翌日の明朝、横須賀海洋女子の入学式当日、守は小笠原へ向かうため荷物を整えていた。そして服に着替え階段を降りる。ここを離れるのも少し寂しい気がするが、ほんの少しの間だけ留守にするだけだ。すぐに戻ってこれる。
そして俺は校門の前に行くと
「zzzz~」
俺と交代で警備員をしている美鈴さんが門の前に立ったまま居眠りしていた。本当にいつものことながらちゃんと仕事をしてほしいと正直に思った。俺は軽いため息をついて
「美鈴さん・・・・美鈴さん起きてください」
と声をかけるが彼女は鼻提灯を出しながら寝ていた。
・・・・・仕方がない。こうなれば奥の手だ
「・・・・・・・あ、校長先生」
「ふぁ!!??む、宗谷校長!?お、起きてます!私は起きてますから解雇処分だけはご勘弁を!!」
鼻提灯が割れると同時に美鈴さんはまるでギャグマンガに出てきそうな表情をし慌てて言うと・・・・
「・・・・・あ、あれ?守君?」
「おはようございます美鈴さん」
美鈴は目をぱちくりさせ俺を見て俺は微笑みながら美鈴さんを見ていた
「あ・・・・あの・・・・宗谷校長は?」
「え?俺しかいないよ。それよりまた居眠りですか?もし校長先生や古庄先生が見たら美鈴さん、怒られますよ?」
「アハハハ・・・・・それは勘弁ですよ。守君くれぐれも校長先生には・・・・」
「わかっていますよ。美鈴さんにはいつもお世話になっているので、目をつむりますよ」
「ごめんね。後で埋め合わせするから」
「では、いつか一緒にラーメンでもどうですか?最近美味しいラーメン屋ができたって聞いたので」
「あ、それ私も聞きました。では今度互いに休日が合いましたら食べましょう」
と、二人は楽しそうに話す。そして美鈴さんは
「ところで森君はもう伊豆大島に出発するのですか?」
「はい。出発前にいろいろ点検とかもしなくてはいけませんので」
「そうなの・・・でも今日は入学式だから、お姉さんに会いに行けばいいのに」
「大丈夫です航海実習の集合地点である小笠原で会う予定になっていますんで。まあちょっとしたサプライズですよ」
「そうですか?直接会ったほうがいいと思いますが・・・・まあ、守君にもいろいろと都合があるんですね?」
「まあ、そう言うことです。それじゃあ、行ってきます」
「はい。ではお気をつけて守君」
「はい。では行ってきます」
そう言い二人は敬礼しあうと守は学校を出るのであった。そして守は、水上スキッパーのある港に行く。二式水戦は昨日、伊豆大島にあるブルーマーメイドの格納基地に移動していたからだ。そして守は水上スキッパーに乗り、伊豆大島まで向かった。
「止まりなさい!あんたは誰!!」
伊豆大島の岸沿いでブルーマーメイドの職員がスキッパーでやって来た守に声をかけると、守は胸ポケットから身分証を取り出し見せる。因みに守は真霜の計らいでブルーマーメイドの臨時隊員の資格をもらっている。職員はその身分証を見ると
「わかりました。ご苦労様です」
と、そう言うと守は敬礼し先に進み、スキッパーから降りると、
「やあ、守君。来たね」
そこへ夕張さんがやってくる
「どうも。夕張さん。さっそくで悪いけど俺の二式水戦の方は?」
「ばっちりよ。あ、そうそうあんたの機体に取り付けた60キロ爆弾、そのままにしといたわ」
「え?何でまた?」
「海上安全委員会の堅物連中が『海賊が出た時にでも使ってくれ』だとさ。全く意味が分からないわよ」
「確かに、海賊に遭遇したら、無線で知らせればいいし、動きを止めるにも機銃使えばいいだけですからね。まあその海賊船が装甲艦だったら別ですけど・・・・・こちらの海賊ってそんなのなんですか?」
「いいえ、普通の海賊なら漁船をよそってやるわ。仮に装甲艦なんかで動いていたら即バレるは連中もそこまで馬鹿じゃないわよ。守君のいた世界の海賊とか密漁船は?」
「こっちと同じ漁船に機銃付けた程度の船ですよ。まあ、あのテロリスト戦争で本格的な軍艦使っていたナチスらのテロ軍団は別ですけどね・・・・」
「アハハ・・・・できればそう言う相手とは戦いたくはないね・・・・・さて、守君。二式水戦のところに案内するよ。場所はここから反対方向だから車で行くよ」
そう言い俺は夕張さんについていき、そして夕張産の用意したパジェロに乗る。そしてしばらくして島の反対側に着くと、海岸の砂浜の浅瀬に二式水戦が置かれていた
「二式水戦だ・・・・」
久しぶりに見る愛機に守はパジェロから降りて二式水戦へと向かう。そして夕張が
「燃料は満タン。機銃も全部補充しといたわ」
