あれから数日後、小笠原に行くまであと1日となった。この日まで俺はいつも通りに警備員の仕事をしていた。昼の仕事もそうだが夜勤での仕事もだ。正直言って夜勤の仕事は少し怖かったな。嫌だって、夜の学校ほど怖いものはないでしょ?薄暗いし不気味だし昼間とは違う印象で何か出るんじゃないかと少しビビりながら仕事をしていた。
そして少し時間の空いたときにはブルマーの格納庫に行って二式水戦の整備をしていたりする。基本整備は向こうがやってくれているのだけど、ナツオ整備長曰く『飛行機の整備は整備士だけに頼るんじゃねえ。自分の相棒はちゃんと自分で見てやんねえと飛行機はお前の気持ちには答えてくれないぞ』だ、そうだ。やはり長年、戦闘機や爆撃機の整備のしている人の言葉は違うな.あのとき俺はそう思った。
おっと、話が逸れました。俺は今この仕事での最後の休暇を取っていた。明日になれば俺は小笠原に行き二週間、海洋学校の航海演習に参加することになっているからだ。本当は先日だからちゃんと仕事をしたかったのだが、真雪さんや古庄先生、警備員の先輩である美鈴さんから
「あなたはたまには休むというのを覚えなさい」
とはっきり言われた。俺ってそんなに働きすぎかな?まあ休憩時間に事務室の掃除をしたりとかしていたけど、それで働きすぎというのもおかしな話だ。それとも俺の方がおかしいのかな?まあ、それはさておき俺は強制的に休みをもらい。どうしようかと考えていた。倉庫に行こうとしたんだが、平賀さんたちにも
『守君は働きすぎだから明日に備えて休んでください!』
と、言われてしまい。どうすればいいか部屋で小笠原までの最短コースを計算しながら考えていた。すると携帯が鳴り
「ん?だれだろう?」
俺は形態をとり開いてみると相手は真冬姉さんだった
「もしもし姉さん?どうしたの?」
『おお、守。元気にしているか?』
「ああ。元気いっぱいさ」
『そうか。それはよかった。でだ。守。今日お前暇か?』
「ああ。今日休暇で。どう過ごそうか悩んでいたところだよ」
『そうか。それはちょうどいいな。実は私も今日は休暇でな久しぶりに姉弟一緒にどこか出かけないかって思ってさ。ましろに声かけたんだが…ああ、守のことは言っていないぞ。でさ、全然相手にしてくれなくてよ。だから守に声かけたんだよ。ダメか?』
「いいや。問題ないよ」
『そうか。じゃあ、今からそっちに迎えに行くから』
「ああ、わかった。じゃあ校門で待っているから」
そう言い俺は私服に着替えて部屋を出る。そして学校を少し出たところにあるガードレールで待っていると
「おう!守!!」
そこへ真冬姉さんがラフな私服でやって来た。
「すまない待たせたか?」
「いいや。今来たばかりだよ姉さん」
本当は40分待っていたが、守は黙っていた。
「よし!じゃあ行こうぜ守!今日は姉ちゃんがこの街を案内するぜ・・・・・といいたいけどお前のことだからもう回っているよな?」
「一人だけな。でも姉さんとならどこだって楽しいよ。久しぶりの姉弟で街を歩くのも悪くないよ」
「お~そう言う生意気なこと言うようになったなこいつめ~」
「ちょ、やめてくれよ真冬姉ちゃん!!」
と真冬に頭をぐりぐりされる守だがそんなまんざらでもなくほかの人から見ればじゃれ合っているように見えた。そしてしばらくそんなやり取りがあった後、二人は横須賀の町を歩いた。
「へ~守。お前、拳法と空手が得意なのか」
「うん。軍学校でよくやっていたんだよ。まあそれ以前にそう言う武術に興味があったから」
「へ~じゃあ、今度手合わせしてくれよ。姉ちゃんも空手はできる方だぞ。こう海賊をバンッ!ドカッ!って倒したことあるんだぞ?」
「ああは・・・遠慮するよ。それに俺の武術は護身用だし・・・・・」
「アハハ!そうか。それは残念だ」
と二人は楽しそうに街を歩き回った。ある時は商店街で
「おっ!この店懐かしいな~覚えているか守。小さいころよくシロと一緒に言っていた」
「ああ・・・・あの駄菓子屋さんだ・・・・・懐かしい。そう言えばよくましろ姉さんと一緒にアイス食べたっけな」
「そうそう。あっ!そうだ覚えているか?お祭りがあった時シロのやつがお前にいいところを見せたくてお小遣い全部はたいてくじをやったけど全部外れた時のことを」
「うん。はっきり覚えているよ。それで俺が一回やった時に当って、姉さんの面目潰しちゃったあの時は姉さんに悪いことをしたって思ってるよ・・・・・」
「も~そんなこと気にするなって!それにシロはそんなこと気にしていないと思うぞ?お前は少し気にしすぎだ」
「すまない・・・・」
そしてとある雑貨屋では
「ねえ真冬姉さん」
「なんだ守?」
「俺子供のころから思っていたんだけどさ」
「うん?」
「なんで雑貨やってパズルとか置いてあるんだろ?」
「・・・・・・そう言えばそうだな?」
とある喫茶店
「へ~その杉田って人。すごいんだな?100人以上の相手を素手で叩きのめすなんてな」
「ああ、杉さんの暴れっぷりはラバウル部隊でも有名でさ明あから狂犬って呼ばれてた」
「へ~大丈夫だったのか?ひどい目にあわされなかったか?」
