4月13日、午前10:00
日本近海、四国沖。Uボートの攻撃を無事切り抜けた晴風は、横須賀女子海洋学校からの全艦帰港命令に従い、一路、横須賀を目指していた。
そんな中、生活物資が保管されている晴風の倉庫にて、媛萌と百々が備蓄物資のチェックを行っていた。
「お米が120kg、缶詰肉が10箱程‥‥」
媛萌がタブレットに備蓄物資の量を記入していく。
「まだまだ余裕っすね・・・」
百々がこの分なら学校に着くまで物資は持つだろうと思い呟く。だが、倉庫のチェックが進んでいく中、
「あっ!?」
百々が無数の中からある段ボール箱を見つける。
『ん・・・・・・?』
媛萌も気になって、二人は、段ボール箱を覗くと
「あれ!?」
何と、段ボール箱の中は、空っぽで、段ボール箱の外側には、トイレットペーパーの絵が記載されていた。それは後に大金騒動の引き金になることになるのであった。
一方、艦橋では
「・・・・横須賀までどれくらい掛かる?」
ましろは、鈴に今の位置から横須賀まで掛かる時間を問う。
「えっ!?・・・・えっと、26時間・・・・かな?」
ましろの言葉に鈴はそう答える
「約一日か・・・・・艦長、可能な限り急ぎましょう!!・・・学校側から戦闘停止命令が出ているとはいえ、これ以上、他船と遭遇したくない」
確かに学校側からは戦闘停止命令が出ているが、大元の海上安全整備局からは、晴風撃沈命令は撤回されていない。
先ほどのUボートみたいに襲撃されることをましろは避けたかった。
「うぃ」
「あぁ・・・もう撃てないんだ・・・」
志摩もましろと同意見、それに比べて、芽衣はもう砲雷戦ができないことにがっかりしていた。
そんな中、艦長である明乃は上の空でぼーと空を眺めていた
「艦長?」
「・・・・・・・」
「艦長!!」
「!?・・あっ、御免・・・・」
ましろが声を掛けているのに、ようやく気付く明乃。それをみた幸子は
「『私、本当は武蔵のSOSに応えたいの!』『何を言っている!・・全艦学校に戻れと言われたろ!』『分かっている、でも・・・』」
と、明乃の気持ちを代弁するかの様に幸子が一人芝居を始める。
『アハハ・・・』
幸子の一人芝居に皆は、苦笑いをする。
「ううん、きっと武蔵は大丈夫!・・・私達は急いで学校へ戻ろう。」
幸子の一人芝居に立ち直った明乃は、武蔵が大丈夫な事を信じ、急いで横須賀女子海洋学校へと帰還しようと告げる。
すると・・・・・
「艦長!?」
『!?』
突然、明乃を呼ぶ声が響き、右を向くと
「大変!!大変!!」
「一大事ッス・・・!」
何と媛萌と百々が血相を変えて艦橋に飛び込んできたのだ。
一方機関室では・・・・・
「いや~守、助かったよ。ここは結構力が必要だったんだよ」
「いいって、お役に立てて光栄だよ機関長さん」
守は機関室で麻侖たちの手伝いをしていた。そしてクロちゃんこと洋美は
「でも驚いたわ。守君って機械いじりも得意だったんだね?」
「まあ、飛行機の整備とかよくしてたからね。機械いじりなら少しは得意さ」
「飛行機って…さっきみんなが言っていた飛んでいたやつか?」
「ああ。そうさ」
と答えると
「でも驚いたよ。まさか守が、副長の弟だったんだかっらね~」
「それは私も驚いたわ。でも名字が違うわよね?」
二人の言葉に守は汗をぬぐうと
「俺が幼いころ、宗谷家にしばらく世話になってた時があったんだよ。ましろ姉さんとはその時の縁で姉弟のような関係になったんだよ。まあいわゆる義姉弟てやつさ」
「へ~そうなのか・・・・でもなんで姉なんだ?副長とは同い年のはずだろ?」
麻侖がそう訊く。そう。守とましろは同い年なのだ。その守がなぜましろを姉と呼ぶのが不思議で訊いてみると守は
「ああ、それか。姉さんとは半年くらい姉さんのほうが上だし。俺の場合は敬愛の意も込めてそう呼んでいるんだよ」
「お姉さん思いだね‥…」
「大切な姉さんだからな」
守はそう言うと、突如伝達管から
「クラスのみんなは至急、教室に集まってください!繰り返します・・・・」
明乃の言葉が艦内に響く
「なんだろう?」
