私はいつも運が悪かった・・・・・だが、そんな運の悪かった私をいつも助けてくれた男の子がいた。その子の名は森守。突然お母さんが連れてきた子で、どうやら事故に逢い家で暮らすことになったらしい。
最初私は彼のことを不審に思っていた。私の知る男の子はみな乱暴で意地悪な子が多かったからだ。だが守はとても人懐っこかった。そして真霜姉さんが
『よかったね。ましろ。弟ができたんだよ』
その言葉から、私と守はいつも一緒だった。そうまるで実の姉弟のように。守は私が何か困ったことがあったら見捨てず助けてくれた。守に姉ちゃん。姉ちゃんと言われた時は一番の末っ子であった私にとって本当の弟ができたようで、一番うれしかった
ある時、男子生徒にいじめられた時は年上相手に勇敢に立ち向かい自分が傷だらけになってもそのいじめた相手を倒した。
『今度、姉ちゃんをいじめたらもっと殴るからなっ!!』
傷だらけになりいじめっ子にそう怒鳴るといじめっ子たちは顔を青くして逃げ去った。そして私は泣きながら自分のために怪我した守に謝ったが、守は
『大丈夫だよ姉ちゃん。姉ちゃんは怪我してない?もう大丈夫だよ?』
『う・・・・うん』
傷だらけでにっこり笑い私を安心させようとする守。それ以来だ。そんな守に私はいつの間にか弟してではなく異性として守のことが好きになったのを、それで私は守に何かプレゼントをあげたくて真霜姉さんたいと相談したら、ペンダントをあげることにした。結果は守はとても喜んでくれた。ずっとこの幸せな日々が続いてほしいと思った・・・・・・
だが現実は非情だった。
ある日、守は突然と別れも言わずに私たちの前から消えてしまった・・・・私は必死に探したが見つけることができなかった。それ以降、守がいなくなってしまったせいか、私の不運が前よりひどく出るようになってしまった・・・・・
だが、不運になることに悲しさはなかった。
ただ、一番悲しかったのは最愛の弟を失ってしまったことだった・・・・・
「・・・・・ちゃん?・・・・・シロちゃん!」
「え!?」
急に誰かに声をかけられ、ましろは声のする方へ顔を向けると、そこには晴風の艦長、岬明乃が心配そうに訊いていた
「大丈夫?固まっていたけど?」
「大丈夫です艦長。少し昔のことを思い出していただけです。それより今は・・・・」
そう言いましろは艦橋内を見ると、さきほどの猿島襲撃について話し合っていた。
「なんで晴風が叛乱したことになっているんだよ!先に撃ってきたのは猿島だろう!?」
砲術長である西崎がそう言う。なぜそうなったかというと襲撃後無線から海上安全整備局が猿島を砲撃した晴風を反乱とみなし行方を追っているということになってしまったのだ。
そのことに西崎は納得がいかず思わず知床鈴にそう怒鳴ると
「うぇ!? 私に言われても‥‥」
鈴は西崎に詰め寄られすでに涙目。周りもそれを咎めたり、からかったりする余裕はなさそうだ。
「知床さんに言っても仕方ないだろう」
「あ。そっか、ごめんごめん」
西崎はましろに引きずられながら謝る。それを素直に受け取った鈴が艦橋を見回す。
「でも、なんで沈んじゃったんでしょう?模擬弾だったのに‥‥もしかしてこれも演習の一環なんじゃ・・・・」
「演習で沈没するか」
そう疑問を言うと幸子が
「ならわざと沈没したとか? 私達、偶然にも猿島の黒い秘密を知ってしまったんですよ!」
幸子が何故か此処でヒートアップする。
「私ら遅刻しただけじゃん」
ヒートアップした幸子とは反対に他の艦橋メンバーは白けている。その為、艦橋内には幸子の一人芝居の声のみが大きく響く。
「『お前らー見たなー』『わたしたち、なにもみてましぇーん』」
幸子は声色と共に顔芸で独り芝居をする。
「『ええーいこのまま生かしてはおけーん! 砲撃開始ー!』ずどーん!『あ、逃げられた。ええ~いこのまま秘密と共に沈んでやる~』‥‥みたいな感じで‥‥」
「それ、全部ただの妄想でしょう?」
幸子の一人芝居に西崎が呆れたような表情を浮かべながら言う。
「それより納紗さん。タブレットの通信は切ってあるの?」
「はい。艦長の指示でオフにしています」
「通信器具が使えないのは不便だな・・・・・」
「でも、それで見つかっちゃたら面倒だしね・・・・」
「大変だと思うけど、とにかくいったんは集合場所である鳥島に行こう」
ましろの言葉に西崎と岬がそう言うと
