ハイスクールフリート~鋼鉄の鳥~   作:疾風海軍陸戦隊

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守、晴風での朝

4月13日午前5時

 

 

姉さんと再会してから明朝。まだ日の上っていない時間に俺は目を覚ます。だがその表情は冴えなかった

 

「まただ…またあの夢か・・・・」

 

冷や汗をかきそういう俺。俺が言った夢とはこの世界に来てからずっと見る悪夢。そう、自分が殺してきた敵のパイロットが呪いや恨みの言葉を発しながら俺を追いかける夢だ。そして俺も最後は自分の愛機とともに火に包まれ墜ちる‥‥そんな夢だ。

 

「敵を焼く炎はいずれ自分をも焼く・・・・・か」

 

俺はかつて先輩搭乗員だった疾風中尉の言葉を思い出す。あの人は俺と同じくらいの年齢で凄腕のエースパイロットだったがそれ以上に深い悲しみを背負った人だった。

俺もエースパイロットの端くれだが、その時は中尉の言葉はよくわからなかった。だが今ならわかる。

俺の最後もきっと火に包まれながら苦しみ死ぬだろう。そして死んだあとは天国ではなく地獄だ。夢で見た亡霊たちのいる血みどろの地獄に落ちるんだろうな・・・・・

 

「はぁ・・・・・」

 

まあ、これは仕方がないのだろう。これはきっと忘れるなっていうことなんだ。自分の犯した罪を決して忘れるな。そういうことだろうな

 

「はぁ…さて、そろそろ起きるか。ここは俺だけの部屋じゃないもんな」

 

そう言い俺は起き上がる。ここはいろんな備品のある倉庫だ。誰かが補充しに取りに来る可能性がある。俺は服といっても飛行服しかないんだが、服装やら襟とかを整えて、岬さんから借りた予備の布団と掛け布団を倉庫の隅っこにきれいに畳んで置く。

 

「よし・・・・・じゃあ、行くか」

 

飛行帽とゴーグルをかぶり部屋を出る。理由は何か手伝えることがないか探すためだ。岬艦長が言うには俺とシュペーから救助されたミーナさんはお客様という形みたいだけど。俺はここに世話になるからには、働かざるもの食うべからず。

何か、恩を返したい。昔の人の言葉にあるように一宿一飯の恩義ってやつだ。

だらだら何もせず過ごすことなんて俺は嫌だった。それが姉の乗る船ならなおさらだ。

俺は廊下を歩いていると、調理室という部屋からいい匂いがした

 

「ああ、もうこんな時間から朝食を作っているのか・・・・」

 

腕時計を見ると朝の5時。俺はそっと中を覗いて見る。

 

「おはようございます」

 

赤と青のエプロンをした二人の烹炊員が中で作業をしていた。その二人は見覚えがあった

 

「あっ、おはようー・・・あ、マー君!」

 

「あ、ほんとだ守君だ」

 

赤と青のエプロンをした杵崎姉妹がそう言う。彼女ら数か月前からの知り合いで試験シーズンでもたまに会っていた

 

「おはよう杵崎さんたち」

 

「ほまれでいいよ」

 

「私もあかねで同じ苗字だし」

 

「ああ。そうだった。もう朝食の準備?」

 

「うん。マー君はどうしたのこんな朝早くに?」

 

「うん。何か手伝えることはないかな~って」

 

俺は何か手伝えることはないかと聞くと

 

「じゃあ、盛り付けるの手伝ってくれる?今、美甘ちゃんいなくて」

 

「わかった。」

 

そう言い俺は手を洗い飛行帽とゴーグルを脱ぎ代わりに首に巻いていたマフラーを三角巾のようにして頭に巻く

そして俺はほまれやあかねさんたちと一緒に朝ご飯の調理をしていた。二人が調理をし、俺がお皿にきれいに料理を盛り付ける

 

「ほまれさん。あかねさん。盛り付け終わりましたよ」

 

「うん。ありがとう。すごいまー君。盛り付けがきれいだね?」

 

「ほんとだ。まるで料亭に出てきそうな盛り付けだよ」

 

「そうかな?」

 

二人は守の盛り付けた皿を見て驚いてそういう。守の盛った料理はまるで高級料理店のようなきれいな盛り付けであった。

 

「どこかの旅館やホテルで修行して習ったの?」

 

ほまれがそう聞くと守は首を振って

 

「いいや。ただ先輩たちの世話とかで盛り付け作業をしてたから、たぶんそれじゃないかな?」

 

守はラバウル航空隊時代では301戦闘隊の先任隊長であった杉田清美曹長の列機としてそして世話係として働いていた。

料理も普段は調理をする者がいるのだが、たまに航空兵が世話する先輩に料理を作ることがあった。

特に守の上司であった杉田はヤクザの組長のご令嬢でもあり、食事の味に関してはとやかく言わなかったが、盛り付け方には結構うるさかった。

杉田曹長曰く『服装の乱れと同じく料理の盛り付けが汚いのは心の乱れだ』そのため守は料理の盛り付けをまるで高級ホテルの料理のように盛り付けるようになった。無論簡単にできたわけではなく。盛り付け方料理の仕方は調理係の人に頼み込んでできるようなったのだ。

