そのころ、晴風甲板では機関科と炊飯員、主計科のメンバーによる女子会の様なモノが行われていた。
「杏仁豆腐作ったから食べて」
「どうぞ」
杵﨑姉妹が作って来た杏仁豆腐を皆に振舞う。
「そう言えばさ、あの時の警備員が宗谷さんの弟だって驚いたよね?」
「ああ、マー君?うん。私も驚いたよ。でも名字が違うよね?」
「マー君が言うには義理の姉弟らしいよ?小さいころ宗谷さんの家でお世話になって、それで姉弟のような仲になったっんだって」
「へ~ああ、そう言えば。弟君について思ったことがあるんだ」
空がそう言い後甲板に置いてある二式水戦を指さすと麗央も
「ああ、あれね。あれで空を飛んでいたってほんとかな?」
「私は見たっすよ。シュペーの戦闘のとき、すっごい速さで飛んでいたっす!」
百々がそう言う。シュペーのとき百々は二式水戦が飛んでいるのをこの目で見ていたのだ
「へ~でも飛行船より早い乗り物なんて聞いたことがないよ?」
「確かにマー君って何者なんだろうね?」
瑠奈と美海がそう言うと
「そう言えば自己紹介のとき、「日本国海軍の少尉」って名乗っていたよね?」
「そう言えばそうだね?海軍があったのって随分前だよね?」
「少尉も昔の軍隊の階級だよね?確か・・・士官の一番下だよね?」
「じゃあ、マー君って兵隊であれに乗ってダダダッ!!って人を何十人も撃っちゃってたんじゃないの?」
「「「っ!?」」」
瑠奈のその言葉に皆は少し驚いた顔をするが
「瑠奈ちゃん。それは面白くないいよ。それじゃあマー君が人殺し家業をしている人みたいじゃない」
「それは流石に失言だよ瑠奈」
「そうだよ。それに日本に軍隊ないじゃない。瑠奈今の言葉取り消して」
「ご、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだけど・・・・・」
瑠奈がそう言うと仲のいい杵崎姉妹と機関科の三人が強く否定すると瑠奈は申し訳なさそうに言うと、瑠奈はすぐに話題を変えようとした
「それにしても・・・・学校に帰ったら私達怒られるのかな?」
「まさか停学とか退学にならないよね?」
不安そうな機関科の留奈の嘆きに、同じく機関科の広田がどこか悲しそうな顔をする。
お菓子やお茶が並んでいる女子会なのに何故か空気は重い。
「学校に着いた途端、捕まったりするのかな‥‥」
「ブルマーになれないとか?」
「ブルマー?」
「ブルーマーメイド」
「そうなったら何のためにこの学校に入ったんだって話よね」
美海がそう言うと周囲の皆が頷いた。
あまりにも空気が重かったのを感じたのかそれとも忘れたいのか若狭が
「無い無い・・・だって宗谷さん、校長の娘さん何だって!」
麗緒は、ましろが真雪の娘だから、ましろがいる限り、処罰が下される事はないと思った。
「えっ本当・・・!」
「あ、校長も宗谷だ!・・宗谷真雪!!・・・宗谷さん、ましろだよね!」
ましろが真雪の娘だと知って、2人は、驚く。そんな時
「「ん?」」
ミーナに艦内を案内していたましろと洋美が偶然、其処に居合わせて、みんなの会話を聞いてしまう。
「真雪とましろかぁ・・・雪は白いもんね・・・」
「えーでも校長の娘なのに、うちのクラス?・・武蔵とかじゃないんだ?」
麗緒は、ましろが真雪の娘なのに何故、成績優秀の武蔵じゃなく、成績不良の晴風に配属されたのか、気になる。
「っ!!」
麗緒の言葉を聞いて、ましろは、落ち込む。だが、そんなましろを見て、洋美が
「余計なお喋りは止めなさい!!」
と余りに余計な一言を言っていた4人に止める様、激怒する。更にミーナも
「この、噂好きのドグサレ野郎共!修理する箇所がいくらでもあるだろ!・・・取り掛かれ!!」
『は、はい!!』
ミーナの一喝を受け、まるで蜘蛛の子を散らす様に皆は思い思いの方向に散っていく
「気にしないでね、宗谷さん・・・・」
7人が去った後、落ち込むましろに洋美は、慰めようとする。
「‥‥」
だが、さっきの7人のお喋りを聞いて、ましろは本当は、晴風じゃなく、武蔵に乗りたかったのに、入学試験での初歩的なミスで結局、晴風に乗る事になってしまった。そしてましろは小さいころ守ると約束をしたことを思い出した
『いつか、マー君を私の乗る船に乗せてあげる!!』
「(確かに私は自分の乗る船に守を乗せることができた・・・・・・でも、本当はこんな形ではなく、艦長になった私が守を武蔵に乗せてあげたかったな・・・・)」
弟である守なら『気にしない』と言ってくれそうだが、ましろはやはり姉として立派な船に弟を乗せてあげたいと思っていたのだった。
そしてましろが考え込む中・・・・・
「あ、アビスの箱だ・・・!」
漂流物を拾っていた理都子と果代子が通販会社のロゴが書かれた箱を見つけ、2人は、その箱を引き揚げる。
「通販の箱なんだから雑誌とか入ってないかな・・・・・・あれ?」
何が入っているのか、蓋を開けると、其処には蓋が開いた飼育箱があり、中からハムスターの様なマウスが飛び出して、甲板を走り去っていった。
ちょうどその頃、機銃座で昼寝をしていた五十六が、甲板を走るマウスの姿を見つける
「ヌン!!!」
猫としての本能が目覚めたのか、いつもまったりとしている五十六の目がギラリと光りそのマウスを追いかけて行った。
『うん?』
マウスは、偶々その場にいた、ましろ、洋美、ミーナの足元を通過した。
「鼠??」
ミーナが足元を見て、ましろが左を向くと、マウスを追いかけていた五十六が突進してきた。
「わぁ!?・・ひぃ・・ひぃ・・・ぐぼっ!!」
驚きの余り、尻もちをつくましろ、更に其処に五十六が腹に乗り飛び越えていった。
「宗谷さん、大丈夫?」
洋美がましろに駆け寄り心配して声を掛ける。
「全く、猫なんか乗せるから・・・はぁ…ついてない」
ましろは、つくづく自分の運の無さに悔やむのだった。
一方、南太平洋にて、座礁した大型艦にはいつものように軍服を着た女性が煙草を口に咥え、平たい甲板を歩いていた
「あれから一月・・・・缶詰も魚も食い飽きてきたな・・・・いい加減に本土の料理が食べたいものだ。それに煙草もこの一箱で終わり。買いに行きたいがまともなボートもなければここがどこなのかもわからない。はてさてどうやら私はここで天寿を全うするみたいだね」
と、そう呟き、そして穴の開いた甲板を見る
「ふ~~~。それにしても何度見ても悲惨な被害だよ。これは・・・・まあ、さすがにこいつの重装甲のおかげで弾薬や爆装は全部は吹き飛ばなかったが・・・これじゃ飛龍と山口多門だなこれは・・・・・・・・ん?」
煙草の煙を吐きそう言う彼女の耳に波の音とは違う何かのエンジン音が聞こえた
「誰か来たかな?」
そう呟き、彼女は艦橋の高いところに上り、双眼鏡を除くと、そこには真っ黒な船がこちらにやってきているのが見えた
「あれは米軍のインディペンデンス級か・・・・・妙な塗装だ」
と、そう言い彼女はふっと笑い
「これはまた面白いお客が来たものだな」
と、そう言うのであった
次回「海狼vs青人魚」