「いいや。杉さんは噂で聞くほどの悪い人じゃないよ。とっても優しくて。まあ訓練の時は厳しいけど、それは仲間が生き残るためのことだった。厳しい反面誰よりも仲間のことを大切に思っていたいい人だよ・・・・そうだ写真がある」
そう言い守はスマホから一枚の画像を出す
「俺がソロモン諸島へ行く前に撮ったものだよ」
「これが杉田さんか・・・・若いな。いくつぐらいだ?」
「俺より一つ年上だった。そして撃墜数は日本の女子戦闘機乗りでは最多の記録を持っていたよ」
「ということは16,7歳か・・・・・ちょうど私が海洋学校の学生だった頃に戦争を・・・・すごい人なんだな」
「ええ、俺にとって師匠のような人でしたよ・・・・」
「そうか。いい先生にあったんだな。守は」
俺が懐かしそうに言うと真冬は微笑ましく見ていた。そして二人は喫茶でコーヒーを飲んだ後、二人は店を出て、買い物だとか、ゲームセンターで格ゲーをやって守が圧勝して真冬が悔しがったり、ある時、守はましろや真霜のためのお土産としてケーキを買ったりなど、様々だ。そしてその時、真冬は気が付いた。今まで硬くそして悲し気だった守の表情が昔みたいにや若くそして穏やかで優し気な年相応の少年の顔に
「守・・・・・やっぱり守はその表情が一番だな」
「・・・え?」
「いいや。何でもないよ」
そう笑顔で言う真冬。そして夕暮れの時最後に二人が来た場所は港が見える丘であった。そこは9年前よく真霜や、ましろたちとよく一緒に行って遊んだ思い出の場所であった
「やっぱり・・・・ここの景色は好きだな。子供のころに戻った気分だよ」
「そうか・・・・なあ、守。明日お前、小笠原に行くんだってな。ましろに会いに・・・・」
「ええ、二式水戦の本格的なテストも含めてね」
「いけるのか?伊豆大島から小笠原まで結構遠いいぞ?姉ちゃんがべんてんで小笠原に送ってやろうか」
「いや。大丈夫だよ姉さん。伊達にラバウル時代で長距離飛行しながら戦っていたわけじゃないからな。問題ないよ。でも少し心配なことがある」
「心配?何がだ?」
「ましろ姉さんのことさ。9年前別れも言わずにいなくなっちまった俺は一体姉さんになんて声をかければいいのかって思ってね・・・・・まあ、それ以前に怒られるとは思うけど」
「確かにビンタされる覚悟はしとけよ守」
「ああ」
そう言い二人はしばらく、夕日を眺めそして真冬は守を学校の校門のところまで送った
「じゃあ、守。明日頑張れよ」
「ありがとう真冬姉さん・・・・・・あ、そうだこれ」
そう言い守は先ほどケーキ屋で買ったケーキの入った箱を真冬に渡す
「真霜姉さんやましろ姉さんたちへのお土産。特にドルフィンケーキはましろ姉さんの好きなやつだからくれぐれも前みたいに全部食べないでよ姉さん」
「あれ~そうだった気?」
「前にましろ姉ちゃんが楽しみにとっておいたおやつ姉さん平らげたでしょ?」
「アハハ!そう言えばそんなことあったけな。わかったよ。そんなことしないから安心しろ」
「そうか。それなら安心だ。じゃあ。姉さん。俺はこれで」
「ああ。明日の航海演習頑張れよ守。それとましろによろしくな」
守は海軍式敬礼をして、真冬は守の頭を少し撫でた後、返っていき、そして守も明日に備えて部屋へと戻るのであったがこれが最後の休暇になるとはこの時、守はまだ知らなかった
宗谷家
「姉ちゃん。帰ったぜ~。あ、これお土産な」
「あら、真冬。お帰り・・・・・あら、ケーキ。気が利いているわね・・・・・・で、真冬?」
「ん?なんだ真霜姉?」
そう言うと真霜は真冬に近づき・・・・
「マーちゃんとの買い物・・・・・楽しかった?」
「え!?ね、姉ちゃん。なぜそれを!?」
「マーちゃん楽しそうだったわね~喫茶に雑貨屋にゲームセンターに駄菓子屋・・・・本当に可愛いくらいに」
「・・・・・まさか!?」
そう言い真冬は守に内緒でこっそり小型カメラで撮った写真を確認すると・・・・画面の遠いところにちゃっかり真霜がうつっていた。しかも顔は笑っても目が笑っていない顔で・・・・・・
「真冬~」
「は、はい!!」
「なんで私も誘わなかったのかな~私も非番だったのにね~なんでだろうね~?」
「ええっっと・・・それは・・・・姉ちゃんきっと疲れているからって思ってな・・・」
「私はマーちゃんとお出かけなら、別に一緒に行ったわよ~ねえ、真冬」
そう言い。真冬の肩にポンと手を置く。その瞬間真冬の顔は強張り、そして・・・・
「真冬・・・・・抜け駆けはダメだからね」
「は・・・・はい」
「分かればよろしい。さ、ましろも呼んでマーちゃんが買ってくれたケーキを食べましょ」
真霜がそう笑顔でそう言い、その後、真霜は二階にいるましろを呼んで三人でケーキを食べたのだった(ましろには守のことは秘密にして)。
「ほら、シロの好きなドルフィンケーキだ」
「ありがとう姉さん」
真冬からケーキを渡されたましろは嬉しそうにドルフィンケーキを食べていた。すると
「(・・・・・・あれ?私がドルフィンケーキが好きだってことは姉さんは知らないはずだ。知っていたのは守だけのはずだ・・・・・・それともただの偶然なのかな?)」
そう疑問に思いながらましろはケーキを食べるのであった