時間は少し遡り、晴風では少し仮眠を取っていた明乃だが、突然、ベッド横の内線電話が鳴る。その着信音のブザーに明乃は目を覚まし、そしてスピーカーから。
『艦長、艦長!水測の万里小路さんが、何か海中で変な音がするって‥‥艦長!!・・艦長!!』
幸子の言葉に明乃は飛び起き制服に着替えた。そして艦橋へと向かい
「総員配置!!」
直ぐ配置の命令を下し、艦橋に上がると、艦橋には、幸子と鈴が当直をしていた。
「ココちゃん、報告して!?」
「えっと‥‥方位30に二軸の推進機音、感2‥現在音紋照合中です!!」
艦橋に飛び込んできた明乃と薫に幸子は現状を報告する
「水上目標がいないって事は…潜水艦?」
幸子の報告に明乃はそう言うと、
「ふぁぁぁ~如何したの?こんな時間に‥‥?」
欠伸しながら、まだ寝ぼけ眼な芽衣とアザラシの様なアイマスクを付けた志摩が艦橋に上がって来た。そして副艦長であるましろも来たのだが・・・・・
「シロちゃんそれ!!」
「何やってるんですか?」
二人の目の前に立っていたのは、寝ぼけた状態で鮫のぬいぐるみを抱っこしたままのましろだった。
「ん・・・・わぁ・・これは・・・・その、見るな!!」
ましろは、自分の状況に気づき顔を真っ赤にして慌てて、鮫のぬいぐるみを後ろに隠す。ましろが恥ずかしがる中、各部配置に着いたクラスの子たちが報告をする
「主砲、配置よし」
「機関は、まだ修理中。巡航以上は、だせねぇぜ」
「見張り異常なし・・・何も見えませんが」
光、麻侖、マチコが艦橋に報告する。
「か、各部・・・・配置に着きました・・・!!」
ましろは、恥ずかしがりながら明乃に言うと、ソナー室にいる楓から報告が出た
「音紋照合いたしましたが・・・・一切不明の潜水艦です」
「所属不明?」
音紋照合しても不明な潜水艦の存在と楓の言葉に艦橋にいた皆が首をかしげる
「所属不明って・・・そんなことってあるの?」
「もしかして新型艦‥‥それとも非合法で建造された艦なのか?」
「それって海賊って事?」
正体不明の潜水艦。それは非合法に建造された艦であり海賊かテロリストの艦である可能性もある。もし仮に海賊やテロリストならば、学校側の出た戦闘禁止命令には該当せず、攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
「正体不明でも何でも、絶対に追手だよ!撃っちゃおう!」
不明艦が追ってだと思い込み、先制攻撃を仕掛けようと芽衣は言う
しかし明乃は芽衣の考えとは違い
「ココちゃん。その潜水艦と通信できないかな?」
「普通の電波は海水で減衰するので届きませんね」
「じゃあ普段、通信は如何してるの?」
明乃は潜水艦が水中で同連絡を取っているか疑問に思っているとましろが
「潜水艦だからって、いつも潜ってる訳じゃない!!」
「そうだよね、時々は海上の様子見ないと怖いよ~!!」
ましろの言葉に鈴がそう言うと明乃が
「シロちゃん、潜ってる時は、向こうも外の様子をソナーで探ってるんだよね?」
「当然だ!!」
「じゃあ、此方からアクティブソナーをモールスの変わりに使ったら?」
明乃はアクティブソナーをモールスの変わりに使う事をましろに提案する。そしてそれを聞いた楓は
「恐らく可能だと存じますが・・・」
「そんな事したら間違いなく砲撃したと思われるぞ!!」
楓はそう返事をしたが、明乃の提案にましろは、アクティブソナーを撃てば、間違いなく砲撃したと思われ、反撃される可能性が大だと思い、明乃の提案に反対する。
「ソナーでも何でも良いから撃っちゃえ!!」
「馬鹿なこと言うな!!」
と、とにかく撃ちたい芽衣がそう言うとましろが強く否定すると、明乃は楓に
「万里小路さん、所属と艦名、戦闘の意思は無い事を伝えって」
「委細、承りました!!」
楓は、アクティブソナーで潜水艦と通信してみる。
一方、潜水艦内では
「艦長。
「ばれたか・・・・・・で、相手はなんと?」
「ええっと・・・・・『此方、横須賀女子海洋高校所属、航洋艦晴風。貴艦への攻撃意思は無し』…とのことです」
戸惑いながら言う通信手に艦長は
「ふん。見苦しい電文ね。武装艦なのに学生の乗る船ですって?どうやら
「で、艦長どうします?攻撃を中止するのは・・・・」
「NO!我がUボートに攻撃中止の命令はない。きっとあのモールスも苦し紛れの言い分でしょ。仮に今は戦争中だ。戦闘海域の中。学校の船がしかも駆逐艦がうろちょろしている時点で欺瞞だというのはすぐにわかる。予定通りあの船を真っ二つにして轟沈する。操縦手!敵のソナーにひっから無いよう潜行せよ!敵の側面に回り込み魚雷を放つ!」
「Heil!!」
「ふふ見てなさい、あんたの船はこのUボートXXI型の魚雷で轟沈してやる」
晴風艦橋では
「目標進路変換、急速に深度を増していますわ」
楓からの報告で潜水艦は潜望鏡深度から更に潜航している。
「だから言っただろう!!」
「でも、もしこれで、こっちの状況が伝われば・・・」