「すみません。なにからなにまで」
「いいのよ。私も結構面白かったし、あ、そうだ」
そう言い夕張さんは一般パジェロに戻りトランクから何かを出すと
「はい。これ、真霜から預かっていたものよ」
そう言い、夕張は守にあるものを渡す。それは守の着ていた飛行服と帽子とゴーグルだった。ほかには守の愛用していた刀と拳銃も一緒だった。そして守は一枚のメモ用紙を見つけ内容を読むと
『マーちゃん。飛行服直しといたわ。後、護身用に刀と拳銃も返すけど、絶対に間違ったことに使わないでね』
と書かれていた。それを見た。守は頷き、拳銃をホルスターに入れベルトに着け、そして刀はいったん抜いて刀身を見る。しばらく守は刀を見ると鮮やかでまるで時代劇のサムライのようにきれいに素早く刀を鞘に納める。その様子を見た夕張は思わず拍手する。
そして守は
「では、夕張さん。小笠原諸島父島まで行ってきます」
「うん。気を付けて行ってね」
「はい」
そう返事をし、守は二式水戦に乗り込む、そしてエンジンをかけ守は計器類を全部チェックし異常はないかを確認し次にフラップの動作チェックをし、異状ないかを確認が終わる。そして守は開いた風防を閉じて、スピードを出す。そして速度の出た二式水戦はどんどん水面から離れていき、飛び上がるのであった。その様子を見た夕張は口笛を吹き
「ひゅ~あっという間に飛んでっちゃったわね。さて、私は真霜に守君が飛びだったことを伝えなければね」
と、そう言いその場を後にするのであった
「さ~ら~ば横須賀よ~また来るま~で~は~」
空に飛びあがった俺はラバウル小唄の替え歌を歌いながら空を飛んでいた見渡す限りの青い海に青い空、白い雲がポツンポツンと浮いていて風はない。まさに飛行機を飛ばすのにはもってこいの日和だ
「さてと・・・・・父島までは数時間ってところか・・・・・」
俺はスマホで現在位置を見て進路を確認する。この世界では衛星がないため俺のスマホに搭載されているGPS は使えない。だが、この世界では気球を利用したそれに近いものがあり、そのアプリを使ってそれを頼りに飛んでいる。まあ使用できなければ昔ながらの方法でコンパスと地図を使えばいいだけなんだけどな。
「よし、今のところは順調。計器、燃料も問題なし」
俺はそう言い時刻を見る
「もうそろそろ入学式が始まるな・・・・・・・」
俺はポツリと呟く。本当は入学式を覗いてから言ってもよかったのだが、やっぱり、そこはサプライズだからな・・・・・
「・・・・ましろ姉さん。入学式で何か起きなきゃいいんだけど」
俺は姉さんのことを考えた。姉さんは何かと運が悪い。うっかりバナナの皮踏んで海に落ちなきゃいいんだけど・・・・・
「いや、さすがにバナナの皮はないか・・・・ギャグマンガじゃあるまいし、そんな都合よく滑って落ちているわけないしな」
やれやれ俺としたことが下らないことを考えてしまった。あのしっかり者の姉さんだ。もう自力で不運に打ち勝っているだろうな。そう思いながら俺は小笠原へと向かうのであった。
一方、その頃横須賀女子海洋学校では・・・・・
「はぁ~入学早々ついてない」
学校のシャワー室の脱衣所でましろが髪をドライヤーで乾かしていた。数分前にましろはあることで海に落ちてしまったのだ。するとドアが開きそこからツインテールの少女、明乃が入ってきた
「下着と制服乾いたよ。此処に置いておくね、プレスもしておいたから」
明乃が制服と下着を渡すと、真白は恨めしそうな目で明乃を睨む。実は彼女が海に落ちた原因は彼女が一枚かんでいるのだ
「でも、よかった入学式には間に合いそうだし‥それにしてもバナナの皮って本当に滑るんだね、驚いちゃった‥アハハ‥‥」
自分の落としたバナナの皮のせいで責任を感じた明乃は明乃なりのフォローを入れるが、
「着替えるから出てってくれないか?」
「あっ、ゴメン」
明乃は慌てて脱衣所から出るが、一度、顔を出して、
「折角同じ学校になったんだから、これからよろしくね」
と、そう言い出て行った。それを見たましろは制服に着替えると
「はぁ・・・・・・ついていない・・・・・・・いや」
と、そう言い彼女は守と同じ小さなペンダントを取り出し開くとそこには幼いころに撮ったましろと守の写真が張られていた
「・・・・あのころに比べればまだマシかな」
そう言うとましろがギュッとそのペンダントを握り胸に抱きしめると
「守・・・・・守。お前は今どこにいるんだ・・・・・お前に・・・・会いたいよ」
と、少し悲しく今にも泣きそうな声でそう呟くのであった・・・・・