「そ、それって・・・・・つまり私たちお尋ね者なんだよね?高校生になったばかりなのに犯罪者になっちゃったってことですよね!? こんなの嘘ですよね!? 嘘だと言って~!」
舵輪を握り震えながら号泣する鈴。すると・・・・・先ほどから黙っていた立石が
「あ‥‥う‥‥」
「どうかしましたか?立石さん?」
立石が何かを求めているのかと思った幸子が立石に声をかけると
「う……嘘」
「あ、ありがとう言ってくれて!あっ、わたしのことは鈴って呼んでくれていいよ!」
「鈴・・・・」
状況は何も変わらないのに、なぜか仲良くなってしまう鈴と立石。それを見たましろは深いため息をついた
「はぁ・・・・・・初航海でついてない・・・・・・こんなクラスになったばっかりに・・・・」
「なんだよこんなクラスって・・・・」
ましろの言葉に西崎が反応し、睨むと
「そりゃあ、確かに晴風クラスは学校合格者じゃ最底辺なのかもしれないけどさ。それはあんただって同じだろ!」
「一緒にするな!私は試験では全問正解していたんだ!けど解答欄を一つずらして書いちゃったから・・・・・・」
「「「・・・・・・・・」」」
ましろは少し恥ずかしそうに言うとその場にいた皆も気まずそうな表情をする
「ついてないですね・・・・・」
「うるさい!」
幸子の言葉にましろはプイッとそっぽを向くと岬は
「そっか~私なんて受かるだけでも奇跡なのに。たまたま勉強していたところが出てまして艦長なんてね・・・・・」
「こちらは強運の持ち主ですか・・・・・」
「うぃ・・・・」
幸子の言葉に立石は頷く。そしてましろもどことなく悔しそうな表情をするのであった。すると晴風のそばで数羽のカモメが飛んでいた
「鳥・・・・・・」
立石がそう言い幸子は
「こんな時、こんなふうに学校に戻れたらいいですよね?水素とかヘリウムを使わない空飛ぶ船って作れませんかね?」
幸子はそうましろに言うと
「はぁ・・・・そんなものは空想上のさ・・・・」
『空想上の産物だ。ばかばかしい・・・・・』ましろはそう言いかけたが、不意にあることを思い出す。それは9年前のことだ
『マーちゃん。マーちゃん。なに描いているの?』
『ん?飛行機描いているんだよ姉ちゃん』
『ひこうき?』
『そうだよ。気球や飛行船よりも空を速く飛んでかっこいいんだよ』
『でも、ひこうきなんて私知らないよ?それ本当に飛べるの?』
『飛べるよ!こうビューンて速くね。僕大きくなったら飛行機のパイロットになるんだ!もしパイロットになったら姉ちゃんを一番に乗せてあげる!』
『ほんと?マーちゃん?』
『うん!約束するよ姉ちゃん!!』
「・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・副長?どうかしたのですか?」
「・・・・え?」
「いえ、さっきも何か回想しているような表情ばかりしているので?」
「うん。この頃のシロちゃん。ボーとしていることが多いいよ?」
鈴の言葉に岬も同意すると、ましろは
「べ、別にボーとしていない。ただ・・・・・昔のことを思い出しただけだ」
「へぇ~どんな?」
「それは・・・・・て、関係ないだろ!?」
そう言いましろはプイッとそっぽを向いた瞬間、不意に彼女のポケットから写真が落ちる
「あ、シロちゃん。写真を落としたよ?」
そう言い岬は写真を拾うと・・・・・
「あれ?これって小さい頃のシロちゃん?それに隣にいる子って・・・・・」
そう言い写真を見る岬にましろは
「艦長・・・・返してくれますか?大事なものなので」
「あ、ごめんごめん・・・・・・」
そう言い岬はましろに写真を返すと岬は
「ねえ、シロちゃん。その写真に写っている子は・・・・・?」
「もしかして子供の時にできた彼氏ですか?」
そう言いほかの皆もましろを見るとましろは軽くため息をついて
「弟の写真だ。かれこれ9年前の写真だ」
「え!?副長、弟さんがいるんですか?」
「ああ・・・・大切な弟だ。今も・・・・昔も・・・・」
「そうなんだ。弟さんは今なにをしているの?」
「・・・・・・・・」
「シロちゃん?」
「・・・・9年前に行方不明になって・・・・・今でも見つからない。艦長。頼みますからこれ以上は聞かないでください」
「あ・…うん。ごめん」
岬はこれ以上聞くのをやめた。なぜならその時のましろの表情がとても辛そうだったからだ・・・・・