「それは、そうだが、私達は、もうお尋ね者なんだぞ!!」
ましろは、先程の海上安全委員会の広域通信で晴風撃沈命令の事を思い出す。
「やっぱり追手なんだって!」
「は、早く逃げようよ‥‥」
芽衣の言葉に鈴は、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦艇が来る前に潜水艦から逃げようと言う。
「‥‥鈴ちゃん、両舷前進微速、ソナーの邪魔にならない速度で・・・」
「りょ、両舷前進微速!!」
鈴は、明乃の指示通り、ソナーの邪魔にならない速度で潜水艦から逃げる。その中、潜水艦は晴風を追尾し直ぐに潜望鏡深度まで浮上、潜望鏡を出して、こちらの様子を見ていた。
「ねえ、その潜水艦に乗っているのってどんな人なんだろうね?」
「知るか」
明乃の言葉にましろがそう言うと内田は
「基本潜水艦は男性だけですよ。でも狭くて暑くて臭くて‥‥」
「わ、私には無理~!!」
内田の言葉に鈴が潜水艦内部ののイメージをして涙目でそういうと楓が
「現在、不明潜水艦そ速力17ノットでこちらを追尾中・・・・」
「17ノット?晴風に比べたら、全然遅いね?」
楓の報告を聞いて明乃がそう言うと
「艦長。こっちは、水上、向こうは、水中でそれだけ出てるんです。通常の潜水艦は、6ノット程度だ。それを17ノットで出るのはかなり足の速い潜水艦です」
「17と6・・・」
横から志摩が通常の潜水艦との速力の割合を言う。
「へぇ~、約3倍は、早いんですか!!」
明乃が感心してそう言う・・・・
潜水艦内部
「敵補足。いつでも撃てます艦長」
「よし・・・・・・1番、2番・・・・
「一番撃てぇー!!」
「二番撃てぇー!!」
女将校の命令により一番管と二番管の魚雷が発射される。その発射音はソナー室の楓に聞こえていた
「魚雷2本いらっしゃいました!!」
「撃ってきた!?」
楓の報告にましろは驚き、明乃は
「マロンちゃん、出せる限りで最大戦速!!」
明乃は急ぎ回避行動を取ろうと機関室の麻侖に指示を出すが麻侖は、まだ、機関の修理に躍起になっていた。
「今は、手が離せねぇ、クロちゃん頼んだ!!」
「了解」
麻侖は、修理中の為、操作が出来ないので洋美に頼んだ。
「万里小路さん!発射音はどっちから!?」
「魚雷音方位、270。近づきます!!感2‥‥感3‥‥」
「了解」
楓は、向かってくる魚雷を捕捉しながら報告する。そして見張り台で様子を見ているマチコは楓の報告を聞いて返事をし、辺りを見渡す
すると、彼女の目には此方に接近して来る2本の雷跡がはっきりと確認できた。
「雷跡左30度、距離20、こちらに向かっている」
「鈴ちゃん!!取舵いっぱい!!」
明乃はマチコの報告を聞いて、左に回避する様、鈴に命じる。
「と、取舵いっぱーい!!」
明乃の回避命令に従い、鈴は急いで左に舵を切り、回避運動を取る。
「魚雷、衝突コースから外れます!」
どうやら放たれた二本の魚雷は晴風の艦尾をすり抜けたようだった。それを潜望鏡で見た潜水艦の女将校は
「チィ、外したか・・・・次弾急げ。次は必ず仕留めるぞ!」
「「Heil!!」」
「(夜間でのあの距離なら命中して轟沈のはずなのに、あの駆逐艦の操舵手。いい動きしやがる。これは沈め甲斐があるわ)」
晴風艦橋
「タマちゃん左砲戦準備!!」
Uボートの魚雷回避後、明乃は即座に主砲の発射準備を志摩に命じる。
「うん」
志摩もそれに従い砲身を魚雷が来た方向へと旋回させる
『目標、見えません!!』
マチコは真夜中のそして暗い海中に潜むUボートを視認できなかった。そして攻撃命令をした明乃にましろは
「撃ったら、今度こそ完全に敵対する事に・・・・・」
「分かってる。でも逃げ切るには・・・・」
「ぜ、全速が出せれば、たぶん振り切れると思うけど・・・」
『だから全速は出せねぇって!!』
「わ、分かっています~」
鈴の言葉に機関室から麻侖の怒声が聞こえる。全速力を出したいところだが現在、機関は修理中のため速度を上げられないのだ
「万里小路さん、相手の位置分かる?」
明乃はソナーで相手の居場所を探ることができないか楓に訊くが
「恐れ入りますが、もっとゆっくり進んで頂かないと‥‥」
「速度落としたら、やられちゃうよ!!」
「とにかく今は逃げ回ろう!!」
楓の言葉に鈴はそう言い、そして明乃は逃げることを決断するのであった。
そしてUボートでは
「艦長。ヤーパンの駆逐艦が逃げていきます。撃ちますか?」
「ここで撃ってもまた回避されるわ。ここはもっと近づいて、奴をしとめる。それにこのまま撃沈するのもつまらないわ。ジワリジワリと追いつめて苦しませながら轟沈させるわよ。Sieg Heil!!」
「「「「Heil Hitler!!Heil Fuehrer!!!』」」
将校の言葉に船員たちはナチス式の敬礼を取りUボートは晴風を追うのであった
「・・・・・・」
一方、晴風の医務室では意識を失っている守の手がぴくっと動くのであった