したって・・・・・守。それ冗談だよな?」
「冗談じゃないよ。俺は人を殺したんだ。一人じゃない。何十・・・・いや何百人の命を奪っているんだこの手で・・・・・だから俺は姉さんに合わせる顔がないんだよ」
「守・・・・お前はいったい何を言っているんだよ?姉ちゃん訳が分からねえぞ?それに人を殺したって、心優しいお前が人を殺すことなんてできるわけないだろ?」
「・・・・・・・」
真冬の言葉に守は悲しい顔をし目を背ける。その顔を見た真冬は
「まさか……本当なのか?……本当にお前は人を殺したのか?」
「……」
真冬の言葉に守は何も答えることができなかった。すると・・・・・
「そこまでにしなさい真冬」
「「っ!?」」
するとそこへ真霜と夕張がやって来た
「真霜姉さん・・・・なんでここに?」
「さっき夕張整備長から、真冬がここに来たって聞いてきたのよ。それよりも真冬。マーちゃんにいろいろ聞きたいことがあると思うけど。とりあえずはその手を離しなさい」
真霜の言葉に真冬は頷き、守を腕を離す。そして真冬は真霜をじっと見て
「姉ちゃん。その言いぶりだと随分前に守と会っていたみたいだな、やっぱり数か月前に硫黄島で保護された子っていうのはやはり・・・・・・」
「ええ、マーちゃんよ」
「だったら、なんで言ってくれなかったんだよ!なんで守のことを秘密にしていたんだ!」
真冬は真霜にそう問い詰めると
「俺が言わないでくれって言ったんだ真冬姉さん!」
守がそう言う
「・・・・・・え?」
「俺が真霜姉さんに俺のことは真冬姉やましろ姉さんに内緒にしてくれって頼んだんだよ。だから真霜姉さんを責めないでくれ・・・・・」
「守・・・・・」
守の言葉に真冬はなぜ自分の存在を私に秘密にするのか?と疑念を含めた目で見ていた。すると真霜が
「マーちゃん。マーちゃんのこと真冬に話すことになるけどいい?」
真霜はこれ以上は真冬に隠せないことを守に言うと守は頷く守自身も変に誤魔化すよりは正直に言ったほうがいいと判断したからだ
「なんだよ、守。姉ちゃん。何を話すんだよ?もしかして守のことか?」
真冬が首をかしげると真霜は
「ええそうよ。真冬。これから話す話は信じられないかもしれないけど事実よ。マーちゃん」
と、真霜に促され守は真冬に自分のことを話す。自分は別の世界の人間だということ、そして子供のころジャングルジムから落下したらこの世界に来ていたこと、そして一か月後になぜか元の世界に戻っていたこと、そして自分のいた世界で戦争が起きたこと、その戦争で兵士として志願し多くの命を奪ったこと、そして戦闘中になぜかこの世界に戻ってきたことなどを真冬に話した。真霜は守が話す途中で何も言わずただじっと守の話を聞いていた
「・・・・・・というわけなんだ姉さん」
「真冬。マーちゃんの言っていることは事実よ。信じられないと思うけど」
守が説明を終え、真霜がそう言うと真冬は一呼吸入れ
「信じるも信じないも、自分の弟を疑うわけがないじゃないか。信じるよ。驚きはしたけどな」
「姉さん・・・・・」
「だけどよ守。水臭いじゃないか。確かに私は戦争を経験したことがないから完全にお前のことはわかってあげられないけど、それでも・・・・それでも会いに来てくれよ。私にはお前が人殺しだ、兵士だとかそんなのは関係ない。私にとってお前は弟でしかないんだよ」
と、真冬は守の優しく頭をなでる。その姿に真霜は微笑み守自身もまんざらではないのか黙って真冬に撫でられ続けた
「で、姉ちゃん。守のことはわかったんだけど母さんやシロはこのことを知っているのか?」
「母さんはマーちゃんのことをしているわ。でもましろはマー君の要望で話していないわ」
「なんでだよ。ましろが一番守に会いたがっているんだぞ?」
「あなたもわかるでしょ?今のましろは受験勉強をしているのよ。もしマーちゃんに会ったら・・・・・」
「あ~なるほどな。シロのことだ。会えた喜びできっと気が緩むな。あいつまじめで努力家だけど詰めが甘い時があるからな」
「そう言うことよ」
「よし、守のことはよく分かった。だけどな守。受験シーズンが終わったら必ずましろに会うんだぞ。いいな?あいつが一番お前のことを想っているんだからな」
「うん。わかったよ姉さん」
と、守は頷くと真冬は
「よし!じゃあ、守。久しぶりに姉ちゃんが愛情たっぷりの根性を注入してやろう!!」
と、そう言い守にルパンダイブをし、根性注入という名のセクハラをしようとするが
「お・こ・と・わ・りします!!#」
「うぎゃーーー!!!」
守に咄嗟に躱されて、関節技を決められる
「いでででで!?ま、守!お前、いつの間にそんな技をっ!?」
「言ったでしょ?俺は向こうじゃ海軍の特務士官だって、軍人世界では白兵戦や格闘技は必修科目なんですよ。というよりも姉さん。まだそんなセクハラまがいのことやっていたんですか?」
「セクハラではない!これは根性を注入しようと・・・・・」
「それ、他の人にもしているんですか?下手したら痴漢容疑で逮捕されますよ?」
「そ、それよりも守、関節技ほどいてくれないか?姉ちゃん痛いんだけど?」
「もうセクハラしないというのなら解きます。3秒以内に宣言しなければもっと閉めますよ?」
「え!?それは根性注入は私のトレード・・・・」
「は~い1!」
「いでででで!締めるな締めるな!!それに2と3は守!?」
「知らないよ。人間、1あれば十分なんですよ」
と、そんなこんなで真冬はしぶしぶ約束をするが守は『絶対にあれは止めないな』と確信を抱きながらは~とため息をつき関節技を解くのだった
「いたた・・・・・」
「もう真冬。これからはそれは控えなさいね」
「善処するよ姉ちゃん。ところで守。お前は今どこに住んでいるんだ?」
「マーちゃんは今。母さんが務めている海洋学校の職員用の寮にいるわ」
「あ~あそこか・・・・・で、そこで学生でもやっているのか?」
「いいや、警備員だよ」
「部屋の?」
またこの質問か・・・・・
「違うよ。ものほんの学校の警備員だよ」
同じ質問をされデジャブる守だったのだった。そしてしばらく会話していると
「あの~姉弟仲良く話しているところ悪いんだけど・・・・」
急に夕張さんが声をかける
「ん?どうしたの夕張?」
「いや、本当にすまないんだけど守君の2式水戦のことなんだけど?今日飛ばす予定だったんだけど」
「「「・・・・・・・あ」」」
久しぶりの再会につい忘れていたが守がここに来たのは2式水戦に会い。そして修理を終えた2水戦の試験飛行するためであったのだったが、もう空は暗くなってしまっていた
「この時間じゃ、飛ばすのは無理ね。飛ばすのはいつぐらいにしようかしら。守君。次の休みはいつ?」
「え?確か5日後かな?」
「そう。じゃあ5日後にまた来てくれる?」
「え、ええ。わかりました」
こうして2式水戦の飛行は延期となるのであった。その後、守はというと真冬に連れられとある店で6年間積もる話をし、その解散し、自分の寮へと帰るのであった