 

「ま、今となってはいい思い出だな」

 

「「え?」」

 

「ああ、いやなんでもないよ」

 

ほまれ、あかねは守の言葉にきょとんとするが、守は笑ってごまかす。するとあかねが

 

「でも驚いたよ。マー君って真白さんの弟だったんだってね」

 

「まあ、姉さんとは血はつながってないけどな。小さいころ、一緒に暮らしてたんだ。姉弟同然の関係だよ」

 

「そうなんだ~あ、マー君そこのお皿取ってくれる?」

 

「ああ。いいよ」

 

守はあかねのお皿を渡す。そして三人は料理の盛り付けを終えると、

 

「マー君のおかげで助かったよ」

 

「いいや。俺も仕事がなくて困ってたんだ。他にやることはない?」

 

「ううん。あとはもう私たちでできるから。ありがとうね守君」

 

「そう?じゃあ、もう俺は行くよ」

 

「「うん。ありがとうマー君」」

 

杵崎姉妹がそう言うと、守はにっこりと笑い、飛行帽をかぶり調理室を出るのであった。

 

調理室を出て守は廊下を歩くと・・・・・・

 

「ん?そういえば俺の二水戦はどこだ?」

 

急に自分の愛機である二式水上戦闘機を思い出す。そして以前、ましろが後部甲板に置いたことを言っていたのを思い出す

 

「後部甲板に行ってみるか・・・・・」

 

そういい守は、後部甲板へと向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

「これは‥…思った以上にやばいな」

 

後部甲板に行き二式水戦の様子を見る守。機体はあっちこっち砲弾の破片のせいなのか穴だらけで何より致命的なのは・・・・・

 

「エンジンは工具で治せそうだけど、機体のフロートに穴が開いてそこから燃料が漏れてる‥…こりゃぁ、ナツオさんが見たらレンチでぶったかられるな・・・・・・」

 

守は軽いため息をつきそういう。発動機は工具とか使えば応急処置で何とかなるレベルではあったが、肝心なのは燃料タンクにもなっているフロートだった。フロートはアドミラル・シュペーの砲撃による砲弾の破片にて直径5センチくらいの穴ができていた。そしてその穴から燃料が漏れていたのだ

 

「はぁ・・・・これじゃあ飛ばすのは無理だな。機体を見ても鋲が数か所飛んでるし計器がガタづいてるところもあるし、これは一度、戻って修理するしかないかな」

 

コックピット内も見てみると風防のガラスが割れてたり、計器の一部がガタづいていた。エンジンが修理できたとしてもこの状態で飛ばすのはかなり危ない。下手をすれば飛んでいる最中に空中分解する恐れがあった

 

「はぁ・・・・どうしよ」

 

工具は借りれば何とかなるが、だがこの機体自体を直すとなると晴風の工具で治すのは難しい。どうしようか考えていると・・・・・・

 

「守」

 

「ん?」

 

急に声がし、後ろを振り向くと、そこにはましろ姉さんがいた

 

「おはよう姉さん」

 

「おはよう。よく眠れたか?」

 

「ああ。おかげさまで。姉さんはなんでここに?」

 

「もうすぐ朝食だから起こしに行こうと思って部屋に行ったらお前がいなくてな。それで探して甲板まで行ったらお前がここにいたってところだな」

 

「そうか・・・」

 

姉さんの言葉に俺はそう返事をすると姉さんは俺のところまできて二式水戦を見ると

 

「これが守が言っていた飛行機なんだな」

 

「ああ。そうだよねえさん。これが気球や飛行船より早い空の乗り物だよ」

 

「シュペーの時見た。確かに速かったな……それで守。これはまた飛ばせるのか?」

 

「いいや。さっき点検したけどさっきの砲撃で燃料が積んであるフロートの穴ができていて燃料が漏れてた。ほかにも計器がおかしくなって所があったから、部品交換や修理しないといけないよ」

 

「そうか・・・・・」

 

守の言葉にましろは少し残念そうに言うと、守はましろに向かってニコッと笑い

 

「大丈夫だよ。まだチャンスはあるから」

 

「え?」

 

守の言葉にましろはキョトンとした表情をすると、朝ごはんができたことを知らせる食事のラッパが聞こえる

 

「あ、どうやら朝食ができたみたいだな」

 

「そうだな・・・・・行こうか守」

 

「ああ行こう姉さん」

 

そう言い守るとましろは食堂へと向かうのであった。

だが、この後、艦内でひと騒動起きることは守も姉であるましろもまだ知らなかった・・・・・

 

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