あれから9年後、世界は再び世界大戦へと突入した。新ナチスドイツを名乗るテロリスト軍団が世界征服を企み、侵略戦争を始めた。それを阻止するため国際連合はテロリスト軍と交戦。いわゆる第三次世界大戦が勃発した。
だがこの戦争には奇妙な規定条約があった。それは
「使用できる兵器は1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手しているもの。また多少の改造は認める」
というものであった。そんな奇妙な規定がある中、両軍は激しい戦闘を繰り広げているのであった
南太平洋のとある島
「懐かしい夢を見たな・・・・・・」
浜辺で寝ころんでいた俺はそう呟く。9年前、小さいころに体験した不思議な出来事。こっちの世界に戻ったとき、自分は病院のベッドの上だった。 母さんの話ではなんでも一ヶ月意識不明だったらしい。 公園のジャングルジムで遊んでいたら天辺から落ちてそのまま病院へ・・・という流れだったそうだ。
「今になっても信じられないな・・・・自分が異世界に行っただなんて・・・・」
「何をぶつぶつ話しているんだ?」
俺が独り言をしていると、隣からつなぎ服を着て白い帽子をかぶった小柄の女性がジト目で俺を見て隣に立っていた
「ああ、ナツオ整備長」
「まったく。南の島にいるからって少し気が緩んでいるんじゃないか森少尉?」
目を細めて言う彼女に俺は苦笑し
「体を休めるときは休める。それが戦闘機乗りってものだよ整備長」
「はぁ~・・・・あの343航空隊の疾風大尉の受け売りか?まあ、私にはどうでもいいがな」
肩をすくめそう言う彼女に俺は
「それで、整備長。なんか用?」
「あんたの二水戦の整備が終わったから。それを伝えに来た。恐らくすぐに出撃命令が来ると思うからな」
「ありがとうナツオさん」
「構わないって。それより聞いたか?欧州へ派遣された343航空隊のこと?」
「ああ、ニュースで見た。ナチス相手に派手に暴れまくっているみたいだね」
「ついさっきまではこの南太平洋で暴れていたのにね~あいつら結構にぎやかで楽しかったんだけどな。あんたも本来そこに配属にされるはずだったんだろ?」
「そのはずだったんだけど。ちょっと上ともめてな。配属の話は無しになってここに左遷させられた。まあ職業は同じ戦闘機のパイロットだからいいけどな」
「確か前は零戦に乗っていたんだよな?大丈夫か水上戦闘機で?」
「二式水戦も立派な零戦さ。まあ確かに
「そうか。お前がそう言ってくれると二水戦も喜ぶよ。ああ、そうだ森少尉。お前の愛機なんだけどさ。少し改造しといたぞ」
「改造?どんな風にだ。まさか変形してロボットになるっていうんじゃないだろうな?」
「違うよ。第一それじゃあ規定違反だろうが、そうじゃなくてお前の二式水戦。エンジンを少しいじくって速度をupさせといたぞ」
「まじか!?どのくらいだ?」
「大体、560キロ。零戦52型と同じ速度だ。エンジンも52型や22型のを使用しているしな。それともう一つが翼が折りたためる。しかも特殊攻撃機晴嵐のようにな」
「え?速度が上がったのは嬉しいがなんでそんな機能を?」
「万が一潜水艦で運ぶときのことを考えて試験的にやってみた。翼にある補助フロートも折りたためるように改良した」
「それって意味があるのか?」
「私の勘だ。きっとその機能が必要となる日が来る!」
「来ないと思うけど・・・・まあいいや。とにかくありがとな」
絶対に必要ないと思うが俺はそう思いながら頭を掻くと
「森少尉はいるか!」
そこへ士官服を着た男性がやってくると森は敬礼をし
「はっ!ここにおります!!」
「うん。司令がお呼びだ。すぐに士官室に来い」
「了解しました!」
俺がそう答えると男は去っていった
「どうやらお呼びのようだな少尉」
「ああ、じゃあちょっと行ってくる」
「ああ。行ってこい」
そう言い俺はその場を離れようとすると、胸ポケットからペンダントが落ち、それを見たナツオ整備長は
「おい、森。ペンダントを落としたぞ」
「え?ああ、すまない」
そう言い俺はペンダントを受け取り、懐かしそうな表情をする
「大切なものか?」
ナツオ整備長がそう訊くと
「ああ。大切な人からもらったものだ」
「へ~彼女かい?」
「いいや。違うよ。俺が姉と慕う人からもらったんだよ。ほら、この人だ」
そう言いペンダントの蓋を開けるとそこには小さな写真が貼られてあり。その写真には幼き頃の自分と隣に自分と近い年齢のポニーテイルの女の子が一緒に写っている
「その子がそうなのかい?」
「ああ・・・・」
俺が頷くと整備長は
「そうか・・・・それでその人はどこにいるんだ?元気にしているのか?」
「9年前に別れたきり会っていないからわからないけど、たぶんどこかで元気に過ごしていると思うよ」