「さぁ?とにかく行こうってんでい!」
そう言いマロンと洋美と守は工具をしまい、オイルだらけの顔を洗った後、教室へと向かうのであった。
教室に集まった生徒達は突然の招集に何事かと思いながら席に着くと、教壇に上がった媛萌と百々が今回、全員を招集した理由を話し始めた。
「日本トイレ連盟によると、女性が一日に使うトイレットペーパーの長さの平均は12.5m・・うちのクラスは30人、航海実習は2週間続く予定だったので、余裕を見て、250ロールは用意していたんです・・それが・・・・」
「(そんな連盟あるのか?)」
守は媛萌の言葉にどうでもいいことに首をかしげるが、媛萌は両手をバツにして
「もうトイレットペーパーがありません!!」
『『ええぇーーーーー!!?』』
トイレットペーパーが無いと言う現実を告げられ、皆は、驚愕する。
「誰がそんなに使ったの!?」
「このクラストイレ使う人ばっかりなの?」
「1回10cmに制限すれば?」
「えぇ~困る~」
トイレットペーパーの制限案も出たが、直ぐに却下された。
「誰よ?無駄に使ってんのは!」
「あぁ~でも私トイレットペーパーで鼻もかんじゃいますね~」
「すいません!私、持ち込んだティッシュがなくなったので一個通信室に持ち込みました!」
鶫が自分の持ち場にトイレットペーパーを持ち込んだことを白状する。
「食堂でも見たよ、ロール」
「ちょこっと拭くのに便利なんだよね」
「うん。便利、便利」
「たくどいつもこいつもすっとこどっこいだな」
「どうしよう‥なくなったらおトイレ行けなくなるのかな‥‥?」
鈴が涙目で今後のトイレの不安を口にする。
一方、立石は今後のトイレ問題が深刻化するかもしれないと言うのに、手製の猫じゃらしで五十六と遊んでいる。
「それもこれも日本のトイレットペーパーが柔らかすぎるのがいけないんだ!だからつい沢山使ってしまう!」
「(じゃあ、欧州のトイレットペーパーは固いのか?紙やすりなのか?)
ミーナが席から立ち上がり日本のトイレットペーパーの素晴らしさを力説する中、守は心の中で突っ込む
まぁ、ミーナの乗艦予定は本来無かった事なので、何かしらの影響はあると思っていたが、その影響がまさかトイレットペーパーとは、思いもよらなかった。
「蛙鳴蝉噪」
トイレットペーパーの問題でどよめくクラスメイト達を見て美波がポツリと呟く。
「戦争だと!?」
ミーナが美波の聞こえた言葉の部分に反応する。
「意味は「うるさいだけで無駄な論議」ってことですよ~」
幸子がミーナに蛙鳴蝉噪の意味を教える。兎に角集会室はトイレットペーパーの議論が飛び交い纏まりが無くなりつつある。
一見馬鹿馬鹿しいように見えるが、トイレ関係と言う事で当事者にとってはある意味死活問題とも言える。
「艦長、まとめて下さい!!」
それを見かねたましろは、明乃に皆をまとめる様、指示する。
「あ、うん・・・・み、みんなおちつい・・・・・て、マー君。なんで自分の手を見てるの?」
明乃は守が自分の手を見つめてる様子を見てそう聞くと守は虚ろな目で
「ねえ…なんで人間、手が二つあるか知ってるか?それは・・・・・」
「早まるな守!まだ希望を捨てるな!!」
守のブラック発言にましろは慌ててそういうと、瑠奈、鈴、二人も絶望した表情で自分の手を見つめる
「え?ちょっと二人ともなんで無言で自分の手、見てるの?駄目だよ!それやったら一生後悔するよ!いいの!?」
二人の行動に芽衣が激しく突っ込む
「みんな落ち着いて!とにかく・皆!!・・・他にも足りない物、必要な物、ない?」
明乃がトイレットペーパーの他に何か不足している物は無いか皆に尋ねる。すると、
「魚雷!」
「ソーセージ!」
「模型雑誌!」
「真空管・・・・」
と、みんな的外れな注文をする。当然その注文は却下された
「これから学校へ戻るとすると、2日は掛かる・・・何とか物資を補給したいところだ。」
「燃料や弾薬は学校経由じゃないと調達できないから、薬品、食料、最低限必要な日用品だけでも、如何にかしたいな・・・・」