「そうか・・・・・また会えるといいな」
「ええ。俺もそう思ってます。では行ってまいります」
そう言い俺は士官室へと向かうのであった。
数分後、俺は二式水上戦闘機に乗り込んだ。二式水上戦闘機。それはあの零式艦上戦闘機、零戦にフロートを取り付けた水上戦闘機だ。俺は二式水戦のエンジンをかけて飛び立った。
それを見たナツオ整備長と整備兵が
「強行偵察ですか・・・・・・整備長」
「ああ、なんでもナチス海軍のUボートや小型艦艇がまだうろついているんだとよ。それで発見次第基地に連絡するのと翼に吊るしてある60キロ爆弾で少しでもダメージ与えろだとよ」
「大丈夫なんですか?単機出撃なんて?」
「あいつの腕なら大丈夫だ。森守海軍少尉。撃墜数は72機。大半は爆撃機を撃墜した爆撃機キラーであり、水戦でも戦闘機相手も奮戦したエースパイロットだ。そう簡単にはやられないよ・・・・おーし!あいつが戻ってきた時すぐに整備できるように準備するぞ!!」
「は、はい!」
整備士たちが行く中、ナツオ整備長は振り返り
「・・・・・幸運を祈る少尉」
と、小さくつぶやくのであった
一方、強行偵察に向かった俺は辺り周辺を飛行していた。
「う~ん・・・・いないな。U-ボートならともかく。そろそろ敵艦艇か航空機と遭遇してもおかしくないのに・・・・・」
俺は辺りをきょろきょろ見ながら敵の船を探していた。雲一転もない青空に青い海そして聞こえる二式水戦のエンジン音。それを覗けば極めて静かなものだった。俺はポケットから間食用のおにぎりを出してそれを食べる。
「・・・・・・平和だな・・・今のところは」
俺はそう呟きながらおにぎりを頬張る。すると後ろから何かエンジン音が聞こえ始めた。
「・・・・ん?なんだ?」
俺は振り向くとそこには一機の戦闘機がこちらへと向かってきた。その戦闘機は液冷エンジンで翼には鉤十字の国籍マークがあった。それはドイツ。しかもナチスドイツのBF109戦闘機であった
「ナチス!!」
迫ってくる戦闘機が敵機だと分かった俺は手に持っていたおにぎりを後ろへと放り投げ操縦桿を握ると急上昇し、BF109は急上昇した俺の機体を追いかける。そしてBF109は俺にめがけて機銃を放つが俺は今までの戦闘で培ってきた技術で必死にそれをよける
「くっ・・・この!二式水戦の機動力をなめるな!!」
俺はそう言い操縦桿を握り旋回する。二式水戦は水上機ではあるが、機体のベースである零戦並みの旋回能力を持っていた。俺は機動力を生かし、Bf109の背後に回り込んでありったけの機銃や機関砲を叩き込む。そして銃撃を受けたBf109の翼に弾丸が当たり、翼から炎が上がってBf109は炎に包まれ落ちていき海面へと墜落する。
「よしっ!」
俺はそう言い背後を見る。戦闘機乗りにとって戦闘機の後ろは死角であり、戦闘では撃つときも撃った後でも必ず背後に敵機がいないか確認することが大切だからだ。そして背後に敵がいないことを確認した俺は安心し、ほっと一息つく。そして燃料を見ると残りが少なくなっているのに気づく
「ここらで、戻るか・・・・・結局戦闘機は一機撃墜したものの、目的の敵艦艇は見つけられなかったな・・・・・」
そう言い基地に戻ろうとすると太陽の光が降り注ぎ一瞬視界はまぶしくて見えなくなり俺は一瞬目をつぶってしまう。すると太陽を背にしていたのか突如もう一機のBF109戦闘機が急降下してきて銃撃する
「うわっ!!?」
その瞬間、激しい揺れとガラスが割れる音、そして体中に激しい激痛が襲った
「くっ・・・・・」
激しい痛みの中俺は目を開けると機内の窓ガラスは割れて、肩と足には銃弾を食らったのか赤黒く染まっていた。そしてガラスで切ったのか頭も流血していることに気づく。そして俺は自分の機が被弾したことに気づき高度計を見るとどんどん下がってきたうえに油圧も下がっていた。それを見た俺は
「くそっ!動け!!」
操縦桿やスロットルレバーを動かしたが二式水戦はどんどん落ちていき、そして挙句の果ては翼から炎が上がった。その瞬間、俺は自分の死が近いことを悟った。そしてその瞬間、炎に包まれる機体の中にいる俺の頭には走馬灯のごとくいろんな思い出が浮かび上がった。そして俺が出た言葉は
「・・・・・・・・・ましろ姉さん」
悲しみと絶望の入り混じった顔で俺は実の弟のようにかわいがってくれた人の名前をそう言う。もし・・・・神が許してくれるのであれば、最後にもう一度、あの人に会いたい・・・・俺を家族として温かく迎えてくれたあの家族にもう一度会いたい・・・
それが俺が最後に思ったことだ。炎に包まれる中、俺は自分の最期の運命を受け入れ。瞼をゆっくり閉じる。たった15年の命ではあったがこれも運命だ・・・・そう思い俺の意識は消えるのと同時に凄まじい爆音が響いたのであった・・・・・・