「戦闘禁止命令が出ているとはいえ、なるべく他の船には、遭遇したくないよね・・・・」
「位置がバレるんで、通販は出来ないですし‥‥」
鈴と幸子が言うと守が
「なら、密かにどこかに買い出しに行くしかないな・・・・・」
「買い出し?」
守の言葉に明乃が反応すると、幸子は、タブレットで何所か近くで買い出しできる場所を探す。
「えっと・・・確か此処に『オーシャンモール四国沖店』がある見たいですけど・・・・」
「買い物・・・・行きたい!行きたい!」
「日焼け止め持ってくるの忘れちゃったし」
「私もヘアコンディショナー無くなっちゃった・・・皆、私の使うんだもん!」
買い出しの言葉を聞いて、皆がオーシャンモール四国沖店に行きたくなる。まあ、無理もない。ずっと海の上、しかも娯楽の少ない海上生活で、買い物に出かけられると聞いたらそれは皆行きたがるのは当たり前だ
「艦長。今の状況で皆で楽しく買い物に行く訳には行けません!!」
「だね・・目立たない様に少人数で買い出しに行こう!!」
買い物を楽しみにしている生徒達には悪いが、此処は少人数で目立たない様に買い出しに行くしかなかった。
「艦長!・・もう一つ重大な問題が!」
オーシャンモール四国沖店へ買い出しに行く事が決まった中、突然、美海が立ち上がり、明乃に、ある重大な問題を言う。
「え?何?」
明乃が何かと問う。
「・・・・お金が・・・・足りません・・・・」
「・・・・えっ!?・・・・」
困った表情で、美海はそういう。そう、実はトイレットペーパーを買う資金がないのだ。そこで明乃はあることを始めた。
それは・・・・・
「トイレットペーパー募金、お願いしまーす!!」
それは募金活動であった。明乃は艦長帽を逆さにし、みんなに呼びかけ、みんなは財布の中を見る。そして各地に声をかけるのだが・・・・・
「宵越しの金は持たねえ!」
「小切手は使えませんよね?」
「ジンバブエのお金ですけど大丈夫ですか?」
と、みんなあまり持っていないようだ。
「ミーちゃんは・・・・・?」
「ワシはユーロしかない!」
ドイツから来たミーナは今持っているのはユーロしかないと明乃に言うと
「「ワシ?」」
ミーナの一人称に杵﨑姉妹が首をかしげてそういうと、皆もミーナに注目する
「ん?‥‥何かワシの顔に付いてるか?」
周囲の人が自分の顔を見ていたので、ミーナは周りの人に何かと尋ねる。
「ワシ~!?」
空はミーナの一人称がおかしかったのか、周囲から笑い声が立ち始める。
「な、何が可笑しいんだ・・・!?」
皆に笑われ、ミーナは顔を赤くし両手を上げ声を上げた。そして明乃は
「マー君。悪いんだけどお金持ってる?」
と、守に聞くと
「う~ん。雀の涙ほどしか今は持ってないけど。向こうに行ってATMから貯金おろせば何とかなるよ」
「え?でもいいの?」
「困ったときはお互い様だろ?それと買い物、俺もいっしょに行ってもいいか?お金おろさないといけないし」
「え?…うんいいけど。マー君。お金あるんだ?」
「学校の警備員の仕事してたからな。もらった給料は銀行にある。幸いに通帳とカードは持っているから、店に置いてあるATM使えば出せるよ」
守が明乃に言うと瑠奈たちが
「あ、そういえば。うちの学校の警備員さんだったよね?」
「あ、そうだった。受験でもいたよね?入学式にはいなかったけど」
「代わりに立って眠っている人がいたよね?」
「私、立って寝ている人初めて見たよ・・・・」
機関科四人組がそう言うとましろは
「守…お前、こっちに帰っていたことは聞いたが、うちの学校の警備員をしてたのか?」
「え?ええ・・・・うん」
「なぜ、私に会いに来なかった・・・・・」
「え・・・とその・・・・」
ジト目で守を見るましろに守はたじたじになる。守もさすがに姉であるましろには頭が上がらないみたいだ。
「はぁ…まあいい。そのことは後でじっくりと訊く」
と、そういわれるのであった
その後、買い物に行く人選を決めていた。そして話し合いの結果。行くメンバーは明乃と守、媛萌、美甘、美波の5名となったのだった。